BIG4はなぜコンサルティングを拡大したのか|監査法人からDX支援まで

アンダーセン・コンサルティングから独立したアクセンチュアのロゴ

2002年、世界最大級の会計事務所ネットワークPwCは、成長していたコンサルティング事業をIBMへ売却しました。その少し前にはErnst & Youngのコンサルティング部門がCap Geminiへ移り、KPMG Consultingは株式市場へ上場。アーサー・アンダーセンと関係を解いたAndersen Consultingも、Accentureという新しい名で歩き始めていました。

ところが約10年後、PwCはBooz & Company、デロイトはMonitor Group、EYはThe Parthenon Groupを迎え入れ、戦略コンサルティングを強化しました。一度手放した事業へ戻った背景には、監査との利益相反を管理しながら、DX、サイバーセキュリティ、AIまで広がった企業課題へ対応する必要がありました。

まず結論|BIG4は監査を捨ててコンサル会社になったわけではない

BIG4とは、デロイト、PwC、EY、KPMGという国際的なプロフェッショナルサービス・ネットワークの総称です。歴史的な中核は監査かんさ・保証ですが、現在は税務、リスク、M&A、戦略、業務改革、IT、サイバーセキュリティ、データ、AIまで領域を広げています。

同じブランドを掲げていても、監査法人、コンサルティング会社、税理士法人、アドバイザリー会社は別法人である場合があります。国際ネットワークの統括組織と各国のメンバーファームも、それぞれ別法人です。

監査対象企業へ提供できる非監査業務には、法令、監督機関の規則、職業倫理、各ネットワークの独立性どくりつせいルールによる制限があります。提供の可否は、法人、監査顧客、サービス、国によって変わります。

企業課題が会計だけで解けなくなり、IT、国際化、規制、M&A、サイバー、データ活用が一体化したことが、BIG4のコンサルティング拡大を支えました。世界各国の拠点、業界知識、財務・税務・リスクの専門家、大企業との関係という既存資産も活用できました。2010年代には戦略ファームの買収を通じ、戦略策定から業務・システムの実行までをつなぐ競争が進みました。

組織類型歴史的な源流監査機能と独立性
BIG4会計・監査事務所ネットワーク内に監査法人があり、監査顧客への非監査業務に制限
BIG3経営戦略・組織助言監査を源流とせず、BIG4と同じ監査独立性構造は持たない
アクセンチュア等経営・ITコンサルティング監査法人ではなく、戦略から技術実装・運用まで広く扱う
SIer・ITサービス企業システム開発・機器・運用製品、構築、保守、アウトソーシングに強み。監査機能は通常持たない
組織類型主な顧客課題戦略から実行まで
BIG4財務、規制、税務、リスク、M&A、DX戦略・業務・技術を横断。ただし契約主体と独立性確認が必要
BIG3全社戦略、成長、組織、経営トップの重要課題近年はデジタル・実行領域も拡大
アクセンチュア等大規模変革、クラウド、データ、AI、運用構想から実装・マネージドサービスまで大規模に展開
SIer・ITサービス企業システム構築、統合、保守、基盤運用技術実装に強いが、戦略領域は企業ごとに差がある

監査人はなぜ経営助言を始めたのか

監査人は、売上がどのように記録され、在庫がどう数えられ、誰が支払いを承認し、どの情報システムから財務諸表へ数字が流れるのかを確かめます。業務手順、内部統制、組織、情報システムを横断して企業内部を見る立場でした。

問題点が見つかれば、経営者は改善方法を求めます。税務、原価計算、予算管理、組織設計、業務改善は周辺サービスとして育ちました。企業が巨大化、多角化、海外進出すると、会計記録だけでなく、管理制度と意思決定の仕組みを設計する必要が生まれました。

第二次世界大戦後にはコンピューター、オペレーションズ・リサーチ、経営科学が企業へ入り、助言の対象はさらに広がります。監査人が持つ業界知識と経営者との関係は、新しい仕事の入口になりました。一方、自分たちが設計した制度やシステムを後で自分たちが監査すれば、「自己監査」の危険が生じます。

