あいねすと・行徳鳥獣保護区とは?無料で楽しむ野鳥観察と自然散策会、新浜の歴史

市川市の行徳鳥獣保護区に広がる湿地とヨシ原

千葉県市川市の住宅地を抜けると、池、ヨシ原、林がまとまって残る広い緑地に出ます。ここが行徳ぎょうとく近郊緑地です。

その一角にある市川市行徳野鳥観察舎「あいねすと」は、入館無料の自然観察施設です。館内の望遠鏡や双眼鏡も無料で使え、土曜日を中心に自然散策会が開かれています。

現在の湿地は、東京湾岸の埋立てが進んだ時代に野鳥の生息地を残すため整備された場所です。1960年代まで「新浜」と呼ばれた水鳥の生息地、1970年の83haの保全、1979年の鳥獣保護区指定を経て、現在の風景につながっています。

行徳に残る83haの「野鳥の楽園」

行徳ぎょうとく近郊緑地は、市川市南部にある83haの緑地です。宮内庁新浜鴨場と、その周囲の行徳鳥獣保護区などで構成されています。

市川市の資料では、1960年代までこの一帯は湿地で「新浜」と呼ばれ、水鳥が多い場所として世界的にも知られていました。東京湾の埋立てが進む中、野鳥の生息地を残すため人工的な湿地環境の再生が進められました。

1970年、新浜鴨場を含む83haが「行徳近郊緑地」として保全されます。1979年には鴨場を除く56haが千葉県の鳥獣保護区に指定されました。

市川市の行徳鳥獣保護区に広がる湿地とヨシ原
行徳鳥獣保護区、2007年。撮影:resource70/Wikimedia Commons/CC BY 3.0。

あいねすととは?無料で何ができる?

市川市行徳ぎょうとく野鳥観察舎「あいねすと」は、行徳近郊緑地に面した自然観察施設です。

入館料は無料。中2階と2階の観察スペースから湿地や水面を見渡せます。館内には30倍の望遠鏡や10倍の双眼鏡があり、無料で利用できます。中2階には旧千葉県行徳野鳥観察舎で使われていた据え付け型望遠鏡も残されています。

野鳥の名前を知らなくても、カモ類、水辺の鳥、ヨシ原を行き来する小鳥、上空を飛ぶ猛禽類などを探せます。季節によって昆虫や植物も変わるため、同じ場所でも見える景色が変化します。

現在の「あいねすと」は2020年9月に開館しました。愛称は、市川の「I」と「愛」、鳥の巣を意味する「nest」を組み合わせた名称です。

自然散策会では何をする?

あいねすとの自然散策会は、丸浜川まるはまがわ沿いなど施設周辺を約1時間歩くプログラムです。

市川市の案内では、鳥に加えて植物、昆虫、カニ、トカゲ、キノコなども観察対象に挙げられています。見る、聴く、触る、嗅ぐといった感覚を使い、その日に見つかった生きものを観察します。

通常回は当日先着10人。双眼鏡の貸し出しがあり、ベビーカーや車いすで参加できる回として案内されています。

春・秋・冬は13時30分ごろ、暑い7月と9月は15時30分ごろに設定される例があります。8月は通常の午後散策会を休止し、早朝の自然観察会を実施する年があります。

通常の自然散策会はあいねすと周辺を歩く内容です。2026年4月4日の「保護区の桜を楽しむ観察会」のように、行徳鳥獣保護区を専門員と歩く特別企画もあります。この観察会は参加費無料、申込順15人で実施されました。

2025年にはいつ、どんなイベントがあった?

2025年の「あいねすと通信」と市川市の案内には、年間を通した自然散策会と季節イベントが記録されています。

日程イベント・内容
1月4日~8日鳥みくじ
1月4日~13日鳥かるた・鳥ふくわらい
1月4・11・18・25日ミニ観察会
2月1・8・15・22日ミニ観察会
2月8日~3月16日「いちかわの いきもの いいまち いいえがお」写真展
3月1・29日ミニ観察会。3月8・15・22日は中止と公式資料に記載
4月5・12・19・26日自然散策会
5月3~6日丸浜川&みどりの国 クイズ&ウォークラリー
5月10~18日野鳥のヒナを守るためにできることクイズ
5月10・17・24日自然散策会
6月7・21・28日自然散策会
6月14日トビハゼをさがせ!
7月5・12日自然散策会。15時30分から
7月19日虫を捕まえて観察しよう。要申込、先着15人
8月16日早起き自然観察会。要申込、先着15人
8月通常の土曜自然散策会は休止
9月20・27日自然散策会。15時30分から
9月20~28日動物愛護週間の塗り絵
10月4・11・25日自然散策会
10月18日開館5周年記念オリジナル缶バッジ配布
10月18日自然環境講座「どんぐり絵の具」でアーティストになろう。全4回、各回先着12人
11月8・15・22・29日自然散策会
12月6日葉っぱをひろってクリスマスリースをつくろう。要申込
12月13・20・27日自然散策会
12月21日まつぼっくりツリーをつくろう。自由参加

春の生きもの観察、夏の昆虫、秋から冬の渡り鳥、自然素材を使った工作まで、季節によって内容が切り替わっています。

2026年にはいつ、どんなイベントがあった?

