東京韓国学校とは?歴史・教育と文化祭を初心者向けに解説

東京都新宿区若松町にある東京韓国学校の校舎

東京・新宿区若松町に、韓国の教育課程を基礎に小・中・高の教育を行う東京韓国学校があります。

韓国語の正式表記は「동경한국학교」。1954年に26人の児童・生徒から始まり、70年以上にわたって東京の在日韓国人社会と韓国から来日した家庭の子どもたちを受け入れてきました。

東京には「東京朝鮮中高級学校」もあります。どちらも朝鮮半島にルーツを持つ子どもの民族教育と関係しますが、成立の歴史、運営主体、教育課程、文化活動は異なります。戦後の民族教育が異なる学校体系へ発展した過程をたどると、両校の違いが具体的に分かります。

東京韓国学校とは?

東京都新宿区若松町にある東京韓国学校の校舎
東京韓国学校(東京都新宿区若松町)、2010年。撮影:あばさー/Wikimedia Commons/Public Domain。

東京韓国学校は、東京都新宿区若松町2-1にある韓国系の学校で、初等部、中等部、高等部を備えています。韓国教育部の在外教育機関ポータルでは、1954年4月26日開校、韓国政府の設立認可は1962年3月16日、日本側の現地設立認可は1955年2月3日と記録されています。

日本では東京都の認可を受けた各種学校です。民団の学校一覧は、設置者を「学校法人東京韓国学園」と記載しています。一方、韓国では教育部が認可する在外韓国学校で、2026年3月基準の韓国教育部一覧にも東京韓国学校が掲載されています。

日本の各種学校と、韓国の在外韓国学校という二つの制度に位置づけられていることが、学校の特徴を理解する出発点です。

なぜ東京に韓国学校ができたのか

東京韓国学校が開校したのは1954年4月26日です。学校副校長・이훈우(イ・フヌ)がまとめた70周年史によると、1953年11月、在日本大韓民国民団が東京への韓国学校設立を決定し、1954年1月に設立期成会が組織されました。駐日韓国代表部、民団、在日韓国人社会が協力して開校準備を進めました。

開校時は初等部17人、中等部9人の計26人、教職員10人でした。場所は現在と同じ若松町で、当時民団中央本部が使用していた施設を利用しました。1955年2月に東京都から各種学校として認可され、1956年に高等部を設置。1962年3月には韓国政府から小・中・高を備える在外韓国学校として認可されました。

1993年11月には付設土曜学校が始まり、東京韓国学校に通わない在日コリアンの子どもたちにも韓国語、歴史、文化を学ぶ場を広げました。

戦後の民族教育と二つの学校体系

1945年の日本敗戦と植民地支配の終結後、日本各地で朝鮮半島出身者による民族教育が始まりました。その後、朝鮮半島の分断と在日コリアン社会の組織的な分化が進みます。

東京朝鮮中高級学校は1946年、戦後直後の朝鮮人民族教育の流れから生まれました。東京韓国学校は1954年、民団、駐日韓国代表部、在日韓国人社会の協力によって開校しました。戦前から戦後にかけて東京の在日コリアン社会が形成された経緯は、東京のコリアンタウンと在日コリアン集住地の歴史でも紹介しています。

東京韓国学校では何を学んでいる?

東京韓国学校では、日本で暮らす生徒の進路に合わせて韓国・日本双方の教育課程を組み合わせています。韓国語、日本語、英語の3言語教育に加え、中・高等部ではK班とJ班を設けています。

K班とJ班は何が違う?

2025年度の募集要項では、J班は日本教育課程、K班は韓国教育課程で授業を行うと明記されています。違いは、どの国の教育課程を基礎に学習と進学を組み立てるかにあります。

比較J班K班
基礎となる教育課程日本の教育課程韓国の教育課程
進路の主な想定日本の大学などへの進学に対応韓国の大学などへの進学に対応
言語教育日本語科目に加え、韓国語・英語も学ぶ韓国語を基礎に、日本語・英語も学ぶ
歴史・社会日本の歴史・社会科目に加えて韓国史も学ぶ韓国の歴史・社会科目を中心に履修する