用語初心者向けの意味主な目的
簿記取引を一定のルールで記録する技術日々の取引を帳簿へ残す
会計記録を集計し、経営や外部報告に使う仕組み企業の状態と成果を数字で示す
監査経営者が作った情報を独立した立場で検証する財務情報への信頼を高める
税務税法に沿って計算・申告・助言を行う適正な納税と税務リスク管理
アドバイザリー会計、リスク、M&Aなど専門分野の助言特定課題の判断と実行を支える
コンサルティング戦略、業務、組織、ITなどの変革を支援する経営課題を設計から実行まで解く

コンピューターが会計事務所をITコンサルへ変えた

企業の会計処理が手作業からコンピューターへ移ると、監査にもシステムの理解が欠かせなくなりました。販売、在庫、生産、人事、会計が情報システムを通じて連動するためです。財務情報の信頼性を評価するには、入力権限、プログラムの計算、データの保全を確認する必要があります。

会計事務所の専門家はシステム設計、導入、アクセス管理、内部統制、業務改革へ深く関与するようになります。1980~1990年代にはERP(企業の会計・販売・在庫・生産・人事などを統合する基幹システム)が普及し、グローバル企業は各国で異なる業務とコードを標準化しようとしました。Y2K対応、グローバル会計システム、サプライチェーン再設計も巨大案件を生みました。

米SECの2000年独立性規則によると、Big5の米国における管理助言等の収入は1999年に150億ドルを超え、1981年に総収入の13%だった領域が約半分へ達しました。成長率も監査を大きく上回り、人員、投資、パートナー報酬、ブランドをめぐって監査部門とコンサル部門の利害が分かれていきました。

当時のERP導入は業務とデータを統合する基盤でした。現在のDXは、顧客体験、ビジネスモデル、データ活用、組織、人材、ガバナンスまで含む変革です。大型IT案件を土台に、クラウド、AI、サイバーの領域が積み重なりました。

監査とコンサルはなぜ衝突したのか

監査は、経営者が作った財務情報を、経営者から距離を置いた専門家が検証する制度です。しかし監査報酬は監査対象企業から支払われます。顧客関係と公共的役割の間にはもともと緊張があり、高額なコンサル契約が加わると、契約を失いたくない意識が厳しい監査判断を鈍らせるのではないかという疑念が強まります。

米SECは独立性を考える代表的な観点を四つ示しました。

  • 自分が作ったものを自分で監査しない。
  • 監査対象企業の経営者や従業員の役割を担わない。
  • 監査対象企業の利益を代弁する立場にならない。
  • 監査対象企業と利益を共有しすぎたり、対立する利害を持ったりしない。

監査人が会計システムや内部統制を設計し、その有効性を自分で評価すれば自己監査です。採用、人事、意思決定、システム運用を引き受ければ経営参加に近づきます。M&Aや訴訟で顧客の立場を強く主張すれば、第三者的な検証者ではなく擁護者に見える可能性があります。多額の非監査報酬へ経済的に依存すれば、判断の中立性も疑われます。

実際の監査品質への影響と、合理的な第三者から独立して見えるかという外観上の独立性は別の問題です。本人が公正に判断していても、投資家が信頼できなければ監査制度の価値は下がります。監査顧客以外へのコンサルティングには、品質、守秘義務、利益相反管理という別の論点があります。

アンダーセン・コンサルティングはなぜ独立したのか

Arthur Andersenでは、監査・税務とコンサルティングがともに成長しました。企業のコンピューター利用が広がると、情報システム領域の仕事は急拡大し、1980年代にはAndersen Consultingという名称と組織が形成されます。しかし監査側のArthur Andersenとコンサル側Andersen Consultingの間では、利益配分、ブランド、投資、経営権をめぐる対立が深まりました。

対立は2001年のエンロン破綻より前に始まっていました。2000年8月の仲裁判断で両者の分離が決着し、Andersen ConsultingはAndersen WorldwideおよびArthur Andersenとの関係を解消しました。AccentureのSEC提出資料によれば、Andersen名の使用を終える条件があり、2001年1月1日からAccentureの名で事業を始めました。

独立と改称はエンロン破綻以前に決まっていました。Accentureは現在、Arthur Andersenから独立した企業です。

2000年前後、コンサル部門は分離・売却された

1990年代末から2000年代初頭、大手会計事務所はコンサル部門を分離ぶんり、上場、譲渡じょうとしました。方法は各社や国・地域によって異なります。

Ernst & Youngのコンサルティング部門

2000年、Ernst & Youngのコンサルティング事業はCap Geminiへ移りました。SECの同年規則もこの売却を記録し、Capgeminiの公式社史は2000年のErnst & Young Consulting取得を大きな転換点としています。一時期はCap Gemini Ernst & Youngの名称が使われましたが、現在のCapgeminiとEYは別組織です。関連事業の移転条件は地域によって異なりました。

