世界の宇宙開発は今どこまで進んだ?日本・米国・中国・欧州・インド・ロシアを2026年最新動向で比較

2026年4月1日に打ち上げられたアルテミス2のSLSロケット

2026年4月1日、NASAの大型ロケットSLSがフロリダから離昇しました。搭乗した4人は月の近くを飛行し、4月10日に地球へ帰還しました。人が月の近くまで飛んだのは、アポロ17号以来50年以上ぶりです。

同じ時期、中国は2030年より前の有人月面着陸を目標に新型ロケットと宇宙船、月着陸船を開発しています。日本はH3と火星衛星探査機MMX、欧州はAriane 6と衛星通信網IRIS²、インドは有人宇宙飛行Gaganyaanを進めています。地球の周囲では、2026年半ばに稼働中の人工衛星が約1万5,000機へ増えました。

世界の宇宙開発は、月・有人飛行、ロケット、衛星通信網、宇宙ステーションという複数の軸で同時に進んでいます。

2026年の世界宇宙開発を30秒で見る

国・地域有人宇宙月・深宇宙ロケット衛星網・低軌道次の大きな節目
米国民間宇宙船でISS輸送Artemis IIが2026年に月周回飛行SLS、Falcon、StarshipなどStarlinkが大規模運用Artemis IVで2028年初頭の有人月面着陸を目標
中国天宮を常時有人運用有人月探査と無人月探査を並行長征シリーズ、長征10号を開発低軌道通信網を拡大2030年より前の中国人初の月面着陸を目標
日本ISS・アルテミスへ参加MMX、LUPEXなどH3測位・地球観測・通信を展開MMXを2026年10月20日に打ち上げ予定
欧州ISS・Gatewayなどへ参加国際探査に機器・宇宙船要素を供給Ariane 6IRIS²を展開へIRIS²の主コンステレーション348機を整備
インドGaganyaanを開発Chandrayaanで月面探査LVM3など測位・地球観測を運用有人飛行能力の確立と2035年の独自宇宙ステーションを目標
ロシアSoyuzでISS輸送を継続月・深宇宙計画を保有Soyuz、Angaraなど独自衛星群を運用ISS後の独自有人拠点を計画
2026年9月時点。将来日程は各機関の公表計画で、変更される可能性があります。

アメリカ――50年以上ぶりに人が月の近くへ戻った

NASAのArtemis IIは2026年4月1日に打ち上げられ、4人の宇宙飛行士がOrion宇宙船で月の近くを飛行し、4月10日に帰還しました。アポロ計画終了後、初めて人を月近傍へ送った飛行です。

アルテミス計画の予定は2026年に組み替えられました。Artemis IIIは2027年に地球低軌道でOrionと月着陸船などの有人実証を行う計画となり、最初の有人月面着陸はArtemis IVで2028年初頭を目標としています。2025年まで広く紹介されていた「Artemis IIIで2027年に月面着陸」という工程から変わっています。

米国では、NASAの計画に民間企業の宇宙船、ロケット、月着陸船、通信サービスが組み込まれています。SpaceXのDragonはISSへの有人輸送を担い、Starlinkは低軌道通信網を大規模に運用しています。NASAは2030年までISSを運用し、その後の低軌道活動を商業宇宙ステーションへ移す準備を進めています。

中国――天宮を運用しながら2030年より前の有人月着陸へ

中国は地球低軌道で宇宙ステーション「天宮てんきゅう(Tiangong)」を運用しています。2026年5月には天舟てんしゅう10号で補給を行い、神舟しんしゅう23号の乗員3人が天宮へ到着しました。神舟23号では、乗員1人が1年間滞在する試験を実施しています。

中国の天宮宇宙ステーションの完成形を描いた画像
中国の宇宙ステーション「天宮」の三モジュール構成。Image: Shujianyang/Wikimedia Commons/CC BY-SA 4.0

月では、2030年より前の中国人初の月面着陸を目標に、長征ちょうせい10号ロケット、新型有人宇宙船、月着陸船の大型試験が進んでいます。2026年2月の公式発表では、宇宙船の緊急脱出、月着陸船の着陸・離陸、長征10号の燃焼や低空飛行などの試験をすでに実施したとしています。

