勝どきの高層住宅街を南へ歩くと、朝潮運河の先に大型の冷蔵倉庫、物流施設、東京海洋大学の練習船が現れます。東京都中央区豊海町は、都民へ水産物を安定して届けるため、1960年代初めに造成された水産基地です。
運河沿いで親しまれた「マグロ卸のフィッシャリーズテラス」は、2025年12月30日に豊海町での営業を終えました。公式SNSでは2027年1月の移転オープン予定が案内されています。この記事では、朝潮運河と豊海町の成り立ち、冷蔵倉庫が集まった理由、練習船、再開発、現地を歩く順路まで、初心者向けにまとめます。情報は2026年7月時点です。
朝潮運河と豊海町を先に要約
| 項目 | 要点 |
|---|---|
| 所在地 | 東京都中央区。豊海町は丁目を設けない単独町名です。 |
| 朝潮運河 | 佃・月島・勝どき・豊海町側と晴海側の間を流れ、東京湾へ続く約2.2キロメートルの運河です。 |
| 豊海水産基地 | 1959年に埋立免許を受け、1962年7月16日に完成しました。 |
| 豊海町の誕生 | 1963年。町名は住民へのアンケートから選ばれました。 |
| 現在の役割 | 冷凍・冷蔵水産物を保管し、トラックやコンテナで首都圏へ送る低温物流拠点です。 |
| 主な見どころ | 黎明小橋、朝潮小橋、豊海運動公園、豊海おさかなミュージアム、汐路丸、海鷹丸、冷蔵倉庫街です。 |
朝潮運河とは
朝潮運河は、佃・月島・勝どき・豊海町側と晴海側を分ける水路です。中央区観光協会の案内では全長約2,200メートルで、東京湾へ注ぎます。運河沿いには歩道や公園が整備され、年代の異なる橋を短い距離で見比べられます。
運河の両岸は、埋立ての時期と土地利用が異なります。月島には明治期からの街区と路地が残り、晴海や勝どきでは大規模な住宅・業務開発が進みました。豊海町には水産物流施設が集まります。水面を挟んで住宅、倉庫、船、超高層建築が同時に見えることが、朝潮運河の景観の特徴です。
2024年に加わった黎明小橋
黎明小橋は、勝どき四丁目と晴海三丁目を結ぶ歩行者専用橋です。中央区が名称を公募し、2024年3月25日に供用を開始しました。歩行者の回遊性を高めるとともに、勝どきと晴海の再開発地区を直接つなぎます。夜間は橋全体が照明で浮かび上がり、新しい朝潮運河の景観をつくっています。
月島・勝どき・晴海の埋立地をさらに広い視点で知るには、関連記事の豊洲の歴史|埋立・造船所・ガス工場・豊洲市場を徹底解説も参考になります。
豊海町はどのように生まれたか
豊海町は東京都中央区の南西端にあり、月島地域に属します。かつての「江東区豊海町」という説明は誤りです。中央区の公式資料では、豊海町は1963年に誕生した町とされています。
一方、東京水産振興会の沿革では、豊海水産基地の完成日は1962年7月16日です。土地の造成と町名の成立は別の出来事なので、次の順序で理解すると分かりやすくなります。
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 1957年 | 東京都民への水産物供給を支える目的で東京水産振興会が設立されました。 |
| 1959年 | 東京水産振興会が、現在の豊海町全域に当たる約14万5,395平方メートルの埋立免許を東京都から受けました。 |
| 1962年7月16日 | 豊海水産基地が完成しました。 |
| 1963年 | 中央区に豊海町が誕生しました。町名は住民への町名アンケートから選ばれました。 |
| 1964年以降 | 大手水産会社の冷蔵倉庫が相次いで建設され、大規模な冷蔵庫団地になりました。 |
| 1970年代後半 | 漁船の接岸隻数と水産物取扱量で、東京港内の主要埠頭の上位を占めました。 |
| 1980年代以降 | 輸入水産物の増加などを背景に、漁船からの水揚げ中心からトラック・コンテナによる陸上輸送中心へ変わりました。 |
1962年は水産基地の造成完成、1963年は豊海町という町名の成立を示します。
なぜ豊海町には冷蔵倉庫が多いのか
豊海水産埠頭は、都民へ水産物を円滑に供給する「月島漁業基地」として造成されました。水産会社へ用地を貸し付け、冷蔵倉庫、配送施設、事務所などを集中的に整備した結果、魚を低温のまま保管・仕分け・輸送できる一体的な基地ができました。
