ビバリーヒルズの豪邸街を歩く|なぜ富豪とハリウッドスターの街になったのか

ビバリーヒルズのグレーストーン・マンション外観

歴史的邸宅、豪邸街、公園、ロデオドライブを歩き、石油王と映画スターが築いたビバリーヒルズを旅します。

ビバリーヒルズのウェルカムサイン
ビバリーヒルズのウェルカムサイン。撮影:Ii2nmd/Wikimedia Commons/CC0 1.0。

ビバリーヒルズ(Beverly Hills)は、ロサンゼルス旅行の中で半日から1日を使うと歩きやすい街です。標準は1日。Greystone Mansion、Virginia Robinson Gardens、Beverly Gardens Park、北側の豪邸街、Rodeo DriveとTwo Rodeo Driveをつなげると、土地開発・石油資本・映画産業・高級商業地が重なってできた街の全体像を追えます。

観光の目安半日~1日。標準は1日
東京発の標準旅行ロサンゼルス5泊7日、2名1室の1名分で約42万~70万円
Greystoneの庭園2026年8月26日確認時点で入場・駐車無料、予約不要
地下鉄Metro D Line Section 1は2026年5月8日開業。Wilshire/La Cienegaまで運行。Beverly DrなどSection 2は建設中
おすすめの見方Rodeo Driveだけで終えず、歴史・豪邸街・Greystoneまで組み合わせる

ビバリーヒルズはどんな街?|世界的な豪邸街になった理由

ビバリーヒルズはロサンゼルス市の一地区ではなく、ロサンゼルス郡内にある独立した市です。市の中心部にはロデオドライブ(Rodeo Drive)を含むゴールデン・トライアングル(Golden Triangle)があり、その北側には低層の住宅地、さらに丘陵へ上がると大きな敷地を持つ邸宅が増えます。北東寄りの丘にはグレーストーン・マンション&ガーデンズ(Greystone Mansion & Gardens: The Doheny Estate)があります。

高級住宅地になった理由は「有名人が住んだから」だけでは説明できません。水が得られる土地だったこと、20世紀初頭に石油探索から住宅開発へ事業が転換したこと、曲線道路と緑地を備えた計画的な街区が整えられたこと、ホテルと映画産業が富裕層を呼び込み、戦後には高級商業地が育ったことが連続しています。

牧場から映画スターの街へ|ビバリーヒルズの歴史

水のある土地から住宅地開発へ

現在のビバリーヒルズ周辺は、フランクリン、コールドウォーター、ベネディクトの各キャニオンから水が集まる場所でした。歴史名のエル・ロデオ・デ・ラス・アグアス(El Rodeo de las Aguas)は「水の集まる場所」と結び付く呼称です。1838年、メキシコ統治期にマリア・リタ・バルデス・ビリャへRancho El Rodeo de las Aguasが与えられ、牧畜地として使われました。

1900年、バートン・グリーンらはAmalgamated Oil Companyとして土地を取得し、石油を探しました。しかし期待した大規模油田には結び付かず、1906年にRodeo Land and Water Companyを設立して住宅地開発へ転換します。市の公式史によれば、Beverly Hillsという名はグリーン夫妻がマサチューセッツ州のBeverly Farmsにちなみ採用しました。

造園家ウィルバー・D・クックは丘陵に沿う曲線道路や緑地を組み込んだ街区設計に関わり、1907年には最初の道路がつくられました。1912年にはBeverly Hills Hotelが開業し、1914年に市制が施行されます。住宅地とホテルが先に整い、そこへ映画産業の富が流れ込む土台ができました。

Pickfairが象徴した映画スターの流入

1919年、ダグラス・フェアバンクスとメアリー・ピックフォードが土地を購入し、のちにピックフェア(Pickfair)と呼ばれる邸宅を築きました。映画スターが撮影所近くでありながら広い敷地を確保できる住宅地としてビバリーヒルズを選び始め、街のイメージは全国へ広がります。

1923年にはロサンゼルス市への編入が争点となりました。水供給をめぐる利点も議論されましたが、住民投票では独立市として残る側が勝ちました。第二次世界大戦後は中心商業地のGolden TriangleとRodeo Driveが発展し、1950年代には空き地がほとんど残らないほど住宅地として成熟します。

