宇宙考古学とは?Google Earth・CS立体図で遺跡を探す初心者ガイド

ASTER衛星画像で見た大阪府堺市の百舌鳥古墳群

パソコンの画面で山の地形を眺め、そこに人工的な平坦面や溝を見つける。そこから現地へ向かい、本当に未知の城郭遺構へたどり着く――日本では高校生がこの流れで新しい山城を発見した実例があります。

遺跡探索では、衛星画像に加えて航空写真、LiDAR(航空レーザー測量)、GIS、標高データを加工したCS立体図などを組み合わせます。地上ではつかみにくい地形や植生の差を抽出し、画像上で候補を見つけ、既知の遺跡や近代の造成と照合し、現地調査へ進むところまでがデジタル考古学の実践です。

宇宙考古学とは?宇宙から遺跡を探す新しい考古学

日本語で「宇宙考古学」と呼ばれる研究は、人工衛星から得た画像や各種の地球観測データを考古学へ応用し、遺跡や古環境の手掛かりを探る方法を中心に発展してきました。文部科学省の資料でも、衛星情報を考古学へ応用するリモートセンシングの研究として紹介されています。

ASTER衛星画像で見た大阪府堺市の百舌鳥古墳群
宇宙から見た百舌鳥古墳群。ASTER観測画像。NASA/METI/AIST/Japan Space Systems, U.S./Japan ASTER Science Team/Wikimedia Commons/Public Domain。

上のASTER画像には、大阪府堺市の百舌鳥もず古墳群が周辺の市街地とともに写っています。巨大な墳丘や濠は、広域を一度に見ることで配置関係まで把握しやすくなります。

衛星画像では、地表の色、植物の育ち方、土壌や水分の違い、地形の微細な高低差などを手掛かりに「遺構らしい形」を探します。そこで得た候補をGIS上で地図や既存資料と重ね、現地踏査や測量、必要に応じて発掘へ進みます。

研究の射程は広く、衛星画像だけでなく航空写真、ドローン、航空レーザー測量、LiDAR、GIS、CS立体図も同じ探索の中で使われます。日本では「宇宙考古学」という名称に加え、「リモートセンシング」「GIS」「航空レーザー測量」「LiDAR」などの語で研究成果が発表されることも多くあります。

英語圏では “space archaeology” が、人類の宇宙開発によって月面や地球周回軌道などに残された人工物を考古学的に研究する分野を指す場合もあります。また、古代の遺構や文化と天体観測・暦・天文知識の関係を扱う考古天文学(archaeoastronomy)とも別の分野です。ここでは、日本で一般に使われる「地球観測データから地上の遺跡を探る宇宙考古学」を軸に扱います。

なぜ上空から遺跡が見つかるのか

遺跡の痕跡は、地上で一か所ずつ見ていると自然地形に紛れます。上空から広い範囲を一度に見ると、直線、円、方形、尾根を横切る溝、連続する平坦面のような「周囲と違うパターン」を拾いやすくなります。

クロップマーク(cropmark)は、地下の溝や壁などが土壌の水分や根の伸び方に影響し、作物の高さや色の差として現れる現象です。干ばつ時には差が強調されることがあります。ソイルマーク(soilmark)は耕作地の土の色や質感の差として現れます。アースワーク(earthwork)は、堤、溝、墳丘、城郭の土塁など、地表に人工的な凹凸が残る遺構です。

英国グロスターシャー州ネズリーの畑に現れた考古学的クロップマーク
畑の植生差として現れた遺構の痕跡(クロップマーク)。撮影:Dr John Wells/Wikimedia Commons/CC BY 3.0。

可視光画像は人の目に近い色で地表を見られ、近赤外線は植生の状態を捉えるのに向きます。SAR(合成開口レーダー)は電波を使うため、光学画像とは異なる地表面の情報を得られ、雲や夜間の制約を受けにくい特徴があります。用途ごとに得意な情報が違うため、複数のデータを重ねるほど候補の見方が増えます。

森林に覆われた山城や古道ではLiDARが強力です。航空機などからレーザーを照射すると、樹木に当たる点だけでなく地表面まで届く点も得られます。植生を除く処理を施した標高モデルから、尾根、谷、段差、溝などの微地形を読み取れます。

LiDARで捉えたアメリカのエフィジー・マウンズ国定記念物の墳丘地形
LiDARで捉えたエフィジー・マウンズ国定記念物の微地形。U.S. National Park Service/U.S. Geological Survey/Wikimedia Commons/Public Domain。