1970年代までは漁船が接岸し、水産物を直接荷揚げする役割が大きくありました。1980年代になると、200海里経済水域の定着や輸入水産物の増加で流通経路が変化します。東京水産振興会によれば、現在の豊海水産基地では漁船からの水揚げはなく、冷凍・冷蔵トラック、コンテナ、トレーラーによる陸上輸送へ移行しています。
船のための埠頭から、首都圏の食を支える低温物流拠点へ役割を変えたことが、豊海町の歴史の中心です。築地市場、豊洲市場、都心の飲食・小売地域に近い立地も、倉庫街が現在まで続く理由になっています。水運と市場の周りに同業者が集まる仕組みは、関連記事のなぜ東京のあの街に同じ業者が集まったのかで詳しく解説しています。
Umios ロジと低温物流
豊海町4番5号にはUmios ロジ株式会社の本社があります。旧社名はマルハニチロ物流で、2026年3月1日に社名を変更しました。事業内容は冷蔵倉庫、貨物利用運送、通関などです。倉庫で保管するだけでなく、輸配送や輸出入手続きまでつなぐ総合物流を担っています。

写真は旧社名時代の建物です。親会社のマルハニチロ株式会社も2026年3月にUmios株式会社へ社名を変更しました。
ホウスイの三つの冷蔵庫
株式会社ホウスイは、豊海第一・第二・第三冷蔵庫を運営しています。豊海第一冷蔵庫は1968年に開設されました。現在も複数の温度帯で水産物や食品を保管する拠点として使われ、豊海町が現役の物流地区であることを示しています。
朝潮運河から豊海町を歩くおすすめコース
見学と休憩を含めた所要時間は2~3時間が目安です。勝どき駅周辺から黎明小橋を渡り、朝潮小橋で勝どき側へ戻り、豊海町の先端部へ進むと、運河景観と水産物流の両方を順序よく見られます。
1.月島第二児童公園から黎明小橋へ
月島第二児童公園は、都営大江戸線勝どき駅に近い出発地点です。公園から晴海通り方面へ進み、勝どき四丁目側から黎明小橋を渡ります。橋上では、朝潮運河、勝どきの高層住宅、晴海側の街並みを一度に見渡せます。
2.黎明小橋から朝潮運河沿いへ
黎明小橋を渡ったら、運河沿いを南へ進みます。対岸には勝どき東地区の高層建築が並び、晴海側には黎明橋公園があります。古い運河の幅を残したまま、両岸の土地利用が大きく変わったことを観察できる区間です。
3.朝潮小橋を渡って勝どきへ戻る
朝潮小橋は、晴海側と勝どき側を結ぶ人道橋です。南側には東京湾へ続く水面が開け、THE TOKYO TOWERSをはじめとする高層住宅と運河を同じ画面に収められます。新しい黎明小橋と比較すると、朝潮運河の歩行者動線が段階的に増えてきたことも分かります。

4.豊海運動公園で水辺と倉庫街を見る
豊海運動公園には、多目的広場、テニス場、デイキャンプ場などがあります。運河沿いの開けた場所で、休憩地点にも向いています。公園を出て豊海町の奥へ進むと、住宅中心の勝どきから冷蔵倉庫・物流施設中心の街並みへ変わります。
5.マグロ卸のフィッシャリーズテラス跡
マグロ卸のフィッシャリーズテラスは、水産会社が豊海町の倉庫街で運営した飲食店です。海や行き交う船を眺めながら海鮮丼などを食べられる場所として約10年間親しまれ、2025年12月30日に豊海町での営業を終了しました。
この店の歴史的な意味は、業務地区だった豊海水産基地を一般の来訪者へ開いたことにあります。冷蔵倉庫と卸売を背景に持つ店が、物流の現場と食卓を目に見える形で結びました。公式SNSでは2027年1月の移転オープン予定と案内されていますが、所在地などの詳細は正式発表を確認してください。
6.豊海おさかなミュージアム
豊海おさかなミュージアムは、東京水産振興会が2012年に開設した、海・魚・水産業の情報発信施設です。魚や漁業に関する企画展示に加え、朝潮運河や東京湾の生きものも扱います。開館日が限られるため、訪問前に公式サイトで最新情報を確認してください。
7.東京海洋大学の汐路丸と海鷹丸
豊海水産埠頭では、東京海洋大学の練習船が見られることがあります。船は実習や調査航海に出るため、停泊状況は時期によって変わります。見学場所は公道や公園です。

| 船 | 概要 | 公式諸元 |
|---|---|---|
