
2026年7月4日(土)、ゆる歴史散歩会では42人で羽田空港の整備地区にある「ANA Blue Hangar Tour(ANA機体工場見学)」に行ってきました。今回は街を歩く歴史散歩ではなく、飛行機を安全に飛ばすための整備現場を見学する施設見学型のイベントです。
普段、空港で飛行機を見る機会はあっても、格納庫の中で整備士の方々が働く様子を間近に見る機会はなかなかありません。巨大な機体、見上げるほどのエンジン、広い格納庫の空間、そして羽田空港の歴史。乗客として利用する空港とは違う角度から、東京の空の玄関を体感する時間になりました。

ANA Blue Hangar Tourとは?羽田空港の整備現場を見学できるツアー
ANA Blue Hangar Tourは、ANAグループの整備部門を知り、格納庫で実物の飛行機や整備士の仕事を見学できる機体工場見学です。公式案内では、ツアー時間は75分。受付後のお話し会場、整備部門を紹介する展示ホール、3階デッキからの格納庫見学、1階フロアでの実機見学などで構成されています。
場所は東京都大田区羽田空港3-5-5。公共交通機関では京浜急行バス「西新整備場」バス停から徒歩約4分、東京モノレール「新整備場駅」から徒歩約15分です。公式サイトにもある通り「整備場駅」ではなく「新整備場駅」なので、初めて行く方は駅名に注意が必要です。駐車場・駐輪場はないため、公共交通機関での来館が前提になります。
見学は事前予約制で、対象は小学1年生以上かつ満6歳以上。料金は無料ですが、本人確認や入館方法などのルールがあります。気軽に参加できる一方で、実際に航空機整備が行われるエリアに入るため、集合時間や服装、持ち物の確認は大切です。
集合からツアー開始まで|展示とシート体験で早くも盛り上がる
当日はANA Blue Hangar Tourの入口前に集合しました。建物の外観は白とガラスのすっきりした印象で、空港施設らしい清潔感があります。参加者は42人。大人数でしたが、受付前から「今日はどんな機体が見られるのか」と期待が高まっていました。

ツアー開始までの時間は、お話し会場や展示スペースを自由に見学しました。ビジネスクラスやファーストクラスのシートに座ったり、航空機整備に関する展示を見たりしながら、自然と会話が生まれます。グループごとにヘルメットの色が分かれているようで、オレンジ、青、緑、黄色のヘルメットが並んでいる様子も、これから現場へ入る雰囲気を高めてくれました。
歴史散歩イベントでは、街角の石碑や古地図を手がかりに話が広がることが多いのですが、今回は展示物や座席、ヘルメットがきっかけです。初めて会う人同士でも「このシートすごいですね」「飛行機の中ってこうなっているんだ」と話しやすく、見学施設ならではの参加しやすさがありました。
映像で整備部門を知り、格納庫へ向かう
ガイドのはじめは映像での説明でした。ANAの整備部門がどのような役割を担い、日々どのように安全運航を支えているのかを学んでから、いよいよ格納庫へ移動します。
途中には社員食堂も見えました。清潔感のある空間で、メニューも手頃な価格帯。参加者の間では「500円で食事ができるのはすごい」「空港の中でこの価格は気になる」と話題になりました。見学そのものは航空機が中心ですが、こうした社員の方々の日常が見える瞬間も、工場見学の面白さです。

羽田空港の歴史をざっくり知る|東京の空の玄関はどう広がったのか
今回の舞台である羽田空港は、1931年(昭和6年)に「東京飛行場」として開港したことから始まります。当時は面積53ha、延長300m・幅15mの滑走路1本を持つ、国営の民間航空専用空港でした。
戦後は接収を経て、1952年に大部分が返還され「東京国際空港」と呼ばれるようになりました。1960年代にはジェット化への対応が進み、1978年の成田空港開港後は国内線中心の空港として大きな役割を担います。その後も沖合展開や再拡張が行われ、2010年にはD滑走路と国際線地区が供用開始となりました。現在の羽田空港は、国内線・国際線の両方で東京を支える巨大な交通インフラです。
ANA Blue Hangar Tourがある整備地区は、旅客ターミナルとは違い、飛行機を「乗るもの」ではなく「点検し、整備し、送り出すもの」として見られる場所です。羽田の歴史を知ってから格納庫に入ると、空港が単なる移動の場所ではなく、多くの仕事と技術が積み重なる都市施設だと分かります。
ANAの歴史と特徴をざっくり知る|安全運航を支える整備の会社でもある
ANAの歩みは1952年の日本ヘリコプター輸送の設立から始まります。1953年にはヘリコプター事業を開始し、その後、国内航空路線を広げながら発展しました。ANAの公式年表では、1965年に羽田のジェットハンガー「全日空、東京第1号格納庫」が完成したことも記されています。
航空会社というと、機内サービスや空港カウンター、路線ネットワークに目が向きがちです。しかし飛行機を日々飛ばすには、機体、エンジン、部品、工具、整備計画、訓練、安全確認など、見えにくい仕事が欠かせません。今回の見学では、ANAを「飛行機に乗る会社」ではなく、「飛行機を安全に運航するための技術集団」として感じられたのが大きな学びでした。
今回見学した内容|第1格納庫から第2格納庫まで
通常は第1格納庫のみの見学になることが多いそうですが、今回は第2格納庫も見学できました。格納庫にどのような機体が入っているかはその時々で変わるため、同じツアーでも毎回見えるものが違います。この日は参加者から見てもかなり見応えのある内容で、ガイドの方も「珍しいものが見られた」と話していたのが印象的でした。
第1格納庫|入った瞬間に広さと機体の大きさに圧倒される
第1格納庫に入ると、まず空間の広さに驚きます。3階デッキから見下ろすと、巨大な飛行機が整備設備の中に収まっているにもかかわらず、格納庫自体がさらに大きく見えます。写真では伝わりにくいのですが、天井の高さ、足元から広がるデッキ、整備設備の密度が一体になり、思わず声が出る迫力でした。