2025年度の高等部J班の教育課程表には「韓国語1・2」「中級韓国語/高級韓国語」「韓国史」と、日本の「歴史総合」「日本史探究」「公共」などが並びます。一方、K班は韓国の国語・韓国史・統合社会・統合科学などを基礎にしながら、日本語科目も履修します。

3言語教育と英語イマージョン

東京韓国学校は韓国語・日本語・英語の3言語教育を大きな特徴としてきました。英語イマージョン教育は2002年に初等部から導入され、数学、科学、音楽、体育などの学習にも英語を使う方式へ発展しました。

学校関係者による2024年の教育紹介では、初等部で英語を使う授業・活動を週11時間、日本語を週4時間程度設定していると説明されています。この数字は原則として初等部の運用を示します。英語の習熟度に応じた補習や発展的な指導、英語を使う学校行事も行われてきました。

韓国史と民族教育

韓国史も民族教育の重要な要素です。이경훈(イ・ギョンフン)の2016年論文「재일한국학교의 ‘한국역사’ 교육 실태와 개선 방안」は、生徒への調査と担当教師への聞き取りをもとに、韓国語、韓国史、伝統文化の教育と民族的アイデンティティの関係を分析しています。同時に、日本で生まれ育つ世代の増加を踏まえ、日本社会で生活する在日韓国人の経験を教育内容に反映する課題を論じました。

정희영(チョン・ヒヨン)の2024年研究も、1964年から続く在日本韓国人教育研究大会の資料を通して、韓国政府の在外国民教育目標と在日韓国学校のアイデンティティ教育がどのように変化してきたかを検討しています。

授業以外の学校生活

韓国教育部の在外教育機関ポータルに掲載された生徒レポートによると、中・高等部では学期末に球技大会が行われ、1学期はバスケットボール、2学期はバレーボール、3学期はサッカーという形で続いてきました。運営や審判には生徒会が関わります。

日本の学校との交流もあります。2025年には近隣の成城中学校・高等学校の生徒が東京韓国学校へ一日体験入学し、45分授業を7時間受け、昼休みには生徒会主催のミニコンサート、放課後にはダンス部やバスケットボール部の活動にも参加しました。東京韓国学校の生徒が日本の学校を訪れる交流も続いています。

東京朝鮮中高級学校とは何が違う?

比較東京韓国学校東京朝鮮中高級学校
開校1954年1946年
所在地新宿区若松町北区十条台
歴史的な成立母体民団、駐日韓国代表部、在日韓国人社会戦後直後の朝鮮人民族教育運動
日本での位置づけ各種学校各種学校
設置・運営学校法人東京韓国学園学校法人東京朝鮮学園
韓国側の位置づけ韓国教育部認可の在外韓国学校韓国教育部の在外韓国学校ではない
教育課程韓国教育課程を基礎にK班・J班などを運営独自の民族教育課程
学校で使う主な呼称韓国語朝鮮語・ウリマル
歴史的な関係民団・韓国政府朝鮮総聯

両校は日本では各種学校という共通点を持ちますが、成立史、運営体系、教育課程、言語の呼称が異なります。東京朝鮮中高級学校については、朝鮮学校とは?東京朝鮮中高級学校と文化祭「アンニョンハセヨ」を初心者向けに解説で詳しく紹介しています。

박경란(パク・ギョンラン)の2021年論文「재일동포사회에 있어서의 민족무용 교육의 현황: 동경한국학교와 조선학교의 사례를 중심으로」は、両校の民族舞踊教育を比較しています。東京韓国学校では指導者の裁量を生かした韓国舞踊教育と世代感覚を反映した創作活動、朝鮮学校では体系的な基本舞踊教育が行われていると分析しています。

東京韓国学校の文化祭はどんな行事?

東京韓国学校の文化祭は、中・高等部の生徒が企画や発表に関わる学校行事です。確認できる学校教育計画では、文化祭は生徒会活動と結びつけて計画され、音楽会とともに学校の芸術・文化教育を発表する機会として位置づけられています。

過去の文化祭では、歌、ダンス、演劇などの舞台発表に加え、飲食、ゲーム、写真、美術展示、お化け屋敷、脱出ゲームなどのクラス・生徒企画も行われてきました。韓国舞踊や音楽など、学校で学ぶ韓国文化が舞台発表に現れることも特徴です。

文化祭と音楽会はどう行われる?