2026年8月23日時点で、市川市公式資料から確認できる内容です。9月以降は今後の予定を含みます。

日程イベント・内容
1月4~12日あいねすとのお正月。鳥みくじ・鳥かるた・鳥ふくわらい
1月10・17・31日自然散策会
2月7・14・21・28日自然散策会
2月7日~3月15日「いちかわの いきもの いいまち いいえがお」写真展
3月7・14・21・28日自然散策会
4月4日保護区の桜を楽しむ観察会。9時50分~正午、参加費無料、申込順15人
4月11・18・25日自然散策会
5月2~6日あいねすと to みどりの国 クイズ&ウォークラリー
5月9~17日あいねすとのバードウィーク。野鳥クイズ・野鳥塗り絵
5月9・16・23日自然散策会
6月13~15日トビハゼをさがせ!
6月13・20日自然散策会
6月27日自然散策会の予定日だったが、天候不良であいねすとが臨時閉園
6月20日~11月15日企画展示「行徳鳥獣保護区の絶滅危惧種の鳥たち」
7月4・11日自然散策会。15時30分から
7月18日虫を捕まえて観察しよう。14時45分~16時30分、要申込、先着15人
8月15日早起き自然観察会。8時45分~10時、要申込、先着15人
8月通常の土曜自然散策会は休止
9月19・26日自然散策会。15時30分~16時30分、当日先着10人【2026年8月23日時点の今後予定】

2026年春号の「あいねすと通信」では6月の自然散策会が6・20・27日と予告されましたが、その後の市川市公式行事案内と広報いちかわでは13・20・27日に更新されました。6月27日は天候不良による臨時閉園が公式利用案内に記録されています。

季節で変わる野鳥と生きもの

行徳ぎょうとく近郊緑地では、一年中同じ鳥が見えるわけではなく、渡りや繁殖によって顔ぶれが変わります。

冬から早春は、コガモ、スズガモ、キンクロハジロなどのカモ類、カンムリカイツブリ、ツグミ、ジョウビタキなどが紹介されています。オオタカ、ノスリ、チュウヒなどの猛禽類も冬季の観察対象です。

春から初夏は繁殖の季節です。シジュウカラ、スズメ、カルガモなどが子育てを始め、ツバメやコアジサシなどの夏鳥が姿を見せます。4月半ばから5月には、渡りの途中のチュウシャクシギなどが干潟で休むことがあります。

夏は昆虫が目立ちます。セミ、トンボ、バッタ、カマキリなどが活動し、2025年・2026年とも昆虫観察イベントが組まれました。

秋は冬鳥が到着する時期です。カモ類、タシギ、ジョウビタキ、ツグミなどが増え、冬鳥を狙う猛禽類も見られるようになります。

東京湾の埋立てと83haの保全

新浜しんはまと呼ばれた行徳の海辺は、かつて広い前浜干潟、塩性湿地、汽水池が連なる環境でした。シギ・チドリ類やカモ類など、多くの水鳥が飛来していました。

昭和30年代後半から東京湾岸の埋立てが進み、干潟と湿地は急速に姿を変えます。市川市は昭和38年、昭和41年、昭和54年の写真を公開しており、海岸線の変化を確認できます。

昭和40年代には、失われる湿地環境を補うため人工的に湿地を再生する取り組みが始まりました。1970年、新浜鴨場を含む83haが行徳近郊緑地として保全され、1979年には鴨場を除く56haが鳥獣保護区になりました。

現在の湿地は、東京湾の開発と自然保護が同じ場所で進んだ歴史を残しています。

1989年の新浜鴨場と行徳鳥獣保護区周辺の空中写真
1989年の新浜鴨場周辺。国土交通省「国土画像情報(カラー空中写真)」を基に作成/Wikimedia Commons。

東京湾の別の自然再生型野鳥観察施設として、東京港野鳥公園とは?埋立地によみがえった干潟と野鳥の歴史を歩くの成立史も比較すると、湾岸開発と自然保護の違いが分かります。

宮内庁新浜鴨場とは

行徳近郊緑地の中には、宮内庁の新浜鴨場しんはまかもばがあります。

市川市の歴史資料では、1883年に宮内省が江戸川筋に御猟場を設け、その後、現在の地域に新浜鴨場が設けられた経緯が紹介されています。

現在、宮内庁が管理する鴨場は市川市の新浜鴨場と埼玉県越谷市の埼玉鴨場の2か所です。宮内庁によると、鴨場は11月中旬から翌年2月中旬の狩猟期間に内外の賓客を迎える接遇の場として使われています。捕獲した鴨は種類や性別などを記録して放鳥し、鳥類調査にも活用されています。

