和楽器コンサート「和のいろは」鑑賞ガイド|6人の作曲家でたどる近現代邦楽

1932年に《春の海》を合奏する宮城道雄とルネ・シュメー 音楽・芸能・伝統文化
宮城道雄とルネ・シュメーによる《春の海》の合奏、1932年。Public Domain。

開演前のプログラムに並ぶのは、《紺碧くあおく》《こん》《新高砂しんたかさご》《合竹の賦あいたけのふ》《五十鈴川いすずがわ》《夢の輪ゆめのわ》という六つの曲名です。こと三絃さんげん尺八しゃくはち琵琶びわと聞くと、すべてが遠い昔から伝わる「古典」に見えるかもしれません。

しかし作曲家の生きた時代をたどると、景色が変わります。明治に新しい箏曲を生み出した初世寺島花野しょせい てらしま はなの、箏の楽器と作曲法を近代へ押し出した宮城道雄みやぎ みちお、その門下で学び、米国の現代音楽にも触れた唯是震一ゆいぜ しんいち。さらに、戦後の箏曲を更新した沢井箏曲院さわいそうきょくいんの環境から活動を広げた沢井比河流さわい ひかる、そして現在の演奏現場につながる栗林秀明くりばやし ひであきと石田さえ。

洗足学園音楽大学・現代邦楽コースの和楽器コンサート「和のいろは」は、六人を単純な師弟系譜として並べる公演ではありません。むしろ、明治から現代まで、和楽器の作曲家たちが「古い音を守る」だけではなく、「この楽器で次に何ができるか」を問い続けてきた約150年を、一晩で聴き比べるプログラムです。

30秒で分かる結論

この公演の聴きどころは、曲の知名度ではなく、作曲家ごとに異なる「和楽器の更新方法」です。古典的な詞章ししょうを新しい箏合奏へ組み替える、低音楽器を加える、尺八二本の呼吸を作品にする、三絃と琵琶を向き合わせる。六曲を順に聴くと、現代邦楽が一つの様式ではなく、異なる時代の試行錯誤の積み重ねだと分かります。

公演情報とプログラム早見表

以下は、公式公演ページを2026年7月17日に確認した内容です。公開時点で変更・中止の告知は表示されていませんでした。最新情報は来場前に公式ページで再確認してください。

項目 内容
公演名 洗足学園音楽大学 現代邦楽コース 和楽器コンサート「和のいろは」
日時 2026年7月19日(日)14:30開場、15:00開演、16:30終演予定
会場 洗足学園音楽大学 シルバーマウンテン1階
料金 無料(電子チケットの申込みには会員登録・ログインが必要)
出演 現代邦楽コースの学生・卒業生・教員、現代邦楽研究所研究生
司会 森重行敏
曲名 作曲家 時代・確認できた編成 鑑賞の入口
紺碧くあおく 栗林秀明くりばやし ひであき 現代。今回の実演編成は公演ページに未掲載 複数のこと・和楽器が作る音色の層
こん 石田さえ 三絃さんげん琵琶びわ二重奏としての演奏記録あり 同じ撥弦楽器はつげんがっきでも異なる発音と余韻
新高砂しんたかさご 初世寺島花野しょせい てらしま はなの 明治新曲。歌と箏、高低二部合奏 古い謡曲ようきょくの言葉と明治の新しい箏語法
合竹の賦あいたけのふ 唯是震一ゆいぜ しんいち 尺八しゃくはち二重奏 二本の息が溶ける瞬間と離れる瞬間
五十鈴川いすずがわ 宮城道雄みやぎ みちお 1948年、箏独奏 音の粒、間、流れで描く神域の気配
夢の輪ゆめのわ 沢井比河流さわい ひかる 箏2・十七絃じゅうしちげん1 高音の箏を支える十七絃の低音

表の編成は、公式公演ページ、作曲家・団体の公式資料、楽譜情報、演奏記録で確認できた範囲に限りました。《紺碧く》は作曲者公式ページに別版の編成情報がありますが、今回の公演でどの版・編成を用いるかは掲載されていないため、人数を断定していません。

そもそも「現代邦楽」とは何か

現代邦楽は、「昔の邦楽の反対」ではありません。こと三絃さんげん尺八しゃくはち琵琶びわなど、長い歴史を持つ楽器と奏法を受け継ぎながら、新しい合奏、記譜法きふほう、音域、響き、他ジャンルとの関係を探ってきた音楽です。