CS立体図は、標高データから曲率、傾斜、標高などを組み合わせ、尾根と谷、急斜面と緩斜面を一枚の図で直感的に読めるようにした地形表現です。山中の曲輪くるわの平坦面、堀切ほりきりの溝、切岸きりぎしの急斜面などが周囲の自然地形と違う形として見えることがあります。

初心者は「写真を見る」「地形を見る」「昔の写真を見る」「既知の遺跡と照合する」の4方向に分けると整理しやすくなります。航空・衛星画像で土地利用を確認し、CS立体図や陰影起伏図で微地形を見て、過去の航空写真で近代造成の有無を確かめ、文化財データベースで既知の遺跡と照合します。

世界ではどんな遺跡が宇宙・航空画像から見つかっている?

上空からの探索には、研究者が計画的に行う専門研究、個人が公開画像から候補を見つける探索、市民が大量の画像判読に参加する市民科学があります。同じ「画面から見つける」活動でも、発見後の検証方法と役割が違います。

国・地域/区分発見者・参加者方法発見内容その後の確認
2007年ごろカザフスタン/個人・愛好家Dmitriy DeyGoogle EarthTurgai地域の巨大な幾何学的地上構造研究チームが現地調査と年代測定を実施。研究報告では60以上の構造が画像から確認され、調査対象の一部で紀元前1千年紀の年代が示されています。
2000年代〜英国ケント州/個人の発見→専門調査Chris Blair-MyersGoogle Earthのクロップマークローマ時代の建物跡とみられる方形の痕跡現地踏査、試掘、物理探査、発掘へ進み、ヴィラの建物、浴場、ハイポコーストなどを確認。
2018年7月アイルランド・ニューグレンジ周辺/個人の発見Anthony Murphy、Ken Williams干ばつ時のクロップマークをドローン撮影大規模な新石器時代の円形遺構「Dronehenge」考古学者・文化遺産機関が記録し、既知の儀礼景観に加わる遺構として研究。
継続中英国/市民科学Deep Time参加者衛星画像、LiDAR、航空写真、歴史地図広域の考古学的特徴をオンラインでマッピング2026年8月確認時の公式サイトでは6,500人超が参加し、5,300km²をマッピング。無料研修、段階的な品質確認、専門家の検証を組み込む。
1980年代以降米国南西部/専門研究NASA研究者・考古学者航空・衛星リモートセンシングChaco Canyon周辺の古代道路など画像で追跡した直線的道路を地上調査チームが確認。
2010年代以降中米マヤ地域/専門研究大学・研究機関航空LiDAR森林下の建造物、道路、水管理施設などCaracolなどで地表調査と組み合わせ、広域の集落・貯水施設を把握。

ケント州の例は「Google Earthで怪しい形を見つける→現地で確かめる」という流れが分かりやすい事例です。Chris Blair-Myersが画像上のクロップマークに気づき、その後の調査でローマ時代のヴィラと浴場施設へ結びつきました。一方、Deep Timeは個人の偶然発見を競う仕組みではなく、訓練を受けた多数の参加者が広い地域を判読し、品質管理と専門家確認を重ねる大規模な市民科学です。

Turgai geoglyphsも公開画像の可能性を示します。Dmitriy Deyは2007年ごろGoogle Earthで幾何学的な地上構造に気づきました。のちの研究では画像上で多数の構造が認識され、一部が現地調査と光刺激ルミネッセンス年代測定の対象になりました。画像上で見つかった「形」と、年代や文化的意味まで確定した遺跡とは段階が異なることも、この事例から分かります。

日本でも宇宙考古学は行われている?

日本には衛星リモートセンシングを考古学に使う長い研究実績があります。東海大学情報技術センターは1994年からエジプトのピラミッド探査を進め、早稲田大学などとダハシュール周辺で衛星データ、DEM(数値標高モデル)、既存の考古学情報を統合しました。候補地点の選定後、1996年から発掘調査が始まり、ダハシュール北遺跡の研究へつながっています。

研究対象はエジプトだけに限られず、中国・西安周辺、秦始皇帝陵、シルクロードなどにも広がっています。東海大学では2025年12月にも「宇宙考古学セミナー」が開かれ、シルクロードをめぐる最新の研究が扱われました。衛星による地球観測の技術史は、人工衛星の歴史をたどると、考古学に使える観測データが増えてきた背景までつながります。

日本国内では、宇宙からの画像に加えて航空レーザー測量と公開標高データの活用が目立ちます。国土地理院や自治体が整備した地形データ、奈良文化財研究所の文化財データベースが自宅から利用できるため、衛星画像、微地形、既知遺跡を同じ調査の中で照合できます。日本の地球観測やロケット・衛星開発の流れは、日本の宇宙開発史でも詳しく紹介しています。

日本と海外ではどちらが盛ん?

