キリスト教の教派・教団・教区とは?東京の教会を系統図でわかりやすく解説

初代教会から東方正教会、ローマ・カトリック、プロテスタントへの大きな流れを示すキリスト教系統図

東京を歩いていると、「カトリック神田教会」「東京復活大聖堂(ニコライ堂)」「日本聖公会聖アンデレ教会」「日本基督教団銀座教会」「日本福音ルーテル東京教会」など、同じキリスト教でも異なる名前の教会に出会います。バプテスト、救世軍、キリスト友会といった名称まで加わると、何が教派で、何が教団で、何が地域組織なのかは一見して分かりにくいものです。

東京の教会は、名前を見ても違いが分かりにくい

教会名には、歴史的な系統、現在所属する組織、地域区分、固有の教会名が重なっています。たとえば「カトリック」は世界的な教会の伝統を示し、「東京大司教区」は地域組織、「神田教会」は個別の教会です。「日本基督教団銀座教会」では、日本基督教団が組織名、銀座教会が個別教会名です。

街歩きで教会を見分けるには、世界史上の大きな流れと、日本で使われる組織名を分けて考えると整理しやすくなります。

まず「教派・教団・教区・教会」の違いを知る

言葉意味東京での例
教派歴史・教理・礼拝・教会制度などを共有する大きな系統ルター派、バプテスト、改革派など
教団複数の教会を束ねる具体的な組織日本基督教団、日本福音ルーテル教会、日本ナザレン教団
教区教会運営のために設けられた地域単位カトリック東京大司教区、日本聖公会東京教区、日本福音ルーテル教会東教区
教会個別の礼拝共同体や礼拝堂神田教会、銀座教会、東京教会など
小教区カトリックで用いられる地域の基礎的な共同体東京大司教区内の各小教区
大聖堂/司教座聖堂/主教座聖堂司教・主教しゅきょうの座が置かれる教区の中心聖堂東京カテドラル聖マリア大聖堂、聖アンデレ主教座聖堂

カトリックでは「カトリック教会→カトリック東京大司教区→各小教区・教会」、日本聖公会では「日本聖公会→東京教区→各教会」、日本福音ルーテル教会では「日本福音ルーテル教会→東教区→各教会」という形になります。日本基督教団も「日本基督教団→東京教区・西東京教区→各教会」と地域組織を持ちます。教区は宗派名ではなく、教会や教団の内部に置かれる地域単位です。

キリスト教は大きくどう分かれたのか

初代教会から東方正教会、ローマ・カトリック、プロテスタントへの大きな流れを示すキリスト教系統図
キリスト教の大きな流れを示した初心者向けの簡略図。1054年は東西教会分裂の象徴的な節目として示しています。

キリスト教は古代の教会から長い歴史を経て、複数の大きな伝統へ分かれていきました。東方と西方の教会は言語、政治環境、典礼、教会制度などの違いを深め、1054年は東西教会の分裂を象徴する節目として語られます。その後、東方では正教会、西方ではローマ・カトリック教会が大きな伝統を形成しました。

16世紀の西ヨーロッパでは宗教改革が起こり、ルター派や改革派などが成立します。そこから多様なプロテスタント諸教派が発展しました。世界には東方諸教会など別の大きな伝統もありますが、ここでは東京の街歩きで出会いやすい系統に絞っています。

カトリック・正教会・聖公会を東京の教会で見る

カトリック

カトリック教会はローマ教皇を中心とし、各地域に司教が置かれます。カトリック東京大司教区は東京都と千葉県を管轄し、東京カテドラル聖マリア大聖堂が司教座聖堂です。東京都内には聖イグナチオ教会、神田教会、築地教会などがあります。

千代田区西神田に建つカトリック神田教会の外観
カトリック神田教会、2019年。撮影:江戸村のとくぞう/Wikimedia Commons/CC BY-SA 4.0。

カトリックの「教区」は司教が司牧する地域です。小教区はその中の基礎的な共同体で、教区司祭が担当する場合も、修道会の司祭が司牧に関わる場合もあります。修道会そのものと教区は別の組織です。

正教会

正教会は東方キリスト教の大きな伝統の一つです。日本では日本ハリストス正教会が活動し、「ハリストス」はキリストを意味します。東京は東京大主教々区に属し、東京復活大聖堂、通称ニコライ堂が代表的な聖堂です。山手ハリストス正教会なども東京都内にあります。

1891年完成時の東京復活大聖堂ニコライ堂
完成時の東京復活大聖堂(ニコライ堂)、1891年。Wikimedia Commons/Public Domain。

正教会の聖堂では聖像であるイコンが重視され、聖所と会衆側を区切るイコノスタシスも特徴の一つです。日本正教会の成立とニコライ堂の歴史は、ニコライと日本正教会の歴史で詳しくたどれます。

