世界の王室・君主制入門|イギリス・日本・タイ・中東の王は何をしているのか

ニュースを見ていると、「イギリス王室」「日本の皇室」「タイ王室」「サウジアラビア王室」「中東の国王」など、さまざまな君主が登場します。

しかし、同じ「王室」と呼ばれていても、その役割は国によってまったく違います。イギリス国王や日本の天皇のように、政治の実権をほとんど持たない君主もいれば、サウジアラビアのように王族が国家統治の中心にいる国もあります。モロッコの国王のように、政治的な地位と宗教的な権威をあわせ持つ例もあります。

この記事では、世界の王室・君主制を「昔の名残」としてではなく、現代国家の制度として見ていきます。ポイントは、君主の名前を覚えることではありません。誰が政治を動かしているのか、君主は何を象徴しているのか、宗教・民族・外交・観光・近代化とどう結びついているのかを見ることです。

30秒で分かる結論

  • 君主制とは、国王・天皇・スルタン・首長・大公・教皇など、君主を国家の頂点または象徴に置く制度です。
  • ただし、君主がいるからといって、君主が日常政治を直接動かしているとは限りません。
  • イギリスや日本では、君主は国家の象徴・儀礼・外交上の役割を担います。政治の実権は議会、内閣、首相などにあります。
  • タイ、ヨルダン、モロッコでは、立憲君主制でありながら、君主が国家統合、軍、宗教、外交、政治文化の中で大きな存在感を持ちます。
  • サウジアラビアや一部の湾岸諸国では、王族と統治権力が強く結びついています。イギリスや日本の象徴的な君主制とは性格が大きく違います。
  • ブータンは、国王主導で近代化と民主化が進んだ例です。王室が民主化の障害ではなく、制度転換の推進役になりました。
  • 王室が残る理由には、歴史的連続性、政治対立の外側にある象徴、宗教的権威、国家統合、外交儀礼、観光・文化ブランドなどがあります。
  • 一方で、税金、特権、政治的中立、表現の自由、継承問題、ジェンダー、権力集中などの論点もあります。

まず全体像|同じ「王室」でも、役割はこれだけ違う

世界の君主制を理解するうえで大切なのは、「王室がある国」とひとくくりにしないことです。次の表では、この記事で中心的に扱う国を、かなり大まかに整理します。

君主の呼び方 制度の大まかな性格 現代での主な役割
イギリス 国王 象徴性の強い立憲君主制 国家元首、儀礼、外交、コモンウェルスとの結びつき
日本 天皇 象徴天皇制 国事行為、儀礼、日本国と日本国民統合の象徴
タイ 国王 立憲君主制 国家統合、仏教・軍・政治文化との深い関係
ブータン 国王 民主的立憲君主制 近代化、民主化、国民総幸福の理念との結びつき
サウジアラビア 国王 王権の強い君主制 国家統治、イスラム、石油、近代国家形成の中心
ヨルダン 国王 中東の立憲王制 外交、安全保障、国家統合、地域安定
モロッコ 国王 政治的・宗教的権威を持つ立憲王制 国家元首、信徒の長、制度間の調停者
トンガ 国王 太平洋の立憲君主制 伝統的権威、国家の連続性、議会政治との共存

この表だけでも、「王室=昔の王様がそのまま残っている」という見方では足りないことが分かります。君主制は、国ごとの歴史、宗教、植民地支配、独立、近代化、憲法、軍、観光、国際関係の中で違う形になっているのです。

そもそも君主制とは何か

君主制とは、国王、皇帝、天皇、スルタン、首長、大公、教皇などの君主が、国家の元首または象徴として位置づけられる制度です。君主は世襲である場合が多いですが、マレーシアの国王のように複数の州君主の中から輪番的に選ばれる制度や、バチカン市国の教皇のように選挙で選ばれる特殊な主権者もあります。

