東京港野鳥公園とは?埋立地によみがえった干潟と野鳥の歴史を歩く

東京港というと、まず思い浮かぶのは、コンテナふ頭、大田市場、倉庫、トラック、羽田空港へ向かうモノレールかもしれません。ところが、そのすぐ近くに、干潟を歩くカニ、潮の満ち引きで姿を変える池、ヨシ原にひそむ小鳥、春と秋に立ち寄るシギ・チドリ類を観察できる場所があります。

それが、東京都大田区東海にある東京港野鳥公園です。

この公園を「東京の野鳥観察スポット」とだけ見ると、少しもったいないかもしれません。大切なのは、ここが昔から自然のまま残っていた場所ではない、という点です。もともとは東京湾の遠浅の海でした。1960年代に埋め立てられ、港湾や都市のための土地へ変わったあと、整備を待つあいだに池や草原が生まれ、そこへ野鳥やカニ、昆虫が集まるようになりました。そして、地域の人びとや専門家の保護を求める声が、公園化へつながっていきました。

つまり東京港野鳥公園は、「自然が残った場所」というより、埋立地に自然が戻り、その自然を人が守ろうとした場所です。東京湾の開発史、干潟の再生、渡り鳥の国際的な移動ルート、都市の自然保護が、ひとつの場所に重なって見える公園なのです。

30秒で分かる結論

  • 東京港野鳥公園は、東京都大田区東海3-1にある、東京港に面した海上公園です。
  • 現在の場所は、もともと遠浅の海で、1960年代に埋め立てられました。
  • 埋立後、自然にできた池や草原へ野鳥が集まり、地域の保護運動を経て、1978年に大井第七ふ頭公園として開園しました。
  • 1983年に「東京港野鳥公園」と改称され、1989年にはネイチャーセンターを備えた公園として拡大開園しました。
  • 園内には、潮入りの池、前浜干潟、ヨシ原、淡水池、小川、雑木林などがあり、野鳥だけでなく、カニ、トビハゼ、昆虫なども観察できます。
  • 公式情報では、年間120種類前後、開園以来241種類の野鳥が観察されています(2026年6月現在)。
  • 2000年には、シギ・チドリ類の重要な生息地として、東アジア・オーストラリア地域の国際的な湿地ネットワークに参加しました。
  • 初心者は、まずネイチャーセンターから潮入りの池と前浜干潟を眺めるのがおすすめです。

東京港野鳥公園とは何か

東京港野鳥公園は、東京港の南部、大井ふ頭や大田市場に近い場所にある自然観察型の公園です。所在地は東京都大田区東海3-1。開園年月日は1978年4月1日、開園面積は365,834.65平方メートルで、そのうち水域は121,444.55平方メートルです。おおまかにいえば、約36ヘクタールの中に、水辺、干潟、草地、林、観察施設が組み合わさった公園です。

項目 内容
名称 東京港野鳥公園
所在地 東京都大田区東海3-1
開園 1978年4月1日
面積 365,834.65平方メートル(うち水域121,444.55平方メートル)
主な環境 潮入りの池、前浜干潟、ヨシ原、東西の淡水池、小川、自然生態園、森林・草地
観察できるもの シギ・チドリ類、カモ類、サギ類、小鳥類、猛禽類、カニ、トビハゼ、昆虫など

園内は、大きく見ると西側の「西園」と東側の「東園」に分けて考えると分かりやすくなります。西園には、芝生広場、自然生態園、西淡水池、観察小屋などがあります。自然生態園は、田んぼ、畑、小川、雑木林などを組み合わせ、里地里山の風景を復元したエリアです。ここでは、水辺の生きものや昆虫、林にすむ鳥をゆっくり観察できます。

東園の中心は、ネイチャーセンター、東淡水池、潮入りの池、前浜干潟です。とくにネイチャーセンターは、初めて訪れる人にとって拠点になります。館内には日本野鳥の会のレンジャーが常駐し、観察室、展示室、図書コーナー、望遠鏡などが整えられています。ガラス張りの観察ロビーからは、潮入りの池や前浜干潟を室内から眺めることができます。