聖公会

聖公会は英国宗教改革の歴史を持つ西方キリスト教の伝統で、日本では日本聖公会が組織されています。東京教区の主教座聖堂は聖アンデレ主教座聖堂です。聖アンデレ教会、聖オルバン教会、神田キリスト教会、立教学院諸聖徒礼拝堂などが東京にあります。

日本聖公会聖オルバン教会の木造礼拝堂外観
日本聖公会聖オルバン教会、2014年。撮影:Aw1805/Wikimedia Commons/CC BY-SA 3.0。

聖公会は主教制度を持ち、聖餐せいさんを中心とする典礼を重んじるため、外見上はカトリックと共通点が多く見えます。一方、歴史的には宗教改革を経て成立した独自の伝統です。

プロテスタントは一つの教派ではない

聖公会、ルター派、改革派・長老派、バプテスト、メソジストなど東京で見かけるプロテスタント主要教派の系統図
東京で見かける主なプロテスタント系統を整理した初心者向けの簡略図。

プロテスタントは一つの教派の名称ではなく、16世紀の宗教改革以後に発展した多数の教派・教団をまとめた呼称です。東京では同じ「プロテスタント」でも、教会名にルーテル、バプテスト、改革派、ナザレンなどの歴史的系統が表れます。

ルター派

ルター派はマルティン・ルターの宗教改革に始まる伝統です。日本福音ルーテル教会は全国に教会を持ち、東京を含む地域には東教区があります。東京教会、市ヶ谷教会、本郷教会などが代表例です。

改革派・長老派・会衆派

改革派はジャン・カルヴァンらの宗教改革から発展した流れです。長老派は牧師と長老による教会統治を特徴とし、会衆派は個々の教会の自治を強く重視します。日本では日本キリスト改革派教会、日本長老教会、日本キリスト教会など別個の組織があり、名称が似ていても同一教団ではありません。明治期の日本プロテスタント史では、横浜・熊本・札幌の三大バンドも各系統の形成を理解する手がかりになります。宣教師と学校教育の関係は、日本のミッションスクールの歴史で詳しくたどれます。

バプテスト

バプテストは、自ら信仰を告白した人への洗礼を重視する諸教会の流れです。日本には複数のバプテスト系教団・連盟があり、一つの中央組織に統一されていません。東京では目白ヶ丘教会などが知られます。

遠藤新が設計した目白ヶ丘教会の外観
目白ヶ丘教会、2008年。撮影:Wiiii/Wikimedia Commons/CC BY-SA 3.0。

メソジスト・ウェスレー系とホーリネス系

メソジスト運動は18世紀イングランドのジョン・ウェスレーらに始まります。日本では戦前のメソジスト諸教会の多くが1941年に日本基督教団へ合同したため、現在の東京では「メソジスト」という名称だけを追っても、その歴史的系譜の全体は見えません。

ウェスレーの流れから19世紀にホーリネス運動が広がり、日本ホーリネス教団や日本ナザレン教団などにつながりました。日本ナザレン教団は三軒茶屋、中野、国立、小岩など東京都内に教会を持ちます。救世軍はメソジスト牧師だったウィリアム・ブースが1865年にロンドンで始めた運動で、軍隊式の組織名を用いながら伝道と社会福祉活動を行っています。

ペンテコステ系

ペンテコステ運動は20世紀初頭に広がり、聖霊の働きを強く重視します。ホーリネス運動の影響を受けつつ発展しましたが、単純な親子関係で整理できる一系統ではありません。東京では日本アッセンブリーズ・オブ・ゴッド教団の本部が豊島区駒込にあり、同じ敷地内に中央聖書教会があります。「聖霊派」はペンテコステ系を中心に、聖霊の働きを強調するより広い教会・運動を指す表現として使われます。

日本基督教団とは何か

東京では「日本基督教団○○教会」という名称を頻繁に見かけます。日本基督教団は1941年、30余派のプロテスタント諸教派が合同して成立しました。そのため、現在の各教会には合同以前のルター派、改革派、会衆派、メソジスト系など異なる歴史的背景があります。

1940年、日本基督教団合同前の準備委員
日本基督教団合同前の日本基督教会代表準備委員、1940年。Wikimedia Commons/Public Domain。

教団は全国を17教区に分けています。東京都には東京教区と西東京教区があり、東京教区には支区も置かれています。銀座教会、富士見町教会、早稲田教会などは街歩きでも目にしやすい例です。同じ日本基督教団に属していても、個々の教会の成立史や礼拝文化は同一ではありません。