ここで混同しやすい言葉を整理しておきます。

用語 意味 注意点
君主 国家の頂点または象徴に置かれる人物 国王、天皇、スルタン、首長、大公、教皇などを広く含む
王室 国王や王族を中心とする家・制度 日本の場合は一般に「皇室」と呼ぶ
立憲君主制 憲法や法律に基づいて君主の地位・権限が定められる制度 君主の実権は国によって大きく違う
象徴君主 政治実権ではなく、国家の象徴・儀礼を主に担う君主 イギリスや日本を理解するうえで重要
絶対君主制 君主に統治権力が強く集中する制度 現代では国ごとの差が大きく、単純な分類には注意が必要
貴族制 貴族身分や有力家門が政治・社会で特権を持つ仕組み 君主制とは重なることもあるが、同じ意味ではない

初心者が最初に押さえるべきことは、「君主がいるかどうか」と「君主が政治を動かしているかどうか」は別問題だという点です。

君主制のタイプ|4つに分けると見えやすい

現代の君主制は、厳密に分類しようとすると例外だらけです。それでも、ニュースを理解する入口としては、次の4タイプに分けると見えやすくなります。

1. 象徴的な立憲君主制

イギリス、日本、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、オランダ、ベルギー、スペインなどが代表例です。君主は国家元首や象徴として儀礼を担いますが、日常政治は議会、内閣、首相などが動かします。

ただし、ヨーロッパ王室がすべて同じというわけではありません。制度上の権限、宗教との関係、王室財政、国民感情は国によって違います。

2. 政治的影響力を一定程度持つ立憲君主制

タイ、ヨルダン、モロッコ、トンガ、リヒテンシュタイン、モナコなどは、憲法上は立憲君主制でありながら、君主が政治文化、外交、軍、宗教、制度運用の中で比較的大きな意味を持ちます。

このタイプでは、「立憲君主制だからイギリスと同じ」と考えると誤解します。憲法上の権限だけでなく、慣習、歴史、宗教、軍との関係も見なければなりません。

3. 王族が統治権力を持つ君主制

サウジアラビア、オマーン、カタール、クウェート、バーレーン、アラブ首長国連邦、ブルネイなどでは、王族や首長家が国家統治の中心にいます。議会や諮問機関が存在する国もありますが、象徴的な王室とは異なり、統治権力そのものと王家が深く結びついています。

このタイプを理解するには、イスラム、部族・家門、石油、近代国家形成、安全保障、国際関係をセットで見る必要があります。

4. 特殊な君主制・小国君主制

ルクセンブルク、リヒテンシュタイン、モナコ、アンドラ、バチカン市国、トンガなどは、国土や人口の規模、歴史的経緯、宗教的地位によって独特の制度を持ちます。

バチカン市国の教皇は「王室」というより、ローマ教皇として宗教的権威と主権者の地位をあわせ持つ特殊な存在です。通常の世襲王室とは分けて考える必要があります。

イギリス王室|議会政治と王室が共存する国

イギリスは、立憲君主制を考えるときの代表例です。英国王室公式サイトは、君主が国家元首として憲法上・代表上の職務を担い、さらに国家の一体感、連続性、奉仕の理想を支える存在であると説明しています。英国議会も、国王が議会の開会、解散、法律への裁可などに関わる憲法上の役割を持つと説明しています。

ただし、ここで重要なのは、国王が日々の政策を自分で決めているわけではないことです。英国王室公式サイトは、英国は立憲君主制であり、国王は国家元首である一方、政治的に中立で、法律を作り通す能力は選挙で選ばれた議会にあると説明しています。

イギリス王室の役割を整理すると、次のようになります。

  • 国家元首として首相の任命、議会開会、法律への裁可などの形式的・憲法上の役割を担う
  • 政治的中立を守り、政党政治の外側にいる
  • 国家儀礼、勲章、追悼、祝典などで国の連続性を示す
  • 外国訪問や国賓接遇を通じて外交上の役割を果たす
  • コモンウェルスとの象徴的な結びつきを持つ

また、英国国王はイギリスだけの君主ではありません。英国王室公式サイトは、国王がイギリスに加えて14のコモンウェルス・レルムの君主であり、同時に56の独立国からなるコモンウェルスの長でもあると説明しています。これは、大英帝国の歴史と、その後の独立国家どうしの緩やかなつながりを理解するうえで重要です。