国別の単純な順位より、どの種類の調査が公開され、一般参加の入口がどこにあるかを比べる方が実態に近くなります。

比較項目日本海外の目立つ例
専門研究衛星リモートセンシング、GIS、航空レーザー測量などの蓄積がある。NASA・大学・文化遺産機関などが乾燥地、森林、都市遺跡まで広く研究。
衛星リモートセンシング東海大学などが海外遺跡調査で長期的に実施。光学、SAR、マルチスペクトルなどを大規模調査に利用。
LiDAR/航空レーザー測量国・自治体の標高データ公開が進み、山城や古道の微地形判読に使いやすい。中米マヤ地域など、森林下の広域遺跡把握で大きな成果。
市民参加個人・学生が公開地形データを使う事例が現れている。英国Deep Timeのような大規模なオンライン市民科学が目立つ。
公開データ地理院地図、文化財総覧WebGIS、全国文化財総覧などが充実。Copernicus、NASA、OpenTopographyなど国際的な公開基盤が充実。
一般人が参加できる仕組み公開サービスを自分で組み合わせて探索する形が中心。市民科学プロジェクトへ登録し、訓練を受けて参加する形もある。

日本の強みは、既知の文化財、現在の地形、過去の航空写真、細かな標高データを無料で往復できることです。専門研究の蓄積と公開データの両方があり、一般の利用者も「既知の遺跡を見て判読を覚える」ところから始められます。

一般人でも本当に新しい遺跡を発見できる?

画面上で「怪しい地形」を見つける段階と、考古学的な新発見として確認される段階は分かれています。候補地が既知遺跡か、林道や造成地かを資料で照合し、現地で人工的な構造を確かめることで、初めて評価が進みます。

山城はデジタル地形図と相性のよい対象です。尾根上の曲輪くるわ、尾根を断つ堀切ほりきり、斜面を急に削った切岸きりぎし、斜面を下る竪堀たてぼり、防御のために盛った土塁どるいは、地形そのものに痕跡が残るからです。

人物・参加者地域発見・研究入口となった方法確認・発表
田中俊輔さん東京都青梅市日向和田要害山城の城郭遺構中世城郭の現地踏査を含む個人研究学会誌『中世城郭研究』などで報告
伊藤拓生いとうひろきさん長野県長野市松代町新発見の山城「赤柴城」CS立体図現地・資料調査を行い、奈良大学の全国高校生歴史フォーラムで学長賞
「縄張りくん」栃木県鹿沼市櫃沢城ひつざわじょうCS立体図地理院地図で位置を特定し、現地調査で曲輪・土塁・複数の堀切を確認

この3例は経路が異なります。田中さんの例は現地踏査を含む城郭研究、伊藤さんと鹿沼市の例はデジタル地形図が発見の入口です。どの例も、画面上の形だけで完結せず、現地や資料の確認へ進んでいます。

東京・青梅で新たな山城を発見|田中俊輔さんと日向和田要害山城

東京都青梅市日向和田ひなたわだの要害山では、2020年に田中俊輔さんが城郭遺構を発見したと静岡古城研究会が紹介しています。尾根上には堀切ほりきり曲輪くるわ状の遺構が確認され、築城主体や年代は未詳です。

この遺構は、その後も研究対象になりました。『中世城郭研究』第37号(2023年)には、田中俊輔「青梅市要害山の城郭遺構」が研究ノートとして掲載されています。田中さんは武蔵高等学校で多摩川上流域の中世城郭を研究し、板橋区の第22回「櫻井徳太郎賞」では「16世紀甲武“境目”地域における道と城郭―多摩川上流域を例として―」が高校生の部優秀賞を受賞しました。翌年度の第23回では「甲武相国境地域の中世城郭と築城背景の考察」が佳作に選ばれています。

2026年には東京大学文科三類へ入学しました。東京大学の新入生インタビューでは、中学頃から郷土史・中世史に関心を持ち、高校時代に学会誌へ投稿し、研究者との共同調査にも取り組んだ経緯が紹介されています。

