Abalance上場廃止はなぜ?有償支給取引・会計問題・内部統制を解説

2018年の東京証券取引所メインルームと円形の電光掲示板

2026年8月25日、東京証券取引所はAbalance株式の上場廃止を決定しました。9月8日現在は整理銘柄に指定されており、上場廃止予定日は9月26日です。

発端は、国内子会社WWBの「有償支給取引」をめぐる会計処理でした。2024年の社内調査は誤謬と整理しましたが、2025年の第三者委員会は意図的・組織的な不正会計と評価します。2026年の検証委員会はその「不正・粉飾」という評価に異論を示しながら、経理、関連当事者取引、取締役会、監査等委員会、海外子会社管理に深刻な問題があったと認定しました。

東証が最終的に上場廃止の理由としたのは、会計処理一件の評価ではなく、内部管理体制が適切に整備・運用される見込みがなくなったことです。

2026年の会計・内部統制問題を横断的に見る場合は「バブル崩壊後の金融・会計不祥事史」、会計不正と内部統制の基本は「不正会計はなぜ繰り返される?」で詳しく扱っています。

Abalanceはどんな会社?IT企業から太陽光へ

Abalanceの前身は2000年設立のリアルコミュニケーションズです。ソフトウェア・IT事業から始まり、2007年に東証マザーズへ上場しました。

2011年、太陽光発電システムなどを扱うWWBを株式交換で完全子会社化し、再生可能エネルギーへ事業の軸足を移します。2017年に現在のAbalanceへ社名変更し、その後は太陽光パネル製造、発電所開発、蓄電池などを国内外へ拡大しました。

2020年代には海外子会社の売上がグループ全体の大部分を占めるまで成長しました。この急拡大に対し、親会社側の経理・情報管理・監督体制をどう整えるかが後の大きな問題になります。

有償支給取引とは何だった?

問題の中心となったのは、WWBが太陽光発電所を建設する際の部材取引です。WWBは太陽光モジュール、架台、パワーコンディショナーなどを建設業者へ有償で渡し、その部材を組み込んだ発電設備を完成後に取得していました。

原材料を外部へ有償で渡し、加工後の製品を買い戻す取引を有償支給取引と呼びます。WWBでは2021年6月期、単体決算で売上計上した金額をAbalanceの連結決算で消去する処理が行われました。2022年6月期と2023年6月期には、その連結消去が行われず売上・利益が残りました。

たとえば、WWBが建設会社へ1億円の太陽光パネルを販売し、そのパネルを使って建設された自社向け発電所を取得する場合、グループ全体では通常の外部顧客への販売と同じ利益とは扱えません。連結消去が抜けると、グループ売上や利益が大きく表示されます。

2023年6月期、WWBの利益はどれだけ変わった?

2025年の第三者委員会は、有償支給取引による影響を除いてWWB単体の2023年6月期業績を再計算しました。

WWB 2023年6月期計上額有償支給取引を除いた場合差額
売上高約63.45億円約42.14億円約21.30億円減
営業利益約9.95億円約2.11億円約7.60億円減
経常利益約8.43億円約0.82億円約7.60億円減
税引前利益約8.01億円約0.40億円約7.60億円減

有償支給取引を除くと、営業利益は約4分の1、経常利益と税引前利益はほぼゼロに近い水準となります。第三者委員会は、資金調達や業績評価との関係から、利益を高く見せる誘因が強かったと分析しました。

2024年の最初の調査はなぜ「誤謬」とした?

有償支給取引は一度、2024年に表面化しています。Abalanceは決算発表を延期し、監査等委員会が調査を実施しました。3月14日に過年度決算を訂正し、3月26日に調査報告書の要旨を公表します。

当時の調査は、経営陣や営業部門から不正を直接指示した証拠は確認されず、経理部門の会計知識不足、取引ごとの紐付けの難しさなどによる誤謬と整理しました。

2026年の検証委員会は、この2024年調査について、公認会計士が調査メンバーにおらず、デジタル・フォレンジックも行われず、会社側が選んだ資料への依存が大きかったと指摘しました。決算を早く確定させる時間的制約もあり、社内で持たれていた不正への懸念が監査等委員会へ十分共有されていなかったとしています。

2025年第三者委員会はなぜ「粉飾」と評価した?