KPMG Consulting

米国KPMGの管理・ITコンサルティング事業は2000年1月31日に別会社へ移され、KPMG Consulting, Inc.は2001年2月にIPOを実施しました。SECのKPMG/KCI資料では、資本、経営、共同営業、利益共有などを分離し、監査人の独立性を守る条件が検討されています。会社は後にBearingPointへ改称しました。

英国・オランダなどではAtos Originへの売却が行われるなど、取引は地域ごとに異なりました。米国のIPOは米国事業を対象としたものです。

PwC Consulting

PwC公式史は、2002年にパートナーがPwC ConsultingのIBMへの売却を承認したと記録しています。事業はIBMへ統合され、IBM Business Consulting Servicesなどへつながりました。売却の背景には、独立性規制、資本需要、事業モデルの違い、1990年代末からの上場・売却構想がありました。

2002年にPwCコンサルティングを買収したIBMの8本線ロゴ
IBMの8本線ロゴ。デザイン:Paul Rand/Wikimedia Commons/Public Domain(PD-textlogo)。

Deloitte

Deloitteはコンサルティング部門の分離計画を公表しました。米国では全面分離に代わり、2003年までに監査、コンサルティング、税務、ファイナンシャルアドバイザリーなどを別の子会社・組織で提供する体制へ再編しました。

日本ではABeam、フランスではINEUM、スペインではManagement Solutionsにつながる分離があり、対応は国・地域ごとに異なりました。

旧ネットワーク主な動き現在との関係・注意点
Arthur Andersen系2000年仲裁決着、2001年Accentureへ改称Accentureは現在BIG4でもArthur Andersen子会社でもない
Ernst & Young2000年、事業がCap Geminiへ現在のCapgeminiとEYは別組織
KPMG米国事業を分離、2001年IPO、後にBearingPoint地域別取引は異なり、一括世界分離ではない
PwC2002年、PwC ConsultingをIBMへ売却IBMはBIG4ではない
Deloitte米国は全面分離を完了せず、地域によって分離国別の対応差が大きい

エンロン事件とSOX法は何を変えたのか

2001年、エネルギー企業エンロンが破綻し、監査人Arthur Andersenが監査と非監査業務の双方から報酬を得ていたことが強く注目されました。事件は、自己監査、経済的依存、顧客への肩入れという疑念を社会問題へ押し上げます。EYのCap Geminiへの売却、KPMG Consultingの分離、Andersen Consultingの独立は、エンロン破綻以前から進んでいました。

2002年のサーベンス・オクスリー法(SOX法)はPCAOBを設置し、上場会社監査の監督を強化しました。監査委員会が監査人の選任・報酬・監督を担い、監査パートナーのローテーションが設けられ、監査対象企業への特定の非監査業務が禁止されました。簿記、財務情報システムの設計・導入、一定の評価・アクチュアリー業務、内部監査アウトソーシング、経営・人事、ブローカー・投資銀行、法律・専門家業務などが規制対象です。許容される非監査業務にも監査委員会の事前承認が必要になる場合があります。

SOX法は、監査顧客への特定の非監査業務を規制しました。提供の可否は、監査顧客、サービス、提供法人、適用法令、監査委員会の承認によって変わります。各国・地域でも監査監督と独立性規制が強化されましたが、具体的なルールは異なります。

一度手放したBIG4はなぜコンサル市場へ戻ったのか

第一の理由は、顧客需要が消えなかったことです。ERP、グローバル業務標準化、内部統制、M&A、規制対応、サプライチェーン、サイバーセキュリティ、クラウド、データ分析の需要は増えました。

第二に、監査市場だけでは成長余地が限られます。監査は公共性の高い規制業務で、品質要求が厳しく、価格競争もあります。コンサルティングは異なる人材、価格設定、案件規模を持つ成長市場でした。

第三に、顧客企業の問題が横断化しました。クラウド導入では、業務手順、権限、会計処理、税務、契約、セキュリティ、人材、海外データ移転を同時に変える必要があります。会計、IT、戦略を個別に扱うだけでは解けない課題が増えました。

