丸の内・大手町を歩く|東京駅保存と容積移転で読む再開発入門

丸の内・大手町の街歩き実践編アイキャッチ

東京駅丸の内口では、赤レンガの駅舎と、その背後に並ぶ高層ビル群が同時に見えます。低層の歴史的建築を残しながら、周辺では大規模な再開発が進んできました。

両者を結ぶのが、容積率と容積移転です。東京駅丸の内駅舎の未利用容積の一部を周辺敷地で活用することで、駅舎の保存と都心の高度利用が両立しました。

容積率や用途地域の基礎は、街歩きが楽しくなる宅建入門|用途地域・建ぺい率・容積率から読む街のしくみで確認できます。

要点

  • 東京駅丸の内駅舎は、現存部分を可能な限り保存し、戦災で失われた3階部分や屋根、ドーム内部を創建時の姿へ復原しました。
  • 大手町・丸の内・有楽町の約116.7ヘクタールは、未利用容積を区域内の別敷地で活用できる特例容積率適用地区です。
  • JR東日本は2002年、東京駅丸の内駅舎の未利用容積の一部を東京ビル敷地へ移転する計画を発表しました。制度を利用した日本最初のプロジェクトです。
  • 周辺の高層ビルには、建物ごとに異なる都市計画制度が使われています。東京駅からの容積移転が公式発表で確認できる代表例は東京ビルです。
  • 現地では、駅舎、東京ビル、丸ビル・新丸ビル、仲通り、大手町の地下動線、TOKYO TORCHを順に見ると、保存・高度利用・公共空間整備の関係を理解できます。

容積移転を理解する基本用語

言葉意味東京駅周辺での見え方
容積率敷地面積に対する建物の延べ面積の割合高層ビルに床が積み上がる規模として見えます。
未利用容積制度上使える容積と実際に使用した容積の差低層で保存された丸の内駅舎に生じます。
特例容積率適用地区一定の区域内で、複数敷地の容積を調整できる制度東京駅の未利用容積を東京ビルなどで活用しました。
空中権未利用容積の移転を一般向けに説明するときに使われることがある表現公式資料では「特例容積率適用区域制度」「未利用容積の移転」と表現されています。

特例容積率適用地区では、区域全体の建てられる床面積を制度に基づいて敷地間で調整します。

モデルルート

順番場所見るテーマ目安
1東京駅丸の内中央口前保存・復原された駅舎10分
2丸の内駅前広場景観軸と歩行者動線10分
3丸ビル・新丸ビル前駅前の高度利用15分
4東京ビル TOKIA前容積移転の確認できる移転先15分
5丸の内仲通り高層ビルの足元と道路空間20分
6大手町地下ネットワークと業務地15分
7TOKYO TORCH広場・地下動線・進行中の再開発15分

東京ビルは駅舎の南側にあるため、丸ビル・新丸ビル前から南へ進み、東京ビルを見た後に丸の内仲通りを北上すると、制度と街並みを結び付けやすい順路になります。全体の所要時間は約100分です。

東京駅丸の内駅舎|現存部分の保存と創建時の姿の復原

東京駅は1914年に開業しました。丸の内駅舎は1945年の空襲で屋根、ドーム、3階部分などを失い、戦後は2階建ての姿で使われました。2003年に重要文化財へ指定され、2007年から2012年に保存・復原工事が行われました。

工事では現存する外壁や構造体などを可能な限り保存しました。そのうえで、失われた3階部分と屋根、南北ドーム内部を古写真や資料に基づいて復原し、地下2階を新設して免震構造を導入しました。

JR東日本は、後世の改造部分を原型へ戻す工事という意味で「復原」と表記しています。完成後も駅、ホテル、ギャラリーとして使われ、保存と現役利用が両立しています。

現地で見るポイント

中央部と南北ドームの屋根形状、3階部分の赤レンガ外壁、長い水平線を確認します。背後の高層ビルと比べると、駅舎が低層のまま残されたことが分かります。

丸の内駅前広場|駅舎を見せ、街へ人を渡す空間

丸の内駅前広場は、駅舎を正面から見る視点場であり、鉄道から地上の街へ人を受け渡す交通結節点です。中央部の歩行者空間と南北の交通広場を分け、行幸通りから皇居へ続く軸線と駅舎正面を結んでいます。

