アラブ音楽を聴くと、西洋音楽のドレミでは説明しきれない細やかな音の揺れや、声が旋律の中を旅するような感覚に出会います。そこには、マカームと呼ばれる旋法、微分音、詩、即興、声を大切にする独自の音楽文化があります。
アラブ音楽は、マカームという旋律の道を、声と楽器が細やかな音程・装飾・即興で旅する音楽です。
- 30秒で分かる結論――アラブ音楽は「旋法と声」で時間を深める音楽
- アラブ音楽はなぜ西洋音楽と違って聴こえるのか
- マカームとは何か――音階ではなく「旋律の道」
- 微分音とは何か――ドレミの間に広がる音
- 即興の音楽――タクスィームで旋法を旅する
- 声と詩の文化――アラブ音楽はなぜ歌を重視するのか
- ウード、カーヌーン、ナイ――アラブ音楽を支える楽器
- 宮廷、都市、宗教――イスラム世界で音楽はどう育ったのか
- ウンム・クルスームと近代アラブ音楽――声が国民的記憶になる
- トルコ、ペルシア、地中海とのつながり
- 西洋音楽・日本音楽・インド音楽と比べると何が違うのか
- よくある誤解
- 現代とのつながり――YouTubeで聴く前に知っておきたいこと
- FAQ
- まとめ――アラブ音楽は、旋法と声で時間を深める音楽だった
- このテーマを続けて読む
- 参考文献・参考サイト
30秒で分かる結論――アラブ音楽は「旋法と声」で時間を深める音楽
| 観点 | ざっくり言うと | 聴くときの注目点 |
|---|---|---|
| マカーム | 単なる音階ではなく、旋律の進み方を含む体系 | どの音に戻るか、どこで緊張し、どこで落ち着くか |
| 微分音 | 西洋平均律の半音では表しにくい細かな音程 | ピアノの鍵盤の間をすべるような音の揺れ |
| 即興 | 気分まかせではなく、マカームの性格を示す演奏 | タクスィームで旋法の世界が少しずつ開くところ |
| 声と詩 | 歌詞、朗唱、装飾音、メリスマが中心にある | 一つの母音や言葉が長く伸び、感情を深めるところ |
| 歴史 | 宮廷、都市、宗教、民衆芸能、録音産業が交わって育った | カイロ、バグダード、アレッポ、ベイルートなど都市ごとの響き |
西洋クラシック音楽では、和声、楽譜、作曲家、オーケストラが大きな役割を果たしました。アラブ音楽では、マカーム、詩、声、即興、演奏の場が音楽の中心にあります。両者の違いは、音楽を組み立てる重心にあります。
アラブ音楽はなぜ西洋音楽と違って聴こえるのか
アラブ音楽が西洋音楽と違って聴こえる背景には、次の四つの特徴が重なっています。
- 和音の進行よりも、旋律の進み方を重視する
- 平均律の鍵盤では表しにくい音程が使われる
- 声や楽器が、音をまっすぐ置くだけでなく、揺らし、飾り、伸ばす
- 楽譜どおりの再現よりも、伝統を身につけた演奏者の表現が大切にされる
西洋のピアノで「ド・レ・ミ」と弾くと、音の位置は鍵盤によってはっきり決まります。アラブ音楽の演奏では、同じ「レ」と「ミ」のあいだにも、地域やマカームごとの微妙な高さが現れます。演奏者は伝統的な音の位置や旋律の癖を、耳と身体で覚えています。
さらに、アラブ音楽では一つの旋律を複数の楽器がほぼ同じ方向に進みながら、微妙に装飾を変えて演奏することがあります。西洋の和声のように縦に積み重なるというより、一本の旋律をさまざまな音色で太くしていく感覚です。
マカームとは何か――音階ではなく「旋律の道」
マカーム(maqam、複数形 maqamat)は、アラブ音楽の中心にある旋法体系です。音階に加えて、旋律の進み方や装飾、転調の慣習まで含みます。
MaqamWorld は、アラブのマカームを、音階、典型的な旋律句、転調の可能性、装飾の規範、美的慣習を含む豊かな旋律の枠組みとして説明しています。マカームは、音の並びに加えて、どこから始まり、どの音を大切にし、どんな道筋で進み、どこに落ち着くのかまで含む考え方です。
マカームを「旅」にたとえると
マカームを地図にたとえると、仕組みを捉えやすくなります。
- 音階は、使える道の一覧
- 中心音は、出発地や休憩地
- 終止音は、帰ってくる場所
- 典型的な旋律句は、よく通る道筋
- 転調は、別の町へ寄り道すること
- 装飾音は、歩き方や呼吸の癖
同じ音を使っていても、どの音を長く聞かせるか、どこで上昇するか、どこで下降して終わるかによって、音楽の表情は変わります。マカームは、旋律が時間の中でどう動くかを示す仕組みです。