市川市にある宮内庁新浜鴨場の門
宮内庁新浜鴨場の門、2013年。撮影:Fffkk/Wikimedia Commons/CC BY-SA 3.0。

欠真間・行徳の古い土地と現在の保護区

現在のあいねすとの北西側には、欠真間かけままの地名が残っています。

市川市の文化財資料には、1590年に狩野浄天が行徳欠真間へ移り、荒地の開拓や塩田開発に携わった記録があります。1620年には田中内匠とともに約12kmの灌漑用水路を完成させました。

現在の住宅地と自然保護区の風景だけを見ると分かりにくいものの、行徳は塩づくり、農地、水路、海辺の生業が重なった土地でした。

行徳の塩づくり、舟運、漁師町、寺町まで含めた広域の歴史は、葛西・浦安・行徳・妙典の歴史散歩|塩・舟運・漁師町・野鳥の楽園を歩くで紹介しています。

丸浜川と「みどりの国」を歩く

あいねすとの前を流れる丸浜川まるはまがわ沿いは、自然散策会の主なフィールドです。

行徳鳥獣保護区には「みどりの国」と呼ばれる観察路もあります。市川市の案内では、あいねすとの前を通り過ぎて西へ約500mの場所に入口があります。

開園日は原則として土曜・日曜・祝日です。

3~10月:
9時30分~16時30分
最終受付16時

11~2月:
9時30分~15時30分
最終受付15時

館内の望遠鏡で遠くの鳥を見る時間と、観察路を歩く時間を組み合わせると、同じ緑地を異なる距離から観察できます。

旧行徳野鳥観察舎から「あいねすと」へ

現在のあいねすとの場所では、1979年に千葉県の旧行徳ぎょうとく野鳥観察舎が建設されました。同じ年、行徳近郊緑地の56haが鳥獣保護区に指定されています。

旧施設が担っていた野鳥観察と環境教育の役割を受け継ぎ、2020年9月、市川市の施設としてあいねすとが開館しました。

新施設では野鳥観察に加え、地域の歴史、文化、環境学習、交流を扱っています。旧観察舎で使われていた据え付け型望遠鏡も現在の館内で利用できます。

あいねすとの基本情報

住所:
千葉県市川市福栄4丁目22番11号

開館時間:
9時~17時

入館料:
無料

休館日:
月曜日。月曜日が祝日の場合は翌平日。
年末年始は12月29日~1月3日。

最寄り駅:
東京メトロ東西線行徳ぎょうとく駅または南行徳駅から徒歩約25分。

バス:
行徳駅、南行徳駅からバスを利用でき、最寄りのバス停から徒歩約10分。

駐車場:
無料、15台程度。
駐車場から施設までは約350m。

双眼鏡・望遠鏡:
館内で無料利用可能。
館外への通常貸し出しはなく、イベント時などに館外貸出があります。

自然散策会や特別観察会は、受付時刻、定員、雨天・高温時の中止条件が設定される場合があります。最新の日程は市川市公式「あいねすとの行事案内」で確認できます。

よくある質問

野鳥に詳しくなくても楽しめる?

楽しめます。館内には望遠鏡と双眼鏡があり、自然散策会ではスタッフと一緒に鳥、昆虫、植物などを探します。

双眼鏡を持っていなくても大丈夫?

館内の双眼鏡・望遠鏡は無料で利用できます。自然散策会でも双眼鏡貸し出しが案内されています。

自然散策会は毎週ある?

毎週固定ではなく、月ごとに実施日が設定されています。2025年・2026年とも土曜日を中心に複数回開催され、8月は暑さのため通常回を休止しました。

野鳥を見るなら何月がよい?

冬から春はカモ類や冬鳥、猛禽類を観察しやすく、春から初夏は子育てする鳥や夏鳥、夏は昆虫、秋は渡り鳥と冬鳥の到着を楽しめます。

行徳鳥獣保護区の中を自由に歩ける?

一般向けの観察路「みどりの国」が開園日に利用できます。保護区の立入制限区域は自由散策できませんが、認定NPO法人行徳自然ほごくらぶの定例観察会では、原則として毎週日曜日と祝日にスタッフの案内で保護区内を歩けます。市川市が行う桜の観察会などの特別企画もあります。

まとめ

あいねすとは、無料の望遠鏡や双眼鏡を使って行徳近郊緑地を観察できる市川市の施設です。自然散策会では鳥、昆虫、植物など、その季節の生きものを約1時間かけて探します。

2025年・2026年には、通常の自然散策会に加え、昆虫観察、早起き自然観察会、桜の観察会、バードウィーク、ウォークラリー、自然素材を使った工作などが行われました。

目の前の湿地は、1960年代までの新浜、東京湾の埋立て、1970年の83haの保全、1979年の鳥獣保護区指定を経て残された環境です。現在の野鳥観察と地域の歴史が、同じ風景の中につながっています。

参考文献・公式情報