第四に、BIG4の既存資産と相性がよかったことです。世界各国の拠点、業界知識、規制知識、財務・税務・リスクの専門家、大企業との関係、M&A案件、大量の専門人材を変革案件へ組み合わせられます。

第五に、監査法人とコンサル会社を分け、受注前に独立性を確認し、監査顧客へ提供できない業務を断る仕組みのもとで能力を再構築できたことです。同じブランドでも契約主体は異なり得ます。別法人、買収、採用、ブランド再編による再構築後も、独立性への懸念は残ります。

第六に、戦略から実行までを一体化する競争が進みました。「上流戦略→業務設計→技術導入→運用・定着」をつなぎ、経営目的と現場実装を結ぶ体制が求められました。

戦略ファームの買収で上流へ進んだ

2010年代には戦略ファームの買収ばいしゅう・参加が進みました。BIG4は新しい人材とブランドを加え、戦略から実行までの能力を組み直しました。

Monitor Deloitte

Monitor GroupはMichael Porterらと関係する戦略コンサルティング会社として発展しました。2012年に米国で破産手続へ入り、Deloitteが事業取得を進め、公式資料では2013年の取得と説明されています。Monitor Deloitteは、デロイトの戦略領域を強化するブランドとなりました。

デロイトの戦略コンサルティング部門Monitor Deloitteのロゴ
Monitor Deloitteのロゴ。Wikimedia Commons/Public Domain(PD-textlogo)。

Strategy&

Booz & Companyは、Booz Allen Hamiltonから分かれた系譜を持つ戦略コンサルティング会社です。PwCは2014年4月にBooz & Companyをネットワークへ迎え入れ、取引完了後にStrategy&へ改称しました。Strategy&公式史は、戦略の専門性とPwCの技術・実行能力を組み合わせる「戦略から実行まで」の構想を説明しています。

PwCの戦略コンサルティング部門Strategy&のロゴ
Strategy&のロゴ。Wikimedia Commons/Public Domain(PD-textlogo)。

EY-Parthenon

The Parthenon Groupは戦略コンサルティング会社で、EYは2014年に同社を迎え入れました。当初Parthenon-EYと呼ばれた時期を経てEY-Parthenonとなり、2025年にはEYがブランド範囲を戦略・トランザクション・変革へ拡大しました。

EYの戦略コンサルティング組織EY-Parthenonのロゴ
EY-Parthenonのロゴ。Wikimedia Commons/Public Domain(PD-textlogo)。

KPMG

KPMGも戦略、ディール、トランスフォーメーション、テクノロジーを提供しています。Strategy&、Monitor Deloitte、EY-Parthenonに一対一で対応する世界共通の単一ブランドはなく、名称と組織は国・地域で異なります。日本ではKPMGビジネスアドバイザリーとKPMGマネジメントコンサルティングを統合し、2014年にKPMGコンサルティングが発足しました。

DXはなぜBIG4と相性がよかったのか

DXは、経営戦略、顧客体験、業務プロセス、組織、人材、データ、システム、ガバナンスを同時に変える取り組みです。BIG4は財務、税務、リスク、業界規制、IT、M&Aを横断できるため、この複合課題と相性がよかったのです。

金融、製薬、エネルギー、公共部門では、技術の稼働に加えて規制適合と説明責任が求められます。クラウド移行は、契約、会計、税務、セキュリティ、内部統制、運用モデルへ影響します。企業買収後のシステム統合では、データ移行、業務統一、組織再編、会計方針、権限設計を同時に進めます。

グローバルネットワークは、多国籍企業の複数国変革にも役立ちます。製品開発、クラウド構築、運用、アウトソーシングではAccenture、IBM、Capgemini、インド系IT企業、クラウド事業者、国内SIerと競争し、ときには協業します。技術力、規模、得意領域はネットワークごとに異なります。

BIG3との境界はなぜ曖昧になったのか

マッキンゼー、BCG、ベインも、戦略提言からデジタル、データ、AI、組織変革、実行支援へ領域を広げました。一方BIG4は戦略ファームの買収で、経営トップへの戦略助言を強化しました。両者とも戦略と実行の双方を扱うようになっています。

源流の違いは残ります。BIG3は戦略助言を源流とし、BIG4は監査独立性の制約を受けます。BIG4は財務、税務、規制、リスク、監査周辺の専門家を多く持ち、BIG3は経営戦略とトップマネジメント助言の歴史・ブランドを強く持ちます。競争関係は案件、国、部門、顧客によって変わります。

