決算書だけで会社を当てられる?スシロー・サイゼリヤ・マクドナルドで学ぶ決算書クイズ

スシロー店内の回転寿司レーンと卓上設備

「決算書は難しい数字の表」と思っていませんか。実は、売上高、売上原価、販管費、営業利益といった基本的な数字の「形」を見るだけでも、その会社がどんな商売をしているのかが見えてきます。

今回は、スシローを運営するFOOD & LIFE COMPANIES、サイゼリヤ、日本マクドナルドホールディングスの2025年度通期決算を使って、5問のクイズに挑戦します。会計用語を暗記するのではなく、「なぜこの数字になるのか」をビジネスモデルと結び付けて考えるのが目的です。

※3社は決算期も会計基準も同一ではありません。FOOD & LIFE COMPANIESは2025年9月期・IFRS、サイゼリヤは2025年8月期・日本基準、日本マクドナルドホールディングスは2025年12月期・日本基準です。本記事では単純な金額順位ではなく、主に売上高に対する比率と事業構造を読みます。

※クイズの回答結果は、個人を特定しない形で集計し、記事中の回答傾向の分析などに利用する場合があります。

スシロー店内の回転寿司レーンと卓上設備
スシロー店内の回転寿司レーン。撮影:RuinDig / Yuki Uchida/Wikimedia Commons/CC BY 4.0

まずは3社の数字を比べてみよう

2025年度通期の主要な数字を、売上を100とした比率に直すと次のようになります。

会社売上高・売上収益原価率粗利率販管費率営業利益率
FOOD & LIFE COMPANIES4,295.74億円43.0%57.0%48.6%8.4%
サイゼリヤ2,567.14億円41.9%58.1%52.0%6.0%
日本マクドナルドホールディングス4,166.02億円79.2%20.8%8.0%12.8%

一見すると、マクドナルドだけ形が大きく違います。この違いが最初のクイズです。

第1問 損益計算書の形だけでマクドナルドを当てられる?

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数字の形には「商売の仕組み」が出る

FOOD & LIFE COMPANIESとサイゼリヤは、原価率が約42〜43%、販管費率が約49〜52%です。一方、日本マクドナルドホールディングスは原価率79.2%、販管費率8.0%と大きく異なります。

ここで大切なのは、「原価率が高い=食材費が異常に高い」と即断しないことです。企業によって、何を売上高として計上し、どの費用を売上原価と販管費のどちらに入れるか、さらに直営店とフランチャイズ店をどの程度組み合わせているかが違います。

日本マクドナルドは直営店だけでなく、多数のフランチャイズ店を展開しています。2025年12月末の3,025店舗のうち、直営店は705店舗、フランチャイズ店は2,320店舗でした。この事業構造が決算書の見え方にも強く表れます。

日本のマクドナルド店舗外観
京都市内のマクドナルド店舗。撮影:HAGAT hOMSZE/Wikimedia Commons/CC0 1.0

第2問 「全店売上高8886億円」なのに連結売上高は4166億円?

問題を読み込んでいます…

「お店で売れた総額」と「会社の売上高」は同じとは限らない

日本マクドナルドの2025年の全店売上高(システムワイドセールス)は8,886.49億円です。一方、連結損益計算書の売上高は4,166.02億円でした。

数字だけ見ると、「4,700億円以上が消えたのでは?」と思うかもしれません。しかし、これは集計範囲の違いです。

全店売上高には、直営店だけでなくフランチャイズ店で消費者が支払った売上も含まれます。一方、フランチャイズ店は独立した事業者が店舗を運営するため、その店頭売上の全額がそのまま日本マクドナルドホールディングスの連結売上高になるわけではありません。

この違いを理解すると、決算書を見るときに「売上高はいくらか」だけではなく、「その会社は何を売上として認識しているのか」を確認する重要性が分かります。

第3問 スシロー系とサイゼリヤ、営業利益率が高いのは?

問題を読み込んでいます…

原価率が近くても、利益率は同じにならない

2025年度の営業利益率は、FOOD & LIFE COMPANIESが約8.4%、サイゼリヤが約6.0%です。

興味深いのは、原価率がFOOD & LIFE COMPANIES 43.0%、サイゼリヤ41.9%と比較的近いことです。それでも営業利益率には約2.4ポイントの差があります。販管費率はFOOD & LIFE COMPANIESが48.6%、サイゼリヤが52.0%で、ここにも差があります。

ただし、この差を見て「スシローのほうがサイゼリヤより経営効率が良い」と単純に結論付けるのは危険です。FOOD & LIFE COMPANIESの数字はスシロー単体ではなく、複数ブランドと国内外事業を含む連結数値です。また同社はIFRS、サイゼリヤは日本基準を採用しています。

決算書比較では、比率を計算した後に「比較対象の範囲は同じか」を確認する必要があります。

第4問 海外629店舗を展開していた会社は?

