2026年8月23日、ゆる歴史散歩会では東京都墨田区横川の本所防災館で「予測できない災害に備える!防災館の『自然災害体験ツアー』」を開催しました。参加者は24名。14:20~16:05の自然災害コースに参加するため、13:45に集合し、ツアー前の約30分は3階の展示を見学しました。
今回の体験は、シアター、地震、煙、暴風雨、都市型水害という流れです。体験の順番はグループによって変わりますが、私たちはシアターの後、地震→煙→暴風雨→都市型水害の順に進みました。1グループの上限は24名で、今回はちょうど24名だったため、ゆる歴史散歩会の参加者だけで一つのグループとして体験できました。
災害を「知識として知る」だけでなく、揺れ、煙、風雨、水圧を身体で確かめることで、非常時に何が難しくなるのかを具体的に考えられる内容です。大人になってからこのような体験学習をする機会は多くありません。今回は、楽しさの中にも緊張感があり、スタッフの丁寧な説明を受けながら濃密な時間を過ごしました。
本所防災館に集合、ツアー前に館内展示を見学

本所防災館は、東京消防庁の「都民防災教育センター」の一つです。本所消防署と同じ東京都墨田区横川4-6-6にあり、錦糸町駅と押上駅のどちらからも徒歩圏にあります。外観は大きな傾斜面と細かな開口部が印象的で、館内には建物全体の模型も展示されています。

入口では、象をモチーフにした本所防災館のマスコット「けすぞう」がお出迎え。防災施設というと少し堅い印象がありますが、館内には子どもから大人まで入りやすい工夫がありました。

模型を見ると、外から見た建物の特徴がより分かりやすくなります。今回のように体験ツアーだけでなく、開始前に展示を見る時間を取ると、施設の構造やテーマをつかみやすくなります。




館内には著名人のサイン色紙も数多く展示されていました。防災学習の展示とは別の楽しみで、ツアー前の待ち時間にも自然と目が向きます。

今回は開始30分前に集合し、3階の展示を見学しました。本所防災館には自由見学できる学習施設もあり、東京消防庁公式サイトでは「異常気象体感ウォール」「川の手地域体験テーブル」「防災ライブラリ」などが紹介されています。ツアーだけでなく、その前後に展示を見ることで、災害の背景や地域特性まで含めて理解しやすくなります。
本所の歴史――低湿地の開発と火災・水害の記憶
本所の歴史を知ると、この地域に防災を学ぶ施設があることにも重みを感じます。現在の墨田区南部にあたる本所地域は、江戸時代以前には低湿地が広がる場所でした。墨田区の公式資料によると、1657年の明暦の大火を契機に、江戸の防火と都市再編のため、本所・深川方面の開発が本格化しました。江戸中心部から武家屋敷や寺社などを移転し、延焼を防ぐための空地を確保する狙いもありました。
ただし、本所は水との関係が深い土地でもあります。墨田区は旧利根川水系・荒川水系の河口低地に発達し、歴史上たびたび洪水や浸水の影響を受けてきました。江戸時代の本所経営も水害のため一時中断され、1688年に再開されたことが区の通史年表から確認できます。
近代になると本所は工業地帯として発展します。水運や鉄道、労働力などを背景に工場が集まり、1894年には総武鉄道の本所駅、現在の錦糸町駅が開業しました。一方で、1923年の関東大震災では本所地区が大きな被害を受け、墨田区の資料では本所区の95%の工場が焼失したとされています。1945年の東京大空襲でも本所区の大部分が焼失しました。
こうした歴史を踏まえると、本所は「江戸の都市拡張」「水害」「火災」「震災」「戦災」「近代工業化」が重なる地域です。今回の自然災害体験ツアーで扱った地震、煙、暴風雨、都市型水害は、現在の防災課題であると同時に、この地域の歴史を考える入口にもなります。
本所・錦糸町周辺の都市史をさらに知りたい方は、当サイトの「錦糸町はなぜ東京東部最大の歓楽街になったのか」もあわせて読むと、鉄道・工業・戦後復興から街の変化をたどれます。また、実際に周辺を歩くなら「錦糸町~住吉ナイトウォーク」も地域の地名や史跡を知る参考になります。
本所防災館と本所消防署――体験型の防災学習拠点
本所防災館の正式名称は「東京消防庁本所都民防災教育センター」です。本所消防署と同じ住所にあり、東京消防庁が運営する体験学習施設として、見学・体験は無料です。東京消防庁の案内では、本所防災館は「都市型水害」と「暴風雨」の体験が特徴で、池袋防災館・立川防災館とは異なる「川の手の防災館」として位置づけられています。
自然災害コースは所要1時間45分で、公式案内上の体験項目はシアター、地震、煙、暴風雨、都市型水害です。定員は同一時間帯に最大4グループ、1グループ24名で、自然災害コースの14:20~16:05枠も公式に設定されています。今回の開催内容はこの時間枠と一致しています。
体験ツアーは予約制です。施設側の案内では開始15分前までの受付、靴下の着用、サンダルやかかとの高い靴を避けることなどが注意事項として示されています。暴風雨体験ではレインウェアの貸し出しと使い捨てマスクの配布があります。体験内容・時間・注意事項は変更される可能性があるため、訪問前には東京消防庁の本所防災館公式ページを確認するのがおすすめです。