無人月探査では、嫦娥じょうが計画で月の裏側への着陸や月試料の地球帰還を実現してきました。嫦娥7号は2026年8月に探査機と長征5号ロケットが発射区へ移されましたが、8月23日に中国側が同年の予定ウィンドウでは打ち上げないと発表しました。有人月探査は、その無人探査とは別系統の大型計画として進んでいます。

中国は低軌道の衛星通信網も拡大し、通信衛星の大量配備を進めています。

日本――H3とMMX、月探査を国際計画へつなぐ

日本の主力ロケットはH3です。2026年8月11日にはH3ロケット9号機が準天頂衛星「みちびき7号機」を予定軌道へ投入しました。続く大きなミッションが、火星衛星探査計画MMXです。

JAXAの火星衛星探査計画MMX探査機を3モジュールに分けたCG
JAXAの火星衛星探査計画MMXの探査機。火星の衛星フォボスから試料を持ち帰る計画です。JAXA/ISAS/CC BY 4.0

JAXAはMMXをH3ロケット10号機で2026年10月20日4時41分03秒に種子島宇宙センターから打ち上げる予定です。探査機は火星の衛星フォボスに接近・着陸し、試料を地球へ持ち帰る計画です。火星圏の小天体からのサンプルリターンという、日本の小天体探査技術を次の段階へ進めるミッションです。

月では、日本とインドがLUPEX(月極域探査機)を共同で進めています。JAXAの2026年時点の案内では、打ち上げは2028年以降、H3を使用する計画です。月の南極域で水の分布や状態を調べ、月面を移動しながら掘削・観測する技術も実証します。

日本の宇宙開発がペンシルロケットからH3、月面探査、民間宇宙へ進んだ経緯は、日本の宇宙開発史|ペンシルロケットからH3・月面探査・民間宇宙時代までで詳しく整理しています。

欧州――Ariane 6とIRIS²で打ち上げ・通信の基盤を整える

欧州では、欧州宇宙機関(ESA)と欧州連合(EU)、各国の宇宙機関・企業が役割を分けています。大型ロケットAriane 6は、欧州が自ら宇宙へアクセスするための中核です。

フランス領ギアナの欧州宇宙港に立つアリアン6ロケット
フランス領ギアナの欧州宇宙港に立つAriane 6。Credit: ESA/M. Pedoussaut/CC BY-SA 3.0 IGO

2026年6月17日、Ariane 6は強化型ブースター4基を使い、Amazon Leoの通信衛星36機を軌道へ投入しました。ESAは、この飛行が欧州の新しい打ち上げ重量記録になったと発表しています。

通信ではEUのIRIS²が本格展開へ入りました。2026年8月の実施合意で低軌道衛星66機が追加され、主コンステレーションは348機となりました。欧州はロケットと通信衛星網の両方で、域内の宇宙インフラを整えています。

有人・月探査ではNASAとの協力が大きく、Orion宇宙船の欧州サービスモジュールや月周回拠点Gatewayの機器などを担っています。

インド――月面着陸から有人宇宙飛行へ

インドは2023年、Chandrayaan-3で月面への軟着陸に成功しました。次の大きな段階が、インド人宇宙飛行士を自国の宇宙船で地球周回軌道へ送るGaganyaanです。

クリーンルームに置かれたインドのチャンドラヤーン3統合モジュール
インドの月探査機チャンドラヤーン3の統合モジュール。Indian Space Research Organisation/Government Open Data License – India

2026年7月にも、ISROはGaganyaanの乗員カプセル用メインパラシュートの資格試験を実施しました。有人飛行に先立ち、無人飛行や緊急脱出、減速・着水などの試験を積み重ねています。

長期計画では、2035年までにBharatiya Antariksh Stationと呼ぶ独自宇宙ステーションを完成させ、2040年までにインド人の月面着陸を目標としています。月極域では日本とのLUPEXも進めており、独自計画と国際協力の両方を使って活動範囲を広げています。