ここでいう「潮入りの池」とは、海水と淡水が混じる汽水の池です。東京湾の潮の満ち引きに合わせて水位が変わり、潮が引くと泥の地面、つまり干潟が現れます。干潟にはゴカイ、カニ、トビハゼなどがすみ、それを食べにシギ・チドリ類などの水鳥がやって来ます。野鳥を見る場所であると同時に、「鳥が食べるもの」「水が動くしくみ」「生きもの同士のつながり」を観察できる場所でもあります。

もともとは浅い海だった|埋立地と東京湾の歴史

東京港野鳥公園の歴史を理解するには、まず東京湾の海岸線が大きく変化してきたことを知る必要があります。公園のある大田区東海周辺は、江戸時代から昭和30年代ごろまでは、遠浅の海でした。大森周辺では海苔づくりも盛んで、江戸前の魚介類とともに、人びとの生活や食文化を支えていました。

しかし、近代以降の東京は、人口、物流、工業、交通が急速に拡大します。海に面した東京港は、都市を支える港として整備され、ふ頭、倉庫、道路、鉄道、工場用地が必要になりました。東京都港湾局の説明によれば、東京港では江戸時代から埋立が行われ、生活圏の拡大とともに物流拠点として港湾施設がつくられ、時代とともに規模を拡充していきました。

東京港野鳥公園の場所も、1960年代に埋め立てられます。この時期の東京港では、コンテナ輸送の時代が本格化し、大井ふ頭などの整備が進みました。1967年にはフルコンテナ第1船が東京港へ入港し、1971年には大井ふ頭で欧州定期コンテナ航路が開設され、1975年には大井コンテナふ頭8バースが完成しています。東京湾の海は、漁業や海苔づくりの場から、大都市東京の物流と産業を支える空間へと大きく姿を変えていきました。

この流れだけを見ると、東京港野鳥公園は「自然が失われた後の場所」です。けれども、実際の歴史はもう少し複雑です。埋立地はすぐにすべてが建物や道路になるわけではありません。造成後、土地の状態が落ち着くまで、整備を待つ時間があります。その空白の時間に、雨水がたまり、草が生え、池や湿地ができることがあります。東京港野鳥公園では、その「待ち時間」が、思いがけず生きもののすみかを生みました。

なぜ埋立地に野鳥が集まったのか

埋立後の土地に自然にできた池や草原には、まず植物や小さな生きものが入り込みます。水がたまれば、泥地や浅い水辺ができます。そこにカニ、魚、昆虫、ゴカイのような底生生物がすみ始めると、それらを食べる鳥がやって来ます。鳥が来れば、種子を運んだり、フンを落としたりして、さらに環境が変わります。

東京港野鳥公園の公式サイトは、1970年代の状況を「埋め立てた土地の状態が落ち着くまで、整備を待っている間に、草原や池などができ、魚やカニ、昆虫、野鳥などの多様な生きものが集まるようになった」と説明しています。地元の人びとはそこへ野鳥観察に訪れるようになり、やがて、このよみがえった自然を守ろうという動きが生まれました。

ここで大事なのは、「自然が勝手に戻ったから終わり」ではなかったことです。池や草原ができても、開発が進めば消えてしまう可能性があります。そこで、地域の人びとや専門家が、東京湾が渡り鳥の中継地として重要であることを訴え、野鳥の保護を求めました。東京都は、葛西沖と城南地区にサンクチュアリ、つまり野鳥の保護区域をつくる方針を固めます。そして専門家や市民と協力し、1978年に大井第七ふ頭公園が完成しました。

その後、1983年に公園名称は「東京港野鳥公園」へ改称されます。1989年には、都内でも貴重な野鳥の生息地として機能を充実させるため、24.9ヘクタールに拡大し、ネイチャーセンターも開館しました。さらに2018年には、埋立で失われた干潟を再生する取組として、前浜干潟が拡張整備されます。新たに隣接する約11ヘクタールの海面に干潟を造成し、干潟面積はそれまでの約3倍に広がりました。

この流れをまとめると、東京港野鳥公園の歴史は次のようになります。

時期 出来事 意味
江戸時代〜昭和30年代 周辺は遠浅の海。大森では海苔づくりも盛ん 江戸前の海の一部だった
1960年代 港湾・交通・工場用地などのため埋立が進む 海が都市の土地へ変わる
1970年代 整備待ちの土地に池や草原ができ、生きものが集まる 埋立地に湿地的な環境が生まれる
1978年 大井第七ふ頭公園として開園 保護運動と行政の公園化が結びつく
1983年 東京港野鳥公園に改称 野鳥と自然観察の場として位置づけが明確になる
1989年 拡大開園、ネイチャーセンター開館 観察・学習拠点として整備される
2000年 国際的なシギ・チドリ類重要生息地ネットワークに参加 渡り鳥の中継地として国際的に認められる
2018年 前浜干潟を拡張整備 失われた干潟の再生を進める

