2026年7月9日(木)19時15分から、ゆる歴史散歩会では「ほおずき市と浅草ゆる歴史散歩をしよう」を開催しました。
今回は26人で、夜の雷門に集合。浅草寺の四万六千日を翌日に控えた境内を歩き、ほおずき市、仲見世通り、浅草神社、ホッピー通り、浅草六区までめぐりました。浅草が初めての方もいたため、定番の見どころを紹介しながら、よく来る方でも意外と知らない小さな発見を拾っていく散歩になりました。
予習用に作成したほおずきとほおずき市の解説も載せておきます。
ほおずきとは?
ほおずきは、夏になると赤や橙色の袋のような姿が目を引く植物です。漢字では「鬼灯」「酸漿」などと書かれます。見た目の印象から、赤い実そのものが提灯のようにふくらんでいると思いがちですが、実際には果実を包む「萼(がく)」が大きく成長し、袋状になったものです。その中に小さな丸い実が入っています。
植物としてはナス科の仲間で、初夏に淡い色の花をつけたあと、萼がふくらみ、やがて赤く色づいていきます。浅草寺のほおずき市で目にする鉢植えや枝ものは、この袋状の萼(がく)が連なっているため、夏の縁日にぴったりの華やかさがあります。
ほおずきは、単なる観賞用の植物としてだけでなく、かつては薬用や民間信仰とも結びついていました。浅草寺公式サイトでは、ほおずきの実を水で丸飲みすると、大人の持病や子どもの虫気(むしけ)に効くと考えられ、ほおずきを求める人でにぎわったという民間信仰が紹介されています。
また、時期がお盆に近いことも重要です。赤くふくらんだほおずきは、盆棚飾りとして用いられることもありました。提灯のような形は、先祖の霊を迎える灯りを思わせます。ほおずき市を歩くときは、見た目のかわいらしさだけでなく、夏の行事や信仰と結びついてきた植物として眺めると、少し違って見えてきます。
ほおずき市とは?
浅草寺のほおずき市は、毎年7月9日・10日に行われる「四万六千日」にともなう縁日です。浅草寺では、特定の日に参拝すると通常より大きな功徳(くどく)が得られるとされる「功徳日」が月に一度設けられています。その中でも7月10日は最大の功徳日とされ、46,000日分の功徳があることから「四万六千日」と呼ばれます。
46,000日は、およそ126年にあたります。浅草寺公式サイトでは、この数字の由来には諸説があり、米一升に含まれる米粒の数と「一升」「一生」をかけた説などが紹介されています。ただし、由来は定かではないとされています。大切なのは、数字そのものよりも「一生分の功徳が得られる縁日」として、多くの人々に受け止められてきたことです。
もともとの功徳日は7月10日ですが、江戸時代には少しでも早く参拝しようとする人々によって、前日の7月9日から境内がにぎわうようになりました。そのため、現在では7月9日と10日の両日が縁日として定着しています。今回のイベントが7月9日であることにも、この「前日からにぎわう」歴史が関わっています。
ほおずき市の起源は、明和年間(1764〜1772)ごろとされます。四万六千日の縁日は浅草寺にならって他の寺社にも広がり、芝の愛宕神社ではこの縁日にほおずきの市が立ちました。ほおずきに薬効を期待する民間信仰もあり、多くの人がほおずきを求めたといいます。その愛宕神社のほおずき市の影響を受け、四万六千日の大本である浅草寺にもほおずき市が立つようになったと説明されています。
ほおずき市であわせて見ておきたいのが、浅草寺の「雷除札」です。かつて四万六千日の縁日では、赤とうもろこしが落雷除けのお守りになるという民間信仰から、赤とうもろこしを売る屋台もあったとされます。明治初年ごろに赤とうもろこしが不作で出回らなかった際、信徒が浅草寺に雷除けのお守りを求めたことをきっかけに、現在も四万六千日に雷除札が授与されるようになったと伝わります。
今回歩いたルート
雷門に集合。正式名称は「風雷神門」
集合は、浅草の象徴ともいえる雷門です。夜の雷門は提灯の赤がよく映え、初参加の方や浅草が初めての方にも分かりやすい集合場所でした。

雷門は通称で、正式には「風雷神門」といいます。門の左右に風神・雷神がまつられていることが名前の由来です。現在の雷門は、昭和35年(1960)に松下電器産業、現在のパナソニックの創業者である松下幸之助氏の寄進によって再建されました。大提灯の下には、奉納に関わる銘を見ることができます。

仲見世通りから宝蔵門へ。四万六千日前日のにぎわい
雷門をくぐった後は、仲見世通りをゆっくり歩きました。この日は四万六千日の前日ということもあり、夜でも参拝者が多く、普段以上に縁日らしい空気がありました。お店の灯り、宝蔵門へ向かう人の流れ、境内へ近づくほど増していくにぎわいを感じながら進みます。

