東京都選定歴史的建造物とは?東京の近代建築・銭湯・橋を街歩きで見るガイド

東京都選定歴史的建造物の街歩きガイドを表す、近代建築、銭湯、教会、橋を描いたアイキャッチイラスト 雑学
東京都選定歴史的建造物を街歩きで楽しむガイドのアイキャッチ

東京を歩いていると、国宝や重要文化財として大きく紹介される建物ではなくても、街角の風景を静かに支えている古い建物に出会うことがあります。学校、教会、銀行、老舗料理店、銭湯、橋、旧水門。ふだんは通り過ぎてしまう建物でも、なぜそこに残り、どんな景観をつくっているのかを知ると、東京の見え方が変わります。

その入口になるのが、東京都の制度で選ばれている東京都選定歴史的建造物です。愛称として「東京歴建」とも呼ばれます。これは単なる古い建物リストではありません。東京の歴史を「建物単体」ではなく、「街並みの中に残る記憶」として見るための手がかりです。

この記事では、東京都選定歴史的建造物の制度の意味、文化財との違い、2026年7月確認時点の選定件数、代表的な見どころ、区市町村別の一覧、現地での見方を初心者向けに整理します。街歩きで東京の近代建築や歴史的景観を見たい人のための大型ハブ記事です。

30秒で分かる結論

  • 東京都選定歴史的建造物は、東京都景観条例に基づき、歴史的価値を持ち、景観上重要な建造物を東京都知事が選定する制度です。
  • 文化財指定とは別の制度で、主な目的は「建物を街並みの景観資源として保存・活用すること」です。
  • 2025年10月3日現在、東京都公式ページでは111件が選定されています。
  • 選定対象には、近代洋風建築、大学・学校、教会、商業建築、住宅、銭湯、橋、水門などがあります。
  • 内部や敷地は原則として公開されていない建物も多いため、街歩きでは外観、周辺の通り、用途、現在の使われ方を見るのが基本です。
  • 2025年10月には、高輪教会、常盤堂雷おこし本舗雷門本店、曙湯、鶴の湯、東京浴場、明神湯の6件が新たに選定されました。

東京都選定歴史的建造物とは何か

東京都選定歴史的建造物は、東京都景観条例に基づき、歴史的な価値を有する建造物のうち、景観上重要なものを東京都知事が選定する制度です。東京都都市整備局の説明では、令和7年(2025年)10月3日現在で111件が選定されています。

ここで重要なのは、「歴史的価値がある」だけではなく、「東京の景観づくりにおいて重要である」ことです。資料では、原則として建設後50年を経過していること、地域の歴史的景観を特徴づけること、地域のランドマークとしての役割を果たすこと、都民になじみが深く地域のイメージの核になっていること、外観が容易に確認できることなどが基準として示されています。

つまり、この制度は「博物館の中に保存する文化財」ではなく、「街の中に生きている建物」を見つけるための仕組みです。選定された建造物には、学校として使われる建物、教会として礼拝が行われる建物、飲食店や銭湯として営業を続ける建物、現役の道路橋や水門跡などがあります。

所有者の同意と保存支援が大切な制度

東京都選定歴史的建造物は、強い規制だけで建物を守る制度ではありません。制度資料では、所有者の事情を考慮し、ゆるやかに保存し、景観づくりの中で活用していくという考え方が示されています。選定の手続きでも、景観審議会への諮問・答申、所有者の同意、区市町村長の意見を経て、選定・告示へ進む流れになっています。

東京都は、選定建造物の現状変更時の届出、説明板やパンフレットなどによる普及啓発、講演会・見学会、そして東京歴史まちづくりファンドによる保存経費の一部助成などを通じて、所有者と社会の双方から歴史的景観を支える仕組みをつくっています。

「欠番」があるのはなぜか

東京都公式一覧を見ると、選定番号には欠番があります。これは、過去に選定された建物の一部が、後に重要文化財や有形文化財に指定・登録されたり、滅失したりして、東京都景観条例に基づく選定が解除されたためです。

欠番というと「なくなった建物」と思いがちですが、必ずしもそうではありません。たとえば三越日本橋本店、早稲田大学大隈記念講堂、勝鬨橋、永代橋、清洲橋などは、重要文化財など別制度で扱われるようになったため、東京都選定歴史的建造物としては解除されています。制度を読むときは、「選定解除=価値がなくなった」ではなく、「別の保護制度に移った場合がある」と理解すると分かりやすいです。

