齋藤商店の歴史|1889年創業・1933年の建物と志村一里塚の街並み

志村坂上の国道17号沿い、国史跡・志村一里塚の隣に齋藤商店の建物があります。明治22年(1889)に原木商として創業し、現在の店舗兼住宅は昭和8年(1933)の中山道拡幅に伴って建てられました。店舗は令和4年(2022)12月30日に閉店しましたが、建物は旧街道の姿を伝える文化財として知られています。

1889年に始まった原木商

齋藤商店が創業した明治22年、志村周辺には中山道沿いの集落と農村が広がっていました。店は当初、欅などを扱う原木商として営業しました。木材は家屋の建築や道具の製作に欠かせず、街道に面する店には荷物の運搬に適した立地がありました。

その後は竹材や竹製品を中心に扱うようになり、竹垣に使う材料や箒、竹製の籠なども販売しました。昭和期から令和にかけて商いの内容が変わった一方、店の場所は長く変わりませんでした。

1933年の道路拡幅と店舗の新築

昭和8年(1933)、旧中山道の志村坂上付近では道路を拡幅し、新しい中山道を整備する工事が進みました。齋藤商店はこの工事に伴って店舗と住居を新築しました。現在の国道17号に面して建つ木造建築は、江戸時代の街道が近代的な幹線道路に変わった時期の建物です。

近くの志村一里塚も道路工事の影響を受けましたが、位置を変えずに保存されました。江戸時代の道しるべと昭和初期の商家が隣り合う景観は、この場所ならではの特徴です。

複雑な屋根を持つ近代和風建築

齋藤商店は店舗と住居を一体とし、平屋部分に二階を載せた木造建築です。入母屋造の瓦屋根を複雑に組み合わせ、建物の周囲には下屋庇を巡らせています。屋根の端に見える破風、二階窓の高欄風の手すり、柱や梁を見せる真壁漆喰塗りなどに意匠上の特徴があります。

店舗として街道に開かれた正面と、落ち着いた住宅の構えが同じ建物に収まっています。郊外住宅の趣を持つ近代和風建築として、板橋区の建築史を伝える資料です。

文化財登録と景観賞

齋藤商店は平成24年度(2012年度)に板橋区の登録有形文化財(建造物)となりました。志村一里塚と一体となった街並みは、板橋区の景観賞でも評価されています。区が公表した第2回板橋区景観賞では、両者が「緑と建物が一体となった中山道のランドマーク」として紹介されました。

2022年の閉店と現在の見学

齋藤商店は令和4年(2022)12月30日、133年にわたる営業を終えました。歴史ある建物の外観は小豆沢2丁目16番10号の道路側から見ることができますが、住居を兼ねる私有建築のため内部見学はできません。敷地への立入りは避け、歩道から街並みを観察する場所です。

隣接する志村一里塚の歴史では江戸時代の里程標と昭和の道路工事を、志村・小豆沢周辺の歴史と文化財では地域の城跡や街道も紹介しています。

参考資料