1941年の合同と戦時期の背景は、日本基督教団はなぜ成立したのかで詳しく整理しています。明治以降の各教派の展開は、日本のキリスト教近代史もあわせて読むと流れをつかみやすくなります。

福音派・聖霊派は「教派名」とは少し違う

ルター派、バプテスト、改革派などは歴史的な教派・系統です。日本福音ルーテル教会、日本基督教団、日本バプテスト連盟などは具体的な組織名です。

一方、福音派は複数の教派にまたがる信仰的な立場・運動を表します。聖霊派も、聖霊の働きを強く重視する教会や運動を広く指す語で、ペンテコステ系はその中心的な流れの一つです。同じ教会を「歴史的な教派」「所属教団」「信仰的傾向」という別々の軸から説明することがあります。

東京で見かける、そのほかのキリスト教系の教会・団体

セブンスデー・アドベンチスト教会

セブンスデー・アドベンチスト教会は、自らをプロテスタント教会として位置付けています。東京都は東日本教区に含まれ、東京中央教会、四ッ谷教会、天沼教会など複数の教会があります。礼拝日は土曜日で、安息日学校と安息日礼拝が行われます。

キリスト友会(クエーカー)

キリスト友会は17世紀イングランドに始まったキリスト教運動で、クエーカーとも呼ばれます。東京月会は港区三田のTokyo Friends Centerを拠点とし、沈黙を中心とした礼拝を行っています。建物は街歩きの対象としても知られます。

救世軍

救世軍は1865年にウィリアム・ブースの活動から始まり、1878年に現在の名称となりました。軍隊式の名称と組織を用い、宗教活動と社会福祉活動を展開しています。日本の本営は千代田区神田神保町にあります。

日本ナザレン教団

日本ナザレン教団はウェスレー/ホーリネス伝統に属する教団です。本部は東京都目黒区にあり、三軒茶屋、中野、国立、小岩など都内に教会があります。

街では末日聖徒イエス・キリスト教会の東京神殿や、エホバの証人の王国会館を見かけることもあります。両者はそれぞれ自らをキリスト教として位置付けていますが、カトリック・正教会・多くのプロテスタント諸教会が共有する歴史的なニカイア信条や三位一体理解とは異なる教義体系を持つため、教会史上の三大系統とは別枠で整理されるのが一般的です。

東京の教会名から系統を逆引きする

街で見かける名称大きな系統教派/教団教区・地域組織東京の代表例見分けるキーワード
カトリック○○教会カトリックカトリック教会東京大司教区神田教会、築地教会カトリック、ミサ、大司教区
日本ハリストス正教会正教会日本ハリストス正教会東京大主教々区東京復活大聖堂ハリストス、正教会、イコン
日本聖公会○○教会聖公会日本聖公会東京教区聖アンデレ教会聖公会、主教、聖餐
日本福音ルーテル○○教会プロテスタント日本福音ルーテル教会東教区東京教会、市ヶ谷教会ルーテル、ルター
改革派/長老派プロテスタント日本キリスト改革派教会、日本長老教会など各教団の地域組織都内各教会改革派、長老
バプテストプロテスタント日本バプテスト連盟など複数各連盟・教団の地域組織目白ヶ丘教会バプテスト、浸礼
日本基督教団○○教会プロテスタント日本基督教団東京教区/西東京教区銀座教会、富士見町教会日本基督教団
ホーリネスプロテスタント日本ホーリネス教団など各教団の地域組織都内各教会ホーリネス、聖化
ナザレン○○教会プロテスタント日本ナザレン教団教団内地域組織三軒茶屋教会、中野教会ナザレン
日本アッセンブリーズ・オブ・ゴッドプロテスタント/ペンテコステ系日本アッセンブリーズ・オブ・ゴッド教団全国11教区中央聖書教会アッセンブリー、聖霊
救世軍プロテスタント系救世軍日本本営神保町の救世軍本営軍営、本営、士官
セブンスデー・アドベンチストプロテスタントセブンスデー・アドベンチスト教会東日本教区東京中央教会、天沼教会土曜礼拝、安息日
キリスト友会プロテスタント系キリスト友会東京月会Tokyo Friends Centerクエーカー、沈黙礼拝

実際にミサや礼拝へ参加するなら

教会ごとに礼拝名称、時間、受付方法は異なります。信者でない人が参加するときの流れや服装、東京の教会の探し方は、キリスト教の礼拝は信者でなくても参加できる?で整理しています。

参考にした公式サイト