問題を読み込んでいます…

決算書と店舗数を組み合わせると企業像が立体的になる

正解のサイゼリヤは、2025年8月期末に国内1,053店舗、海外629店舗、合計1,682店舗を展開していました。海外店舗は全体の約37%です。

決算書だけで企業を読むときも、店舗数、地域別売上、直営・フランチャイズ比率などの非財務情報を合わせて見ると理解が深まります。

外食企業で同じ売上高でも、国内中心なのか海外展開が大きいのか、直営中心なのかフランチャイズ中心なのかによって、成長戦略もリスクも異なります。

FOOD & LIFE COMPANIESも国内外で事業を展開しています。2025年9月末のグループ店舗数は1,198店舗でした。ただし、この数字も「スシローだけの店舗数」ではなく、グループ全体を見る必要があります。

サイゼリヤの店舗外観
サイゼリヤ店舗。撮影:Kici/Wikimedia Commons/Public Domain

第5問 営業利益率12.8%のマクドナルドが「一番効率的」と言ってよい?

問題を読み込んでいます…

比率比較の最後に必ず「会計と事業構造」を確認する

3社の営業利益率だけを並べると、日本マクドナルドホールディングス12.8%、FOOD & LIFE COMPANIES8.4%、サイゼリヤ6.0%です。

しかし、ここまでのクイズで見たように、日本マクドナルドはフランチャイズ店が非常に多く、全店売上高と連結売上高の関係も他社と異なります。FOOD & LIFE COMPANIESとサイゼリヤでも、決算期、会計基準、ブランド構成、海外事業の比率が一致していません。

営業利益率は重要な指標ですが、「高い会社ほど無条件に優秀」というランキング表ではありません。なぜその利益率になっているのかを確認して初めて、数字が意味を持ちます。

初心者が決算書を見るときの3ステップ

最初から貸借対照表やキャッシュ・フロー計算書の細部まで読み込む必要はありません。まずは損益計算書で次の順番を見るだけでも、多くのことが分かります。

  1. 売上高(売上収益)はどのくらいか
  2. 売上原価、販管費、営業利益が売上の何%か
  3. その数字になる理由を、直営・フランチャイズ、国内・海外、事業内容などで確認する

この3段階を繰り返すと、「数字を見る」から「会社の仕組みを読む」へ進めます。

3社を比較して分かったこと

今回の3社はすべて外食企業ですが、決算書の形は同じではありません。

FOOD & LIFE COMPANIESは、スシローを中心に複数ブランドを展開する国内外の外食グループです。サイゼリヤは2025年8月期末で海外629店舗を展開するなど、海外店舗の存在感も大きくなっています。日本マクドナルドは、3,025店舗のうち2,320店舗がフランチャイズ店という事業構造が数字の読み方を大きく変えます。

つまり、決算書クイズの本当の答えは会社名ではありません。「この数字の裏にどんなビジネスモデルがあるか」を説明できるようになることがゴールです。

よくある質問

決算書初心者はどこから見ればよいですか?

まず損益計算書の売上高、売上原価、売上総利益、販管費、営業利益の5項目を見るのがおすすめです。それぞれを売上高で割って比率にすると、規模の違う企業でも特徴を比較しやすくなります。

営業利益率が高い会社ほど優秀ですか?

同じ業態・同じ会計処理に近い企業同士なら有力な比較材料になりますが、業態や収益認識、直営・フランチャイズ構成が大きく違う企業を単純に順位付けするのは適切ではありません。

マクドナルドの「全店売上高」と「売上高」は何が違いますか?

全店売上高は直営店とフランチャイズ店を含む店舗全体の売上規模を示します。連結売上高は会社の会計上の収益として計上される金額で、フランチャイズ店の店頭売上が全額そのまま計上されるわけではありません。

スシローの決算書を調べるときは何という会社を見ればよいですか?

上場会社はFOOD & LIFE COMPANIESです。同社の連結決算にはスシローだけでなく他ブランドや海外事業も含まれるため、「スシロー単体の決算」と誤解しないことが重要です。

まとめ

決算書は、数字を覚えるための資料ではなく、会社の商売の仕組みを読み解く材料です。

今回の3社だけでも、原価率と販管費率、フランチャイズ比率、全店売上高と連結売上高、国内外店舗数を組み合わせることで、同じ「外食企業」でも大きく異なるビジネスモデルが見えてきました。

まずは「売上を100としたら、原価・販管費・営業利益は何%か」を見るところから始めてみてください。

参考文献