ジンス――マカームを作る小さな単位
アラブのマカームは、ジンス(jins、複数形 ajnas)と呼ばれる短い音のまとまりを組み合わせて説明されます。ジンスは三音、四音、五音ほどの小さな旋律単位で、マカームの性格を決める材料になります。
低い部分のジンスから別のジンスへ移ると、旋律の重心と音程の色が変わります。西洋音楽の転調に似た面もありますが、和声機能より旋律の変化が中心です。
微分音とは何か――ドレミの間に広がる音
微分音とは、広い意味では「半音より細かい音程」や「西洋の十二平均律では表しにくい音程」を指します。人間の声、ウード、ナイ、ヴァイオリンなどは、ピアノのドとド♯のあいだに当たる高さも出せます。
アラブ音楽の説明では「四分音」という言葉がよく使われます。半音をさらに二つに分けたような音程を示す便利な言い方ですが、実際の音程は数学的に均等な四分音だけで構成されるわけではなく、地域や時代、流派、マカーム、演奏者によって幅があります。
二十四平均律のような表記は学習や記譜の助けになります。一方、伝統的なイントネーションは耳で受け継がれてきました。アラブ音楽の微分音は、固定された鍵盤を細かく分割するだけでは捉えきれない音の運用です。
微分音は「変な音」ではなく、言葉のアクセントに近い
日本語の「雨」と「飴」は、音の高さの動きで意味が変わります。関西と関東でもアクセントが異なります。微分音も、音楽の言葉における発音や訛りに近い働きをします。
あるマカームで少し低めに感じる音は、その旋法の色を作ります。声がその音へ向かう動きは、「暗い」「甘い」「切ない」「堂々としている」といった印象を生みます。音程の細かさが表情の幅を広げます。
即興の音楽――タクスィームで旋法を旅する
タクスィーム(taqsim、複数形 taqasim)は、楽器による旋律的な即興です。曲の前奏や間奏、独奏の見せ場として演奏されます。
演奏者は、選んだマカームの音程、中心音、典型的な旋律句、上昇・下降の癖、転調の可能性を踏まえ、その場で旋律を組み立てます。自由な演奏は、共有された旋法の知識に支えられています。
Smithsonian Folkways のエジプト音楽資料では、タクスィームを、歌の前にマカームを導入したり、曲中の休止として用いられたりする旋律的な器楽即興として紹介しています。声による即興的な表現は、ライヤーリー(layali)やマワール(mawwal)といった形で現れることがあります。
タクスィームで聴くポイント
タクスィームでは、演奏者が聴き手の耳をマカームの響きへ導きます。
- 最初にどの音を中心に置くか
- 同じ短い旋律をどう言い換えるか
- 高い音へ上がるタイミングをどう作るか
- 別のマカームへ一瞬寄り道するか
- 最後にどの音へ戻って落ち着くか
ゆっくりした一音の揺れ、沈黙、息継ぎ、装飾の置き方にも、演奏者の判断が現れます。
声と詩の文化――アラブ音楽はなぜ歌を重視するのか
アラブ音楽では、声が大きな位置を占めます。古典歌曲、民衆歌謡、宗教的な詠唱、映画音楽、ラジオ放送まで、言葉と声が音楽文化を支えてきました。
背景には、アラビア語の詩の伝統があります。アラビア語圏の詩は、記憶、名誉、恋愛、信仰、政治、共同体の感情を運ぶ重要な表現でした。歌は、その詩を旋律と声によって共有する場でもありました。
メリスマ――一つの音節が長く旅をする
アラブ歌唱では、一つの言葉や母音が長く引き伸ばされ、その中で音が細かく動くことがあります。これを広くメリスマ的な歌唱と呼びます。
「愛」や「夜」のような言葉が、いくつもの音を通りながら伸びていくと、歌詞の意味に加えて、言葉が声としてほどける時間そのものが表現になります。そこに装飾音、こぶし、息の強弱、微分音が重なります。
クルアーン朗唱との関係は慎重に考える
クルアーン朗唱は、アラブ世界の声、記憶、響きの文化を考える重要な周辺領域です。イスラムの宗教的立場には、朗唱を一般の「音楽」と同一視しない考え方があります。
朗唱には、美しい声、正確な発音、息の運び、抑揚、響きへの高度な感覚が求められます。タジュウィード(tajwid)と呼ばれる朗唱の規則は、文字を正しく発音し、休止や伸ばし方を整える知の体系です。
ウード、カーヌーン、ナイ――アラブ音楽を支える楽器
アラブ音楽の伝統的な小編成合奏は、タフト(takht)と呼ばれます。MaqamWorld は、伝統的なタフトの主要な旋律楽器として、ウード、ナイ、カーヌーン、ヴァイオリンを挙げ、打楽器としてリクを紹介しています。場合によっては、タブラ、ダフ、ブズクなども加わります。