この事例は、若い個人研究者が継続的な現地踏査と城郭研究から未知の城郭遺構を見つけ、学会誌での報告や地域史研究へ進んだ実例です。

高校生がCS立体図から新しい山城を発見|伊藤拓生さんと「赤柴城」

2024年度、駒場東邦高校1年の伊藤拓生いとうひろきさんは、CS立体図を使って長野市松代町に未知の城郭らしい地形を見つけ、自ら「赤柴城」と名付けました。駒場東邦中学校・高等学校の公式発表は「CS立体図を活用して、新城を発見」と明記しています。

伊藤さんは画像上の候補で終わらせず、現地調査と資料調査へ進みました。研究題目は「新発見の山城『赤柴城』の存在意義―その立地と縄張りの比較分析―」。奈良大学「第18回全国高校生歴史フォーラム」では、全86篇の研究レポートから学長賞に選ばれました。奈良大学の公開レポートには「長野県長野市松代町赤柴」と記された縄張り図が掲載されています。

調査の流れは、デジタル探索の手本になります。最初にCS立体図で不自然な平坦面や尾根を断つ地形を捉え、現地で曲輪くるわ堀切ほりきりなどの構造を確認し、周辺の城郭、街道、史料と比較します。そこから築城主体や築城意図という歴史的な問いへ進みました。

2025年度には、八王子城の石垣構造を実測・分析した研究でも全国高校生歴史フォーラムの学長賞を受賞し、2年連続受賞となりました。赤柴城の発見が一度きりの画像判読ではなく、現地測量と比較研究へつながったことが分かります。

無料で使える「デジタル考古学」サービス一覧

日本国内を初めて調べるなら、文化財総覧WebGIS地理院地図Google Earthの3つが基本になります。山城ではCS立体図を加えると、写真だけでは分かりにくい微地形を追えます。

文化財総覧WebGISは2026年3月30日に機能が拡張され、全国1mDEM・全国5mDEMからCS立体図を動的に生成して描画できるようになりました。既知の文化財情報と高精細な地形表現を同じ画面で行き来できるため、国内の初心者にとって特に有力な入口です。

サービス料金・利用条件主な機能得意なこと初心者向け度山城探しでの役割
Google Earth / Google Earth Pro基本無料航空・衛星画像、3D地形、過去画像周辺環境と土地利用を立体的に見る道路・斜面・集落との位置関係、近年の変化を確認
地理院地図無料地形図、標高、陰影、傾斜、年代別空中写真地形と過去写真の比較林道、造成、尾根、標高、過去の土地利用を照合
文化財総覧WebGIS無料文化財情報、遺跡地図、地形レイヤー、動的CS立体図既知遺跡と地形を同じ画面で見る候補が既知遺跡か確認し、CS立体図で周辺地形も判読
全国文化財総覧無料発掘調査報告書等の検索・閲覧既存調査を文献から確認候補地周辺の発掘報告、遺跡名、既往研究を調べる
CS立体図文化財総覧WebGIS等で無料閲覧可能曲率・傾斜・標高を組み合わせた微地形表現尾根・谷・平坦面・溝の判読曲輪、堀切、切岸など人工地形候補を探す
赤色立体地図地理院地図で無料閲覧可能起伏を赤色の濃淡で表現微地形の直感的把握山体の凹凸や斜面形を別表現で見比べる
Copernicus Browser公開データは無料。機能によりアカウント利用Sentinel光学・SAR等の検索・表示時期を変えた衛星データ比較広域の土地被覆、植生、災害・環境変化の確認
NASA Worldview無料NASAの多数の地球観測レイヤーを時系列表示広域の環境変化を素早く見る小規模な城郭形状より、広域環境や季節変化の補助確認
OpenTopography公開範囲は無料。高解像度データ等はアカウント、所属、OT+契約で利用範囲が異なるLiDAR、DEM、点群、陰影図等高解像度地形データの取得・処理利用可能地域で詳細な微地形を検討

Google Earthは周囲の景観、地理院地図は地形と時間変化、文化財総覧WebGISは既知文化財との照合、CS立体図は微地形の発見という役割分担にすると、同じ画面を何度も眺めるより効率よく候補を絞れます。衛星データそのものを比較したい場合はCopernicus Browser、広域環境の時系列にはNASA Worldview、高解像度地形データを扱いたい場合はOpenTopographyが補助になります。

