東京の自然というと、奥多摩の山や多摩丘陵の里山を思い浮かべる人が多いかもしれません。けれども、都市の生き物は山の奥だけにいるわけではありません。隅田川の水辺、皇居周辺の緑、江戸川や荒川の河川敷、井の頭公園や石神井公園、谷戸の残る公園、学校のビオトープ、駅前の街路樹にも、小さな生態系があります。
NHK「ダーウィンが来た!」が繰り返し扱ってきた東京の生き物は、遠い自然ではなく、私たちの足元の自然です。この記事では、番組で紹介された都市の生き物を入口に、東京の水辺・公園・里山・外来種・観察マナーを、環境省や東京都の資料をもとに整理します。
外来種については、特定の生き物を一方的に悪者にするのではなく、人の移動、飼育、放流、都市開発と結びついた問題として扱います。捕獲や移動をすすめる記事ではありません。観察は、法令と施設ルールを守り、生き物と暮らしの両方を傷つけない範囲で楽しみます。
このテーマはどの番組で取り上げられたのか
| 番組名 | ダーウィンが来た! |
|---|---|
| 回タイトル | もう8回目!東京生きもの調査隊 |
| 放送日 | 2024年3月17日 19時30分~ |
| 確認した主な出典 | 墨田区観光協会のロケ地情報、TVer番組情報 |
墨田区観光協会のロケ地情報では、2024年3月17日放送のNHK「ダーウィンが来た!『もう8回目 東京生きもの調査隊』」で、ハゼの調査企画において墨田区のおしなり公園が紹介されたこと、放送日時が2024年3月17日19時30分からであることが確認できます。TVerの番組情報でも、同回が「東京生きもの調査隊」シリーズ第8弾として紹介されています。
この記事では、この回を入口にしつつ、特定の映像内容を細かく再現するのではなく、東京の都市生態系を歩いて理解するための基礎知識へ広げます。
番組では何が描かれたのか
番組のおさらいを短く言えば、東京はコンクリートだけの都市ではなく、生き物がすみ、移動し、繁殖し、人の暮らしと接している場所だという発見です。川や運河、公園の池、植え込み、ビルのすき間、河川敷の草地には、それぞれ違う環境があります。
都市の生き物を見るときに面白いのは、自然が「残っている場所」だけでなく、人がつくった環境にも生き物が入り込むことです。護岸された川でも、潮の満ち引きがあれば魚やカニが見られることがあります。駅近くの小さな水辺でも、季節によって鳥や昆虫の顔ぶれが変わります。
ただし、都市の自然を美談だけで語ることはできません。人が持ち込んだ外来種、ペットの放逐、過剰な餌やり、水質、護岸、夜間照明、交通事故、猫やカラスとの関係など、都市ならではの課題もあります。番組の面白さは、かわいい生き物紹介だけではなく、都市と自然の距離の近さを見せるところにあります。
放送当時の時代背景
2020年代の東京では、生物多様性が都市政策の一部として扱われるようになっています。東京都は、生物多様性基本法に基づく地域戦略として「東京都生物多様性地域戦略」を策定し、将来にわたり生物多様性の恵みを受け続けられる豊かな都市を目指すとしています。
背景には、気候変動、都市開発、外来種、自然との接点の減少、そして生き物をめぐる市民参加の広がりがあります。都市に緑や水辺を残すことは、景観の問題だけではありません。雨水の浸透、暑さの緩和、防災、子どもの学び、地域の健康、観光、文化的記憶とも関わります。
「東京の生き物」は、自然番組の題材であると同時に、都市計画、環境政策、教育、街歩きのテーマでもあります。水辺の遊歩道や公園の案内板を読むことは、街の自然史を読むことでもあるのです。
現在はどうなっているのか
現在の東京では、都市の自然を守る取り組みと、外来種対策が同時に進められています。東京都は2025年に「東京都外来種対策リスト2025」と「外来種対策行動の手引き」を公表しました。リストには、生態系等への被害が大きいと考えられる侵略的外来種が掲載され、定着段階や侵略性に応じて優先度が整理されています。
外来種問題で重要なのは、「外来種=悪い生き物」と単純化しないことです。外来種とは、人の活動によって本来の分布域の外へ移動した生き物です。そこにはペット、園芸、食用、物流、船舶、釣り、放流、飼育放棄など、人間側の行動が深く関係しています。
環境省は外来種被害予防三原則として、「入れない」「捨てない」「拡げない」を示しています。つまり、街歩きの読者が覚えるべきことは、捕まえて別の場所へ放すことでも、自己判断で駆除することでもありません。むしろ、飼っている生き物を野外へ捨てない、見つけた生き物を持ち帰らない、別の水辺へ移さない、施設や自治体のルールに従うことが基本です。