つまり、イギリス王室は「政治を直接動かす王」ではなく、議会政治、国家儀礼、外交、コモンウェルス、観光・文化ブランドが重なる制度として見ると分かりやすくなります。

日本の皇室|政治権力ではなく、象徴としての天皇

日本の場合、憲法上の表現がとても重要です。日本国憲法第1条は、天皇を「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」と定めています。宮内庁も、天皇は憲法の定める国事行為のみを行い、国政に関する権能を有しないと説明しています。

天皇の国事行為には、内閣総理大臣の任命、最高裁判所長官の任命、法律・条約の公布、国会の召集、栄典の授与、外国大使の接受、儀式などがあります。ただし、これらは内閣の助言と承認に基づき、内閣が責任を負います。

イギリス王室と日本の皇室は、どちらも現代では政治実権を直接行使しない点で似ています。一方で、違いもあります。

比較 イギリス王室 日本の皇室
君主の位置づけ 国王は国家元首 天皇は日本国・日本国民統合の象徴
政治との関係 政治的中立。実際の政治は議会・内閣が担う 国政に関する権能を持たない
国際的役割 コモンウェルスとの関係が大きい 国賓接遇、外国訪問、国際親善など
歴史的背景 議会主権の発展と帝国・コモンウェルスの歴史 古代王権、近代天皇制、戦後の象徴天皇制

日本の皇室を理解するには、「天皇が昔からずっと同じ役割だった」と考えないことが大切です。古代、院政、武家政権、明治国家、戦後では、天皇の役割は大きく変わりました。詳しい流れは、関連記事の歴代天皇一覧と日本史|天皇の役割から時代の流れをわかりやすく解説でも整理しています。

また、戦後の象徴天皇制は、敗戦と占領、日本国憲法制定の文脈抜きには理解できません。占領期の制度転換については、GHQ側から見た戦後日本|占領軍は日本をどう理解し、どう作り変えようとしたのかもあわせて読むとつながりが見えます。

タイ王室|東南アジアで大きな存在感を持つ王室

タイは、東南アジアの中でも王室の存在感が大きい国です。タイの2017年憲法は、タイを「国王を国家元首とする民主的統治体制」とし、主権はタイ国民に属し、国王は国会、内閣、裁判所を通じて権力を行使すると定めています。また、国王は崇敬される地位にあり、不可侵とされています。

タイ王室を理解するには、単に「立憲君主制」とだけ見るのでは不十分です。タイ王室は、仏教、軍、近代化、国民統合、政治文化と深く結びついてきました。タイ外務省・大使館関係資料でも、国王は国家元首であり、軍の長、宗教の擁護者として位置づけられることが説明されています。

一方で、タイの現代政治はクーデター、憲法改正、選挙、王室をめぐる言論規制など、非常に複雑で慎重に扱うべき分野です。この記事では、個別の政治対立に踏み込みすぎず、制度理解の入口として次の点を押さえておきます。

  • タイは1932年に絶対王政から立憲君主制へ移行した
  • 国王は憲法上の国家元首であり、国家統合の象徴として大きな意味を持つ
  • 仏教、軍、政治文化との関係が、イギリスや日本よりはるかに強い
  • 現代政治では王室をめぐる議論が敏感であり、単純な賛否では理解しにくい

つまり、タイ王室は「象徴君主制」と「政治文化の中心」が重なった存在として見ると、ニュースの見え方が変わります。

ブータン王室|王が民主化を進めた国

ブータンは、王室が近代化と民主化を進めた例としてよく知られています。ブータンは1907年にワンチュク家の世襲王制となり、2008年に民主的立憲君主制へ移行しました。ブータン政府の国連人権理事会向け報告でも、この民主化は国王と第4代国王によって平和的に進められたものとして説明されています。

ブータンを理解するうえで欠かせないのが、国民総幸福、GNHです。ブータン憲法は、国家が国民総幸福の追求を可能にする条件を促進するよう努めると定めています。これは、経済成長だけでなく、文化、環境、統治、生活の質を重視する考え方として世界的にも注目されました。

ブータン王室の特徴は、王が権力を独占し続けたのではなく、国王主導で憲法、議会、選挙、政党政治を導入していった点にあります。もちろん、ブータンにも民族、難民、民主主義の成熟、経済依存などの課題はあります。それでも、「王室=近代化の障害」という単純な見方では説明できない重要な例です。

