扇を開く一瞬に風が吹き、足拍子が物語の場面を変えます。日本舞踊は、唄と三味線に身体の動きが重なる舞台芸術です。東京・練馬では、戦後まもなく生まれた舞踊連盟が、流派を越えて舞台をつくってきました。
練馬区民文化祭の「日本舞踊の会」は、その活動を今に伝える公演です。2024年には連盟の創立75周年を迎え、2025年にも歌舞伎舞踊と上方舞の演目が並びました。2026年は11月22日に練馬文化センターで開催されます。
2026年「日本舞踊の会」開催情報
- 開催日:2026年11月22日(日)
- 時間:11時〜17時30分(10時30分開場、11時開演)
- 会場:練馬文化センター 小ホール(つつじホール)
- 住所:東京都練馬区練馬1-17-37
- 料金:入場無料、一般入場可
- 主催:練馬区日本舞踊連盟
- 位置づけ:第71回練馬区民文化祭の参加行事
練馬駅北口から徒歩約1分の小ホールで開催されます。練馬区の区民文化祭案内と練馬文化センターのイベントカレンダーに日時が掲載されています。第71回は区民文化祭全体の回数です。
日本舞踊とは――舞・踊り・しぐさが描く物語
日本舞踊は、歌舞伎の舞踊を中心に発展し、座敷で受け継がれた舞なども含む伝統芸能です。江戸時代の芝居小屋で磨かれた技法は、近代になると独立した舞踊の公演や稽古にも広がりました。
日本舞踊協会は、表現を「舞」「踊り」「しぐさ」の三つから説明しています。拍子に乗る足運び、静かな動きにこめる感情、人物の暮らしを伝える身振りが組み合わさります。扇一本を船の櫂、波、花に見立てるように、限られた道具から多様な景色が生まれます。

歌舞伎舞踊と上方舞の違い
歌舞伎舞踊は、江戸の劇場文化と密接に結びつきました。長唄や常磐津、清元などの音楽とともに、役柄や物語を身体で表現します。これに対し、京都・大阪の座敷文化で発展した上方舞には、細やかな所作で心情を表す伝統があります。
練馬区の連盟には、上方舞の吉村流も参加しています。座敷舞の歴史と吉村流の伝承については「上方舞・吉村流とみなみ乃会の歴史」で紹介しています。
練馬区日本舞踊連盟の歩み――1949年の創立から
練馬区が板橋区から独立したのは1947年です。その2年後の1949年、邦楽と舞踊の愛好者による邦楽舞踊連盟が発足しました。現在の練馬区日本舞踊連盟の歴史はここから始まります。
1955年、練馬区が秋の区民文化祭を初めて開催したとき、邦楽舞踊連盟は参加した4団体の一つでした。1961年には邦楽と舞踊が別々の連盟になり、日本舞踊の活動が独立して続けられました。
1969年に創立20周年、2009年には邦楽連盟とともに創立60周年を記念する「おどりと邦楽のつどい」を開催しました。2014年に65周年、2019年に70周年、2024年に75周年を迎えています。各時代の節目は練馬区文化団体協議会の年表に記録されています。
練馬区で活動する日本舞踊の流派
2022年更新の練馬区の団体紹介には、花月流、花ノ本流、花柳流、坂東流、藤間流、若柳流、吉村流、若見匠流の8流派が掲載されています。同時点の登録は12会派、会員30人です。いくつもの流派が同じ公演で作品を披露することが、この会の特色です。
花柳流、坂東流、藤間流、若柳流などは、歌舞伎舞踊の技術を受け継いできました。吉村流は京阪の上方舞を伝えます。2024年と2025年の出演記録からも、異なる流派や音楽の作品が並ぶ様子をたどれます。
2024年・創立75周年記念「日本舞踊の会」
2024年11月17日(日)、第69回練馬区民文化祭の「日本舞踊の会」が練馬文化センター小ホールで開かれました。10時30分開場、11時開演、17時30分終了予定で、入場は無料。連盟の創立75周年を記念した公演でした。
正派若柳流の若柳吉應が公開した出演情報には、武藤弘将による長唄「供奴」と、若柳吉以による「喜撰」が記されています。
「供奴」の軽快な足拍子
「供奴」は1828年(文政11年)、江戸・中村座で初演された歌舞伎舞踊です。主人の供をして遊里へ向かった奴が主人を見失い、主人の身振りをまねながら探し回ります。提灯を持つ姿や華やかな足拍子に、江戸の芝居らしいユーモアがあります。
2025年・第70回区民文化祭「日本舞踊の会」
2025年11月23日(日・祝)、練馬文化センター小ホールで開催されました。11時開場、11時30分開演で、入場は無料でした。区の行事案内に記された開催時間は11時〜17時30分です。
吉村流の吉村千津は上方舞「八島」への出演を予告しました。源平合戦を題材にした男性の舞で、吉村千津は壇ノ浦の戦いを表現する作品として紹介しています。
若柳吉應の公演前日の記録には、若柳吉以が常磐津「三人生酔」の黒又役で出演すること、常磐津「奴道成寺」と清元「卯ノ木」にも出演者がいることが記されています。

日本舞踊の舞台を楽しむための用語
- 所作(しょさ):人物の行動や感情を表す身体の動きです。
- 振り(ふり):曲の詞章や拍子に合わせて定められた舞踊の動きです。
- 見立て(みたて):扇などの道具や所作で、風景や別の物を表す表現です。
- 立方(たちかた):舞踊を舞う人です。
- 地方(じかた):唄や三味線などで舞踊を支える演奏者です。
- 長唄(ながうた):歌舞伎舞踊とともに発展した三味線音楽です。
- 常磐津(ときわず):物語を語る浄瑠璃の系統に属する三味線音楽です。
- 清元(きよもと):繊細な節回しを特色とする浄瑠璃の系統です。
- 素踊り(すおどり):役柄の本衣裳などを使わず、身体の技芸を見せる上演形式です。
- 衣裳付(いしょうつき):役柄に合わせた衣裳やかつらなどを着けて舞う形式です。
- 下浚い(したざらい):本番前に舞台の動きや進行を確認する稽古です。
- 後見(こうけん):舞台上で道具や衣裳などを扱い、上演を支える役割です。
- 名取(なとり):流派から芸名を許された人です。
唄と三味線がどのように発展したかは、関連記事「日本音楽史まるわかりガイド」でたどれます。
会場・練馬文化センターの歴史とアクセス
練馬文化センターは1983年に開館しました。2024年5月に大規模改修を終えて利用を再開しています。日本舞踊の会が開かれる小ホールは「つつじホール」と呼ばれ、現在の施設案内では543席、車いすスペース4席とされています。
所在地は東京都練馬区練馬1-17-37。西武池袋線・西武有楽町線、都営大江戸線の練馬駅から徒歩約1分です。会場の構造やバリアフリー設備は練馬文化センター公式の施設案内に掲載されています。