番組では触れきれなかった前史と後史
東京の自然の前史は、江戸の水辺から始めると見えやすくなります。江戸は川と堀の都市でした。隅田川、神田川、日本橋川、外濠、内濠、上水、用水路、湿地、田畑、海辺が生活と結びついていました。近代化と都市化によって多くの水辺は埋め立てられ、暗渠化され、護岸されましたが、完全に消えたわけではありません。
後史として、20世紀後半の公害対策、水質改善、下水道整備、河川敷の利用、公園づくり、学校ビオトープ、自然観察会などが重なります。かつては汚れた水路だった場所が、魚や鳥を観察できる場所へ戻ってきた例もあります。一方で、護岸の形や水質、外来種、過剰な利用など、都市の自然は常に人の管理とセットで変化しています。
里山も同じです。多摩地域の谷戸や雑木林は、もともと人が薪や落ち葉、田んぼ、畑として利用してきた半自然環境でした。人が使わなくなると、荒れる場所もあれば、保全活動によって再び生き物のすみかとして整えられる場所もあります。都市の自然は、人が手を離せばすべて良くなるという単純なものではありません。
関連する人物・場所・業界
東京の生き物を支えているのは、研究者だけではありません。公園管理者、自治体職員、学校の先生、市民団体、博物館、自然観察指導員、地域の子どもたち、釣り人、清掃活動の参加者、河川管理者など、多くの人が関わっています。
| 場所 | 見える自然のテーマ |
|---|---|
| 隅田川・おしなり公園周辺 | 都市河川、潮の影響、ハゼなど水辺の生き物 |
| 葛西海浜公園・葛西臨海公園 | 干潟、鳥、東京湾の水辺 |
| 井の頭恩賜公園 | 池、湧水、外来種対策、地域の保全活動 |
| 石神井公園 | 池、武蔵野の地形、樹林と水辺 |
| 小石川植物園 | 植物研究、都市の中の生物多様性 |
| 多摩丘陵の公園・緑地 | 谷戸、雑木林、里山的環境 |
業界で見ると、都市の自然は、造園、河川管理、環境教育、観光、学校教育、博物館活動、NPO活動、ペット産業とも関係します。たとえば外来種問題は、自然保護だけでなく、飼育・販売・輸送・飼い主の責任ともつながっています。
現地で見られるもの
東京で生き物を見るなら、まずは水辺から始めるとわかりやすいです。川沿いの遊歩道では、干潮時と満潮時で見える景色が変わります。泥や石のすき間には小さな生き物が隠れ、鳥は水位や餌の状況に合わせて場所を変えます。
公園では、池の水面だけでなく、池の縁、落ち葉の下、朽ち木、草地、花壇、古い樹木を見ます。案内板があれば、そこに書かれた在来種・外来種・保全活動の説明を読みましょう。自然観察施設やビジターセンターがある場所では、最新の見られる生き物情報が掲示されていることがあります。
観察の基本マナーは、追い回さない、触らない、持ち帰らない、餌をやらない、巣や産卵場所に近づきすぎない、フラッシュ撮影を避ける、通行の邪魔をしないことです。外来種を見つけても、自己判断で捕獲したり別の場所へ移したりしないでください。施設の管理者や自治体の案内に従うことが、いちばん安全で確実です。
このテーマを今見る意味
都市の生き物を見る意味は、単に「東京にも自然があった」と驚くことではありません。都市は、人間が自然を消した場所であると同時に、新しい自然との付き合い方を試す場所でもあります。
水辺の再生、緑地のつながり、外来種対策、ペットの責任、子どもの環境教育、観察マナーは、どれも日常生活に近い問題です。自然番組で見た生き物をきっかけに近所の川や公園を歩くと、街の歴史と環境政策が一緒に見えてきます。
ゆる歴史散歩会的に言えば、都市の自然観察は「生き物を見る散歩」であると同時に、「江戸の水辺、近代の開発、戦後の公害対策、現代の生物多様性政策」を歩く散歩です。ひとつのハゼ、ひとつの池、ひとつの外来植物の前にも、人と自然の長い関係があります。
まとめ
ダーウィンが来た!で見た東京の生き物は、番組の中だけの特別な存在ではありません。現在も、東京の川、公園、干潟、里山、学校、街路樹のまわりで、さまざまな生き物が人の暮らしと接しています。
一方で、都市の自然は放っておけば守られるものではありません。外来種、過剰な餌やり、飼育放棄、開発、水質、利用マナーなど、人間側の行動が大きく影響します。だからこそ、番組をきっかけに現地を歩くときは、観察する、調べる、ルールを守るという姿勢が大切です。
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