広場を大きく取ると、駅前の建築可能な敷地は減ります。広場は、景観、歩行者の安全、滞留、交通処理を一体で支える都市基盤です。

現地で見るポイント

駅舎を背にして皇居側を見た後、反対側から駅舎を振り返ります。駅舎、広場、行幸通りが一つの都市空間として設計されていることを確認できます。

容積率|建物の「床の総量」を決める

容積率は、敷地面積に対する延べ面積の割合です。

容積率 = 延べ面積 ÷ 敷地面積 × 100

敷地面積100平方メートル、延べ面積500平方メートルなら、容積率は500%です。床を各階100平方メートルずつ積むと、単純計算では5階分に相当します。

同じ容積率でも、建物の高さや形は変わります。敷地の一部を広場にして細く高く建てる方法も、敷地を広く使って低く建てる方法もあります。建ぺい率、高さ制限、斜線制限、道路、広場、建物用途などが形を左右します。

東京駅丸の内駅舎は低層で保存されたため、指定された容積の一部が未利用になりました。この未使用分が未利用容積です。

容積移転の仕組み

  1. 区域内の各敷地には、基準となる容積率があります。
  2. 歴史的建築を低層で保存する敷地では、容積が未利用になります。
  3. 行政の審査を経て、区域内の別敷地へ容積を配分します。
  4. 受け取る敷地は容積率を上げ、送る敷地は低い容積率で固定されます。

歴史的建築の保存、交通負荷、道路条件、街並みなどを確認しながら、区域内で床の配置を組み替えます。

東京駅の容積はどこへ移ったのか

JR東日本は2002年、特例容積率適用区域制度を使い、東京駅丸の内駅舎の未利用容積の一部を三菱地所所有の東京ビル敷地へ移転すると発表しました。制度を利用した日本最初のプロジェクトと位置付けられています。

同じ発表では、未利用容積の一部を八重洲側の共同開発にも移転し、残りについても活用を検討するとしています。東京駅の容積移転は、丸の内側に加えて八重洲側にも広がる駅周辺整備の一部でした。

高層ビルごとに適用制度を確認する必要があります。大丸有地区では、特定街区、総合設計、都市再生特別地区、特例容積率など複数の制度が使われています。

代表的な建物と制度の違い

建物最高高さの目安公表されている主な制度東京駅からの容積移転
東京ビルディング約164m総合設計、特例容積率適用地区、用途入替JR東日本の発表で確認できます。
丸の内ビルディング約180m特定街区公式資料で確認できる主制度は特定街区です。
新丸の内ビルディング約198m特定街区、特例容積率適用地区地区内にあることと、東京駅から直接移転を受けたことは別です。

現地では、駅舎から東京ビルまでの距離にも注目してください。離れた敷地間でも、指定地区内で容積を調整できることが、この制度の特徴です。

丸ビル・新丸ビル・東京ビル|高層化の理由を分けて見る

丸ビルと新丸ビルは、東京駅正面の高度利用を象徴する建物です。大きな床面積を上層部へ積み、低層部には店舗、通路、地下入口、滞在空間を配置しています。

東京ビルは、東京駅丸の内駅舎から未利用容積の一部を受けたことが公式発表で確認できる建物です。駅舎と東京ビルを一続きに見ると、低層保存と高層化が制度上つながっていることを具体的に理解できます。

現地で見るポイント

建物の高さに加え、敷地の足元を見ます。地下への入口、通り抜け、店舗、広場、歩道との境界を比べると、高度利用と公共的な空間整備の組み合わせが分かります。

丸の内仲通り|道路を移動空間から滞在空間へ変える

丸の内仲通りでは、街路樹、路面店、ベンチ、テラス、アート作品が連続します。高層ビルの足元を歩行者向けに整え、業務時間外にも人が滞在できる通りをつくっています。

三菱地所などは2019年からMarunouchi Street Parkを実施し、道路空間を使った滞留や回遊の方法を検証しています。2026年夏の実施は17回目で、暑さ対策や夜間のにぎわいも検証対象になりました。