サウジアラビア王室|王族が国家を統治する君主制

サウジアラビアは、現代にも強い王権を持つ君主制の代表例です。サウジアラビアの政府公式ポータルは、王国の統治制度が君主制であり、統治は建国者アブドゥルアズィーズ王の子孫に限られると説明しています。

サウジアラビアをイギリスや日本と同じ「王室のある国」として並べるだけでは、大きな誤解が生まれます。サウジアラビアでは、サウード家、イスラム、石油、部族社会、近代国家形成、安全保障、国際経済が密接につながっています。国王は「二聖モスクの守護者」という称号を持ち、メッカとメディナを擁する国家の宗教的な重要性とも結びついています。

さらに近年は、皇太子が首相を務め、Vision 2030に象徴される経済・社会改革を主導するなど、王族による国家運営の形も変化しています。ここで大切なのは、サウジアラビアの君主制を「古い王様の制度」とだけ見るのではなく、石油収入、社会改革、宗教的正統性、国際政治が重なる現代国家の仕組みとして見ることです。

ヨルダンとモロッコ|中東・北アフリカの王制

ヨルダン|ハーシム家と地域安定

ヨルダンは、中東の王制国家です。ヨルダン憲法は、ヨルダンを世襲君主制を持つ議会制国家とし、国民をすべての権力の源としつつ、立法権を国会と国王に、行政権を国王に置き、国王が大臣を通じて権限を行使すると定めています。

ヨルダン王室を理解するうえで重要なのが、ハーシム家の系譜です。ヨルダン王室公式サイトは、アブドゥッラー2世国王が預言者ムハンマドの子孫とされるハーシム家の君主であり、1999年2月7日に王としての憲法上の権限を引き継いだと説明しています。

ヨルダンは、イスラエル、パレスチナ、シリア、イラク、サウジアラビアに囲まれ、難民、和平交渉、安全保障、経済支援などの課題を抱えてきました。そのため王室は、国内政治だけでなく、外交と地域安定の軸としても重要な意味を持ちます。

モロッコ|国王は政治的権威であり宗教的権威でもある

モロッコは、北アフリカの王制国家です。2011年憲法では、国王は国家元首であり、国家の統一、国家の連続性、憲法制度の正常な機能を保証する存在とされています。

さらに重要なのが、国王が「アミール・アル=ムーミニーン」、つまり信徒の長と位置づけられている点です。モロッコ憲法第41条は、国王がイスラムの尊重を見守り、信仰実践の自由を保証し、ウラマー最高評議会を主宰すると定めています。

つまりモロッコ王室は、政治制度上の君主であると同時に、宗教的正統性を支える存在でもあります。これは、イギリスや日本のような象徴的君主制とも、サウジアラビアのような王族統治とも違う、北アフリカの王制として理解する必要があります。

トンガ王国|太平洋に残る王国

トンガは、南太平洋のポリネシアにある王国です。1875年にジョージ・トゥポウ1世によって憲法が与えられ、現在も立憲君主制を維持しています。トンガ政府の法令資料では、トンガ憲法が1875年に制定され、その後改正を重ねていることが確認できます。

トンガは、植民地化、保護国化、独立、伝統的権威、議会政治が重なった例です。2010年前後の政治改革によって、議会と首相の役割は大きくなりました。一方で、国王は今も国家の連続性と伝統的権威を象徴する存在です。

太平洋地域を考えるとき、ハワイ王国のように王国が廃止された例もあれば、トンガのように独自の王室が現代国家の中で続いている例もあります。トンガを見ると、君主制はヨーロッパや中東だけの制度ではなく、島嶼世界の歴史、教会、土地制度、独立運動とも関わることが分かります。

ほかにもある世界の君主制

この記事では主要な国に絞りましたが、世界にはほかにも多様な君主制があります。

ヨーロッパの立憲君主制

スペイン、オランダ、ベルギー、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、ルクセンブルクなどでは、王室は国家儀礼、外交、文化、国民統合の役割を担います。多くは民主主義と共存する象徴的な君主制です。