豪邸街とBeverly Gardens Park|街そのものを歩く

Beverly Gardens Parkは、Santa Monica Boulevard沿いに約1.9マイル、23ブロック続く細長い公園です。1907年に最初の3ブロックが整備され、1930年に東西へ拡張されました。ビバリーヒルズのウェルカムサインとリリーポンドのほか、Cactus Garden、Electric Fountain、Alta Arden Pergola Gardenなどが点在し、中心商業地と北側の住宅地をつなぐ街歩きの軸になります。

公園から北へ進むと、Rodeo Drive周辺の商業地とは街のつくりが変わります。平地では比較的整った街区が続き、丘陵へ近づくにつれて道路が地形に沿って曲がり、街路樹、生垣、門、歩道から建物までの距離も大きくなります。Street Viewでは道路幅やセットバック、衛星表示では敷地規模や庭園、プール、緑地、丘陵地形を見比べると、豪邸街が建物単体ではなく街区全体でつくられていることが分かります。

Virginia Robinson Gardens|Greystoneより早い時代の邸宅を見る

もう一つの歴史的な邸宅がVirginia Robinson Estate and Gardenです。ビバリーヒルズ市のHistoric Landmark No.2で、主屋は1910年築。現在はロサンゼルス郡のVirginia Robinson Gardensとして公開され、庭園と邸宅を予約制ツアーで見学できます。2026年8月26日確認時点では火曜~土曜に運営され、見学は事前予約制で当日飛び込みは受け付けていません。Greystoneが1920年代の石油富豪の大邸宅なら、こちらは市制施行前後の早い段階に形成された富裕住宅地を知る手がかりになります。

歴史建築をさらに見るなら、1912年開業のBeverly Hills Hotel、1932年完成のBeverly Hills City Hall、1920年のThe Witch’s House、1954年のFrank Lloyd Wright設計Anderton Courtも市のHistoric Landmarkに登録されています。中心部から徒歩で寄りやすいものと、住宅街側にあるものが混在するため、すべてを1日に詰め込むより、興味に合わせて1~2か所を追加するのが現実的です。

住宅建築はSpanish Colonial Revival、Mediterranean系、Tudor系、Modernなど多様です。個々の現役私邸の様式や住人を追うより、屋根、壁材、アーチ、窓、庭、道路からの距離を見比べると、20世紀の異なる時代に建てられた住宅が重なっていることを読み取れます。

Greystone Mansion|石油王一族が残した55室の大邸宅

ビバリーヒルズのグレーストーン・マンション外観
1928年完成のグレーストーン・マンション。撮影:Los Angeles/Wikimedia Commons/CC BY-SA 3.0。

グレーストーンは、ビバリーヒルズの「石油資本がつくった富」を建築として見られる場所です。石油事業で巨富を築いたエドワード・L・ドヒニー・シニアは、1926年に息子エドワード “ネッド” ドヒニー・ジュニアへ結婚祝いとして12.58エーカーの土地を贈りました。建設は1927年2月15日に始まり、一家は1928年9月に入居しました。

設計は建築家ゴードン・B・カウフマン、造園はポール・G・シーン。邸宅は約46,054平方フィート、居住可能な部屋は55室あり、東翼には使用人区画が2層にわたり、住み込みスタッフ15人を収容しました。娯楽棟には映画劇場、Brunswick製ボウリング場、ビリヤード室、隠しバーが設けられていました。

敷地には厩舎、犬舎、テニスコート、消防施設、ゲートハウス、プール、温室、湖、小川や滝も整備されました。巨大な主屋だけでなく、生活・娯楽・維持管理を敷地内で完結させる設備がそろっていた点に、1920年代の石油富豪の暮らしが表れています。

ネッドは入居から約5か月後の1929年2月16日に邸内で死亡しました。市の公式史は、長年の友人で補佐役だったHugh Plunkettによる apparent murder-suicide と記しています。妻ルーシーは1955年まで住み、その後土地の大部分が売却されました。

ビバリーヒルズ市は1965年に残る18.3エーカーと邸宅を取得し、1971年に公共公園として正式に開園しました。1976年にはNational Register of Historic Placesへ登録、2013年にはBeverly Hills Local Historic Landmark No.4に指定されています。現在も映画・テレビの撮影地として使われています。