干潟・潮入りの池・ヨシ原がつくる多様な環境

東京港野鳥公園が面白いのは、単に緑があるからではありません。小さな範囲の中に、性格の違う環境がぎゅっと詰まっているからです。

潮入りの池|東京湾の潮が入り込む池

潮入りの池は、海とつながり、潮の干満に応じて水位が変化します。満潮時には水に覆われ、干潮時には泥地が現れます。ただし、公園公式サイトによると、潮入りの池の水位変化は東京湾そのものより1時間から1時間半ほど遅れる傾向があります。干潟の鳥を見たい場合は、単に東京湾の干潮時刻を見るだけでなく、公園が公表している観察時刻表やレンジャーブログを確認すると、より見やすくなります。

汽水の池では、淡水だけの池とも、完全な海とも違う生きものが見られます。春から秋の干潟では、トビハゼやヤマトオサガニなどを観察でき、杭の上ではカワウやアオサギが休むことがあります。冬にはスズガモなどのカモ類が飛来します。

前浜干潟|シギ・チドリ類が立ち寄る食堂

干潟は、鳥にとって「休憩所」であると同時に「食堂」です。泥の中には、ゴカイ、貝、カニなどがいます。長いくちばしを持つシギ類、短いくちばしで素早くついばむチドリ類は、それぞれの体のつくりに合った食べ方で、泥の中や表面の小さな生きものを探します。

東京港野鳥公園の前浜干潟は、2018年に拡張整備されました。公式施設案内では、春や秋にキョウジョシギ、キアシシギ、冬にはスズガモなどのカモ類が飛来すると説明されています。ネイチャーセンターからよく見えるため、初心者でも観察しやすい場所です。

ヨシ原|姿は見えにくいが、鳥にとっては重要な場所

ヨシ原は、一見するとただの背の高い草むらに見えるかもしれません。しかし、ヨシの茂みは、小鳥にとって隠れ場所になり、昆虫にとってすみかになり、水辺の環境をやわらかくつなぐ役割も果たします。オオヨシキリのように、ヨシ原と関わりの深い鳥もいます。

観察のコツは、「見えないから何もいない」と思わないことです。ヨシ原では、姿より先に声や動きに気づくことがあります。風で揺れる動きと、鳥が移動したときの動きは少し違います。最初は難しくても、レンジャーやボランティアガイドの説明を聞くと、草むらの見え方が変わってきます。

淡水池・小川・雑木林|水鳥以外も見られる環境

東京港野鳥公園は、干潟だけの公園ではありません。東淡水池や西淡水池では、カイツブリやカルガモなど、淡水域を利用する鳥を見られることがあります。自然生態園には田んぼ、畑、小川、雑木林があり、昆虫や水辺の生きもの、林の鳥を観察できます。

このように、海水と淡水、開けた干潟と隠れ場所になるヨシ原、池と林が近い距離で組み合わさっているため、季節や時間によって見える生きものが変わります。東京港野鳥公園の魅力は、「今日は何がいるか」が毎回少しずつ違うことにあります。

どんな野鳥や生き物が見られるのか

公式情報では、東京港野鳥公園では年間120種類前後、開園以来241種類の野鳥が観察されています(2026年6月現在)。ただし、これは「いつ行っても241種類が見られる」という意味ではありません。野鳥観察では、季節、天候、潮位、時間帯によって見られる種類が変わります。

初心者は、まず「鳥の名前を全部覚える」よりも、鳥がどんな環境を使っているかを見るのがおすすめです。

場所 見られる可能性がある鳥・生きもの 見方のポイント
潮入りの池・前浜干潟 シギ・チドリ類、サギ類、カワウ、カモ類、カニ、トビハゼなど 干潮前後に泥地が出ると鳥が採餌しやすい
東淡水池・西淡水池 カルガモ、カイツブリ、カワセミ、サギ類など 水面だけでなく、岸辺や杭も見る
ヨシ原・草地 オオヨシキリ、ツバメ類、小鳥類、昆虫など 声、草の揺れ、飛び出す瞬間を手がかりにする
雑木林・自然生態園 シジュウカラ、メジロ、コゲラ、ムクドリ、昆虫など 木の幹、枝先、林縁をゆっくり見る
空や樹上 オオタカ、トビ、ハヤブサ、カラス類など 水鳥が急に飛んだときは上空も確認する

