東京・十条駅から歩いて数分。住宅地の中に、東京朝鮮中高級学校があります。
朝鮮学校は、日本で暮らす朝鮮半島にルーツを持つ子どもたちの民族教育から生まれた学校です。東京朝鮮中高級学校は、学校法人東京朝鮮学園が設置する東京都認可の私立各種学校で、中級部・高級部の生徒が朝鮮語や朝鮮の歴史・文化と、日本や世界についての科目を学んでいます。
学校名を知っていても、「朝鮮学校とはどんな学校なのか」「日本の中学校や高校と何が違うのか」「生徒は何を学んでいるのか」まで知る機会は多くありません。
この学校では文化祭「アンニョンハセヨ」が開かれます。一般来場者が校内に入り、朝鮮語や伝統文化を学び、朝鮮料理を食べ、民族音楽や舞踊、美術、文化公演に触れられる機会です。
そもそも「朝鮮学校」とは?
朝鮮学校は、日本で暮らす朝鮮半島にルーツを持つ子どもたちの民族教育から生まれた学校です。文部科学省によると、日本の法律には「外国人学校」という独立した学校種はなく、学校教育法第1条の学校、同法第134条の各種学校、無認可の教育施設などがあります。
東京朝鮮中高級学校は、東京都の認可を受けた私立の各種学校です。中級部と高級部を置き、日本の中学校・高等学校に相当する年代の生徒が学びます。法的な設置者は学校法人東京朝鮮学園です。
北朝鮮、朝鮮総聯とはどのような関係がある?
朝鮮学校は戦後の在日朝鮮人運動とともに発展し、在日本朝鮮人総聯合会(朝鮮総聯)と歴史的・人的な関係を持ってきました。一方、東京朝鮮中高級学校の法的な設置・運営主体は学校法人東京朝鮮学園です。
文部科学省が朝鮮高級学校について行った審査では、学校側は朝鮮総聯から教育内容そのものの指導を受けていないと説明しました。同省は同時に、民族科目で北朝鮮の学者らの意見を取り入れる際に朝鮮総聯の協力を得ていること、東京朝鮮学園に属する学友書房の教科書編纂委員会が高級部の共通教材を編纂していることを確認しています。これは2010年代初頭の審査資料であり、現在の個々の授業内容を直接示す資料ではありません。
学校法人による設置・運営、朝鮮総聯との歴史的関係、北朝鮮との教育・文化上のつながりは、それぞれ異なる関係として捉える必要があります。
東京朝鮮中高級学校はどんな学校?

基本情報:所在地は東京都北区十条台2丁目6番32号。1946年10月5日に開校し、現在は学校法人東京朝鮮学園が設置する私立各種学校です。中級部と高級部があります。
学校公式サイトは、教員12人、生徒329人で始まった「初の在日朝鮮人中等教育機関」と説明しています。
背景には、1945年の日本敗戦と朝鮮の植民地支配からの解放がありました。終戦直後、各地で朝鮮語を学ぶ国語講習所がつくられ、初等教育に続いて中等教育機関を求める動きが進みます。戦後の東京で在日コリアンの生活基盤がどのように形成されたかは、東京のコリアンタウンと在日コリアン集住地の歴史でも紹介しています。
韓国の歴史研究者・金仁徳による2012年の論文「재일조선인 민족교육과 東京朝鮮中學校의 설립(在日朝鮮人の民族教育と東京朝鮮中学校の設立)」は、『東京朝鮮中高級学校10年史』などをもとに、1946年9月中旬から生徒募集が始まり、入学試験は口頭で行われ、男女共学だったことを確認しています。開校当初は黒板、机、椅子も不足していました。
授業では歴史、数学、国語、英語、社会などが教えられ、1947年には野球部、庭球部、陸上競技部も活動を始めました。1949年にはソフトボール、柔道、バスケットボール、舞踊などへ広がっています。
学校は1946年11月に各種学校として認可されました。1949年末には東京都立朝鮮人中高等学校へ移行し、1955年の都立学校廃止後、学校法人東京朝鮮学園が運営する私立各種学校として再出発しました。この過程は崔紗華「東京都立朝鮮人学校の廃止と私立各種学校化」でも詳しく検討されています。
生徒たちは何を学んでいる?