現地で見るポイント

歩道幅、車道の使われ方、椅子と植栽の位置、店舗の入口を見ます。道路が車の通過、休憩、飲食、交流の場として運用されていることを確認できます。

大手町|高層ビルを支える地下ネットワーク

大手町では、オフィスビル、複数の地下鉄路線、地下通路、商業施設が重なります。高層化によって増える人の移動を、地上の歩道と地下のネットワークで受け止めています。

地下通路は雨天時の利便性を高め、駅改札、ビルの地下階、店舗、地上出口を結ぶ交通基盤です。建物の建て替えに合わせて接続が更新され、街区を越えた移動を支えています。

現地で見るポイント

一つのビルへ入った後、地下から別の街区へ抜けられるかを確認します。地上の高層ビル群と地下の歩行者空間は、一体で計画されています。

TOKYO TORCH|再開発は建物と都市基盤を同時につくる

常盤橋では、約3.1ヘクタールの街区を再整備するTOKYO TORCHが進行しています。2026年7月時点で、常盤橋タワーは開業済みで、Torch Towerは2028年6月の竣工予定です。

Torch Towerは地上62階・地下4階、最高部385メートル、延べ面積約54万4,000平方メートルの計画です。街区中央には約7,000平方メートルの広場が整備され、東京駅、大手町、日本橋を結ぶ地下交通結節機能も組み込まれます。

再開発では、高層建築の床面積に加え、広場、地下通路、防災、エネルギー、歩行者動線などの都市基盤を同時に更新します。

現地で見るポイント

工事範囲、仮設通路、常盤橋タワーの地下接続、広場の位置を見ます。完成後の建物と、工事中の歩行者動線の維持方法を確認できます。

現地で制度を見分ける質問

質問見る場所読み取れること
なぜここは低いままなのか東京駅丸の内駅舎歴史的建築の保存と未利用容積
未利用容積はどこで活用されたのか東京ビル特例容積率適用地区による容積移転
高層化と引き換えに何が整備されたのか駅前広場、仲通り、大手町、TOKYO TORCH広場、歩行者空間、地下動線、都市基盤

よくある質問

東京駅の「空中権」はどこへ移転しましたか

JR東日本の2002年の発表で明確に確認できる代表例は、東京ビル敷地です。同発表では、八重洲側の共同開発にも一部を移転するとしています。

丸ビルと新丸ビルも東京駅から容積移転を受けましたか

丸ビルは特定街区、新丸ビルは特定街区と特例容積率適用地区が公表されています。JR東日本の2002年発表で移転先として明記されたのは東京ビル敷地です。

東京駅丸の内駅舎が低層で保存された理由は何ですか

丸の内駅舎は重要文化財で、外壁や構造体を保存しながら創建時の姿へ復原されました。駅舎を低層のまま恒久的に使う方針と、未利用容積を周辺で活用する制度を組み合わせています。

容積移転を見るなら、どこが最も分かりやすいですか

丸の内駅前広場で駅舎の低さを確認し、東京ビル TOKIA前へ移動する順番が分かりやすいです。送る側と受ける側を実際の距離で比較できます。

歩くときの注意点

  • 東京駅前では、通路の外側など安全な場所で立ち止まってください。
  • 丸の内仲通りはイベントや交通規制で道路の使われ方が変わります。
  • 大手町の地下通路は出口が多いため、地上へ戻る出口を事前に決めておくと迷いにくくなります。
  • TOKYO TORCH周辺は工事状況により動線が変わります。訪問前に公式サイトの最新情報を確認してください。

まとめ|東京駅保存と高層化は同じ都市計画の中にある

東京駅丸の内駅舎は、現存部分を保存しながら創建時の姿へ復原されました。低層保存によって生じた未利用容積の一部は、特例容積率適用区域制度を使って東京ビルなどへ移されました。

丸の内・大手町では、容積移転、駅前広場、歩行者空間、地下ネットワーク、再開発による都市基盤整備を連続して確認できます。低い駅舎と高層ビルの対比は、保存と開発を一体で扱う都市計画の結果です。

参考資料

  1. JR東日本「東京駅及び周辺の整備計画について」
  2. JR東日本「東京駅丸の内駅舎保存・復原工事の着工について」
  3. JR東日本「東京ビル建替計画への参画について」
  4. JR東日本ほか「東京ビルディング竣工」
  5. 東京都都市整備局「大手町・丸の内・有楽町地区 特例容積率適用地区及び指定基準」
  6. 鹿島建設「東京駅丸の内駅舎保存・復原工事」
  7. 大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会「再開発マップ」
  8. 三菱地所「Marunouchi Street Park 2026 Summer」
  9. 三菱地所「TOKYO TORCH」
  10. 三菱地所「TOKYO TORCH Torch Tower」
  11. 東京都都市整備局「大手町二丁目常盤橋地区第一種市街地再開発事業」

関連する現地散歩として、日本橋と八重洲のナイトウォークもあります。