2026年8月26日確認の訪問条件:市公式「Visit Greystone」では、庭園は原則毎日10:00~18:00、冬季10:00~17:00。Thanksgiving DayとChristmas Dayは休園です。庭園は予約不要で、入場・駐車とも無料です。邸宅内部の「Inside the Mansion」は1~11月の最初の土曜または日曜に実施され、1階と復元された劇場をセルフガイドで見学できます。現行ページでは11:00、12:00、13:00、14:00の時間指定券、最終入場14:30と案内されています。2026年9月5日、10月4日の開催予定も掲載されています。料金は現行の案内本文上で金額を確認できなかったため、推測せず予約画面の表示を優先します。

Rodeo DriveとGolden Triangle|「住む富」から「消費する富」へ

ビバリーヒルズのロデオドライブと高級商業地区
ビバリーヒルズのロデオドライブ。撮影:Prayitno/Wikimedia Commons/CC BY 2.0。

ロデオドライブは、豪邸街と別のかたちでビバリーヒルズの富を可視化した場所です。第二次世界大戦後、Golden Triangleは高級商業地として育ち、Rodeo Driveは世界的な買い物目的地として知られるようになりました。住宅地では塀や生垣の奥に隠れる富が、中心部では店舗のファサード、ショーウィンドー、歩行空間として街路に現れます。

Two Rodeo Driveは、ヨーロッパ風の細い街路と段差を持つ複合商業空間で、一般的な碁盤目状のショッピングストリートとは異なる景観をつくっています。買い物をしなくても、Rodeo Driveを南北に歩き、Beverly Wilshire周辺からTwo Rodeo Drive、Golden Triangleへ進むだけで、戦後のビバリーヒルズが「住む場所」から国際的に見せる商業都市へ機能を広げた過程を体感できます。

実際に訪れるなら|半日・1日モデルコース

半日なら、Beverly Gardens Park周辺からGolden Triangle、Rodeo Drive、Two Rodeo Driveへ歩く構成がまとまりやすいです。中心部を2~4時間ほど使い、ウェルカムサイン、商業地の街並み、北側へ続く住宅街の入口を見ます。Greystoneは丘陵部にあり移動が増えるため、半日に無理に詰め込まない方が落ち着いて歩けます。

1日なら、午前にGreystone Mansion & Gardensを訪れ、昼前後にBeverly Gardens Parkへ移動します。ウェルカムサインと公園を歩きながら北側住宅地の入口を見て昼食。午後はRodeo Drive、Two Rodeo Drive、Golden Triangleを歩きます。歴史建築に関心があればBeverly Hills HotelやCity Hallを、邸宅と庭園をさらに深く見たい場合は事前予約したVirginia Robinson Gardensを別枠で組み込みます。

住宅街は公道から街路景観を見る範囲で十分です。私道やゲート内へ入る必要はありません。Greystoneと中心部の間は距離と高低差があるため、徒歩だけに固定せず、バスやrideshareを組み合わせると時間を使いやすくなります。

ロサンゼルス旅行への組み込み方|アクセス・宿泊・費用・実用情報

D Line開業で中心部へのアクセスは改善

LA Metro D Line Subway ExtensionのSection 1は2026年5月8日に開通し、Wilshire/La Brea、Wilshire/Fairfax、Wilshire/La Cienegaの3駅が新設されました。MetroはWilshire/La CienegaをBeverly Hillsへの入口と案内しており、Union Stationからは乗換なしで約20~21分です。Section 2はBeverly HillsとCentury Cityで建設中なので、Beverly Dr駅などを利用できる段階ではありません。

2026年8月26日確認のMetro通常運賃は1回1.75ドル、1日上限5ドル、7日上限18ドル。タップ後2時間以内の乗換は条件に沿って無料です。TAPカードのほか、クレジット/デビットカードやデジタルウォレットのタッチ決済にも対応しています。GreystoneはWilshire Boulevardから離れた丘陵部にあるため、最後の区間だけrideshareを使う方法が現実的です。

宿泊はBeverly Hillsだけに固定しない

Beverly Hills中心部には超高級ホテルが多く、5泊すべてをここにすると予算が大きく上がります。標準旅行なら、West Hollywoodは飲食や夜の移動、Beverly GroveはBeverly HillsとMuseum Row方面の中間、Beverly Hills周辺は観光当日の移動時間を短くできる点が強みです。ロサンゼルス全体で何を見るかに合わせ、3~4つ星程度を比較すると費用と移動効率を両立しやすくなります。