学校公式サイトは、生徒がウリマルと文字、朝鮮民族の歴史・文化・風習を学ぶとともに、日本と世界についての知識も学ぶと説明しています。授業だけでなく、学校行事や部活動にも民族音楽、舞踊、スポーツ、美術などの活動が組み込まれています。
高級部では進路に応じた学習にも対応しています。学校は近年、教育のICT化やカリキュラムの見直しを進めていると説明しており、民族科目と一般科目、学校行事や課外活動を組み合わせた学校生活が現在の教育の特徴です。

朝鮮新報の朝鮮語版には、東京朝鮮中高級学校の舞踊部、民族管弦楽、学校行事などが継続的に記録されています。学校・在日朝鮮人社会側の資料では、言語や歴史の授業と同じく、音楽や舞踊も民族教育の一部として語られています。
韓国語で発表された研究も学校文化を考える手掛かりになります。金明姫の2017年論文「집합적 기억의 공간으로서 조선학교 교육(集合的記憶の空間としての朝鮮学校教育)」は、朝鮮学校で学んだ在日朝鮮人への聞き取りから、言語・歴史・文化の学習に加え、発表会や公開授業などの活動がアイデンティティ形成に関わる過程を分析しています。
宋基燦の2018年論文「정체성의 정치에서 정체성의 관리로(アイデンティティの政治からアイデンティティの管理へ)」は、現代日本社会で暮らす在日コリアンが、朝鮮学校の民族教育を通して複数の帰属や状況の中でアイデンティティを調整する側面を論じています。
東京韓国学校とは何が違う?
東京朝鮮中高級学校と東京韓国学校は、どちらも朝鮮半島にルーツを持つ子どもの民族教育と関係する学校ですが、別の学校体系です。
| 比較 | 東京朝鮮中高級学校 | 東京韓国学校 |
|---|---|---|
| 開校 | 1946年 | 1954年 |
| 所在地 | 北区十条台 | 新宿区若松町 |
| 成立の背景 | 戦後直後の朝鮮人民族教育運動 | 民団、駐日韓国代表部、在日韓国人社会による設立 |
| 日本での位置づけ | 各種学校 | 各種学校 |
| 設置者 | 学校法人東京朝鮮学園 | 学校法人東京韓国学院 |
| 韓国側の制度 | 在外韓国学校ではない | 韓国教育部認可の在外韓国学校 |
| 教育課程 | 独自の民族教育課程 | 韓国教育課程を基礎にK班・J班などを運営 |
| 主な言語表現 | 朝鮮語・ウリマル | 韓国語 |
| 歴史的な関係 | 朝鮮総聯 | 民団・韓国政府 |
東京朝鮮中高級学校は1946年、戦後直後の朝鮮人民族教育から始まりました。東京韓国学校は1954年、民団、駐日韓国代表部、在日韓国人社会の協力で開校し、1962年に韓国政府から在外韓国学校として認可されました。両校は日本では各種学校ですが、成立史、運営体系、教育課程、言語の呼称が異なります。
民族文化の教育にも違いがあります。박경란(パク・ギョンラン)の2021年研究は、東京韓国学校と朝鮮学校の民族舞踊教育を比較し、基本舞踊や創作活動の方法の違いを分析しています。
東京韓国学校の歴史、K班・J班、3言語教育、文化祭については、東京韓国学校とは?歴史・教育と文化祭を初心者向けに解説で詳しく紹介しています。
文化祭「アンニョンハセヨ」とは?
東京朝鮮中高級学校を一般の人が訪れ、学校文化に触れられる代表的な機会が文化祭「アンニョンハセヨ」です。朝鮮新報には2000年の第1回文化祭の記録があり、2013年には第13回、2017年にも文化公演、朝鮮文化体験、民族教育に関する企画・展示、屋台などが案内されています。
近年も、朝鮮語や歴史、伝統遊びを体験する文化教室、朝鮮料理の売店、民族楽器や歌、踊り、テコンドーなどのステージ、美術展示、文化公演という流れが受け継がれています。言語、音楽、舞踊、料理、歴史展示を一日の中で体験できることが特徴です。
2024~2026年の文化祭を比べてみる
近年3年間の開催内容を並べると、テーマや細部は変わっても、朝鮮文化を体験し、展示やステージを巡り、文化公演を見るという軸が続いています。
| 年 | 開催日 | テーマ | 主な内容 |
|---|---|---|---|
| 2024 | 6月16日(日) | 열(ヨル) | 文化教室、伝統遊び、民族音楽、野外ステージ、テコンドー、美術展示、文化公演、飲食 |
| 2025 | 6月15日(日) | 장(チャン) | 朝鮮語・文化教室、民族楽器、吹奏楽、歌・踊り、沿革史ミュージアム、美術部展、七輪焼肉など |
| 2026 | 6月28日(日) | 모아(more) | 文化教室、売店、野外ステージ、文化公演、美術部展など |
2026年は当初6月27日(土)と告知され、その後28日(日)へ変更されました。公開資料から変更後の日付は確認できますが、変更理由は学校公式の公開情報で確認できなかったため掲載していません。
2024年「열(ヨル)」
2024年6月16日は「열(ヨル)」をテーマに開催されました。参加記録では、文化教室で朝鮮語のあいさつや自己紹介、朝鮮の歴史、伝統遊び、民族音楽を体験できたとされています。
伝統遊びにはペンイ(こま)、チャンギ、チェギチャギ、ユンノリなどがあり、サムルノリにも触れられました。昼の野外ステージではテコンドーや歌が披露され、最後は体育館で朝鮮舞踊などを含む文化公演が行われました。美術部は「ARTの繭」展を文化会館ロビーで開催しています。
2025年「장(チャン)」
2025年6月15日のテーマは「장(チャン)」でした。案内では、日朝友好の新たな「章」が始まる「場」、朝鮮の「匠」を披露する「場」という意味が重ねられています。
朝鮮語・文化教室に加え、民族楽器、吹奏楽、歌と踊り、野外ステージ、沿革史ミュージアムが案内されました。美術部は「流転」を再構成した「流転+」を展示。朝鮮料理、七輪焼肉、酒類の販売もあり、学校関係者以外も入場可能と明記されました。
2026年「모아(more)」
2026年のテーマは「모아(more)」でした。学校公式SNSを引用した記録では、コリアンフード、芸術公演、朝鮮文化教室などが告知され、イベント案内では売店、文化教室、文化公演、特設野外ステージ、美術部展が確認できます。
開催日は当初6月27日(土)と告知された後、6月28日(日)へ変更されました。2026年の美術部企画名や細かな当日進行は、学校公式の公開情報で十分に照合できなかったため固定情報として掲載していません。
初めて行くなら何を体験できる?