2025年8月、Abalanceは外部専門家による第三者委員会を設置しました。12月に公表された報告書は、有償支給取引について「意図的かつ組織的に行われた不正な会計処理」と評価しました。

第三者委員会が重視したのは、連結消去漏れの反復だけではありません。注文書・納品書に品番、数量、単価、日付など重要情報が欠ける例、無償支給だった取引を後から有償支給へ変更した案件、売掛金を固定資産や建設仮勘定へ振り替えた処理などを確認しました。

複数案件に共通する処理と文書の状況を踏まえ、第三者委員会は偶発的な会計ミスの積み重ねという説明を採りませんでした。

2026年検証委員会は「不正」の評価に異論

会社は第三者委員会報告書を再検証するため、別の外部専門家による検証委員会を設置しました。2026年2月の検証報告書は、「重過失」まで不正に含める第三者委員会の評価方法に異論を示し、不正認定には意図性が必要だと整理しました。

そのため、検証委員会は有償支給取引を一括して粉飾と評価することには否定的でした。一方で、会計処理、経理体制、関連当事者取引、取締役会、監査等委員会、海外子会社管理について深刻な内部管理上の問題を認定しています。

第三者委員会と検証委員会は「不正会計」という評価で結論が分かれました。上場会社としての内部管理が大きく損なわれていたという点では、両報告書の問題意識は重なります。

海外売上の大半を一人へ依存したグループ管理

検証委員会は、大株主で経営トップだった龍潤生氏に事実上の権限と海外子会社情報が集中し、役職員が同氏の意向を強く意識する組織風土が生じていたと指摘しました。

海外子会社はグループ売上の9割超を占めていました。それにもかかわらず、海外事業の経営情報を親会社側で組織的に把握・検証する体制が弱く、経営トップ個人への情報依存が続きました。

第三者委員会の調査範囲も主として国内案件で、売上の大部分を占める海外グループ全体のガバナンスは委嘱範囲外でした。検証委員会は、上場会社として海外事業を管理する構造そのものの再設計が必要だと判断します。

プロジェクトファイナンス|請求書と資金移動で何が起きた?

第三者委員会は、大和大衡太陽光発電所をめぐるプロジェクトファイナンスについても調査しました。

2021年、工事会社が当初約3億2,187万円としていた請求書について、WWB側から約6億1,782万円へ変更し、支払期日も早めるよう依頼したと認定されています。金融機関へ提出した後には、請求書データの金額を上から貼り付ける形で修正した資料も作成されました。

融資実行日には金融機関から16億円が入金され、WWBから工事会社へ約6.18億円が支払われた後、工事会社からWWBへ約5.18億円が戻る資金移動が行われました。第三者委員会は、支払実績を外形上作るための入出金と評価しています。

当時のWWBは資金繰りが逼迫しており、報告書は16億円の融資がなければ月末に資金不足となる状況だったと分析しました。

龍氏への2億9000万円貸付と第三者割当増資

2025年4月9日、WWBは龍氏へ2億9,000万円を貸し付けました。4月28日、龍氏はAbalanceの第三者割当増資で1億5,000万9,000円を払い込みました。

検証委員会は、貸付金の一部が増資払込みに使われたことを確認し、関連当事者取引の管理と開示を問題視しました。

貸付時にはWWB取締役会で十分な合理性や条件の検討が行われず、検証委員会は取締役会が実際には開催されないまま形式的な議事録が作成されたと認定しています。返済期限後の対応や利息・遅延損害金の管理にも問題がありました。

なぜ会社分割まで提言された?