東京発5泊7日の標準予算

航空券・ホテルは2026年8月25日の検索相場を基準にし、MetroとESTAなど公式料金は8月26日に再確認しています。換算の参考は1米ドル約159.26円です。2名1室の1名分、国際線エコノミー、ショッピング代を含めない標準モデルです。

費目1名あたりの目安
国際線往復エコノミー200,000~350,000円
宿泊5泊(2名1室の1名分)120,000~180,000円
LAX往復・LA市内・Beverly Hills現地交通20,000~40,000円
Greystone等の入場・有料プログラム0~5,000円
食費45,000~70,000円
海外旅行保険5,000~8,000円
eSIM等の通信2,000~5,000円
ESTA約6,400円(40.27米ドル)
チップ・雑費15,000~30,000円
合計約420,000~700,000円

費目の単純合計は約41.3万~69.4万円なので、旅行中の小さな変動を含めて42万~70万円を標準レンジとしています。一人旅はホテル代を折半できないため、約54万~88万円が目安です。ロサンゼルス滞在中にビバリーヒルズだけを1日観光する場合は、航空券・宿泊・ショッピングを除き、交通・食事・Greystone等で約8,000~25,000円を見ておくと組み立てやすいです。

季節・治安・支払い・渡航条件

街歩きは春と秋が組みやすく、夏は日差しと暑さへの対策が必要です。ロサンゼルスは年間を通じて乾燥しやすく、冬は夏より降雨が増えます。日中は日差しが強くても朝夕に気温差が出るため、歩きやすい靴、帽子やサングラス、薄手の上着を用意すると便利です。

治安面では、Beverly Hillsだから無条件に安全と考えず、ロサンゼルス旅行の基本として車内に荷物を見える状態で残さないこと、夜間は移動手段を先に決めること、スマートフォンや財布の管理に注意することが実用的です。支払いはクレジットカードやタッチ決済が広く使われ、飲食店ではチップを加える場面があります。通信はeSIMや海外ローミングを使えば地図とrideshareを利用しやすくなります。

日本国籍の一般的な短期観光旅行者は、要件を満たせばVisa Waiver Programを利用して90日以下の観光・商用滞在が可能で、渡航前に有効なESTAが必要です。2026年8月26日確認時点の公式ESTA申請料金は40.27米ドルです。ESTA承認は米国への入国そのものを保証するものではなく、渡航歴や二重国籍などによってVWPを利用できない場合があります。

食事は高級ダイニングだけに寄せず、ブランチやカリフォルニア料理、多文化的なロサンゼルスの料理を組み合わせると予算を調整できます。Rodeo Drive周辺で毎食高級店を選ぶ前提にはせず、昼食を中心部、夕食を宿泊エリアへ戻って取る方法も現実的です。

よくある質問

ビバリーヒルズ観光は半日で足りますか?
中心部のBeverly Gardens Park、Golden Triangle、Rodeo Driveが中心なら半日でも回れます。Greystoneまで見るなら1日が標準です。

豪邸の中に入れますか?
現役の私邸は外から見る住宅街です。歴史的邸宅のGreystoneは庭園を一般公開し、指定日には1階と劇場を見られる「Inside the Mansion」があります。

Greystone Mansionは無料ですか?
庭園の入場と駐車は2026年8月26日確認時点で無料です。邸宅内部の特別公開やイベントは有料の場合があります。

車なしでも行けますか?
中心部はD LineのWilshire/La Cienega駅とバス、徒歩を組み合わせられます。Greystoneは丘陵部なので、必要区間だけrideshareを使うと効率的です。

Street Viewだけでも豪邸街を楽しめますか?
道路幅、街路樹、生垣、門、セットバック、坂道を比較すると住宅街の空間構成をかなり読み取れます。衛星表示を併用すると敷地規模と地形も分かります。

有名人の家は見られますか?
観光ツアーで著名人との関連が語られることはありますが、現在の私邸住所を追うより、PickfairやGreystoneのように歴史資料で確認できる場所を見る方が街の形成を理解しやすいです。

Rodeo Driveは買い物をしなくても楽しめますか?
楽しめます。Two Rodeo Driveを含む街路景観、Golden Triangleの歩行空間、Beverly Gardens Parkとの距離感を見るだけでも高級商業地としての都市構造を体験できます。

主要参考資料