文化教室では、朝鮮語、歴史、伝統遊び、民族音楽など、生徒たちが学ぶ民族教育の一部に触れられます。過去の企画では、言葉を覚えるだけでなく、遊びや楽器を実際に体験する内容も組まれてきました。
昼は売店で朝鮮料理を味わいながら野外ステージへ。歌、民族楽器、踊り、テコンドーなどが披露されてきました。校内の美術部展や沿革展示では、舞台とは違う学校生活や学校史に触れられます。
最後の文化公演では、民族音楽や舞踊などをまとまった形で鑑賞できます。朝鮮語・歴史・伝統文化を体験する、料理を食べる、民族芸能やテコンドーを見る、展示を巡る、文化公演を見るという一日の流れが、文化祭「アンニョンハセヨ」の特色です。
開催日は固定されていません。翌年以降の日程、一般入場の条件、撮影・録音の扱いは、東京朝鮮中高級学校の公式サイトや公式SNSで年度ごとに告知されます。
よくある疑問
朝鮮学校は北朝鮮の学校ですか?
東京朝鮮中高級学校の法的な設置者は、日本の学校法人である東京朝鮮学園です。朝鮮学校は朝鮮総聯と歴史的・人的な関係を持ち、北朝鮮との教育・文化上のつながりもありますが、設置主体、朝鮮総聯との関係、北朝鮮との関係は分けて理解する必要があります。
東京朝鮮中高級学校は日本の中学校・高校ですか?
日本の学校教育法第1条に定める中学校・高等学校ではなく、東京都が認可した私立各種学校です。中級部と高級部には、日本の中学校・高校に相当する年代の生徒が学んでいます。
東京韓国学校との違いは?
両校とも東京都内の私立各種学校ですが、成立の背景と学校体系が異なります。東京朝鮮中高級学校は戦後の在日朝鮮人の民族教育から生まれ、東京韓国学校は1954年に在日韓国人社会を背景に開校し、韓国政府の在外韓国学校としても認可されています。
文化祭「アンニョンハセヨ」は一般の人も入れますか?
近年は一般来場者を受け入れる文化祭として開催され、2025年の案内では学校関係者以外も入場できることが明記されました。開催日や入場条件、撮影・録音の扱いは年度によって変わるため、その年の学校公式告知で確認できます。
参考資料
- 文部科学省「外国人学校のみなさまへ」
- 文部科学省「高校無償化に係る朝鮮高級学校の審査状況」
- 東京都「令和2年度第9回東京都私立学校審議会(第803回)答申」
- 東京朝鮮中高級学校 公式サイト
- 東京朝鮮中高級学校「学校紹介」
- 東京朝鮮中高級学校「民族教育・沿革史」
- 崔紗華「東京都立朝鮮人学校の廃止と私立各種学校化」
- 김인덕「재일조선인 민족교육과 東京朝鮮中學校의 설립」
- 김명희「집합적 기억의 공간으로서 조선학교 교육」
- 송기찬「정체성의 정치에서 정체성의 관리로」
- 朝鮮新報 朝鮮語版・東京朝鮮中高級学校タグ
- Artist Action「東京朝鮮中高級学校文化祭《장》のご紹介」
- 週刊かけはし「東京朝鮮中高級学校の文化祭にいってきた」
- パーティアニマルズ「東京朝鮮中高級学校文化祭 アンニョンハセヨ2026」