重要文化財や登録有形文化財とは何が違うのか

初心者が最も混乱しやすいのが、文化財指定との違いです。東京には、国の重要文化財、登録有形文化財、東京都指定文化財、区市町村指定文化財、東京都選定歴史的建造物など、似た言葉がいくつもあります。

大まかにいえば、文化財制度は「文化財としての価値を保護する制度」、東京都選定歴史的建造物は「景観上重要な歴史的建造物を、街並みの中で保存・活用する制度」です。

制度 主な主体 街歩きでの見え方 ポイント
国宝・重要文化財(建造物) 歴史上・芸術上・学術上の価値が特に高い建物。修理や公開施設として見られる例もあります。 重要なものを厳選し、保存修理や防災などを重視します。
登録有形文化財(建造物) 近代建築、商家、住宅、駅舎、橋など幅広い建物に見られます。 届出制と指導・助言を基本とする、比較的ゆるやかな保護制度です。
東京都指定文化財 東京都教育委員会 東京都にとって重要な文化財として指定された建物や史跡などです。 文化財保護の制度として、教育委員会の所管で扱われます。
東京都選定歴史的建造物 東京都都市整備局 街並みの中で外観や周辺景観を見て楽しみやすい建物が多いです。 景観条例に基づく制度で、外観保存、所有者の同意、景観形成、保存支援と関係します。

たとえば、隅田川に架かる勝鬨橋・永代橋・清洲橋は重要文化財に指定されたため、現在の東京都選定歴史的建造物一覧では欠番扱いです。一方、蔵前橋、厩橋、駒形橋、吾妻橋、白鬚橋、両国橋、言問橋などは、東京都選定歴史的建造物として橋梁景観を読む入口になります。

選定される建物にはどんな種類があるのか

東京都選定歴史的建造物の面白さは、ジャンルの幅広さにあります。洋館だけでも、文化財だけでもありません。東京の近代化、震災復興、学校教育、宗教、商業、暮らし、土木インフラが、ひとつの制度の中に並んでいます。

ジャンル 代表例 街歩きでの見方
近代洋風・事務所建築 近三ビルヂング、ヨネイビルディング、第一生命日比谷ファースト、日証館 柱、窓割り、石材風の外装、街区の角地での見え方を見ると、商業都市東京の顔が分かります。
学校・大学 早稲田大学、立教大学、東京大学、津田塾大学、上智大学などの校舎・門 キャンパスの軸線、門、校舎群、樹木と一体になった景観を見るのがポイントです。
教会・宗教建築 カトリック築地教会、安藤記念教会、カトリック目黒教会、高輪教会、カトリック赤羽教会 礼拝の場であることを尊重しながら、外観、屋根、窓、周囲の住宅地との関係を見ます。
商業建築・老舗店舗 いせ源、神田まつや、ぼたん、竹むら、伊勢丹新宿本店、常盤堂雷おこし本舗雷門本店 看板、軒、出入口、通りとの距離、店の営業と歴史的景観の両立に注目します。
銭湯建築 曙湯、鶴の湯、東京浴場、明神湯 唐破風、入母屋破風、煙突、懸魚、植栽など、住宅地の中のランドマーク性を見ます。
住宅・邸宅・宿泊建築 旧小笠原邸、葛飾区山本亭、光風亭、八芳園、鳳明館台町別館、塔の家、ヒルサイドテラス 邸宅、庭園、都市住宅、宿泊施設など、時代ごとの住まい方の違いが見えてきます。
橋・水門・土木構造物 旧岩淵水門、蔵前橋、厩橋、駒形橋、吾妻橋、白鬚橋、両国橋、言問橋、旧小松川閘門、万世橋、日光橋 構造形式、川との関係、親柱、銘板、歩道からの眺めを見ると、都市インフラの歴史が分かります。

2025年に新たに選定された6件

2025年10月3日には、東京都選定歴史的建造物として6件が追加されました。日本基督教団 高輪教会、常盤堂雷おこし本舗 雷門本店、曙湯、鶴の湯、東京浴場、明神湯です。

この6件は、制度の今後を考えるうえでも象徴的です。高輪教会は昭和初期の木造教会建築、常盤堂雷おこし本舗 雷門本店は浅草寺・雷門周辺の商業景観、4つの銭湯は東京の生活文化と宮造り風の銭湯建築を伝える存在です。特に銭湯は、観光施設ではなく、今も地域の暮らしの中で使われる建物である点が重要です。

