日本獣医生命科学大学付属博物館の見どころと医獣祭|文化財の一号棟・展示・入館案内

日本獣医生命科学大学の歴史的校舎・一号棟と正門付近(2016年)

武蔵境駅の南口から歩いて約2分。日本獣医生命科学大学の構内に、赤い屋根を載せた明治時代の洋館が残っています。かつて東京市の区役所だった建物は、現在、動物の標本や獣医学教育の歴史を伝える「日本獣医生命科学大学付属博物館」の展示施設として使われています。入館は無料です。

日本獣医生命科学大学付属博物館とは

日本獣医生命科学大学の歩みは、1881(明治14)年に創立された日本初の私立獣医学校から始まります。家畜の診療や獣医学教育を担ってきた大学に、2015年4月、「日本獣医生命科学大学付属ワイルドライフ・ミュージアム」が開館しました。当初は野生動物の標本を中心に展示し、学生の博物館実習にも活用されていました。

獣医学・畜産学に関わる歴史資料や大学史の展示が加わり、2023年4月に「日本獣医生命科学大学付属博物館」へ改称。2025年3月31日には、改正博物館法による登録博物館となりました。武蔵野市内で初めての登録です。2026年3月末までに整理・リスト化された資料は2,061点で、歴史系1,220点、自然系841点です。

1909年築、旧東京市麻布区役所だった一号棟

博物館が入る一号棟は、1909(明治42)年、東京市麻布あざぶ区の区役所として現在の港区六本木付近に建てられました。1923年の関東大震災を経験したのち、区役所の移転に伴って役目を終え、1937(昭和12)年に武蔵境へ移築されました。以来、獣医学校の講義室や事務室などに使われてきました。

建物は木造2階建て、建築面積644平方メートル。折れ曲がる勾配が特徴のマンサード屋根、縦長の窓、石張りの腰壁、玄関の車寄せなどに明治期の庁舎建築の姿が残ります。2012年の改修を経て、2020年4月3日に「旧東京市麻布区役所庁舎(日本獣医生命科学大学一号棟)」として国の登録有形文化財に登録されました。

2005年に撮影された日本獣医畜産大学(現・日本獣医生命科学大学)の校舎
日本獣医畜産大学(現・日本獣医生命科学大学)の校舎、2005年撮影。撮影:Hykw-a4/Wikimedia Commons(CC BY-SA 3.0)。

3つの展示室で見る動物と獣医学の歴史

自然系展示室――野生動物を間近に観察する

自然系展示室には、ツキノワグマ、ニホンジカ、イノシシなどの哺乳類や、カラス、キジバト、カワウ、カルガモ、ハイタカなどの鳥類の剥製はくせい・骨格標本が並びます。多くの剥製はガラスケースに収めない露出展示で、毛並みや体格、くちばしや脚の形を近くから観察できます。

歴史系展示室――明治から続く獣医学教育

歴史系展示室は、私立獣医学校、私立東京獣医学校、日本高等獣医学校、日本獣医畜産大学など、学校の名称と制度が変わってきた時代を7つに分けて紹介しています。写真や講義資料から、馬などの家畜を対象とした獣医教育が、動物医療・生命科学へと発展してきた過程をたどれます。明治時代の手書き講義録もデジタル公開されています。

一号棟展示室と企画展

一号棟展示室では、建物の歴史や学内の研究を取り上げます。2026年3月14日から11月28日までの第2回企画展「日獣大驚異の部屋」では、大学の教育や歴史に関する資料を展示。かつて獣医官が使用した馬の治療道具、解剖模型や掛図など、教育現場の具体的な道具にも光を当てています。展示の内容は会期によって変わります。

キリン「長次郎」の骨格標本が伝える戦前の動物園

大学が長く保管してきたキリンの全身骨格標本は、博物館の調査によって、1940年に上野動物園で生まれた長次郎ちょうじろうのものと判明しました。長次郎は1942年に井の頭自然文化園へ移り、1944年に亡くなりました。骨格は大学の前身校で標本となり、その後、一号棟に展示されました。

2023~2024年には第1回企画展「キリンが来た道~麒麟児 長次郎の歩み~」が開催されました。骨格は保存のため2025年に解体され、2026年6月21日の特別公開後は非公開で保管されています。長次郎の生涯、1907年のキリン初来日、日本の動物園での繁殖史については、別記事「日本にキリンが来たのは1907年|長次郎と骨格標本の歴史」で詳しく紹介しています。

大学祭「医獣祭」と博物館の特別公開

「医獣祭」は、日本獣医生命科学大学と日本医科大学が武蔵境キャンパスで合同開催する大学祭です。学生団体の模擬店やステージ企画、研究発表、学科紹介などが並び、普段の講義や研究に触れる機会にもなっています。2025年の大学祭と同時開催行事には、3日間で約9,000人と約400匹の動物が来場しました。

2026年の第9回は「わん!ダーランド」をテーマに、10月30日から11月1日まで開催されました。個別相談会やオープンキャンパス、大学の研究を紹介する「ニチジュウミーティング」に加え、東京都の保護犬・保護猫の譲渡促進、ペットの防災を紹介する展示も企画されました。

医獣祭の3日間、博物館は10時から16時まで特別開館しました。10月31日と11月1日には、学芸員が国の登録有形文化財である一号棟を案内する約15分間のツアーを開催。午前11時と午後1時に始まり、各回の定員は10人でした。大学祭の開催日や特別公開の内容は年度ごとに変わります。

入館料・開館時間・アクセス

博物館は東京都武蔵野市境南町1-7-1、日本獣医生命科学大学一号棟にあります。JR中央線・西武多摩川線「武蔵境駅」南口から徒歩約2分。入館料は無料で、通常の個人見学に予約は必要ありません。展示室の見学時間は30分ほどが目安です。

  • 通常開館:火~土曜日、10時30分~17時(最終入館16時30分)
  • 通常休館:日曜日・月曜日・祝日、年末年始、大学の定める休日など
  • 入館手続き:正門横の守衛所で見学を伝え、記録表に記名して入館証を受け取ります
  • 団体見学:10人以上は希望日の3週間前までに申し込みます
  • 館内設備:入口と館内に階段があり、エレベーター・車椅子昇降機は設けられていません
  • 撮影:歴史系展示室は撮影禁止。自然系常設展などは個人利用の範囲で撮影できます
  • 動物同伴:博物館への動物の入館は原則不可。補助犬は事前相談に対応しています

2026年11月は18日と21日に臨時休館、17日は12時30分閉館、28日は12時30分開館の予定です。12月1~25日は自然系展示室の一部が閉鎖され、12月26日から2027年1月6日までは冬期休館となります。訪問日に関する情報は、博物館の来館案内・開館カレンダーで確認できます。

主な参考資料