| 汐路丸Ⅳ世 | 東京湾を基点に近海を航行し、船舶職員養成、海洋開発教育、船舶運航研究、海洋環境観測などに使われます。2021年10月14日に運航を開始しました。 | 総トン数775トン、全長60.73メートル、航海速力12ノット、定員70人 |
| 海鷹丸Ⅳ世 | 太平洋、インド洋、南氷洋などで乗船実習と調査研究を行い、遠洋航海を通じた海技教育を担います。 | 総トン数1,886トン、全長93メートル、航海速力17.4ノット |
8.豊海水産埠頭と冷蔵倉庫街
豊海水産埠頭周辺では、建物の大きさ、搬入口、荷さばき空間、トラックの動線に注目してください。食品物流が動く業務地区のため、見学は歩道から行い、車両の出入りに注意します。
汐路丸と海鷹丸は何が違うのか
汐路丸は東京湾と近海での教育・研究に適した比較的小型の練習船です。学生が船上で操船、海洋観測、海洋開発機器の運用などを学びます。ハイブリッド推進装置、海洋観測設備、災害支援機能も備えます。
海鷹丸は汐路丸より大型で、遠洋航海と長期間の調査研究を担います。南氷洋を含む海域で海洋観測を行い、水産専攻科の実習にも使われます。豊海町で二隻を見比べられる場合、船体の大きさと装備の違いから、近海型と遠洋型の役割の差を読み取れます。
豊海町で進む再開発
豊海町と勝どき六丁目では、豊海地区第一種市街地再開発事業が進んでいます。東京都の資料では、区域は約2.0ヘクタール、用途は住宅・商業・公益施設・駐車場など、住宅戸数は約2,046戸です。建築工事の完了は2027年3月予定とされています。
この再開発によって、豊海町には居住・商業・公共サービスが加わります。一方で、豊海水産基地の冷蔵倉庫や配送機能も続いています。住宅と物流が近接するため、歩行者空間、トラック動線、騒音、防災、水辺利用の調整が今後の課題です。
東京各地の再開発を比較する場合は、関連記事の東京の再開発はなぜ起きる?築地・高輪・渋谷など注目10地区の歴史と未来もあわせてご覧ください。
アクセスと散歩時の注意
- 鉄道:都営大江戸線「勝どき駅」から徒歩。豊海水産埠頭まではおおむね15分前後です。
- 都営バス:都04系統と門33系統の「豊海水産埠頭」停留所を利用できます。運行時刻は東京都交通局の最新案内を確認してください。
- 休憩:月島第二児童公園、黎明橋公園、豊海運動公園などを利用できます。
- 安全:豊海町は現役の物流地区です。大型車の出入り、搬入口、交差点では周囲をよく確認してください。
- 見学範囲:岸壁、冷蔵倉庫、駐車場、大学船舶の係留区域は事業者の敷地です。見学は公道や公園から行います。
- 船の見学:汐路丸・海鷹丸は航海中の場合があります。停泊状況を前提に訪問しない方が安全です。
よくある質問
豊海町は中央区ですか、江東区ですか
東京都中央区です。月島地域に属し、郵便番号は104-0055です。江東区の豊洲と混同しやすいため注意してください。
豊海町には丁目がありますか
豊海町は「中央区豊海町」という単独町名です。住所は「豊海町4番5号」のように表します。
豊海水産埠頭では魚を水揚げしていますか
東京水産振興会によると、現在は漁船からの水揚げがなく、物流はトラック、コンテナ、トレーラーによる陸上輸送へ移行しています。
フィッシャリーズテラスは営業していますか
豊海町の店舗は2025年12月30日に閉店しました。公式SNSでは2027年1月の移転オープン予定が案内されています。新店舗の詳細は公式発表を確認してください。
汐路丸と海鷹丸はいつでも見られますか
実習・調査航海や整備のため、豊海町を離れていることがあります。停泊状況は訪問時期によって変わります。
散歩にはどのくらい時間がかかりますか
勝どき駅から黎明小橋、朝潮小橋、豊海運動公園、豊海水産埠頭を歩き、勝どき駅方面へ戻る場合、見学と休憩を含め2~3時間が目安です。
TimeWalkで近くの歴史スポットを探す
朝潮運河や豊海町を歩くときは、現在地の近くにある歴史スポットを探せるWebアプリ「TimeWalk」も利用できます。スマートフォンのブラウザで開き、位置情報を許可すると、周辺の史跡・記念碑・歴史人物に関係する場所が距離順に表示されます。
アプリのインストールは不要です。散歩コースの前後に寄り道先を探したいときや、記事で紹介していない周辺スポットを見つけたいときに役立ちます。位置情報を許可しない場合も、全スポットマップから登録地点を確認できます。