洗足学園音楽大学の現代邦楽コースも、流派を超えて古典から現代作品まで学び、和楽器同士だけでなく西洋楽器などとも協演することを特色に掲げています。つまり「伝統か現代か」の二者択一ではなく、伝統を材料に、現在の演奏家が何を作り直すかという領域です。

開演前に知っておきたい楽器の違い

  • 箏(こと):一般に「お琴」と呼ばれる十三絃の楽器は、厳密には箏です。胴の上の柱(じ)を動かして各弦の音高を整え、爪で弦を弾きます。詳しくは国立国会図書館の「ことのこと―箏と箏曲」も参考になります。
  • 十七絃じゅうしちげん:宮城道雄が低音域を担うために考案した大型の箏です。十三絃より低く太い響きで、合奏の土台を作ります。
  • 三絃/三味線:三本の弦を棹に張り、撥などで弾く楽器です。箏より音の立ち上がりが鋭く、棹を押さえる指使いで音程や音色を大きく変えられます。箏曲の文脈では「三絃」と呼ばれることがあります。
  • 尺八:竹製の縦笛で、息を吹き込む角度や指孔の開け方によって、音高だけでなく、かすれ、揺れ、息の成分まで表現にできます。
  • 琵琶:撥で弦を弾く楽器ですが、雅楽琵琶、平家琵琶、薩摩琵琶、筑前琵琶など複数の系統があります。今回の《紺》で用いる種類は、公演ページからは特定できません。

日本音楽全体の大きな流れは、サイト内の「日本音楽史まるわかりガイド」でも紹介しています。明治以降に西洋音楽の制度と向き合い、「邦楽」「伝統音楽」という枠組み自体が再編された背景を先に読むと、本公演の位置づけがさらに見えやすくなります。

明治の「新しい古典」から箏の近代化へ

初世寺島花野――《新高砂》は明治の新曲だった

1878年に長谷川雪堤が描いた箏を演奏する日本女性
箏を演奏する女性、1878年。長谷川雪堤/Library of Congress/Public Domain。出典:Wikimedia Commons。※現代の演奏姿勢や舞台配置を示す資料ではありません。

新高砂しんたかさご》は、一見すると古典曲そのものに見えます。詞章ししょうは能の謡曲ようきょく高砂たかさご》から採られ、松の長寿や夫婦和合を象徴する古い題材につながるからです。

しかし、作品は「明治新曲」に分類されます。明治新曲とは、江戸時代までの地歌・箏曲を受け継ぎつつ、明治の社会や聴衆に応じて新しい調弦ちょうげん、音階、合奏法を試した作品群です。日本伝統音楽研究センターの曲目情報では、《新高砂》を初世寺島花野作曲、歌と箏による高低二部合奏、謡曲《高砂》から歌詞を採った明治新曲としています。

初世寺島花野(1855~1920)は尾張おわりの箏曲家・胡弓こきゅう奏者として活動しました。人物資料は宮城道雄ほど豊富ではありませんが、《新高砂》からは、古い言葉を保存するだけでなく、複数の箏パートと新しい音感覚を組み合わせ、「当時の新作」として届けようとした姿勢が見えます。

聴くときは、題材の古さと、音楽の作られ方の新しさを分けてみてください。「古典的な歌詞だから古典曲」とは限りません。現在から見ると伝統に聞こえる響きも、明治の聴衆には新しい試みでした。

宮城道雄――箏で「新しい時代の音」を作る

1953年に撮影された箏曲家・作曲家の宮城道雄
宮城道雄、1953年。撮影:田村茂/Public Domain。出典:文藝春秋新社『現代日本の百人』(1953年)、Wikimedia Commons

宮城道雄(1894~1956)は、箏曲を近代へ押し出した中心人物です。8歳で視力を失い、生田流箏曲を学び、14歳で《水の変態》を作曲しました。宮城道雄オフィシャルサイトによると、400曲以上を残し、低音用の十七絃、八十絃、短琴、大胡弓なども考案しています。

重要なのは、宮城が「西洋化」を目指して伝統を捨てたのではないことです。古典の演奏を深く愛しながら、五線譜、合奏、ラジオ、学校教育、新楽器、ヴァイオリンとの共演など、箏曲を新しい社会へ運ぶ手段を増やしました。

1929年作曲の《春の海》は、その象徴です。1932年、フランスのヴァイオリニスト、ルネ・シュメーとの共演と録音を通して国外にも広がりました。本記事のアイキャッチ写真はこの共演を写したもので、《五十鈴川》の演奏場面ではありません。