| 楽器 | 種類 | 役割 |
|---|---|---|
| ウード | フレットのない撥弦楽器 | 旋律、伴奏、作曲、タクスィームの中心になりやすい |
| カーヌーン | 台形の撥弦ツィター | 細かい音型と音程調整で合奏の音の基準を作る |
| ナイ | 葦の縦笛 | 息の音を含む柔らかな響きで旋律を歌う |
| ヴァイオリン | 擦弦楽器 | フレットがないため微妙な音程や装飾に対応しやすい |
| リク | 小型の枠太鼓 | 拍節、装飾的なリズム、合奏の推進力を作る |
| ダルブッカ | 杯形太鼓 | 明るい打音でリズムを支える |

ウード――フレットがないから歌える楽器
ウードは、丸みのある胴体、短いネック、フレットのない指板を持つ撥弦楽器です。演奏者は指の位置で細かな音程を作り、マカームの微妙な音程や装飾を表現します。

歌手に寄り添う伴奏から、独奏のタクスィームまで幅広く用いられます。
カーヌーン――音の網を張る楽器
カーヌーンは、台形の板に多数の弦を張り、両手の指にはめた爪で弦をはじく楽器です。左側の小さなレバーを使い、演奏中に音程を細かく変えられます。

この仕組みによって、マカームに応じた音程調整や転調に対応します。細やかな分散音型が、旋律のまわりに音の網を作ります。
ナイ――息がそのまま旋律になる笛
ナイは、葦で作られた縦笛です。熟練した奏者は、息の強さ、角度、指のふさぎ方によって、繊細な音色と音程を作ります。

息のざらつきや揺れを含む音色が、人間の呼吸に近い響きを生み、喜び、寂しさ、祈り、憧れなどを柔らかく表現します。
宮廷、都市、宗教――イスラム世界で音楽はどう育ったのか
アラブ音楽は、宮廷、都市、学問、宗教、民衆芸能、交易が交わる中で形を変えてきました。
中世イスラム世界では、バグダードを中心とするアッバース朝の宮廷文化が大きな役割を果たしました。詩人、歌手、楽器奏者、音楽理論家が集まり、ギリシア由来の学問、ペルシア文化、アラブの詩と歌が交差します。音楽は娯楽であると同時に、教養、権力、都市文化の一部でもありました。
西方では、アンダルスの音楽文化が北アフリカや地中海世界と結びつきました。東方では、ペルシア、トルコ、中央アジアの旋法文化と影響し合いました。アラブ音楽、トルコ音楽、ペルシア音楽は、共通する旋法的な考え方を持ちながら、用語、調律、レパートリー、楽器、歌唱様式、歴史的中心地が異なります。
都市が音楽を育てる
アラブ音楽は、都市の文化としても発展しました。カイロ、アレクサンドリア、ベイルート、ダマスカス、アレッポ、バグダード、チュニス、フェズなどの都市は、それぞれ異なる歌や楽器、舞台文化を育てました。
都市には、宮廷や富裕層のサロン、宗教施設、劇場、カフェ、ラジオ局、レコード会社、映画産業が集まります。音楽家はそこで、古い詩を歌い、新しい歌詞を広め、民衆の旋律を洗練させ、近代的なメディアに乗せていきました。
シリアのアレッポに伝わるアル・クドゥード・アル・ハラビーヤは、宗教的な歌や娯楽の歌が都市文化の中で受け継がれてきた例です。UNESCO はこの伝統を、アレッポの伝統音楽として無形文化遺産の代表一覧表に記載しています。

ウンム・クルスームと近代アラブ音楽――声が国民的記憶になる
エジプトの歌手ウンム・クルスーム(Umm Kulthum)は、近代アラブ音楽を代表する存在です。彼女の歌は、ラジオ、レコード、映画、国家、アラブ世界の聴衆を結びつけました。

ウンム・クルスームの長大な歌では、歌手が言葉を反復し、伸ばし、装飾し、聴衆の反応を受けながら、作曲された旋律の時間を広げます。一曲が数十分、さらに長く続くこともありました。聴き手は、一つの言葉が異なる表情で戻る時間に浸ります。
作曲家ムハンマド・アブドゥルワッハーブは、西洋楽器や近代的な編成、映画音楽の感覚を取り入れながら、アラブ歌謡の形を変えました。レバノンのファイルーズは、ラフバーニー兄弟らとともに、レバントの詩情、舞台、放送文化を結びつけ、アラブ世界で広く聴かれる声となりました。シリアのサバーハ・ファフリーは、アレッポの歌唱伝統を現代に強く印象づけた歌手です。
近代化によってヴァイオリン、チェロ、コントラバス、アコーディオン、映画オーケストラなどが加わっても、マカーム、詩、声、即興、聴衆との関係は受け継がれました。
