目白庭園の紅葉ライトアップ開催レポート|赤鳥庵・自由学園明日館を巡る池袋〜目白散歩

目白庭園の紅葉ライトアップと池に映る夜景

池袋駅の西側から目白へ歩くと、繁華街のすぐ先に、湧水の記憶、近代建築、徳川家ゆかりの住宅地、そして静かな日本庭園が連なっています。秋の目的地は、豊島区立目白庭園。池の水面に紅葉と灯りが映るライトアップは、目白の晩秋を代表する風景です。

この散歩では、元池袋史跡公園、自由学園明日館、上り屋敷公園、徳川ビレッジを経て目白庭園へ向かいます。庭園が生まれた背景、数寄屋建築の赤鳥庵、目白で創刊された児童雑誌『赤い鳥』とのつながりまで知っておくと、夜の庭園と周辺の街並みが一続きの歴史として見えてきます。

目白庭園の紅葉ライトアップとは

豊島区史によると、目白庭園の「秋の庭園ライトアップ」は2013年度に始まり、その後も毎年好評を博してきました。白壁の長屋門をくぐると、中央の池、滝、石組み、木々が照明に浮かび、昼間とは異なる奥行きが生まれます。特に水面は、紅葉と建物の光を映す大きな鏡のような役割を果たします。

2025年は「紅葉ライトアップ」が11月22日から12月7日まで、17時30分から21時まで開催され、最終入園は20時30分、入園料は300円でした。開催期間・時間・料金は年によって変わるため、最新年の情報は豊島区の目白庭園ライトアップ案内や目白庭園公式情報で確認できます。

目白庭園は1990年に開園した池泉回遊式の日本庭園

目白庭園は1990年11月に開園した豊島区立の日本庭園です。面積は2,842.73平方メートル。豊島区が都市化や国際化の進む地域に、自然に触れ、日本の伝統文化を育む場をつくる目的で整備しました。中央に大きな池を置き、その周囲を歩きながら景色の変化を楽しむ回遊式の構成です。

池の周囲を巡る豊島区立目白庭園の回遊路
目白庭園の小径、2023年4月23日。撮影:Asanagi/Wikimedia Commons/CC0。

園路では、水際の飛び石、築山、石垣、滝見台へと視点が移ります。コンパクトな庭園ですが、池の近くまで下りたときと高い位置から見下ろしたときで、水面と植栽の重なり方が変わります。紅葉期のライトアップでは、この高低差が光と影をつくります。

豊島区立目白庭園の石組みと滝
目白庭園の滝、2023年4月23日。撮影:Asanagi/Wikimedia Commons/CC0。

池のほとりには六角浮き見堂が張り出し、対岸には滝と石組みが見えます。水面、建築、石、植栽を一つの画面に収められる場所が多く、園路を少し進むだけで景色が切り替わるのが目白庭園の魅力です。

赤鳥庵と児童雑誌『赤い鳥』

池の水際に建つ赤鳥庵せきちょうあんは、京都の北山杉を用いた木造瓦葺き平屋建ての数寄屋建築です。茶会、句会、華道などに利用され、庭園の景観をつくる中心的な建物でもあります。

「赤鳥」の名は、1918年に鈴木三重吉すずきみえきちが創刊した児童文学雑誌『赤い鳥』にちなみます。豊島区の資料では、『赤い鳥』は現在の目白にあった三重吉の自宅から発行されました。芥川龍之介をはじめ多くの作家が関わり、童話・童謡の創作を通して近代日本の児童文化に大きな足跡を残しました。庭園の建物名そのものが、目白の文学史を今に伝えています。

長屋門から始まる庭園の景色

豊島区立目白庭園の入口に建つ白壁の長屋門

入口の長屋門は、白壁と瓦屋根が庭園への導入をつくります。門の外は目白の住宅街ですが、一歩入ると視線の先に池と樹木が広がります。夜は門から先の明るさが抑えられるため、園内へ進むにつれてライトアップされた水辺が現れる構成をより強く感じられます。

池袋から目白庭園へ歩く歴史散歩

池袋駅から目白庭園までは、寄り道をしなければ徒歩圏です。今回は西池袋と目白の歴史を拾いながら、5つの地点をつないで庭園へ向かいます。

1.元池袋史跡公園|池袋の地名に残る「丸池」

元池袋史跡公園は、かつてこの付近にあった「丸池」の記憶を残す公園です。丸池は弦巻川つるまきがわの源流となった湧水池で、「池袋」という地名の由来になったとも伝えられています。現在の公園には池袋地名ゆかりの碑があり、駅前の都市景観の下に水辺の地形があったことを伝えています。