検証委員会は、海外事業に関する情報と意思決定が龍氏へ集中しているため、個人の役職を変えるだけでは根本的な改善にならないと判断しました。

提言の中心は、会社分割などで国内部門と海外部門を切り離し、龍氏は海外事業へ専念し、上場会社側の経営から離れる構造です。国内側の上場会社は、経営・経理・監査を独立して再構築する案でした。

2026年7月31日にAbalanceが公表した改善計画では、この会社分割等の措置を「実施困難」と判断し、龍氏が取締役として残り、海外事業も同じグループ内で管理する方針を示しました。

特別注意銘柄から上場廃止審査へ

東京証券取引所は2026年1月31日、Abalanceを特別注意銘柄に指定し、上場契約違約金4,320万円を徴求しました。理由には、有償支給取引、海外子会社管理、関連当事者取引、2024年調査の不十分さ、取引所側への回答など内部管理体制の広い問題が含まれました。

7月31日に改善計画が公表されると、東証は「内部管理体制等が適切に整備・運用される見込みがなくなった場合」に該当する可能性があるとして、監理銘柄(審査中)へ指定しました。

焦点となったのは、検証委員会が根本改善策として挙げた権限集中の解消と国内・海外部門の切り離しを会社が実施しない方針を示したことです。

監査人の「意見不表明」は何を意味する?

Abalanceでは、2026年3月期半期報告書で期中レビューの結論不表明が付き、その後の有価証券報告書や複数の訂正報告書でも意見不表明・結論不表明が記録されています。

意見不表明は、監査人が十分かつ適切な監査証拠を得られず、財務諸表全体について監査意見を形成できない状態です。2026年3月期の監査では、グループ全体で有償支給取引を網羅的に把握する内部統制が構築されていないことなどが根拠として挙げられました。

会社の決算を「誤り」と断ずる不適正意見とは制度上の意味が異なります。Abalanceでは過年度まで監査証拠の不足が広がり、財務情報の信頼回復を難しくしました。

東証はなぜ1年を待たず上場廃止を決めた?

東証は2026年8月25日、特別注意銘柄指定から1年を待たずに上場廃止を決定しました。上場規程には、内部管理体制確認書の提出前でも、内部管理体制が適切に整備・運用される見込みがなくなったと認めれば上場廃止とする規定があります。

東証は、会社が根本的な権限集中の解消と国内・海外部門の切り離しを行わない方針を明確にしたこと、特別注意銘柄指定後も海外子会社の重要情報が元経営トップへ集中して適時開示の遅延が生じたこと、監査人が有償支給取引をグループ全体で把握できない内部統制を指摘したことを重く見ました。

東証は改善計画が内部管理体制の改善を見込める水準に達していないと判断し、上場廃止を決定しました。

2026年9月8日現在|まだ上場中、9月26日に上場廃止予定

Abalance株式は2026年8月25日から9月25日まで整理銘柄に指定されています。上場廃止予定日は9月26日です。

上場廃止決定に伴い、特別注意銘柄の指定は取り消されました。9月8日現在の状態は「上場廃止済み」ではなく、上場廃止が決定し整理銘柄として売買されている期間です。

エア・ウォーターと比べると何が違う?

会社内部統制問題の特徴2026年9月8日時点
エア・ウォーター業績目標、M&A後の子会社管理、経理・内部監査の機能不全特別注意銘柄として改善中
Abalance有償支給取引、関連当事者取引、海外情報の権限集中、改善計画の根幹未実施上場廃止決定・整理銘柄

エア・ウォーターの具体的な会計処理と改善状況は「エア・ウォーター不適切会計問題とは?」で詳しく整理しています。Abalanceでは、問題認定後に示された根本改革を会社が実施困難と判断したことが、上場廃止審査へ直接つながりました。

参考文献

  1. Abalance「初めての方へ」
  2. Abalance「監査等委員会調査報告書(要旨版)」(2024年3月26日)
  3. Abalance「第三者委員会調査結果報告書」(2025年12月17日)
  4. Abalance「検証委員会の検証報告書」(2026年2月26日)
  5. Abalance「検証委員会の提言等に関する開示」(2026年3月4日)
  6. Abalance「第三者割当による新株式の発行に関する開示事項の訂正」(2026年3月3日)
  7. 日本取引所グループ「特別注意銘柄の指定及び上場契約違約金の徴求:Abalance」
  8. 日本取引所グループ「監理銘柄(審査中)の指定:Abalance」
  9. 日本取引所グループ「上場廃止等の決定:Abalance」
  10. 日本取引所グループ「不適正意見・意見不表明・限定付適正意見等一覧」