たとえば、カモ類は冬に目立ちやすく、シギ・チドリ類は春と秋の渡りの時期に観察しやすくなります。公園公式サイトでは「当月見られる鳥」が整理され、レンジャーブログでは開園日ごとの確認種が紹介されています。訪問前に見ると、その日の公園を歩く解像度が上がります。

鳥以外では、干潟のカニ、トビハゼ、ゴカイ類、草地や林の昆虫なども重要です。野鳥公園という名前ですが、鳥だけを切り離して見るのではなく、鳥を支える水、泥、植物、小さな生きものまで含めて見ると、この公園の価値がよく分かります。

渡り鳥にとって東京港野鳥公園が大切な理由

シギやチドリの仲間の多くは、南半球や熱帯で冬を過ごし、繁殖のために北半球の北部へ移動します。その距離は数千キロから、種類によっては約1万キロに及びます。小さな鳥がそれほど長い距離を移動するには、途中で休み、食べ、体力を回復できる場所が必要です。

この「渡り鳥の通り道」を、フライウェイと呼びます。環境省は、東アジア・オーストラリア地域フライウェイを、ロシア極東やアラスカから、東アジア、東南アジアを経て、オーストラリアやニュージーランドまで22カ国に及ぶ渡りのルートと説明しています。このフライウェイには、210種以上、5,000万羽以上の渡り性水鳥が生息し、水鳥は途中の湿地で体を休め、採餌して、次の飛行のためのエネルギーを蓄えます。

東京港野鳥公園は、2000年6月17日に「東アジア・オーストラリア地域シギ・チドリ類重要生息地ネットワーク」に参加しました。この枠組みは、2006年に発足した「東アジア・オーストラリア地域フライウェイ・パートナーシップ」に引き継がれています。公園公式サイトでは、2000年にメダイチドリの飛来数が参加基準を越えていたことから、国内で4番目のシギ・チドリ類重要生息地ネットワーク参加湿地となったと説明されています。

この事実は、東京港野鳥公園を「東京の小さな公園」とだけ見てはいけない理由を示しています。ここに立ち寄る鳥は、東京湾だけで一生を終えるわけではありません。北の繁殖地、南の越冬地、途中にある干潟や湿地をつないで生きています。東京港野鳥公園の干潟が守られることは、東京だけの自然保護ではなく、国境を越えて移動する鳥たちのネットワークの一部を守ることでもあります。

初心者向けの歩き方と観察ポイント

初めて東京港野鳥公園へ行くなら、鳥の名前をたくさん知っている必要はありません。むしろ、「どこを見ればいいか」「何を比べればいいか」を知っているだけで、かなり楽しめます。

まずネイチャーセンターへ行く

最初の目的地は、東園のネイチャーセンターがおすすめです。館内にはレンジャーが常駐し、最新の野鳥情報を確認できます。観察ロビーからは潮入りの池と前浜干潟を見渡せるため、外を歩き回る前に「今日は水位が高いのか低いのか」「鳥はどこに集まっているのか」をつかめます。

望遠鏡が設置されているので、双眼鏡を持っていない人でも観察できます。公式利用案内では、双眼鏡の貸出もあるとされていますが、数には限りがあります。確実に使いたい場合は、自分の双眼鏡を持参すると安心です。

潮の時間を意識する

シギ・チドリ類を見たい場合は、潮位が重要です。干潟が完全に水没していると採餌場所が少なく、逆に干潟が広がりすぎても鳥が遠くに散ることがあります。公園公式サイトは、潮入りの池の水位変化が東京湾より1時間から1時間半ほど遅れる傾向があると説明し、シギ・チドリの観察時刻表を公表しています。

初心者は、まず公園の観察予報やレンジャーブログを見て、「見やすい時間帯」を選ぶのがおすすめです。鳥の種類を覚える前に、潮と鳥の動きがつながっていることに気づくと、干潟の見方が一気に面白くなります。