トルコ、ペルシア、地中海とのつながり
アラブ音楽は、トルコのマカーム(makam)、ペルシア音楽のダストガー(dastgah)、ギリシアやバルカン、北アフリカ、地中海の音楽と長く交流してきました。
| 文化圏 | 共通点 | 注意したい違い |
|---|---|---|
| アラブ音楽 | マカーム、詩、声、即興、都市歌謡 | 地域差が大きく、エジプト・レバント・イラク・マグリブで響きが異なる |
| トルコ古典音楽 | makam、微細な音程、宮廷・都市文化 | オスマン宮廷の理論、拍節法、レパートリーが独自に発達 |
| ペルシア古典音楽 | 旋法的思考、即興的展開、声の装飾 | ダストガーとラディーフを中心に学ぶ体系を持つ |
| ギリシア・地中海 | 楽器や旋律、都市歌謡の交流 | 言語、宗教、近代国家形成の違いで別の音楽文化へ展開 |
「中東音楽」という総称の内側には、都市、言語、宗教、民族、国家、移民の歴史が重なっています。共通点と相違点を分けて捉えることで、各地域の音楽文化が見えやすくなります。
西洋音楽・日本音楽・インド音楽と比べると何が違うのか
他の音楽文化と比べると、アラブ音楽が重視する要素が明確になります。
| 音楽文化 | 中心になりやすい考え方 | アラブ音楽との比較 |
|---|---|---|
| 西洋クラシック音楽 | 和声、楽譜、作曲家、楽章構成、管弦楽 | アラブ音楽は和声進行より旋律展開と声の表情を重視しやすい |
| 日本の伝統音楽 | 間、語り、節回し、楽器ごとの音色、場の格式 | 声と言葉を重視する点で近いが、マカームの理論体系とは異なる |
| インド古典音楽 | ラーガ、ターラ、長い即興、師弟伝承 | 旋法と即興を重視する点は近いが、ラーガとマカームは同じものではない |
| アラブ音楽 | マカーム、詩、声、微分音、タクスィーム、都市歌謡 | 旋律の道を声と楽器でたどり、聴衆と時間を共有する |
インド古典音楽のラーガ、ターラ、長い即興、師弟伝承の仕組みは、インド音楽はなぜ西洋音楽と違うのかで詳しく解説しています。
西洋音楽に慣れた耳では、コード進行へ意識が向きやすくなります。アラブ音楽では、中心音、言葉の反復、楽器の呼吸、タクスィームの緊張と終止に注目すると、旋律の秩序を捉えやすくなります。
日本音楽に親しんでいる人なら、「間」や「節回し」を手がかりにできます。雅楽、声明、民謡、浪曲、長唄など、日本にも言葉と旋律が一体になった音楽は多くあります。サイト内では、声・歌・舞が一体となる日本の伝統芸能の見方として、神明雅楽・七夕の歌宴の記事も参考になります。
近代日本で西洋音楽が学校、レコード、ラジオ、映画を通じて広がった流れと比べるなら、日本近代音楽の歴史も対照になります。アラブ世界でも、ラジオ、映画、録音産業は音楽の広がり方を大きく変えました。
よくある誤解
誤解1:アラブ音楽は全部「四分音の音楽」である
実際の音程は柔軟で、マカーム、地域、演奏伝統によって異なります。
誤解2:マカームは西洋のモードと同じである
マカームは、中心音、典型的な旋律句、進行、転調、装飾、演奏慣習まで含む体系です。
誤解3:即興はその場の思いつきである
タクスィームでは、演奏者がマカームの性格を保ちながら、その場で旋律の道筋を作ります。
誤解4:アラブ音楽、トルコ音楽、ペルシア音楽は同じである
三つの音楽文化は交流してきましたが、理論、演奏法、言語、詩、レパートリーが異なります。
誤解5:宗教的な朗唱はすべて音楽である
宗教的な朗唱には、信仰上、一般の音楽と区別されるものがあります。
現代とのつながり――YouTubeで聴く前に知っておきたいこと
いまは、ウード独奏、タクスィーム、ウンム・クルスーム、ファイルーズ、サバーハ・ファフリー、マルセル・ハリーフェ、エジプト映画音楽、レバントの歌謡などを、動画や配信で簡単に聴けます。
次の順番で聴くと、違いを捉えやすくなります。
- ウードやナイの短いタクスィームを聴く
- マカーム名が付いた演奏をいくつか比べる
- 歌ものを聴き、同じ言葉がどう繰り返されるかを見る
- ウンム・クルスームの長い歌を、数分ずつ分けて聴く
- エジプト、レバント、イラク、マグリブの違いを少しずつ聴き分ける
同じ旋律が戻るたびに表情が変わり、同じマカームの中で景色が深まります。
FAQ
アラブ音楽とアラビア音楽は同じですか?