ツアー開始時には、スタッフから体験の流れや注意事項について説明がありました。これから何を体験するのかを理解してから進むため、単なるアトラクションではなく「災害時の判断を練習する時間」として意識しやすくなります。
4階シアターからスタート――まず災害を知る
1階で受付を済ませ、ツアーは4階のシアターから始まりました。CGアニメを通して、災害をあらかじめ知っておくこと、備えることの重要性を学びます。内容は少し重たさもありますが、映像で状況が整理されていて分かりやすく、これから始まる体験への導入として効果的でした。
シアター内は撮影不可だったため写真はありません。写真を残すことより、映像の内容に集中する時間になりました。
地震体験――揺れの中で「動けない」を知る

最初の体験は地震です。東京消防庁の案内では、本所防災館の地震体験コーナーは室内だけでなく、屋外やコンビニを想定した場面も用意され、ガラススクリーンなどを使って臨場感を高めています。
地震については「揺れたら身を守る」と頭では分かっていても、実際の強い揺れの中では姿勢を保つこと自体が難しくなります。体験することで、家具の転倒防止、落下物への備え、安全な場所の確保といった日常の対策が、単なる知識ではなく具体的な課題として見えてきます。
当日の地震体験の様子は動画でもご覧いただけます。実際の揺れの中で参加者がどう動いたかが分かり、写真だけでは伝わりにくい体感の大きさを確認できます。動画の後半、3分59秒ごろからは暴風雨体験の様子も収録しています。
煙体験――火より先に煙から逃げる

続いては煙体験です。体験前には住宅火災、煙、一酸化炭素中毒などについて説明を受けました。火災というと炎に目が向きがちですが、実際の避難では煙が視界や呼吸を奪うことが大きな危険になります。

東京消防庁公式サイトによると、煙体験コーナーでは煙の特性と危険性を学んだうえで、煙と空気の境目にあたる「中性帯」の中を避難します。視界が悪い環境では、普段なら簡単な移動でも急に難しくなります。姿勢を低くし、落ち着いて出口を探すという基本動作を、身体で確認できる体験でした。
暴風雨体験――装備を整えて強い風と雨へ

次は暴風雨体験です。本所防災館ならではの代表的な体験の一つで、強い風と雨を実際に受けながら、台風や集中豪雨の危険性を体感します。体験前にスタッフから装備と注意事項の説明を受けました。

レインウェアは館内で用意されています。普段の雨具とは違い、全身をしっかり覆う装備で体験に備えます。

長靴はサイズごとに並べられており、自分に合うものを選びます。装備を準備する段階から、風雨にさらされる環境では服装が重要であることが分かります。

全員でレインウェアと長靴に着替えると、会場の雰囲気も一気に変わりました。体験型の学習だからこそ、準備そのものも印象に残ります。強風や豪雨の中では無理に屋外へ出ないこと、安全な場所にとどまることの大切さを実感できる体験でした。
都市型水害――水圧で「ドアが開かない」を体験

最後は都市型水害の脱出体験です。東京消防庁の案内では、局地的な集中豪雨や津波に関する映像に加え、地下のドアや自動車が浸水した場面を想定し、水圧がかかったドアを開ける体験ができます。

見た目には普通のドアでも、水がたまると大きな水圧がかかり、押しても簡単には開きません。水害時に「少し水が来てから逃げればよい」と考える危険性が、体験を通して具体的に理解できます。避難判断は水位が上がってからでは遅い場合があるため、早めの行動が重要だと感じられる内容でした。
24名で参加したからこその一体感
本所防災館の1グループ上限は24名で、今回は参加者がちょうど24名。私たちのグループだけで一連の体験に参加できたため、説明を聞く場面も、装備を整える場面も、体験を見守る場面も一体感がありました。
一つひとつの体験内容が充実しており、1時間45分はあっという間です。スタッフの案内は丁寧で、体験の意味や注意点をその都度説明してくれるため、初めてでも理解しやすい構成でした。大人になってから地震・煙・暴風雨・水害をまとめて体験学習する機会は少なく、今回のイベントは貴重な学びの場になりました。
本所防災館を訪れる前に知っておきたいこと
- 所在地:東京都墨田区横川4-6-6
- 最寄り:JR総武線・東京メトロ半蔵門線「錦糸町駅」、京成押上線・都営浅草線・東武スカイツリーライン・東京メトロ半蔵門線「押上駅」から徒歩約10分
- 入館料:無料
- 自然災害コース:シアター、地震、煙、暴風雨、都市型水害
- 所要時間:1時間45分
- 予約:防災体験ツアーは予約制。最新情報は東京消防庁公式サイトで要確認
防災館は「怖さを味わう場所」ではなく、災害時に自分がどう動くかを事前に考え、失敗できる環境で練習する施設です。体験後に自宅の家具固定、避難経路、非常用品、ハザードマップなどを見直すところまでつなげると、学びを日常の備えに変えられます。
TimeWalkで本所・錦糸町周辺の歴史も歩いてみる
今回のイベントではTimeWalkの利用はありませんでしたが、本所・錦糸町周辺は江戸の都市開発、工業化、震災復興、鉄道史など多くの歴史が重なる地域です。TimeWalkは、現在地や指定地点の近くにある歴史スポットを地図で探し、自分で歴史散歩を楽しめるWebアプリです。
まとめ
本所防災館の自然災害体験ツアーは、地震・煙・暴風雨・都市型水害を一度に体験しながら、「知っている」と「動ける」の違いを実感できる内容でした。24名でまとまって参加したことで、学びながらも楽しい雰囲気が生まれ、大人にとっても印象深い体験になりました。
そして、本所という土地の歴史に目を向けると、火災、水害、震災、戦災を経験してきた地域で防災を学ぶ意味もより立体的に見えてきます。防災館を訪れたら、館内の体験だけで終わらせず、街の歴史や地形にも目を向けてみてください。

