1967年1月、流派を越えて古典舞踊を研究し、舞台で披露する「たつな会」が始まりました。銀座のガスホールから日本橋劇場へと会場を移し、2026年11月には第460回を迎えます。公演では、簡素な装いで踊る素踊り、色鮮やかな衣装を用いる舞踊、箏などの邦楽が組み合わされてきました。
たつな会とは――1967年に始まった流派横断の研究会
たつな会は、日本舞踊を愛好する人々や舞踊家を志す人々の研究・発表の場です。主催者公式サイトによると、初演は昭和42年(1967年)1月。花柳流、藤間流、若柳流など、流派の枠を越えた公演を続けています。舞踊のほか、箏曲などの演奏が番組に入ることもあります。
名称について、Wikipediaの「たつな会」によると、出演者が自分の「名を立てる」ことと、観客が「席を立たない」ことに由来するとされています。
銀座ガスホールから日本橋劇場へ――公演の歩み
主催者公式サイトの記録では、2005年の第418回まで、たつな会は主に銀座ガスホールで上演されていました。同年12月の第419回から日本橋公会堂へ移り、2024年5月の第455回まで同会場で公演を重ねました。
日本橋公会堂の改修に伴い、2024年11月の第456回と2025年4月の第457回は江東区の深川江戸資料館小劇場で開催されました。2025年11月の第458回から日本橋劇場に戻っています。
Wikipediaには1986年11月5日の読売新聞夕刊が、220回目の記念公演を取り上げた記録も挙げられています。長い公演史のなかには、若柳吉美を追悼する特別な会もありました。江戸初期の芝居町と歌舞伎興行の歴史をたどると、舞踊の母体となった歌舞伎文化が江戸の町に根づいた過程も分かります。
素踊り・衣装付き舞踊・邦楽――舞台の三つの形式
素踊り
素踊りは、紋付や袴などの簡素な装いで作品を表現する形式です。手足の動き、視線、扇の扱いから人物の感情や風景を浮かび上がらせます。たつな会では長唄の古典作品を素踊りで披露する番組が多く見られます。
衣装付き舞踊
衣装付き舞踊では、役柄に応じた着物や鬘を使います。娘、芸人、伝説上の人物などの役柄を装いによっても表し、作品の世界を舞台に広げます。2025年の「万歳」「浅妻船」「都風流」などが、この部門で披露されました。

邦楽の演奏
邦楽は日本の伝統音楽の総称です。たつな会の番組には箏曲の独奏や合奏も登場します。舞踊を伴わない演奏の時間が設けられることで、和楽器の音色そのものを聴くことができます。
初心者が知っておきたい日本舞踊の用語
- 流派:舞踊の技法や芸風を受け継ぐ系統。花柳流、藤間流、若柳流などがあります。
- 名取:流派から芸名を許された人。認定の仕組みは流派によって異なります。
- 立方と地方:舞台で踊る人が立方、唄や三味線などを担当する人が地方です。
- 長唄:唄と三味線を中心とする音楽。歌舞伎舞踊の伴奏として発展しました。
- 清元・常磐津・義太夫:いずれも物語を語る浄瑠璃の系統で、声と三味線によって場面や感情を伝えます。
- 本手・替手:箏曲などで、基本となる旋律と、それに重なる別の旋律です。
- 「抄」:作品の一部を取り出して上演する際などに使う表記です。
たつな会の公演では、作品の題名の前に「長唄」「清元」「義太夫」などの音楽ジャンルが記されます。これらは踊りを支える音楽の種類を示します。
代表的な演目――藤娘・越後獅子・娘道成寺
藤娘
長唄「藤娘」は、藤の花の精を娘の姿で表す歌舞伎舞踊の名作です。江戸後期の1826年に初演され、恋の喜びや切なさを踊りに託します。たつな会では2024年5月、2025年4月などに上演されました。