《五十鈴川》――箏一面で空間を描く

今回演奏される《五十鈴川》は1948年の作品です。宮城会の公式作品年表が作曲年を1948年とし、公式楽譜販売ページでは編成を「箏」としています。したがって、基本形は箏独奏曲です。

曲は伊勢神宮の神楽殿の求めを受け、《祭の太鼓》とともに作曲・奉納初演されたと伝えられます。ここで聴きたいのは、派手な音量ではなく、一音が消えるまでの時間です。箏の粒立った発音、押し手による微妙な音程変化、音と音の間に残る静けさが、川の流れや神域の空気を連想させます。

《春の海》が箏とヴァイオリンの対話を世界へ開いた作品だとすれば、《五十鈴川》は箏一面の内部にどれほど広い空間を作れるかを示す作品です。宮城の近代化は、楽器を増やす方向だけではありません。独奏の一音を精密に聴かせる方向にも向かっていました。

現地で宮城道雄を知るには

東京・新宿の宮城道雄記念館は建て替えのため閉館中で、公式サイトは2027年春のリニューアルオープン予定と案内しています。訪問前に最新情報を確認してください。

唯是震一――宮城道雄の教えから国際的な現代作曲へ

唯是震一ゆいぜ しんいち(1923~2015)は、今回の六人の中で、宮城道雄みやぎ みちおとの直接の師弟関係していかんけいが資料で確認できる作曲家です。

日本伝統文化振興財団の公式プロフィールによると、唯是は中学時代に早坂文雄はやさか ふみおから楽理がくりを学び、東京音楽学校邦楽科から東京藝術大学楽理科へ進み、宮城道雄に師事しじしました。1953年から米国へ留学し、コロンビア大学でヘンリー・カウエルに学んでいます。

この経歴は、「伝統を西洋音楽に置き換えた」という単純な話ではありません。箏と三絃の演奏家として育った身体感覚に、作曲理論、オーケストレーション、現代音楽の構造を重ね、作品ごとに最適な方法を探しました。宮城道雄が開いた扉を通り、邦楽器を国際的な作曲と演奏の場へ持ち込んだ世代と見ることができます。

《合竹の賦》――尺八二本を「同じ音色」と決めつけない

尺八の前面4孔と背面1孔を示した写真
尺八の前面(左)と背面(右)。撮影:Lombroso/Public Domain。出典:Wikimedia Commons

《合竹の賦》は、楽譜情報と邦楽曲データベースで尺八二重奏と確認できます。一方、公開資料から作曲年や題名の詳しい由来を確実に確認できなかったため、ここでは断定しません。

尺八は同じ寸法の楽器でも、奏者の息の速度、吹き口への角度、指孔の開閉によって音色が大きく変わります。二本が同じ旋律を奏でても完全には同じ音にならず、そのわずかな差が厚みになります。逆に別々の音型を吹けば、竹の響きが交差し、離れ、また重なります。

聴きどころは三つです。第一に、二人の息が一つの長い線のように聞こえる瞬間。第二に、一方が前へ出て、もう一方が影のように支える瞬間。第三に、音が切れた後にも残る呼吸と「間」です。旋律を追うだけでなく、二人の呼吸が作る距離を聴いてみてください。

沢井箏曲院以後――低音、ロック、現在の多様な編成

沢井比河流――《夢の輪》で十七絃の土台を聴く

戦後の箏曲そうきょくを語るとき、沢井忠夫さわい ただお沢井一恵さわい かずえ、そして1979年に始まった沢井箏曲院さわいそうきょくいんの活動は大きな存在です。演奏会、作品、教育を通して、箏を現代の舞台芸術として提示し続けました。

その環境で育った沢井比河流は、親の名だけで説明できる作曲家ではありません。公式プロフィールによると、尺八を横山勝也、フルートを吉田雅夫に学び、独学で箏曲の作曲と演奏を始めました。ロックバンドでギターと作曲を担当しながら、箏の自作自演、海外公演、協奏曲、録音を重ねています。

《夢の輪》は箏2・十七絃1の三重奏です。作曲年は公開資料で確証を得られなかったため記しませんが、沢井箏曲院はこの曲を比河流にとって最初の「縦譜」の作品と紹介しています。縦譜は、箏の弦名や奏法を縦方向に記す譜面形式です。

聴くときは、二面の箏だけを追わず、十七絃がどこで合奏の重心を変えるかに注目してください。低音が鳴ると、同じ旋律でも床や地面が現れたように感じられます。十三絃の明るく粒立つ音と、十七絃の太く長い余韻がどう組み合わさるかが、この編成の立体感です。