実際にやってみよう|山城候補を探す方法

まずは櫃沢城の発見プロセスを追体験する

最初の練習には、栃木県鹿沼市が公開している櫃沢城ひつざわじょうの事例が向いています。公式記事では、城の縄張りを長年調べている「縄張りくん」がCS立体図を眺め、粕尾城の北約500mに城らしい陰影を見つけた過程が3段階で公開されています。

  1. 鹿沼市公式の記事で、CS立体図に現れた段状の曲輪くるわ候補、尾根を横切る堀切ほりきり候補、土塁どるい状地形を確認します。
  2. 地理院地図の公開位置を開き、地形図と陰影を重ねたときに場所がどう特定できるか見ます。
  3. 文化財総覧WebGISで同じ周辺を開き、CS立体図と既知の文化財情報を確認します。
  4. Google Earthで3D地形、道路、集落、土地利用を見ます。
  5. 公式記事の現地写真と比べ、「人工的な平坦面に見える部分」「尾根を切る溝」「自然斜面や造成との違い」を対応させます。

鹿沼市の記事では、CS立体図で候補を見つけた後、国土地理院の地形図と重ねて位置を特定し、現地調査で曲輪、土塁、複数の堀切を確認しています。同時に、CS立体図では段状の陰影に隠れて判別できなかった堀切も現地で見つかりました。既知の正解例を追うと、「画面で見えるもの」と「現地で初めて分かるもの」を分けて覚えられます。

自分で候補地を探してみる

  1. 調べる地域を決める。市町村単位や一つの谷筋など、最初は狭い範囲にします。
  2. 近くの既知の山城を見る。CS立体図で曲輪、堀切、切岸などの典型的な形を覚えます。
  3. 周辺へ範囲を広げる。尾根、峠、旧街道沿い、谷の出口など、城や交通路との関係が考えられる場所を見ます。
  4. 人工地形の候補を拾う。連続する平坦面、尾根を横切る溝、斜面の不自然な段差、土塁状の盛り上がりを記録します。
  5. 地理院地図で照合する。航空写真、陰影起伏図、年代別空中写真を切り替え、林道、採石場、造成、棚田などを確認します。
  6. Google Earthで周辺環境を見る。3D地形と過去画像を使い、尾根への道路、造成時期、現在の土地利用を見ます。
  7. 文化財情報と報告書を調べる。文化財総覧WebGISと全国文化財総覧で、既知遺跡、自治体の遺跡地図、発掘報告を確認します。
  8. 候補として記録する。画像だけで名称を付けず、確認した資料と根拠を残します。

記録には、候補ID、市町村、緯度経度、人工地形に見えた理由、CS立体図、航空写真、既知遺跡の有無、確認資料、確認日、確信度を残すと比較しやすくなります。最初は未知の城を探すより、既知の城を自分で当てられるか試す方が、地形判読の練習になります。

山城は地形図でどう見える?初心者が見る5つのポイント

遺構地形図・CS立体図での見え方自然地形と比べるポイント
曲輪くるわ山頂や尾根上にある平坦な面。段々に連続することもある。周囲の斜面に対して急に平らになり、複数の面が防御施設と組み合わさるかを見る。
堀切ほりきり尾根筋を横切る溝状の凹地。自然の谷が斜面方向へ下るのに対し、尾根を意図的に断つ向きになっているかを見る。
切岸きりぎし平坦面の縁に連続する急斜面。曲輪の周囲だけ急になり、防御面としてまとまった形をつくるかを見る。
竪堀たてぼり斜面を上下方向に走る細長い溝。自然の沢と違い、曲輪や横堀、土塁など他の防御施設と接続するかを見る。
土塁どるい曲輪の縁などに沿う細長い盛り上がり。地形の自然な尾根ではなく、平坦面や堀に沿って連続する配置かを見る。

一つの形だけで城と判断するより、「平坦面の端に急斜面がある」「尾根の付け根を堀切が断つ」「土塁と溝が連続する」という複数の特徴の組み合わせが重要です。さらに、峠、旧街道、川、既知の城郭との位置関係を重ねると、自然地形と人工地形を分ける手掛かりが増えます。

「発見した!」と思ったらまず疑うもの

人工的に見える地形の多くは、城郭以外の人間活動や自然現象でも生まれます。代表的なのは林道、戦後の造成地、採石場、棚田・段々畑、炭焼き窯跡、砂防施設、電力・通信関係施設、神社などの造成地です。自然の段丘や地滑り地形も、長い平坦面や不規則な段差をつくります。