丸池と弦巻川をさらにたどるなら、弦巻川跡を池袋西口から雑司が谷・護国寺へ歩いた開催レポートで、暗渠になった川筋と現在の街の関係を詳しく紹介しています。

2.自由学園明日館|ライトと遠藤新が設計した学校建築

自由学園明日館は、1921年に羽仁吉一・もと子夫妻が創立した自由学園の旧校舎です。中央棟・東教室棟・西教室棟はフランク・ロイド・ライトと遠藤新えんどうあらたが設計し、講堂は遠藤新が手がけました。1997年に国の重要文化財に指定されています。

低く水平に伸びる建物と幾何学的な窓は、目白庭園の数寄屋建築とはまったく異なる近代建築の表情です。池袋西口から目白へ歩く短い距離の中で、大正期の学校建築と平成に整備された日本庭園を続けて見られます。池袋駅周辺の成り立ちは、池袋の歴史散歩・駅周辺8スポットのモデルコースでもまとめています。

3.上り屋敷公園|江戸の狩猟地に残る地名

上り屋敷公園の名は、江戸時代の狩猟地に設けられた休憩所「上り屋敷」に由来します。現在は町名として残っていませんが、公園名が西池袋から目白一帯の古い土地の記憶を伝えています。

4.徳川ビレッジ|尾張徳川家と目白の住宅地

徳川ビレッジは、旧尾張徳川家19代当主の徳川義親とくがわよしちかゆかりの土地に形成された住宅地です。豊島区史は、徳川家の広い屋敷地とその周辺が、文化人の暮らす目白の住宅地形成に大きな存在感を持ったことを伝えています。

学習院、目白文化村、おとめ山公園、中村彝アトリエ記念館、徳川ビレッジ、目白庭園まで広く歩くなら、目白の歴史散歩|学習院・目白文化村・徳川ビレッジ・目白庭園を巡るコースがつながります。

5.目白庭園|昼から夜へ変わる水辺

目白庭園では、長屋門から池へ進み、滝、石組み、六角浮き見堂、赤鳥庵を池の周囲から眺めます。紅葉ライトアップの時期は、葉の色だけでなく、水面への映り込みと園路から見える角度の変化が大きな見どころです。

目白庭園のアクセス・通常開園情報

  • 所在地:東京都豊島区目白3丁目20番18号
  • アクセス:JR目白駅から徒歩約5分、JR池袋駅から徒歩約15分
  • 通常開園時間:9時〜17時(7月・8月は19時まで)
  • 庭園入園料:通常は無料
  • 休園日:毎月第2・第4月曜日(祝日の場合は翌日)、12月29日〜1月3日

ライトアップ開催中は通常開園と時間・料金が異なります。季節イベントの最新情報は豊島区公式の目白庭園案内と庭園公式情報が確実です。

2025年11月27日開催レポート|20人で紅葉ライトアップへ

2025年11月27日19時から、ゆる歴史散歩会「ライトアップされた目白庭園の紅葉を見に行こう」を開催しました。参加者は20人。池袋・目白の街を歩き、夜の近代建築と日本庭園を続けて眺める晩秋の散歩です。

  • 開催日:2025年11月27日(木)19:00
  • 参加人数:20人
  • 主な見どころ:自由学園明日館、目白庭園、赤鳥庵、紅葉ライトアップ

夜の自由学園明日館を眺めて目白へ

開催日には自由学園明日館じゆうがくえんみょうにちかんの外観にも立ち寄りました。1921年に自由学園の校舎として建てられた中央棟は、フランク・ロイド・ライトと遠藤新えんどうあらたが手がけた建築です。低く水平に広がる校舎の中央で、ホールの大きな窓が垂直方向のアクセントをつくります。夜は室内の光が木製の窓枠を透かし、幾何学的な意匠が昼間よりはっきり浮かびました。

自由学園明日館の夜の外観と縦長窓
池袋から目白庭園へ向かう途中で眺めた自由学園明日館。夜の照明が縦長の窓と建物の輪郭を浮かび上がらせます。
夜の自由学園明日館中央棟と幾何学的なホール窓
自由学園明日館の中央棟。フランク・ロイド・ライトと遠藤新が手がけた幾何学的なホール窓が夜の庭に浮かびます。

明日館は1997年に国の重要文化財に指定されました。中央棟・東教室棟・西教室棟と、1927年に遠藤新が設計した講堂が残り、現在は建物を使いながら保存する「動態保存」が続けられています。目白庭園へ向かう前にこの大正期の建築を見ると、同じ地域に異なる時代の文化資産が重なっていることがよく分かります。

長屋門をくぐり、ライトアップされた庭園へ

目白庭園に着くと、白壁の長屋門の内側に暖かな光がともり、入口からすでに昼間とは違う表情でした。2025年の紅葉ライトアップは11月22日から12月7日まで実施され、開催日の11月27日はその会期中。門をくぐると、暗い園路の先に赤・紫・緑の光で照らされた木々が現れます。