栗林秀明《紺碧く》――編成を決めつけず、音の層を聴く

栗林秀明は、公開されている作曲者ページと邦楽曲データベースで、箏演奏家・邦楽作曲家として多数の作品を発表していることが確認できます。

《紺碧く》については注意が必要です。作曲者公式ページには「ver.2」の編成として複数の箏、十七絃、尺八を示す資料がありますが、今回の公式公演ページには演奏人数・使用版が掲載されていません。別版や演奏上の再構成の可能性を排除できないため、本公演の編成を「箏4」などと断定しません。

鑑賞の入口は、人数を当てることではなく、同系統の楽器が複数集まったときの音色の層です。箏は一音ごとの輪郭が明瞭ですが、複数面になると、粒が揃う場面、わずかにずれる場面、音域が上下に分かれる場面が生まれます。タイトルの色から曲想を決めつけず、音が面として広がるのか、線として受け渡されるのかを聴いてください。

石田さえ《紺》――三絃と琵琶が向き合う

雅楽琵琶・筑前琵琶・平家琵琶・盲僧琵琶・薩摩琵琶の比較
左から雅楽琵琶、筑前琵琶、平家琵琶、盲僧琵琶、薩摩琵琶。Gleolite/CC BY-SA 4.0。出典:Wikimedia Commons。※今回の《紺》で用いられる琵琶の種類を示すものではありません。

石田さえについては、信頼できる公開略歴が限られています。所属、受賞歴、師弟関係、作曲意図を推測で補うことはできません。

確認できる重要な手掛かりは、邦楽合奏団まどかの2007年の演奏記録に、《紺》が「三絃・琵琶二重奏曲」として掲載されていることです。今回も公式公演ページは曲名と作曲者のみで、琵琶の種類までは記載していません。

三絃と琵琶は、どちらも弦を弾く撥弦楽器ですが、音の立ち上がりと余韻の質が違います。三絃は棹上の指使いで音を連続的に変化させやすく、鋭い発音から粘りのある音まで作れます。琵琶は大きな撥による打撃性と、楽器の系統ごとに異なる余韻や語りとの結びつきが特徴です。

二つが向き合うとき、同じ旋律を同じ音色で重ねるのではなく、発音の硬さ、弦が震え終わるまでの長さ、撥が弦に触れる気配そのものが対話になります。曲名の「紺」から感情や情景を断定せず、二つの音の輪郭がどう違うかに耳を向けてください。

6人を並べると見える、近現代邦楽の流れ

六人を一本の師弟系譜していけいふとして描くのは正確ではありません。確認できる直接関係と、歴史上の連続性を分ける必要があります。

関係 確認できる内容
宮城道雄 → 唯是震一 唯是が東京音楽学校・東京藝術大学時代に宮城へ師事した直接の師弟関係
沢井忠夫・沢井一恵 → 沢井比河流 両親と沢井箏曲院の活動環境の中で育ち、本人は尺八・フルート・ロックも学んで独自の作曲活動を展開
寺島花野、宮城道雄、栗林秀明、石田さえ 今回の資料から互いの直接的な師弟・影響関係は確認できない。公演上は時代と創作課題を比較できる
  1. 明治:《新高砂》のような明治新曲が、古い題材と新しい調弦・合奏を結びます。
  2. 大正~昭和前期:宮城道雄が新楽器、教育、放送、西洋楽器との共演を通して箏曲の場を広げます。
  3. 戦後:唯是震一が宮城の教えに、作曲理論と米国現代音楽の経験を重ね、邦楽器を国際的な作品へ開きます。
  4. 戦後後半~現代:沢井箏曲院を含む演奏・教育組織が新作を継続的に生み、十七絃や多面の箏が一般的な創作資源になります。
  5. 現在:栗林秀明や石田さえの作品に見られるように、箏群、尺八、三絃、琵琶などの組合せはさらに多様になります。

よくある誤解

「現代邦楽は西洋音楽を和楽器で演奏すること」ではありません。西洋の作曲法を取り入れる作品もありますが、古典の調弦、語り、間、楽器固有の奏法を掘り下げる作品もあります。

「宮城道雄以後の作曲家は全員その門下」でもありません。宮城と唯是の師弟関係は確認できますが、六人全員を一本の家系図にする根拠はありません。

「古い題材の曲は、昔から同じ形で演奏されてきた古典」とも限りません。《新高砂》は古い謡曲の詞章を使いながら、明治に作られた新曲です。

日本の近代音楽が、西洋音楽の受容、学校、メディア、産業の中でどう変わったかは、関連記事「日本近代音楽の歴史」でも扱っています。邦楽の側から同じ時代を見ると、近代化が「洋楽へ置き換わること」ではなく、伝統楽器の制度・作品・演奏の場を作り直す過程だったと分かります。