日本ではBIG4コンサルはどの法人を指すのか

日本で「BIG4コンサル」と呼ぶとき、監査法人そのものではなく、同じグローバルブランドに属するコンサルティング法人を指すことが多くあります。2026年7月時点では、デロイトの有限責任監査法人トーマツと合同会社デロイト トーマツ、PwCのPwC Japan有限責任監査法人とPwCコンサルティング合同会社、EYのEY新日本有限責任監査法人とEYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社、KPMGの有限責任 あずさ監査法人とKPMGコンサルティング株式会社が区別されています。

デロイト日本では、2025年12月1日にデロイト トーマツ コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリー、リスクアドバイザリーの3法人が合併し、合同会社デロイト トーマツが発足しました。監査法人トーマツは別法人として存続しています。PwC Japanグループも各法人が独立して事業を行い連携する構造を示し、EY Japan、KPMGジャパンも複数法人の総称です。

同じブランドの人を一括して「監査法人のコンサルタント」と呼ぶと、契約主体と所属法人を取り違えることがあります。監査顧客に提供できないサービスがあるため、グループ内では受注前に独立性を確認します。

日本で需要を拡大した背景には、企業の国際化、会計制度改革、内部統制、ERP、M&A、DXがあります。Deloitte Japanでは1993年にトーマツ コンサルティングが設立され、その後再編が重ねられました。KPMGコンサルティングは2014年、PwCコンサルティング合同会社は2016年に日本で発足しています。これらの日本法人再編は、2000年前後のグローバルな売却・分離とは別の出来事です。

AI時代にBIG4はどこへ進むのか

2026年7月時点で、各ネットワークは生成AI導入戦略、データ基盤、クラウド、モデル選定、業務再設計、サイバーセキュリティ、プライバシー、知的財産、人材育成、AIガバナンス、規制対応、AIの信頼性評価を掲げています。AIは企業データ、権限、内部統制、法務、リスク、業務手順に組み込まれるため、BIG4の複合専門性が生きる領域です。

以下は将来予測です。定型的な調査、資料作成、テスト、データ整理はAIで効率化され、コンサルタントの人数構成、料金モデル、若手育成が変わる可能性があります。「AIを導入する支援」と「AIが正しく、安全に、説明可能な形で動くことを保証する支援」も近づくでしょう。自ら設計したAI管理を自ら保証する場合、自己監査に似た問題が生じます。

AI基盤への巨額投資は、大規模ネットワークと中小事務所の能力格差を広げる可能性があります。一方、判断責任、規制対応、現場実装、利害調整、第三者保証には人間の専門性が残ります。

コンサル再拡大に問題はないのか

独立性管理が整っても、監査とコンサルの間には緊張が残ります。コンサル事業を監査品質より重視するリスク、人材と投資資金がコンサルへ偏るリスク、同じブランドが監査顧客へ多様なサービスを売ることへの外観上の懸念があります。

監査市場は大手による寡占かせんが進み、企業が監査人を変更できる選択肢は限られます。コンサル契約が監査法人の選定へ影響しないか、クロスセリングの報酬が判断へ影響しないか、ネットワーク内の情報遮断と独立性管理が実効的かも問われます。監査法人とコンサル会社が別法人でも、ブランド、経済的利益、人材、顧客関係をどの程度共有するかによって評価は変わります。

英国などでは監査部門の運営分離が進められました。所有まで完全に分ける方法、同じグループ内で運営・利益管理を分ける方法、多職種モデルを維持しつつ規制を強化する方法があります。完全分離は外観上の独立性を高め得ますが、IT・税務・評価など監査に必要な専門家を集めにくくする副作用もあります。