夜の目白庭園の長屋門と紅葉ライトアップ入口
2025年11月27日、紅葉ライトアップ開催中の目白庭園入口。白壁の長屋門をくぐって夜の庭園へ入ります。

園内で目を引いたのは、池を中心に組み立てられた光景です。池泉回遊式庭園では歩く位置によって池・石組み・建物・樹木の重なりが変わります。夜はそこに照明が加わり、水面がもう一つの景色をつくります。20人で園路を進むと、赤く染まったモミジや松、赤鳥庵の灯りが次々と水面へ映り、少し角度を変えるだけで印象が変わりました。

目白庭園の池に映る紅葉ライトアップと赤鳥庵
池の水面に紅葉と赤鳥庵の明かりが映る、目白庭園ライトアップの見どころ。
目白庭園の紅葉ライトアップと赤鳥庵の夜景
赤や青の光に照らされた紅葉と赤鳥庵。池への映り込みが庭園に奥行きを生みます。

池の対岸では、松や紅葉に縄を巡らせた冬支度の意匠も照らされていました。縦に伸びる縄と樹形が水面へ反転し、昼間の庭園とは異なる線の美しさが際立ちます。石垣や足元の照明も含め、庭園全体が一つの夜景として組み立てられていました。

目白庭園の池に映る松と紅葉のライトアップ
松や紅葉、縄を使った冬支度の景観が水面に映る目白庭園。静かな池が照明の色を鮮やかに映します。
目白庭園のライトアップされた松と園路を歩く来園者
池の周囲を巡る園路では、ライトアップされた松や紅葉を間近に眺めながら歩きます。

赤鳥庵の名に残る、目白の児童文学史

池の南側に建つ赤鳥庵せきちょうあんでは、由来を記した案内板も確認しました。名のもとになったのは、鈴木三重吉すずきみえきちが1918年に創刊した児童文芸誌『赤い鳥』です。豊島区史によれば、『赤い鳥』は現在の目白にあった三重吉の自宅から発行されました。芥川龍之介、有島武郎、北原白秋、西條八十らが参加し、童話・童謡の創作を支えた雑誌として知られます。

目白庭園の赤鳥庵由来を説明する案内板
赤鳥庵の名は、鈴木三重吉が目白で創刊した児童文芸誌『赤い鳥』に由来します。

『赤い鳥』は1918年7月に始まり、休刊期を挟みながら1936年10月号まで刊行されました。庭園は1990年に開園しましたが、その建物名には70年以上前の目白の文学活動が受け継がれています。ライトアップされた赤鳥庵を池越しに眺めると、建築と庭園だけでなく、地域の文化史まで一枚の風景に重なります。

園路を彩る灯籠と、歩いて変わる夜景

園路には色とりどりの手作り灯籠が並び、池の照明とは違う柔らかな光が足元をつないでいました。来園者が連なる場所では、灯籠の列そのものが回遊路の線を描きます。大きな庭園ではありませんが、池の近く、高い園路、木々の間と視点が細かく切り替わるため、20人で歩いても見どころが途切れませんでした。

目白庭園の園路を彩る手作り灯籠
園路には色とりどりの灯籠が並び、紅葉のライトアップとともに夜の回遊路を彩っていました。
目白庭園の園路に並ぶ色とりどりの灯籠と来園者
園路沿いの灯籠と紅葉を楽しむ来園者。開催日の夜も多くの人でにぎわっていました。

紅葉そのものの色に加えて、水面への反射、建物の明かり、石組みの陰影、園路の灯籠が重なったことが、この日の散歩の大きな魅力でした。池袋の都市景観から大正期の明日館、そして平成に整備された目白庭園へ。歩ける距離の中で、異なる時代の景観を夜の光とともにたどる開催となりました。

まとめ

2025年11月27日の開催では、20人で池袋・目白を歩き、自由学園明日館の夜景と目白庭園の紅葉ライトアップを巡りました。大正期の学校建築、目白に根づいた児童文学、1990年開園の日本庭園が徒歩圏に重なり、最後は池に映る紅葉と赤鳥庵の光が散歩を締めくくりました。

参考資料

現在地から歩ける歴史スポットを探す

今回のイベントではTimeWalkを利用していません。個人で池袋・目白を歩くときは、歴史散歩Webアプリ「TimeWalk」で現在地や指定地点の近くにある歴史スポットを地図から探せます。目白庭園の前後に立ち寄れる史跡を探したいときにも使えます。

現在地から歩ける史跡をTimeWalkの地図で探す

この記事を書いた人
ゆる歴史散歩会 運営者
なかまつ

北海道大学工学部卒。現在はIT系会社員の傍ら、年間400回以上の街歩きイベントを企画し、これまで延べ25,000名以上の方にご参加いただいている、ゆる歴史散歩サークルを運営しています。東京の歴史・文化・建築・地形などを、初心者でも気軽に楽しめるイベントとして企画しています。

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