季節ごとに狙いを変える

季節 見どころ 初心者向けの見方
シギ・チドリ類の春の渡り、繁殖期の小鳥 干潟とヨシ原を重点的に見る
サギ類、カワセミ、ツバメ類、干潟の生きもの 暑さ対策をし、朝や夕方寄りの時間を選ぶ
シギ・チドリ類の秋の渡り 干潮前後の前浜干潟を確認する
カモ類、カイツブリ類、猛禽類 水面のカモの違い、杭や樹上の鳥を見る

鳥の名前が分からないときは「形」と「行動」を見る

鳥の名前が分からないと、観察に失敗したように感じるかもしれません。しかし、初心者にとって大事なのは、まず違いに気づくことです。

  • くちばしは長いか、短いか。
  • 足は長いか、短いか。
  • 水面に浮いているのか、泥の上を歩いているのか。
  • じっと待って魚をねらうのか、泥をつついて小さな生きものを探すのか。
  • 群れで動くのか、単独でいるのか。

こうした見方をすると、鳥の名前を知らなくても、「干潟の鳥」「池の鳥」「林の鳥」の違いが見えてきます。名前はあとから図鑑やレンジャーの説明で確認すれば十分です。

アクセスと利用情報は直前に確認する

公共交通では、東京モノレール「流通センター」駅から徒歩15分ほど、またはJR大森駅・京急平和島駅・JR品川駅方面からバスを利用できます。開園時間、休園日、入園料、団体利用、イベント開催日は変わることがあります。訪問前には必ず公式サイトの利用案内と最新のお知らせを確認してください。

観察マナーと注意点

東京港野鳥公園は、野鳥や生きものを近くで観察できる場所ですが、動物園ではありません。生きものは展示物ではなく、その場所で生活している存在です。よい観察者になるためには、見たい気持ちを少し抑えて、相手の距離を守ることが大切です。

  • 野鳥や生きものに近づきすぎない。近づくほどよく見えるとは限りません。鳥が警戒して飛び立つと、採餌や休息の時間を奪ってしまいます。
  • 餌を与えない。人の食べ物は野鳥の健康を損ねることがあり、鳥の行動や生態系にも影響します。
  • 採集や持ち帰りをしない。公式利用案内では、植物、昆虫、魚など生物の持ち帰り・持ち込みはできないとされています。
  • 保護区に立ち入らない。干潟や保護区は、鳥や生きものの場所です。公式Q&Aでも、干潟は保護区内のため原則として降りられないとされています。
  • 静かに観察する。観察小屋や観察ロビーでは、ほかの観察者の迷惑にならないようにしましょう。
  • ペットを連れて入園しない。公式利用案内では、ペットを連れての入園は遠慮するよう案内されています。

外来種や生態系の問題についても、感情的に「悪い生きもの」と決めつけるのではなく、まず公式資料やレンジャーの説明に基づいて理解することが大切です。都市の自然は、人間の活動と切り離せません。だからこそ、訪問者が勝手に生きものを捕まえたり、別の場所へ移したり、餌を与えたりしないことが、基本的な保全行動になります。

東京湾の自然再生を学ぶ場所として見る

東京港野鳥公園を歩くと、東京湾の歴史が立体的に見えてきます。

江戸時代の東京湾は、漁業、海苔、舟運、河口の湿地が広がる生活の海でした。近代以降、東京は大都市となり、港湾、工場、倉庫、道路、鉄道を必要としました。海は埋め立てられ、ふ頭がつくられ、物流の要となっていきます。高度経済成長期の開発は、東京の生活を支える一方で、干潟や浅場を大きく減らしました。

しかし、東京港野鳥公園では、その埋立地に池や草原が生まれ、鳥が集まり、人が価値に気づき、保護を求め、行政が公園化し、さらに干潟再生が進められました。これは「開発か自然か」という単純な二択ではありません。都市をつくる過程で失われた自然を、どのように見つめ直し、どこまで回復し、どのように利用と保全を両立させるか、という問いです。

もちろん、再生された干潟は、かつての東京湾の干潟そのものではありません。面積も条件も違います。失われた環境が完全に元通りになるわけではありません。それでも、都市の中に水鳥が休める場所をつくり、子どもや大人が干潟の生きものを学び、東京湾の歴史を考えるきっかけを持てることには、大きな意味があります。

東京港野鳥公園は、自然観察の場所であると同時に、東京の近現代史を読む場所でもあります。周囲には市場、物流施設、幹線道路、運河、空港へ向かう交通があります。その中に、潮の満ち引きに合わせて鳥が動く干潟がある。このコントラストこそが、東京港野鳥公園のいちばんの魅力です。

よくある誤解

東京港野鳥公園は、昔から残っていた自然公園なのですか?