日本語では「アラブ音楽」「アラビア音楽」が近い意味で使われることがあります。ただし、アラブ音楽という場合は、アラビア語圏の多様な音楽文化を指すことが多く、エジプト、レバント、イラク、湾岸、マグリブなど地域差を含みます。
マカームはいくつありますか?
数え方によって異なります。基本的なマカーム、派生的なマカーム、地域的な名称をどう扱うかで数が変わります。初心者は、ラスト、バヤーティー、ヒジャーズ、ナハワンド、アジャム、サバ、シーカーなど、よく出る名前から聴くとよいでしょう。
ピアノでアラブ音楽は弾けますか?
一部のマカームや近代的な編曲はピアノでも演奏できます。ただし、微分音や細かな装飾を忠実に表すには限界があります。現代にはオリエンタル・キーボードのように微分音設定ができる楽器もあります。
アラブ音楽は悲しい音楽なのですか?
必ずしも悲しい音楽ではありません。日本人の耳には、微分音や装飾のために哀愁を感じやすい曲もありますが、祝祭的な曲、舞踊的な曲、宗教的な曲、恋愛歌、愛国歌、映画音楽など、表情は非常に幅広いです。
最初に何を聴けばよいですか?
短い入口としては、ウードやナイのタクスィームがおすすめです。その後、ウンム・クルスーム、ファイルーズ、サバーハ・ファフリーなどの歌を聴くと、マカーム、詩、声、聴衆の関係が見えやすくなります。
まとめ――アラブ音楽は、旋法と声で時間を深める音楽だった
アラブ音楽では、マカームが旋律の道筋を定め、微分音が色を作り、タクスィームが即興でその道をたどります。声と詩は、同じ言葉や旋律を反復しながら時間を深めます。宮廷、都市、宗教、民衆芸能、近代メディアの交差が、この音楽文化を育ててきました。
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礼楽、古琴、詩、文人文化を軸にした中国音楽との違いは、関連記事「中国古典音楽とは何か」で比較できます。
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参考文献・参考サイト
- MaqamWorld “The Arabic Maqam”
- MaqamWorld “Arabic Musical Instruments”
- MaqamWorld “The Oud”
- MaqamWorld “The Qanun”
- MaqamWorld “The Nay”
- Smithsonian Folkways “Egypt: Taqâsîm and Layâlî: Cairo Tradition”
- UNESCO Intangible Cultural Heritage “Iraqi Maqam”
- UNESCO Intangible Cultural Heritage “Al-Qudoud al-Halabiya”
- UNESCO Intangible Cultural Heritage “Crafting and playing the Oud”
- Mohamed Ahmed, “Arabic Music Genre Identification,” 2024
- Barış Bozkurt, “An Open Research Dataset of the 1932 Cairo Congress of Arab Music,” 2025
- Johnny Farraj and Sami Abu Shumays, Inside Arabic Music: Arabic Maqam Performance and Theory in the 20th Century, Oxford University Press, 2019.
- Habib Hassan Touma, The Music of the Arabs, Amadeus Press, 1996.
- Virginia Danielson, The Voice of Egypt: Umm Kulthum, Arabic Song, and Egyptian Society in the Twentieth Century, University of Chicago Press, 1997.
- Scott L. Marcus, Music in Egypt: Experiencing Music, Expressing Culture, Oxford University Press, 2007.