越後獅子
「越後獅子」は、越後の獅子舞を題材にした長唄の作品です。獅子舞の軽快な動きや旅芸人の姿を表現し、「さらしの段」では長い布を操る動きも見どころになります。2025年11月の第458回では山田耕平が「越後獅子(さらしの段)」を披露しました。
娘道成寺
「京鹿子娘道成寺」は、紀州の道成寺伝説を題材とする歌舞伎舞踊で、1753年に初演されました。白拍子花子の舞に、娘の恋心と執念が重なります。たつな会では抜粋版にあたる「娘道成寺抄」も演目に採用されています。
たつな会に関わる主な人物
花柳寿院(金子智栄子)
花柳寿院は、文京学院大学名誉教授の金子智栄子が日本舞踊で用いる芸名です。大学の2025年11月の案内では、花柳流名取歴49年、東京新聞主催の「推薦名流舞踊大会」に27回出演し、2回表彰されたと紹介されています。2024年には「高尾さんげ」、2025年4月には「多摩川」「藤娘」、同年11月には「万歳」「都風流」を披露しました。
山田耕平
山田耕平は文京学院大学の卒業生で、臨床心理士・公認心理師としても活動しています。2025年4月の第457回で「黒田節」「千代のためし」、11月の第458回で「高砂」「越後獅子(さらしの段)」に出演しました。
花柳真寿輔・花柳瀧眞など
花柳真寿輔は花柳流師範で、舞踊指導にも携わる人物です。花柳瀧眞は2024年の「外記猿」、2025年の「浅妻船」などの出演記録があり、花柳寿院とともに近年の公演に名を連ねています。箏曲では中条琴絵、桜本正子らの演奏も記録されています。
2024年・2025年の公演記録
| 回次・日付 | 会場 | 主な演目・記録 |
|---|---|---|
| 第455回/2024年5月23日 | 日本橋劇場 | 外記猿、藤娘、田舎巫女、高尾さんげ、お祭り |
| 第456回/2024年11月18日 | 深川江戸資料館小劇場 | 主催者公式サイトに出演者写真と開催記録 |
| 第457回/2025年4月22日 | 深川江戸資料館小劇場 | 多摩川、藤娘、黒田節、千代のためしなど |
| 第458回/2025年11月18日 | 日本橋劇場 | 高砂、春の調、雪月花、越後獅子、箏曲、万歳、浅妻船、都風流 |
第458回は、素踊り、箏曲演奏、衣装付き舞踊の三部で構成されました。箏曲の部では「暖流」のほか、「さくら」「うさぎ」「虫の声」などの童謡が演奏されています。日付と演目は主催者公式サイトおよび文京学院大学の公演案内に基づきます。
2026年11月17日・第460回たつな会の開催情報
2026年11月17日(火)の第460回は、日本橋劇場(日本橋公会堂4階)で開かれます。開場は12時、開演は12時30分、入場無料です。会場公式の番組表では15時15分終演予定と案内されています。
| 開催日 | 2026年11月17日(火) |
|---|---|
| 時間 | 12:00開場/12:30開演/15:15終演予定 |
| 会場 | 日本橋劇場(日本橋公会堂4階) |
| 住所 | 東京都中央区日本橋蛎殻町1-31-1 |
| 入場料 | 無料 |
| 主催 | たつな会 |
2026年の番組には、素踊りの「寿」「廓八景」「汐汲」「玉屋」「春秋」「まかしょ」、箏曲の演奏、衣装付き舞踊の「秋の色種」「娘道成寺抄」などが並びます。詳細な出演順と出演者は日本橋劇場の公式案内・番組表で確認できます。

日本橋劇場へのアクセスと周辺の歴史
会場は中央区日本橋蛎殻町にある日本橋区民センター4階です。東京メトロ半蔵門線「水天宮前」駅6番出口から徒歩約2分、日比谷線「人形町」駅A2出口から徒歩約5分で到着します。詳細は日本橋公会堂の施設案内に掲載されています。
人形町周辺には、江戸時代に歌舞伎の中村座や市村座、人形浄瑠璃の芝居小屋が集まっていました。劇場周辺の土地の歴史は、日本橋・茅場町・人形町の歴史散歩や人形町と江戸の芝居町をたどる歴史散歩でも紹介しています。
参考資料
- たつな会公式サイト(沿革・近年の公演記録)
- 中央区観光協会「第460回 たつな会」
- 中央区立日本橋公会堂「第460回 たつな会」
- 文京学院大学「第455回たつな会」、「第457回たつな会」、「第458回たつな会」
- Wikipedia「たつな会」(名称の由来・過去の公演一覧)

