下水道まるわかりガイド|都市を病気から守る見えないインフラ

都市の地下を流れる下水道と下水処理場の仕組みを示す解説アイキャッチ

トイレの水を流すと、汚れは家の下、道路の下、町の下に広がる管を通り、処理施設へ運ばれます。これが下水道です。

下水道が止まると、生活や衛生、川や海の環境、都市の安全に影響します。

シリーズ全体の入口:うんちの科学まるわかりガイドでは、排泄物が消化・歴史・産業利用・宇宙開発までつながる流れを解説しています。

30秒でわかる結論

  • 下水道は、汚水や雨水を集め、運び、処理する都市インフラです。
  • 家庭のトイレ、台所、風呂、洗濯から出た水は、管を通って処理場へ向かいます。
  • 処理場では、沈殿、微生物による分解、消毒などで水をきれいにします。
  • 合流式は汚水と雨水を同じ管で流し、分流式は別々の管で流します。
  • 下水道は感染症予防、水質保全、浸水対策、資源回収、下水疫学にも関係します。

下水道とは何か

下水道とは、生活や都市活動で発生した汚水、雨水を集めて排除し、必要に応じて処理する施設全体を指します。管路、マンホール、ポンプ場、処理場、放流設備までを含みます。

家庭から出る汚水には、トイレ、台所、風呂、洗濯、洗面からの排水が含まれます。放置すれば、悪臭、水質汚濁、病原体の拡散につながります。

汚水と雨水の違い

種類 主な発生源 課題
汚水 トイレ、台所、風呂、洗濯、工場など 有機物、病原体、油分、化学物質などを処理する必要がある
雨水 道路、屋根、敷地に降った雨 都市浸水を防ぐため早く排除する必要がある

下水道は、汚水を衛生的に処理し、雨水を排除して浸水を防ぎます。両者の流し方には、合流式と分流式があります。

合流式と分流式

合流式下水道は、汚水と雨水を同じ管で流す方式です。古くから整備された大都市で見られます。管が一つで済む利点がありますが、大雨のときに処理場の能力を超えると、未処理の下水が一部放流される問題があります。

分流式下水道は、汚水と雨水を別々の管で流す方式です。汚水は処理場へ、雨水は川や海へ流すなど、目的に応じて分けられます。水質保全の面で有利ですが、管を二系統整備する必要があります。

国土交通省は、未処理下水の放流が公衆衛生、水質、景観に影響すると説明しています。

下水処理場では何をしているのか

下水処理場では、水中の有機物を沈め、微生物の力で分解し、必要に応じて消毒してから放流します。

  1. 沈砂・沈殿:砂や大きなごみ、沈みやすい汚れを取り除きます。
  2. 生物処理:活性汚泥と呼ばれる微生物の集まりが、有機物を分解します。
  3. 最終沈殿:微生物のかたまりを沈め、上澄みの水を分けます。
  4. 消毒:病原体のリスクを下げてから川や海へ放流します。
  5. 汚泥処理:水処理で出た汚泥を濃縮、消化、脱水、焼却、資源化します。

国土交通省の説明では、日本の下水処理はほとんどが生物処理法で、下水処理場の多くでは活性汚泥法が採用されています。

下水道は都市を病気から守る

人の排泄物には病原体が含まれることがあります。し尿や生活排水が飲み水や生活空間に入り込めば、コレラ、赤痢、腸チフスなどの水系感染症が広がる危険があります。

近代都市で下水道や水道が整備された背景には、人口集中と感染症対策がありました。下水道は、し尿や生活排水を生活空間から遠ざけ、処理後に環境へ戻します。

浸水対策としての下水道

都市では、道路や建物が地面を覆い、雨が土にしみ込みにくくなります。強い雨が降ると、道路冠水や地下街浸水のリスクが高まります。

雨水管、貯留施設、ポンプ場、雨水吐、調整池などが雨水を排除・貯留します。近年は短時間強雨への対応が課題となり、下水道の防災機能が重視されています。

下水汚泥はごみか資源か

下水を処理すると、有機物、窒素、リンを含む汚泥が残ります。

下水汚泥は、脱水・焼却のほか、セメント原料、堆肥、固形燃料、バイオガス、リン回収などに利用されることがあります。重金属、病原体、有機汚染物質、臭気などの管理が必要です。

下水汚泥や家畜ふん尿からエネルギーを作るしくみは、バイオガスとは何かで詳しく解説しています。

下水疫学:下水から社会の健康を読む

下水には、多くの人の体から出た物質が混ざっています。感染症のウイルス断片、医薬品成分、生活習慣に関わる化学物質などを調べ、地域全体の健康状態や感染拡大の兆候を把握する手法が下水疫学です。

下水疫学は集団の変化を追う手法です。新型コロナウイルス感染症の流行期にも、下水中のウイルス濃度を監視する取り組みが注目されました。

よくある誤解

下水道はトイレの水だけを流すもの?

いいえ。台所、風呂、洗濯、洗面、工場、雨水など、都市のさまざまな水が関係します。

流した水はすぐ川に出る?

多くの場合、処理場で沈殿や微生物処理、消毒を経てから放流されます。ただし、合流式では大雨時の越流水が課題になります。

下水汚泥は全部ごみ?

処理が必要な残さですが、バイオガス、リン、肥料、建設資材などへの資源化も進められています。

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参考資料

  1. 国土交通省「終末処理場のしくみ」
  2. 国土交通省「合流式下水道の改善」
  3. 東京都下水道局
  4. 公益社団法人 日本下水道協会
  5. 環境省「Night Soil Treatment and Domestic Wastewater Treatment Systems in Japan」