ロシア――SoyuzとProgressが現在もISSを支える

ロシアの有人宇宙輸送は現在も続いています。2026年7月14日にはSoyuz MS-29がNASA宇宙飛行士1人とロスコスモス宇宙飛行士2人をISSへ運びました。9月にはProgress 96補給船がISSへ到着し、NASAの9月19日時点の記録ではSoyuz MS-29とProgress 95・96がISSに接続しています。

ISS後の有人活動では、ロシア軌道ステーション(ROS)が計画されています。RSC Energiaが2026年4月に示した工程では、2030年に独立したステーションとして展開を始め、2034年までに全体構成を整える計画です。同社の年次報告では2028年から第1段階に入る工程も示されており、ロシア側はISSロシア区画の2028年以降の運用案も検討しています。

月と並ぶ巨大な動き――衛星コンステレーション

月探査のニュースが目立つ一方、宇宙機の数を急増させているのは地球周回軌道の通信衛星です。OECDによると、2025年には世界で329回の宇宙打ち上げが行われ、約4,900個の物体が宇宙へ運ばれました。稼働中の人工衛星は2025年末に1万4,000機を超え、2026年半ばには約1万5,000機に達しています。

2025年末には米国の組織が稼働衛星の76%を運用していました。背景にはStarlinkをはじめとする大規模な衛星通信網があります。中国も低軌道通信網を拡大し、欧州ではIRIS²が本格展開へ入りました。

多数の衛星を一体運用する仕組みとStarlink、中国・日本の動きは、衛星コンステレーションとは?Starlink・仕組み・日本の動き・課題を徹底解説【2026年版】で詳しく解説しています。人工衛星が1957年のスプートニク1号から現在の巨大衛星網へ広がった歴史は、人工衛星の歴史とStarlinkでたどれます。

ISSの次へ――宇宙ステーションが複数化する

国際宇宙ステーション(ISS)は、米国、ロシア、日本、欧州、カナダの協力を象徴する有人施設です。NASAは2030年までISSを運用し、その後の低軌道活動を民間企業が運営する商業宇宙ステーションへ移す方針です。

中国はすでに天宮を独自運用しています。インドは2035年までの独自宇宙ステーション完成を長期目標とし、ロシアもISS後の独自拠点を計画しています。低軌道の有人活動は、ISSを中心とする時代から複数の拠点が並ぶ時代へ移りつつあります。

ISS、天宮、はやぶさ、ボイジャーを含む宇宙開発の歴史は、宇宙開発の歴史を初心者向けに解説|ISS・はやぶさ・ボイジャーで時系列に整理しています。深宇宙探査機と地球を結ぶ通信網は、NASAのDeep Space Network(DSN)とDSN Nowの解説で紹介しています。

2026~2030年に予定される主な宇宙開発

時期国・地域計画・出来事2026年9月時点の状態
2026年4月米国・国際Artemis II月近傍の有人飛行を実施済み
2026年10月20日予定日本MMX打ち上げH3ロケット10号機で打ち上げ予定
2027年予定米国Artemis III地球低軌道でOrionと月着陸船などを有人実証する計画
2028年以降日本・インドLUPEX月南極域の水・資源環境を探査する計画
2028年初頭目標米国・国際Artemis IV有人月面着陸を目標
2030年から計画ロシアロシア軌道ステーション独立運用に向けた展開開始、2034年までの全体構成を計画
2030年より前中国中国人初の有人月面着陸ロケット・宇宙船・着陸船を開発中
2030年ISS参加国ISS運用の大きな節目NASAは2030年までの運用と商業施設への移行を計画
将来計画は技術試験や予算、打ち上げ条件によって変更されます。

数字で見る世界の宇宙開発

OECDの2026年版宇宙経済報告によると、2025年末の稼働衛星は1万4,000機超、2026年半ばには約1万5,000機です。2025年までに109カ国が少なくとも1機の衛星を打ち上げた経験を持つ一方、自国の軌道投入能力を実証した国は2026年半ばで12カ国でした。

2025年の軌道打ち上げでは、米国が全体の55%、中国が28%を占めました。宇宙へ参加する国は増えていますが、打ち上げ能力と大規模運用は一部の国・企業に集中しています。打ち上げ回数に加え、軌道へ送る宇宙機の種類と継続運用するインフラに各国・地域の違いが表れます。

主な参考資料