東京の街歩きで見やすい代表的な歴史的建造物

東京都選定歴史的建造物は、すべてが自由に見学できるわけではありません。東京都公式一覧にも、原則として建造物の内部や敷地は公開していないため、見学は各管理者に問い合わせるよう注意書きがあります。街歩きでは、公開施設、営業店舗、外観中心の建物を分けて考えると安心です。

見学しやすさ 代表例 楽しみ方 注意点
屋外から見やすい 旧岩淵水門、蔵前橋、厩橋、駒形橋、吾妻橋、白鬚橋、両国橋、言問橋、万世橋、日光橋 橋の上や川沿いから、構造、親柱、川との関係を観察できます。 車道・自転車・歩行者の動線に注意してください。
公開施設として訪ねやすい 国立国会図書館国際子ども図書館、東京都復興記念館、葛飾区山本亭、禅文化歴史博物館など 内部空間、展示、庭園、改修の様子を含めて見られる場合があります。 開館日・休館日・入館方法は必ず公式サイトで確認してください。
営業店舗として利用できる いせ源、神田まつや、ぼたん、竹むら、常盤堂雷おこし本舗 雷門本店など 食事や買い物を通じて、建物が今も使われていることを体感できます。 混雑時の長時間撮影や無断撮影は避けましょう。
銭湯として利用できる場合がある 曙湯、鶴の湯、東京浴場、明神湯 入浴客として利用し、外観や脱衣所まわりの雰囲気を味わいます。 浴場内の撮影は原則避け、各店のルールを必ず守ってください。
外観中心で見る 学校、病院、教会、私有建物、住宅系建築 通りから見える外観、門、屋根、周辺景観との関係を見ます。 敷地内に入らず、授業・診療・礼拝・居住の妨げにならないようにしましょう。

教会・学校・銀行・商業建築で見る東京の近代化

東京都選定歴史的建造物を近代建築の入口として見るなら、まず学校、教会、銀行・事務所、商業建築に注目すると分かりやすいです。

学校建築では、早稲田大学、立教大学、東京大学、津田塾大学、上智大学などが並びます。これらは単なる校舎ではありません。近代日本で高等教育が広がり、キャンパスという空間が都市の中に定着していく過程を伝えています。校舎単体だけでなく、門、正面軸、樹木、広場、周辺の学生街を一緒に見ると、大学が地域の景観をつくってきたことが見えてきます。

教会建築では、カトリック築地教会、安藤記念教会、カトリック目黒教会聖アンセルモ聖堂、カトリック赤羽教会、そして2025年に選定された日本基督教団 高輪教会があります。宗教施設は、地域の祈りの場であると同時に、屋根、塔、窓、壁面の意匠によって街角に独特の表情を与えます。訪問時は礼拝や行事を優先し、見学可能範囲を確認するのが基本です。

銀行・事務所・商業建築では、近三ビルヂング、ヨネイビルディング、第一生命日比谷ファースト、日証館、伊勢丹新宿本店、紀伊國屋ビルディングなどが重要です。これらを見ると、東京が商業・金融・出版・流通の中心として発展してきたことが、建物の外観に刻まれていることが分かります。

丸の内・日比谷方面の近代建築に関心がある方は、サイト内の丸の内エリアの歴史と建築ツアーや、丸の内の建築&歴史散歩の記事も合わせて読むと、東京駅周辺のオフィス街の見方がつながります。

銭湯・店舗・住宅で見る暮らしの歴史

東京都選定歴史的建造物の魅力は、いわゆる「立派な公共建築」だけでなく、暮らしに近い建物も含むところにあります。

神田のいせ源、神田まつや、ぼたん、竹むらは、老舗の食文化と木造商業建築が結びついた例です。建物を見て終わるのではなく、看板、暖簾、入口、通りとの距離、周辺の路地や古書店街・飲食街の雰囲気と一緒に見ると、商売が景観をつくってきたことが分かります。

2025年に選定された常盤堂雷おこし本舗 雷門本店は、浅草寺や雷門周辺の景観と一体で見る建物です。建物単体の装飾だけでなく、参道、観光客の流れ、老舗菓子店の看板、鉄筋和風の外観がどのように浅草らしさを支えているかを見てみましょう。

銭湯建築では、曙湯、鶴の湯、東京浴場、明神湯が重要です。唐破風、入母屋破風、煙突、懸魚、植栽、玄関まわりの造作は、銭湯が単なる入浴施設ではなく、地域のランドマークでもあったことを伝えます。東京都も「東京型銭湯」の魅力発信を進めており、銭湯建築は今後さらに注目される分野です。