80年の流れが分かる年表

年・時期出来事意味
1913年Arthur Andersen & Co.創業後の監査・コンサル両系統の源流
1940~1970年代税務、管理会計、経営助言が拡大監査周辺から助言業務が成長
1950~1980年代企業のコンピューター利用が拡大システム理解が監査と助言に不可欠に
1980年代Andersen Consultingの組織・名称が形成ITコンサル部門が独自性を強める
1990年代ERP、国際化、Y2KでITコンサルが急成長監査部門との収益・投資構造が変化
1995年米国Deloitte & ToucheのパートナーがDeloitte Consulting設立を承認コンサル組織を明確化
1990年代末非監査業務と独立性の議論が強まる分離・規制の前提が形成
2000年1月米国KPMGのコンサル事業が別会社へ翌年IPOへ
2000年EYのコンサル事業がCap Geminiへ大規模売却の先行例
2000年Andersen Consultingの仲裁が決着Arthur Andersenとの関係を解消
2000年米SECが監査人独立性規則を改正特定非監査業務を整理
2001年Accentureへ改称、KPMG ConsultingがIPO会計ネットワーク外の企業へ
2002年PwC ConsultingをIBMへ売却IT・ビジネス変革部門へ統合
2002年SOX法成立PCAOB、監査委員会、非監査業務規制を強化
2002~2005年Deloitteの一部国・地域で分離国別に異なる対応
2003年Deloitte米国が複数子会社体制へ再編全面売却ではなく組織分離で対応
2000年代後半BIG4がリスク・技術・アドバイザリーを再拡大別法人と独立性管理のもとで再構築
2013年DeloitteがMonitor Group事業を取得戦略領域を強化
2014年Booz & CompanyがPwCへ加わりStrategy&に戦略から実行までを標榜
2014年The Parthenon GroupがEYへ加わる戦略・取引領域を強化
2014年KPMGコンサルティングが日本で発足日本のコンサル体制を再編
2016年PwCコンサルティング合同会社が日本で設立日本のコンサル事業を再編
2020年代クラウド、サイバー、データ、生成AIへ拡大戦略・規制・技術の融合
2025年12月日本で合同会社デロイト トーマツ発足コンサル、FA、リスクの3法人を統合

よくある誤解

BIG4は監査法人からコンサル会社へ転業したのですか

監査・保証を中核に残し、別法人を含むネットワーク全体でコンサルティングを拡大しました。

SOX法で会計事務所のコンサルティングは禁止されたのですか

SOX法は監査顧客への特定業務を禁止し、許容業務にも事前承認などを求めました。非監査顧客へのコンサルティングは規制の対象外です。

一度売ったコンサル部門をそのまま買い戻したのですか

BIG4は別法人、採用、買収、ブランド再編によって新しい能力を作り直しました。Accenture、Capgemini、BearingPoint、IBMへ移った事業は各社に残りました。

アクセンチュアは元BIG4ですか

源流はBig5時代のArthur Andersenと同じ国際組織に結びついていましたが、2000年に関係を解消しました。現在は独立企業です。

エンロン事件が原因でAccentureになったのですか

仲裁決着と改称はエンロン破綻以前に決まっています。

Strategy&とBooz Allen Hamiltonは同じ会社ですか

Booz & CompanyはBooz Allen Hamiltonから分かれた系譜を持ち、2014年にPwCへ加わってStrategy&となりました。

Monitor DeloitteやEY-Parthenonは監査法人ですか

戦略コンサルティングのブランド・組織で、監査法人とは別法人として運営される場合があります。

BIG3とBIG4はどちらが上ですか

源流、専門人材、規制、案件の種類、国・部門によって強みが異なります。

BIG4に頼めば戦略からシステム導入まで全部同じ会社が行うのですか

複数法人や提携企業が分担する場合があります。監査顧客では独立性制限によって提供範囲も変わります。

まとめ|手放したのではなく、制約の中で作り直した

会計事務所は監査を通じて企業内部を理解し、税務、業務改善、情報システムへ助言を広げました。ITとERPの普及でコンサル部門が巨大化すると、自己監査、経営参加、利益相反が問題になりました。

1990年代末から2002年頃、各社は分離、IPO、売却を進めました。Andersen ConsultingはAccentureとなり、EYの事業はCap Geminiへ、KPMG Consultingは独立企業へ、PwC ConsultingはIBMへ移りました。Deloitteの対応は国・地域で異なりました。

エンロン事件とSOX法は独立性規制を強化しました。その後もDX、規制、M&A、サイバー、クラウドへの需要は拡大し、BIG4は別法人、独立性管理、買収、新ブランドによって能力を再構築しました。

現在はBIG3、Accenture、ITサービス企業との境界が曖昧になりましたが、監査人の独立性という緊張は残っています。BIG4は、監査を続けるための制約を抱えながら、企業変革に応える組織を別の形で作り直しました。

参考文献・公式資料