ただし、リヒテンシュタインやモナコのように、君主が比較的強い権限を持つ小国もあります。ヨーロッパ王室をすべて「飾り」と考えるのは正確ではありません。

マレーシアの輪番制国王

マレーシアでは、複数の州に伝統的な君主が存在し、その中から国王が一定期間ごとに選ばれます。これは、連邦制、イスラム、マレー人社会、植民地期の制度が組み合わさった独特の君主制です。

湾岸王制

アラブ首長国連邦、カタール、クウェート、オマーン、バーレーンなどの湾岸諸国では、王家・首長家が政治、石油・ガス、外交、安全保障、国家開発と深く結びついています。ただし、「アラブ=全部同じ王制」ではありません。国ごとに議会、諮問機関、王族内の権力構造、宗派構成、外交姿勢が違います。

バチカン市国

バチカン市国は、ローマ教皇が主権者である特殊な国家です。教皇は世襲ではなく、枢機卿団によって選ばれます。宗教的権威と国家主権が結びついている点では君主制的ですが、通常の王室や王族とは別枠で考えるのがよいでしょう。

なぜ王室は現代にも残っているのか

王室が残る理由は一つではありません。国によって違いますが、よく見られる理由を整理すると次のようになります。

理由 何を意味するか
歴史的連続性 国家が長く続いていることを目に見える形で示す 日本、イギリス、トンガ
政治対立の外側の象徴 政党政治と距離を置き、国家全体の象徴になる イギリス、日本、北欧諸国
宗教的権威 君主が信仰や宗教秩序と結びつく モロッコ、サウジアラビア、タイ
国家統合 地域、民族、宗派、階層の違いをまとめる軸になる ヨルダン、タイ、モロッコ
外交・儀礼 国賓訪問、追悼、祝典などで国家を代表する イギリス、日本、ヨーロッパ各国
観光・文化ブランド 宮殿、儀式、王室文化が観光資源になる イギリス、モナコ、ブータン
統治権力そのもの 王家が政府、軍、経済政策の中心にいる サウジアラビア、湾岸諸国

一方で、王室が残っているからといって、常に国民全員から支持されているわけではありません。王室費用、特権、政治的中立、表現の自由、ジェンダー、継承順位、王族の行動、植民地支配の記憶などをめぐり、各国で議論があります。

王室を理解するときは、「すばらしい伝統」か「時代遅れ」かの二択にしないことが大切です。王室は、支持も批判も含めて、現代国家の制度として機能しているのです。

王室がなくなった国も多い

現代に王室が残る国がある一方で、君主制を廃止した国も数多くあります。フランス、ドイツ、ロシア、中国、韓国、イタリア、ギリシャ、ハワイ王国などは、それぞれ違う理由で君主制が終わりました。

王室が消えた理由も一つではありません。

  • 革命によって王政が打倒された
  • 戦争敗北によって王朝が正統性を失った
  • 植民地化や併合によって王国が消滅した
  • 共和政への移行が国民投票や政治改革で進んだ
  • 近代化や民族国家形成の中で、王室より共和国が選ばれた

たとえばフランス革命は、王権、身分制、財政危機、市民政治が衝突した結果として王政を揺るがしました。ロシア帝国では第一次世界大戦と革命がロマノフ朝を終わらせました。中国では辛亥革命によって清朝が倒れ、皇帝制度が終わりました。ハワイ王国は、王国の近代化、外国人勢力、アメリカとの関係の中で崩壊しました。

つまり、王室が残った国と消えた国の違いは、「伝統が強かったか弱かったか」だけでは説明できません。戦争、革命、植民地化、外交、経済、国民統合、制度改革のタイミングが重なって結果が分かれたのです。

よくある誤解

誤解 実際には
王室はどの国でも政治をしている イギリスや日本のように政治実権を持たない君主も多い
立憲君主制なら全部同じ イギリス、日本、タイ、モロッコ、ヨルダン、トンガでは権限も慣習も違う
王室は昔の名残にすぎない 外交、儀礼、宗教、国家統合、観光、統治権力など現代的役割を持つ
ヨーロッパ王室は全部ただの象徴 多くは象徴的だが、小国には君主の権限が比較的強い例もある
中東の王制は全部同じ サウジアラビア、ヨルダン、モロッコ、湾岸諸国では制度も宗教的役割も違う
王室は必ず民主主義と対立する ブータンのように、王室主導で民主化が進んだ例もある
天皇と国王は同じ意味 日本の天皇は日本国憲法上の象徴として説明する必要がある