住宅・邸宅系では、旧小笠原邸、葛飾区山本亭、光風亭、八芳園、鳳明館台町別館、塔の家、ヒルサイドテラスなどを通じて、邸宅、庭園、都市住宅、集合的な商業・住宅空間の違いが見えてきます。大名屋敷や実業家の邸宅文化、戦後の都市住宅、現代建築への橋渡しまで、東京の住まい方の変化を追うことができます。

橋や土木構造物で見る都市インフラの歴史

東京都選定歴史的建造物には、建築物だけでなく橋や水門などの土木構造物も含まれます。これはとても大切なポイントです。東京の歴史は、建物だけでなく、川、橋、運河、水道、道路とともに形成されてきたからです。

隅田川の橋梁群では、蔵前橋、厩橋、駒形橋、吾妻橋、白鬚橋、両国橋、言問橋が選定されています。これらは川を渡るための機能だけでなく、橋そのものが水辺景観を形づくっています。歩道から橋の側面、親柱、照明、銘板、アーチや桁の形を観察すると、橋が都市の「顔」として設計されていることが分かります。

旧岩淵水門は、荒川放水路と隅田川の関係を知るうえで重要な土木遺産です。水門を単体で見るだけでなく、荒川と隅田川の分岐、河川敷の広さ、治水のために都市がどのように作り替えられたかを現地で感じると、東京の防災と土木の歴史が立体的に見えてきます。

橋や水門の見方を広げたい方は、サイト内の日本の土木の歴史|川・ダム・橋・港はどう日本をつくったのかも参考になります。橋梁や水門を見るときの観察ポイントが、東京都選定歴史的建造物の街歩きにもそのまま活用できます。

区市町村別に見る東京都選定歴史的建造物

東京都公式一覧をもとに、2026年7月確認時点での111件を、街歩きで使いやすいよう区市町村別に整理しました。橋のように複数区にまたがるものは、「複数区・橋梁」としてまとめています。所在地や公開状況は変更されることがあるため、訪問前には東京都公式一覧や各管理者の公式情報を確認してください。

区市町村 東京都選定歴史的建造物 件数
千代田区 東京ルーテルセンタービル、いせ源本館、神田まつや、ぼたん、竹むら、第一生命日比谷ファースト(旧第一生命館)、万世橋(一般国道17号)、上智大学一号館 8件
中央区 近三ビルヂング(旧森五商店東京支店ビル)、聖路加国際病院(チャペル及び付属する旧病棟)、ヨネイビルディング、カトリック築地教会聖堂、中央区立常盤小学校、中央区立泰明小学校、鈴木ビル、中央区十思スクエア(旧中央区立十思小学校)、日本橋ダイヤビルディング(旧三菱倉庫江戸橋倉庫ビル)、宮川食鳥鶏卵、日証館 11件
港区 西町インターナショナルスクール 松方ハウス、虎ノ門 金刀比羅宮、日本基督教団安藤記念教会会堂、港区立高輪台小学校、高輪消防署二本榎出張所、聖心女子学院正門、普連土学園中学校舎、八芳園(壺中庵)、日本基督教団 高輪教会 9件
新宿区 早稲田大学2号館(旧図書館)、早稲田奉仕園スコットホール、日立目白クラブ(本館及び別館)、聖母病院、新宿区立林芙美子記念館、旧小笠原邸、伊勢丹本店本館(伊勢丹新宿本店)、新宿御苑旧御凉亭(台湾閣)、紀伊國屋ビルディング、早稲田大学1号館 10件
文京区 東京大学広報センター(旧医師会事務局)、東京大学七徳堂、東京大学農学部3号館、根津二丁目の蔵(クラシックガーデン文京根津)、鳳明館台町別館、東京大学 龍岡門(門、門衛所)、東京大学 農正門(門、農学部門衛所、農学資料館)、東京大学 弥生門(門、門衛所) 8件
台東区 上田邸(旧忍旅館)、国立国会図書館国際子ども図書館、東京藝術大学赤レンガ1号館、東京藝術大学赤レンガ2号館、東京藝術大学陳列館、東京藝術大学正木記念館、東京藝術大学旧東京美術学校玄関、旧博物館動物園駅駅舎、常盤堂雷おこし本舗 雷門本店、曙湯、鶴の湯 11件
墨田区 東京都慰霊堂、東京都復興記念館 2件
江東区 涼亭 1件
品川区 カトリック目黒教会聖アンセルモ聖堂、東京浴場 2件
大田区 明神湯 1件
世田谷区 静嘉堂文庫、岩崎家玉川廟、駒澤大学耕雲館(禅文化歴史博物館)、清明亭、光風亭(旧馬場正治烏山別邸) 5件
渋谷区 明治神宮桃林荘、塔の家、ヒルサイドテラス A・B棟 3件
杉並区 浴風会本館 1件
豊島区 立教大学本館(モリス館)、メーザーライブラリー記念館・旧館(旧立教大学図書館旧館)、立教学院諸聖徒礼拝堂、立教大学 第1食堂、立教大学 2号館、立教大学 3号館 6件
北区 旧岩淵水門、東京都北区立中央図書館(旧東京第一陸軍造兵廠第一製造所 赤レンガ棟)、東京都北区立中央公園文化センター(旧東京第一陸軍造兵廠本部事務所)、カトリック赤羽教会 4件
葛飾区 柴又帝釈天題経寺大客殿、葛飾区山本亭 2件
江戸川区 旧小松川閘門 1件
複数区・橋梁 蔵前橋、厩橋、駒形橋、吾妻橋、白鬚橋、両国橋、言問橋 7件
小平市 津田塾大学本館、武蔵野美術大学4号館、小平市平櫛田中彫刻美術館記念館(旧平櫛田中邸) 3件
府中市 髙安寺本堂、髙安寺山門、髙安寺鐘楼、聖将山東郷寺山門 4件
東久留米市 自由学園初等部食堂、自由学園 ラーニングコモンズ(旧男子部体育館) 2件
東大和市 村山下貯水池第一取水塔 1件
八王子市 大学セミナーハウス本館 1件
三鷹市 ルーテル学院大学(旧日本ルーテル神学大学)チャペル、本館、図書館及び寮棟 1件
青梅市 寿々喜家、永濱邸、昭和レトロ商品博物館 3件
日野市 渡邉家(蔵) 1件
国分寺市 大倉喜八郎 進一層館(Forward Hall) 1件
福生市 日光橋 1件
奥多摩町 丹三郎屋敷長屋門 1件