開演前に覚えておきたい5つの聴くポイント

  1. 箏・三絃・琵琶の音の立ち上がり
    同じ撥弦楽器でも、音が出る瞬間の硬さ、弦が震える長さ、撥や爪の気配が違います。
  2. 尺八二本が一つになる瞬間、別々になる瞬間
    音程だけでなく、息の成分、かすれ、音の切れ際を聴いてください。
  3. 十三絃と十七絃の高低差
    低音が加わる前後で、合奏の重さや奥行きがどう変わるかを比べます。
  4. 古典的な題材と新しい響きの同居
    《新高砂》のように、言葉の古さと、作品が作られた時代の新しさを別々に感じてみます。
  5. 旋律だけでなく、沈黙と残響
    和楽器の音は、鳴っている時間だけで完結しません。音が消えた後の空間も作品の一部です。

世界の音楽が、和声だけでなく、音色、間、身体、共同体、儀礼など異なる軸で発展してきたことは、「西洋だけじゃない音楽史」でも紹介しています。今回の公演でも、西洋クラシックの「主旋律と伴奏」だけを基準にせず、音色の変化や呼吸の関係を聴くと、作品が立体的になります。

FAQ

現代邦楽とは何ですか

伝統的な日本の楽器と奏法を基盤に、新しい作曲法、編成、記譜、他ジャンルとの協演を探る音楽です。古典を否定する言葉ではなく、古典の継承と新作の創造が並行しています。

箏と琴は違いますか

本来は異なる楽器です。現在「おこと」と呼ばれる十三絃の楽器は、通常は柱を立てる「箏」を指します。ただし一般表記では「琴」も広く使われています。

十七絃とはどんな楽器ですか

宮城道雄が考案した低音用の大型箏です。十三絃より太く低い音で、合奏の土台や奥行きを担います。

《新高砂》は古典曲ですか

古い謡曲《高砂》の詞章を使いますが、作品としては明治に作られた「明治新曲」です。古い題材を新しい箏曲へ作り直した作品と考えると理解しやすいでしょう。

宮城道雄の代表作は《春の海》だけですか

いいえ。公式資料では400曲以上が確認され、《水の変態》《瀬音》《さくら変奏曲》《五十鈴川》《壱越調箏協奏曲》など幅広い作品を残しています。新楽器の考案、教育、放送での普及も重要な業績です。

まとめ――「何を変えようとしたか」を聴く

「和のいろは」を楽しむために、六曲すべてを予習して暗記する必要はありません。

初世寺島花野は、古い《高砂》の言葉を明治の新しい箏曲へ移しました。宮城道雄は、新楽器、教育、放送、西洋楽器との交流を通して箏の可能性を広げました。唯是震一は、宮城の教えを作曲理論と国際交流へつなぎました。沢井比河流は、十七絃を含む箏の合奏に自らのロックや管楽器の経験も重ね、現在の舞台へ更新しました。栗林秀明と石田さえの作品は、今日の作曲家が編成と音色の組合せをさらに多様化させていることを示します。

有名曲を知っているかどうかより、「この作曲家は、和楽器の何を変えようとしたのか」を一曲ずつ考えてみてください。すると六つの曲名は、ばらばらな演目一覧ではなく、明治から現代へ続く一つの時間旅行として聞こえてきます。

参考文献・参考サイト

  1. teket「洗足学園音楽大学 現代邦楽コース 和楽器コンサート 和のいろは」
  2. 洗足学園音楽大学「現代邦楽コース コース紹介」
  3. 国立国会図書館「ことのこと―箏と箏曲」
  4. 宮城道雄オフィシャルサイト「宮城道雄について」
  5. 宮城道雄オフィシャルサイト「オンラインショップ 楽譜」
  6. 日本伝統文化振興財団「唯是震一 協奏曲を弾く」作品・人物紹介
  7. 沢井箏曲院「沢井比河流 プロフィール」
  8. 沢井箏曲院「夢の輪完全リニューアル」
  9. 邦楽wiki「合竹の賦」
  10. 邦楽wiki「夢の輪」
  11. 日本伝統音楽研究センター「新高砂」
  12. 栗林秀明公式サイト「作品・解説」
  13. 邦楽合奏団まどか「まどかの歴史」