学校の教育計画では、文化祭と音楽会をそれぞれ隔年で実施する運用が確認できます。2024年度末にあたる2025年2月5日には第14回音楽会が国立オリンピック記念青少年総合センターで開催され、中・高等部の生徒、教職員、保護者らが参加しました。

音楽会では学年合唱、舞踊部、ダンス部、ポップオーケストラ、サムルノリ、高校生による創作ミュージカルなど17のプログラムが行われ、生徒約30人の実行委員と生徒会が運営にも関わりました。文化祭と音楽会の双方が、生徒主体の発表・運営の場として機能しています。

2021年「꽃피움(コッピウム/花開く)」

2021年の文化祭は「꽃피움(コッピウム/花開く)」をテーマに開催されました。コロナ禍のため通常のブース企画は行わず、歌、ダンス、演技などの公演を中心に構成されました。生徒による当時の記録では、コロナ前の文化祭には飲食、ゲーム、写真、美術展示、お化け屋敷、脱出ゲームなどのブースがあったと紹介されています。

2024年の70周年記念文化祭

2024年4月25日には、開校70周年記念式典と記念文化祭が開催されました。通常の中・高等部文化祭とは別の全校規模の特別行事です。民団の記録では、生徒、保護者、教職員、来賓など約1600人が参加し、サムルノリの演奏で始まりました。

初等部では校章のパズル、学校を題材にした絵、合唱、表現活動、ダンスなどを披露。中・高等部では中学1年生の合唱、中学2年生のコップを使った打楽器演奏、ダンス部の発表、中学3年生の合唱、高校生のパフォーマンス、全体合唱などが行われました。

2025年度の中・高等部文化祭

2025年度の学校教育計画では文化祭の実施が確認できます。SNS上で共有された告知ポスターでは、2025年11月1日(土)、東京韓国学校中・高等部4階講堂で「Freesias」と題する文化祭が案内されています。

一般の人も参加できる?

一般来場の扱いは年度によって異なります。2012年には在日韓国人団体の告知で文化祭への参観が呼びかけられており、外部から見学できた年度が確認できます。参加条件は、その年の学校公式案内で確認するのが確実です。

通常文化祭、記念行事、外部イベントは別

東京韓国学校を会場に韓国文化イベントが開かれることもありますが、学校の通常文化祭とは別です。中・高等部の文化祭、音楽会、70周年のような記念行事、外部団体が主催する文化イベントは、主催者と目的を分けて見る必要があります。

文化祭から見る東京韓国学校

東京韓国学校の文化活動には、韓国語、日本語、英語の言語教育、日本と韓国の教育課程への対応、韓国史や伝統文化を学ぶ民族教育が重なっています。音楽や舞踊、クラス活動、部活動の発表は、日常の学校教育が舞台や展示へつながる場です。

東京朝鮮中高級学校の文化祭「アンニョンハセヨ」と比べると、同じ東京の在日コリアン教育でも、学校の成立史、教育課程、文化継承の方法、行事の性格が異なることが分かります。

よくある疑問

東京韓国学校は日本の学校ですか?

日本では東京都の認可を受けた私立の各種学校です。同時に、韓国では教育部が認可する在外韓国学校に位置づけられています。日本と韓国の二つの制度上の位置づけを持つ学校です。

K班とJ班は韓国語・日本語で分かれているのですか?

J班は日本の教育課程、K班は韓国の教育課程を基礎にしますが、J班でも韓国語や韓国史を学び、K班でも日本語を学びます。進学先を含む教育課程の違いが中心です。

東京朝鮮中高級学校とは同じ学校ですか?

別の学校です。両校とも日本では各種学校ですが、成立の歴史、設置法人、教育課程、韓国・北朝鮮や民団・朝鮮総聯との歴史的関係が異なります。

文化祭は一般の人も入れますか?

過去には外部向けに参観を案内した年度があります。開催年の学校公式案内で入場条件を確認する必要があります。

参考資料