初心者向け:現地での見方

東京都選定歴史的建造物は、専門知識がなくても楽しめます。大切なのは、建築様式名を暗記することではなく、「なぜこの建物がこの場所に残り、街並みに何を与えているのか」を見ることです。

まず外観を見る

最初に見るのは外観です。屋根の形、窓の配置、入口、柱、看板、煙突、門、塀、橋の親柱など、通りから見える要素を観察します。東京都選定歴史的建造物は、外観が容易に確認できることも選定基準のひとつです。

建物の用途を見る

次に、何のための建物かを考えます。学校、教会、銀行、店舗、住宅、銭湯、橋では、必要とされる形が違います。用途を知ると、窓が大きい理由、入口が目立つ理由、煙突がある理由、橋の幅が広い理由が分かってきます。

周辺の街並みとの関係を見る

選定歴史的建造物は、周辺景観との関係が大切です。建物だけを写真で切り取るのではなく、前面道路、隣の建物、坂、川、商店街、学校の門前、住宅地とのつながりを見ましょう。東京歴建は「点」ではなく、「街並みの中の点」です。

保存されている理由を考える

なぜこの建物は残ったのでしょうか。公共施設として使われ続けたからか、所有者が守ってきたからか、地域のランドマークだったからか、営業を続ける価値があったからか。建物の保存には、所有者、利用者、地域、制度、資金が関わります。

内部公開の有無を確認する

内部を見たい場合は、必ず公式情報を確認しましょう。公開施設もあれば、学校・病院・住宅・教会・営業店舗のように、通常は外観中心で見るべき建物もあります。建物が今も使われていること自体が価値なので、見学者はその日常を妨げないことが大切です。

よくある誤解

誤解1:東京都選定歴史的建造物は全部、自由に見学できる

自由に内部見学できるわけではありません。公開施設もありますが、多くは現役の学校、病院、教会、店舗、銭湯、住宅系建物です。外観を中心に見て、内部見学は各管理者の公式情報に従います。

誤解2:文化財ではないから価値が低い

制度の目的が違います。東京都選定歴史的建造物は、文化財指定とは別に、景観上重要な歴史的建造物を街並みの中で保存・活用する制度です。文化財指定により選定解除される例もあります。

誤解3:古い建物ならすべて選定される

古いだけでは選定されません。原則として建設後50年を経過していることに加え、地域の歴史的景観を特徴づけること、ランドマーク性、地域になじみが深いこと、外観が確認できることなどが重視されます。