いいえ。現在の場所は、かつて遠浅の海でしたが、1960年代に埋め立てられました。その後、自然にできた池や草原に生きものが集まり、その環境を守る動きが公園化につながりました。

野鳥はいつ行ってもたくさん見られますか?

季節、時間帯、潮位、天候によって大きく変わります。公式情報では年間120種類前後の野鳥が観察されていますが、一日に見られる種類は限られます。訪問前にレンジャーブログや「当月見られる鳥」を確認するのがおすすめです。

干潟に降りて自由に生きものを探せますか?

保護区内の干潟には原則として降りられません。ただし、ネイチャーセンター地下1階の「がた潟ウォーク」では、干潟にすむ生きものを間近に観察できます。また、公式行事で前浜干潟に入る観察会が開催されることがあります。

双眼鏡がないと楽しめませんか?

双眼鏡があると楽しみやすいですが、なくてもネイチャーセンターの望遠鏡や観察ロビーから観察できます。貸出双眼鏡もありますが、数に限りがあるため、野鳥観察を続けたい人は軽い双眼鏡を用意すると便利です。

子ども連れでも楽しめますか?

楽しめます。芝生広場、ネイチャーセンター、干潟紹介コーナー、キッズコーナーなどがあり、鳥だけでなくカニやトビハゼ、昆虫なども観察できます。ただし、保護区への立ち入り、採集、餌やりはできません。

まとめ

東京港野鳥公園は、東京湾の近くにある静かな野鳥観察スポットであると同時に、東京の開発と自然再生の歴史を学べる場所です。

この場所は、もともと遠浅の海でした。1960年代に埋め立てられ、港湾や都市のための土地へ変わりました。しかし、整備を待つあいだに池や草原が生まれ、魚、カニ、昆虫、野鳥が集まりました。その自然を守ろうとした地域の人びとや専門家の声が、公園化につながりました。

現在の園内には、潮入りの池、前浜干潟、ヨシ原、淡水池、小川、雑木林があり、年間120種類前後の野鳥が観察されています。春と秋にはシギ・チドリ類の渡り、冬にはカモ類、季節を問わずサギ類や小鳥類などを観察できます。2000年には国際的なシギ・チドリ類重要生息地ネットワークにも参加し、東京湾が渡り鳥の中継地であることを伝える場所になりました。

見どころは、珍しい鳥の名前だけではありません。潮が引くと現れる泥、そこにすむ小さな生きもの、鳥が食べる瞬間、ヨシ原の中から聞こえる声、物流施設のすぐ近くに広がる水辺。そうした一つひとつが、東京という都市と自然の関係を教えてくれます。

東京港野鳥公園を歩くことは、東京湾の過去と現在を歩くことです。埋立地に戻ってきた自然を見ながら、これからの都市が水辺や生きものとどう向き合うのかを考える。そんな視点で訪れると、この公園は単なる観察スポットではなく、東京湾の歴史が見えるフィールドになります。

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参考資料

  1. 東京港野鳥公園|海上公園なび
  2. 東京港野鳥公園の歴史、フライウェイ・パートナーシップ|海上公園なび
  3. 施設案内|東京港野鳥公園|海上公園なび
  4. 利用案内|東京港野鳥公園|海上公園なび
  5. 前日確認された鳥・当月見られる鳥|東京港野鳥公園|海上公園なび
  6. 東京港野鳥公園レンジャーブログ
  7. 環境省|東アジア・オーストラリア地域フライウェイ・パートナーシップ(EAAFP)
  8. 環境省|東アジア・オーストラリア地域フライウェイ・パートナーシップの発足について
  9. 環境省|ラムサール条約と条約湿地
  10. 東京都港湾局|東京港の歴史
  11. 東京都港湾局|埋立地をつくる
  12. 東京港野鳥公園 公園Q&A|海上公園なび