ニュースで王室を見るときのチェックポイント

王室ニュースを見るときは、次の4つを意識すると理解しやすくなります。

1. その君主は政治実権を持つのか

国王が任命する、裁可する、署名するという言葉が出てきても、それが形式的な行為なのか、実際の政治判断なのかを分けて見る必要があります。

2. 宗教的権威を持つのか

モロッコの国王、サウジアラビア国王、タイ国王のように、宗教や信仰秩序と結びつく君主もいます。宗教的権威と政治権力は重なることもありますが、同じものではありません。

3. 王室は国家統合の象徴なのか

民族、地域、宗派、政党対立がある国では、王室が国家統合の軸として語られることがあります。ただし、それが常に全員の合意を意味するわけではありません。

4. 植民地史や帝国史と関係するのか

イギリス王室とコモンウェルス、トンガと太平洋世界、ハワイ王国の廃止など、王室の歴史は植民地支配や独立の歴史と深く関わります。王室ニュースの背景には、近代世界史が隠れていることが多いのです。

FAQ|世界の王室・君主制のよくある質問

王室がある国は民主主義ではないのですか?

そうとは限りません。イギリス、日本、北欧諸国、オランダ、ベルギー、スペインなどは、君主がいる一方で議会制民主主義を持つ国です。一方で、君主や王族に統治権力が強く集中する国もあります。君主制かどうかだけで民主主義の度合いは判断できません。

立憲君主制と絶対君主制の違いは何ですか?

立憲君主制では、君主の地位や権限が憲法や法律によって定められます。ただし、立憲君主制の中にも、君主がほぼ象徴に徹する国と、比較的強い権限を持つ国があります。絶対君主制は、君主に統治権力が強く集中する制度を指しますが、現代では国ごとの制度差を丁寧に見る必要があります。

日本は王国ですか?

日本は通常「王国」とは呼びません。日本国憲法では、天皇は日本国の象徴であり日本国民統合の象徴とされています。比較政治の文脈で日本を立憲君主制に含めることはありますが、本文では憲法上の表現に即して「象徴天皇制」として説明するのが分かりやすいでしょう。

サウジアラビアの国王とイギリス国王は同じ「王」ですか?

称号としてはどちらも国王ですが、制度上の役割は大きく違います。イギリス国王は政治的中立を守る立憲君主で、実際の政治は議会と内閣が担います。サウジアラビアでは、王族と国家統治が強く結びついています。

王室は観光資源として残っているだけですか?

観光は重要な役割の一つですが、それだけではありません。国家の連続性、外交儀礼、国民統合、宗教的正統性、政治制度、国際関係など、国によって複数の役割を持っています。

まとめ|王室は国によってまったく意味が違う

「王室」と聞くと、宮殿、王冠、儀式、結婚式、観光のイメージが先に浮かぶかもしれません。しかし、現代の君主制はそれだけでは説明できません。

イギリス王室は、議会政治、国家儀礼、外交、コモンウェルスの歴史と結びついています。日本の皇室は、日本国憲法のもとで象徴として位置づけられています。タイ王室は、仏教、軍、近代化、政治文化と強く関わります。ブータン王室は、国王主導の民主化と国民総幸福の文脈で重要です。サウジアラビア王室は、イスラム、石油、王族統治、国家開発の中心にあります。ヨルダン王室は地域安定と外交、モロッコ王室は政治的・宗教的権威、トンガ王室は太平洋の伝統的権威と近代国家の連続性を支えています。

つまり、王室は「昔の名残」ではありません。国によって、象徴であり、外交の顔であり、宗教的権威であり、国家統合の軸であり、時には統治権力そのものでもあります。

世界の王室を見ることは、世界史、政治制度、宗教、植民地史、近代化、観光、国際ニュースをつなげて理解する入口なのです。

次に読む記事

参考文献・参考サイト

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