誤解4:選定番号が飛んでいるのはミス

ミスではありません。重要文化財や有形文化財への指定・登録、滅失などにより選定解除された建物があるため、欠番が生じています。

見学・撮影・訪問時の注意点

東京都選定歴史的建造物は、観光資源である前に、誰かの職場、学校、信仰の場、住まい、営業施設、生活インフラです。訪問時は次の点に注意しましょう。

  • 敷地内に無断で入らない。
  • 学校、病院、教会、住宅、銭湯では利用者・居住者・礼拝者を優先する。
  • 店舗では食事や買い物の利用者としてマナーを守る。
  • 銭湯の浴場内や脱衣所では撮影しない。
  • 橋や道路では立ち止まりすぎず、歩行者・自転車・車両の動線を妨げない。
  • 工事、休業、行事、災害、管理方針により公開状況は変わるため、訪問前に公式情報を確認する。

今後の個別記事展開に向けた見方

この記事は、東京都選定歴史的建造物を探すためのハブ記事です。個別の建物については、設計者、所有者、建設年代、周辺の都市史、保存の経緯、現在の利用状況を深掘りすると、さらに面白くなります。

たとえば、高輪教会を読むなら、昭和初期の木造教会建築と高輪台地の街並みを一緒に見ます。明神湯や曙湯を読むなら、銭湯建築、住宅地、入浴文化、煙突、宮造り風意匠をつなげます。常盤堂雷おこし本舗 雷門本店を読むなら、浅草寺、雷門、観光商業、鉄筋和風建築をつなげます。旧岩淵水門を読むなら、荒川放水路、隅田川、治水、防災、赤水門の景観をつなげます。

関連テーマとしては、街歩き・美術館・神社・文化を楽しむ入門記事集近代化産業遺産とは?工場・鉱山・港・鉄道から読む日本近代化暗渠まるわかりガイドなどともつながります。建築、土木、地形、産業、生活文化を横断して見ると、東京の街歩きは一気に立体的になります。

FAQ

東京都選定歴史的建造物はどこで調べられますか?

東京都都市整備局の公式ページに一覧があります。名称、所在地、建設年、構造、選定年度などを確認できます。個別の所在地や最新の管理状況は、各建造物の管理者・公式サイトも合わせて確認してください。

全部で何件ありますか?

東京都都市整備局のページでは、令和7年(2025年)10月3日現在で111件が選定されています。本記事でも、その公式一覧をもとに区市町村別に整理しています。

内部見学はできますか?

建物によります。公開施設や営業店舗として利用できるものもありますが、原則として内部や敷地は公開していない建物も多くあります。訪問前に公式情報を確認してください。

文化財と同じですか?

同じではありません。文化財制度は文化財保護法や文化財保護条例に基づく保護制度で、東京都選定歴史的建造物は東京都景観条例に基づく景観形成の制度です。文化財指定により選定解除される例もあります。

街歩き初心者におすすめの見方は?

まずは外観、用途、周辺の街並み、説明板、最寄りの川や坂、商店街との関係を見てください。建築様式名を知らなくても、「なぜここにこの形で残っているのか」を考えるだけで楽しめます。

まとめ

東京都選定歴史的建造物は、東京の歴史を「有名な文化財」だけでなく、街並みの中に残る建物や橋から見るための入口です。

近代洋風建築、学校、教会、老舗店舗、銭湯、住宅、橋、水門。ジャンルはさまざまですが、共通しているのは、どれも東京の景観を支え、地域の記憶を次の時代へつないでいることです。

東京の街歩きでは、建物単体だけを見て終わるのではなく、周辺の通り、川、坂、商店街、キャンパス、住宅地、利用している人々との関係を見てみてください。東京都選定歴史的建造物は、東京の歴史を街並みの中で読むための、非常に優れた手がかりになります。

参考資料

  1. 東京都都市整備局「歴史的景観の形成|街並み景観」
  2. 東京都都市整備局「東京都選定歴史的建造物 一覧」
  3. 東京都「東京都選定歴史的建造物を6件新たに選定しました」(2025年10月3日)
  4. 東京都都市整備局「東京都選定歴史的建造物について」(令和2年2月版PDF)
  5. 文化庁「文化財の種類,指定・選定・登録」
  6. 文化庁「有形文化財(建造物)」
  7. 東京都教育委員会「都内の文化財情報」
  8. 国指定文化財等データベース
  9. 東京歴史まちづくりファンド
  10. With! 東京歴建PROJECT
  11. 東京都都市整備局「東京型銭湯」