浅草が初めての方には、雷門、仲見世、宝蔵門、本堂という参拝の流れを紹介し、何度も来たことがある方とは「いつも見ているけれど、意外と名前や由来を知らないもの」を一緒に確認していきました。
浅草寺本堂の「志ん橋」提灯と底の龍
本堂では、「志ん橋」と書かれた大提灯を見上げました。ここでは「なんと読むでしょう?」というクイズも出しながら、参加者みんなで考えました。読み方は「しんばし」。現在の表記でいえば「新橋」です。

「なぜ浅草寺に新橋の提灯があるのだろう?」という疑問が出ました。これは、場所の名前というよりも、奉納した人々の名前を示すものとして見ると分かりやすくなります。本堂の「志ん橋」提灯は、新橋の花柳界・新橋組合ゆかりの奉納として知られています。浅草寺は江戸・東京の多くの町や職能集団から信仰を集めてきた寺院であり、提灯にはそうした都市のつながりが表れています。
さらに、提灯は正面から文字を見るだけでは終わりません。下からのぞくと、底に龍の彫刻があります。浅草寺の山号は「金龍山」。龍は浅草寺と縁の深い存在で、火難除けや街の繁栄を願う守護的な意味も重ねて受け止められています。今回は参加者と一緒に、提灯の底までしっかり観察しました。

この日の本堂では、おみくじを引いた方も多くいました。浅草寺のおみくじは「凶が出やすい」とよく知られており、今回も厳しめの結果が出た方が何人もいました。ただ、凶は「これ以上悪くならない」と受け止め、今後の行動を見直すきっかけにするものともいわれます。結果を見せ合いながら、これも浅草寺らしい体験として盛り上がりました。
浅草神社へ。江戸時代の社殿と、境内の桃
本堂の東側にある浅草神社にも立ち寄りました。浅草寺の本堂は東京大空襲で焼失し、戦後の昭和33年(1958)に再建された建物です。一方、浅草神社の社殿は江戸時代前期の慶安2年(1649)ごろの建築で、国の重要文化財に指定されています。同じ境内周辺にありながら、戦後再建の本堂と、江戸時代から残る神社建築を見比べられるのは、浅草散歩の大きな魅力です。
この日は浅草神社前で桃が売られており、7〜8個で1,500円。試食もさせてもらい、甘くておいしかったこともあって、参加者の多くが買っていました。歴史散歩の途中でこうした季節の買い物が自然に生まれるのも、縁日の日ならではです。

ほおずき市会場へ。赤い実と風鈴がつくる夏の浅草
その後は、いよいよほおずき市の会場へ戻りました。境内には、鉢植えのほおずきや切りほおずきが並び、赤い袋状の実が夜の明かりの中で鮮やかに見えました。

ほおずきは、赤くふくらんだ実のように見えますが、実を包む萼が袋状に大きくなったものです。近くで見ると、薄い袋の質感や葉脈のような筋がよく分かります。写真を撮ったり、鉢を選んだりしながら、参加者それぞれのペースで境内散策を楽しみました。



ホッピー通りから浅草六区へ。芸能の街としての浅草も歩く
浅草寺を出た後は、ホッピー通りを抜けて浅草六区方面へ向かいました。寺社と縁日の浅草から、飲食店や演芸の浅草へ。少し歩くだけで街の表情が変わるのが、浅草の面白さです。

浅草六区では、ビートたけしさんの歌「浅草キッド」で知られる捕鯨船と、「予約済」の看板を紹介しました。浅草は寺社の街であると同時に、演芸、大衆芸能、飲食文化の街でもあります。ほおずき市の夜に、こうした浅草らしい場所まで歩けたことで、参加者にも街の広がりを感じてもらえました。


最後は、浅草東洋館や浅草演芸ホール周辺、そしてアニメ『鬼滅の刃』で竈門炭治郎と鬼舞辻無惨が出会う場所として知られるロックブロードウェイ付近を見て終了しました。歴史、信仰、縁日、芸能、現代の作品舞台まで、浅草の重層的な魅力を一晩で味わう散歩になりました。

まとめ:初めてでも、何度来ても発見がある浅草の夜
今回の浅草ゆる歴史散歩では、雷門や仲見世といった定番スポットから、提灯の底の龍、浅草神社の江戸時代の社殿、ほおずき市の民間信仰、ホッピー通りや浅草六区の芸能文化まで、浅草のさまざまな顔を一晩でめぐりました。
浅草が初めての方はもちろん、何度も来たことがある方からも「知らないことばかりだった」と感じてもらえるような散歩になりました。歴史は難しい知識として覚えるだけでなく、目の前の提灯、露店、建物、看板をきっかけにすると、ぐっと身近になります。
ゆる歴史散歩会では、東京周辺の歴史スポットや文化施設を、初心者にも分かりやすく巡る街歩きイベントを開催しています。一人参加の方も多く、歴史に詳しくない方でも気軽に参加しやすい雰囲気です。浅草のような有名な街も、少し視点を変えて歩くと、新しい発見がたくさんあります。
参考資料
この記事では、当日の散歩内容に加え、浅草寺公式サイト、浅草神社公式サイト、文化庁文化遺産データベース、台東区公式観光情報サイト、植物資料などを参考にしました。開催日時や授与品、境内の状況などは年によって変わる可能性があるため、実際に訪れる前には公式情報も確認するのがおすすめです。