窓の外には滑走路や東京湾岸の景色も見え、羽田空港が海と都市の境目に広がっていることが分かります。空港は旅行の出発点であると同時に、東京湾岸の埋立地、交通網、物流、整備技術が集まる場所でもあります。歴史散歩会としては、こうした地形や都市インフラの視点から見ても面白い見学でした。

格納庫内では、プロペラ機が整備されている様子も見ることができました。大型ジェット機のイメージが強い羽田で、プロペラ機が整備されている場面は珍しいようです。翼、プロペラ、車輪、機体下部など、普段は遠くからしか見られない部分を近い距離で確認できました。

大型エンジンの迫力|ファンブレード1枚にも技術とコストが詰まっている
今回、特に参加者の反応が大きかったのがエンジンです。旅客機のエンジンをここまで近くで見ると、入口の直径だけでも人の背丈を大きく超え、飛行機を飛ばす力のスケールが実感できます。
案内では、エンジン内部の羽根(ファンブレード)は1枚でおよそ1千万円する、という話もありました。しかも1つのエンジンに20枚以上並んでいるため、参加者からは驚きの声が上がりました。もちろん価格だけでなく、軽さ、強さ、耐久性、空気を効率よく取り込む形状など、1枚の羽根にも航空機技術が詰まっています。

ファンの中心にある渦巻き模様にも注目しました。これはエンジンが回転しているかどうかを周囲の人が見分けやすくするための目印として説明されました。高速で回るファンは、止まっているのか動いているのか判別しにくいことがあります。整備現場では、こうした小さな表示も安全につながっています。

この日のエンジンにはロールス・ロイスのロゴがありました。さらに、エンジン後方の波状の形にも注目しました。航空機のエンジンやカウルに見られるギザギザした後縁は「シェブロン」と呼ばれ、空気の流れをなめらかに混ぜることで騒音を抑える工夫として知られています。見た目の印象だけでなく、空港周辺への音の影響まで考えた技術だと知ると、飛行機の形を見る目が変わります。

第2格納庫|前輪の出し入れ、脱出窓、ジャッキアップまで見られた
第2格納庫では、さらに珍しい場面を見ることができました。飛行機の前輪の出し入れ、パイロットの脱出窓の開閉、そして車でいうジャッキアップのように航空機を持ち上げる作業です。これらは展示用に整えられた模型ではなく、実際の機体と整備現場で見られる動きです。
飛行機は巨大ですが、整備の場面では部品単位、動作単位で細かく確認されます。前輪が格納される仕組み、窓の開閉、機体を支えるポイントなどを見ると、飛行機が「大きな乗り物」であるだけでなく、無数の機構が連動する精密な機械であることが分かります。
ガイドの方が珍しい場面として紹介してくれたこともあり、参加者も写真を撮ったり、身を乗り出して見学したりしていました。飛行機に詳しい人も、そうでない人も、実物の動きには自然と引き込まれます。
展示室ではなく“生きた現場”を見る面白さ
今回の見学で印象的だったのは、単なる展示室見学ではなく、整備士の方々が実際に業務をしている場所を見られたことです。工具、足場、配線、部品、機体の開いた扉、作業中の人の動き。どれも「飛行機が飛ぶ前の時間」を感じさせます。
飛行機に乗るとき、私たちは座席や機内サービス、目的地のことを考えがちです。しかしその前には、格納庫で機体を点検し、安全を確認し、必要な整備を行う人たちがいます。今回の参加者からも、飛行機に乗るときの見方が変わりそうだという雰囲気がありました。
さらに、格納庫にどの機体が入っているかはその時次第です。今回は第2格納庫まで見られ、エンジン、プロペラ機、前輪や窓の動きなど、かなり内容の濃い回でした。だからこそ「また来たら違うものが見られそう」と思えるのも、ANA Blue Hangar Tourの魅力です。

まとめ|羽田空港を“乗る場所”から“支える場所”として見る体験

ANA Blue Hangar Tourは、飛行機好きだけでなく、東京の交通インフラやものづくり、空港の歴史に興味がある人にもおすすめできる見学でした。羽田空港は1931年の東京飛行場から始まり、戦後の返還、ジェット化、沖合展開、国際線の再拡大を経て、現在の巨大空港へと発展してきました。その空港の裏側で、飛行機を安全に飛ばすための仕事を間近に見られるのは、とても貴重です。
今回のイベントは街歩きではありませんでしたが、歴史散歩と同じように「普段見ている場所の見方が変わる」体験でした。飛行機に乗るとき、エンジンの渦巻き、翼の大きさ、格納庫で働く人たちの存在を思い出しそうです。
ゆる歴史散歩会では、東京周辺の歴史スポットや文化施設、見学施設を、初心者にも分かりやすく巡るイベントを開催しています。一人参加の方も多く、歴史に詳しくない方でも気軽に参加しやすい雰囲気です。街歩きだけでなく、今回のような施設見学を通して、東京の歴史や技術を楽しく学んでいきます。