鹿沼市の櫃沢城ひつざわじょうの記事では、荒廃した畑や神社跡が曲輪くるわのように映る例が挙げられています。逆に、現地にある堀切ほりきりがCS立体図の陰影だけでは判別できなかった場所もありました。デジタル地形図は候補を見つける道具で、近代造成を除外する資料と現地で補い合います。

林道なら現在の道路データや航空写真に接続し、棚田なら斜面全体に等高線状の段が広がります。採石場は過去の航空写真で地形が大きく変化しやすく、砂防施設は谷筋と道路アクセスに対応します。年代別航空写真を遡ると、「いつからその形があるか」が強い手掛かりになります。

本当に未知の遺跡らしいものを見つけたらどうする?

候補が残ったら、位置、スクリーンショット、確認した地図・資料、人工地形と考えた理由を一つにまとめます。文化財総覧WebGIS、自治体の遺跡地図、全国文化財総覧などを再確認すると、別名で登録された既知遺跡や過去の調査報告に行き当たることがあります。

既存資料で確認できない場合、自治体の教育委員会や文化財担当部署へ位置と根拠を添えて情報提供する方法があります。対象によっては博物館や大学の研究者が資料照合や現地確認に加わります。「新発見」という評価は、既存資料との照合と現地での検証を経て固まります。

現地が私有地なら、土地所有者・管理者の許可や公開状況が調査方法を左右します。また、未登録遺跡の正確な座標が公開されると、盗掘や無断立入りにつながる場合があります。候補の記録は詳しく残しつつ、外部へ示す情報の範囲は文化財担当者と相談する形が実務的です。

まずは自宅からデジタル遺跡探しをやってみよう

文化財総覧WebGIS、CS立体図、地理院地図Google Earthを組み合わせると、自宅のPCから既知の遺跡を観察し、周辺の地形を読み、新しい候補を記録するところまで進められます。

伊藤拓生いとうひろきさんの赤柴城や、鹿沼市の櫃沢城ひつざわじょうは、デジタル地形図から候補を見つけ、現地調査へ進んだ実例です。まず公開済みの城を同じ地図で追い、自分の地域へ少しずつ範囲を広げると、地形と歴史資料を行き来する「デジタル考古学」の入口を体験できます。

参考文献・参考サイト

  1. 文部科学省「宇宙考古学(Space Archaeology)」関連資料
  2. 東海大学情報技術センター「宇宙考古学/ダハシュール」
  3. 東海大学情報技術センター「宇宙考古学セミナー2025」
  4. NASA Earth Observatory, “Searching for the Origins of Space Archaeology”
  5. NASA Earth Observatory, “Space Archaeology in the Realm of Resolution”
  6. International Space Station Archaeological Project
  7. DigVentures “Deep Time”
  8. Kent Archaeological Society “Roman villa with bathhouse and hypocaust system…”
  9. Heritage Ireland “A Neolithic ritual landscape revealed”
  10. Turgay Discovery Research Project
  11. 奈良文化財研究所「文化財総覧WebGIS: 1mメッシュの描画機能等の追加」2026年3月30日
  12. 国土地理院「地理院地図」
  13. 国土地理院「地理院タイル一覧」
  14. Google Earth 公式「Earth Versions」
  15. Copernicus Browser
  16. NASA Worldview
  17. OpenTopography “Getting Started”
  18. 駒場東邦中学校・高等学校「第18回全国高校生歴史フォーラム学長賞受賞」
  19. 奈良大学「全国高校生歴史フォーラム 過去の優秀賞一覧」
  20. 東京大学「キミの東大」2026年新入生インタビュー
  21. 東京大学「学校推薦型選抜オンライン説明会レポート」
  22. 板橋区「第22回櫻井徳太郎賞」
  23. 板橋区「第23回櫻井徳太郎賞」
  24. 中世城郭研究会「刊行物案内」
  25. 静岡古城研究会「青梅の城と新発見の城郭遺構」
  26. 鹿沼市公式シティプロモーション「鹿沼市の城16『CS立体図で発見された新城・櫃沢城』」
  27. Wikimedia Commons “Mozu Tombs, Japan (ASTER)”
  28. Wikimedia Commons “Effigy mounds lidar”
  29. Wikimedia Commons “Kite aerial photo of crop marks at Nesley…”