東京大学の丹下健三建築|本部棟・旧理学部5号館と1970年代の本郷キャンパス

東京大学本郷キャンパスの龍岡門近くには、水平に伸びる濃色の壁面とガラス窓を、明色の塔状部分で挟んだ高層建築が2棟並びます。旧理学部5号館(現・第2本部棟)と本部棟です。設計を手がけたのは、東京大学で学び、のちに教授も務めた建築家・丹下健三でした。

旧理学部5号館は1977年に入居と完成披露が行われ、本部棟は1979年に竣工しました。戦前の内田ゴシック建築が低層の校舎と街路で構内を構成したのに対し、二つの建物は、大学機能の拡大と建物の高層化が進んだ1970年代の東京大学を伝えます。

本郷の建築史全体は東京大学本郷キャンパス建築ガイドで扱っています。

丹下健三と東京大学――母校で設計した二つの高層棟

丹下健三は1938年に東京帝国大学工学部建築学科を卒業し、前川國男建築設計事務所で勤務しました。1946年に東京大学第一工学部建築学科助教授、1963年に同大学都市工学科教授となり、1974年に名誉教授となりました。広島平和記念公園や1964年竣工の国立代々木競技場を手がけた後、1970年代には母校の理学部施設と管理施設の設計に携わりました。

東京大学の公式特集「オリパラと東大。」は、母校に残された丹下の仕事として本郷キャンパスの本部棟と第二本部棟を挙げています。二棟は別々の用途で計画されましたが、龍岡門に近い同じ地区に建ち、共通の外観意匠を採用しています。

1968年の工学部11号館――本郷で進んだ高層化

丹下による二棟に先立ち、吉武泰水設計の工学部11号館が建設されました。地上9階に大教室と研究室を収めた校舎で、建築学科の構造系講座も工学部1号館から移りました。東京大学建築学科の沿革では1968年完成、同館内のHASEKO-KUMA HALLの施設案内では1969年竣工と記録されています。外壁には周囲の戦前校舎に近い淡褐色のタイルが使われました。

関東大震災後の建設では、中庭や道路を確保し、建物ごとの意匠をそろえて配置することが重視されました。研究室や教育施設が増えた戦後は、同じ本郷キャンパスでも階数を増やして必要な床面積を得る建設が進みます。

旧理学部5号館――1977年に理学部の三教室が入居

現在の第2本部棟は、もとは理学部5号館として建設されました。東京大学理学部ニュースの1977年の記事では、数学・地質・鉱物の三教室が移転し、同年6月4日に完成披露会を開いたと記録されています。

同誌の建物紹介によると、地上7階・地下1階で、軒高は26.8メートル、塔屋最高部は30.5メートル。設計は丹下健三都市建築設計事務所が担当しました。四隅に淡色の八角形の柱状部分を設け、ガラス窓と濃色の水平壁面を交互に重ねる構成です。

外壁はチョコレート色を基調としています。数学科などの移転後に建物の用途が変わり、現在は第2本部棟と呼ばれています。

理学部5号館と本部棟――工事時期のずれ

1977年の理学部ニュースには、理学部5号館の向かいで大学本部棟の工事が地下部から地表部まで進んだ後、中断されていたことが記録されています。

本部棟の建設はその後再開されました。東京大学文書館の記録では、1979年8月15日に竣工しています。現在も龍岡門付近で二棟を並べて見ることができます。

1979年の本部棟――地上12階・地下2階の高層建築

丹下の設計事務所を継承するTANGE建築都市設計は、東京大学本部棟の作品資料に1979年の完成、地上12階・地下2階、延床面積16,412.90平方メートルと記録しています。

本部棟の外観では、階ごとに連続するガラス窓を水平に並べ、その外側を垂直に伸びる明色の塔状部分が挟みます。窓と壁の濃淡が明瞭で、旧理学部5号館との関係が視覚的にも分かります。建物を龍岡門側から観察すると、二棟の高さの違いと外装の類似性を比べられます。

内田ゴシックとの比較――低層の街区から高層建築へ

内田祥三を中心とする関東大震災後の復興計画では、安田講堂と正門の軸線、総合図書館と工学部1号館の配置、法文校舎のアーケードなどを組み合わせてキャンパスを構成しました。外壁には暗赤色や淡褐色のタイルを使い、アーチと縦長窓で校舎群の意匠をそろえています。

丹下の二棟では、各階の連続窓と濃色の水平壁面を、明色の柱状部分が縦方向に区切っています。地上7階の旧理学部5号館と地上12階の本部棟は、階数と用途が異なりながら共通した外装を持ち、龍岡門付近に一組の高層建築群を形成しています。戦前の校舎については内田ゴシック建築完全ガイドに掲載しています。

丹下健三の二棟を見比べる

項目 旧理学部5号館(第2本部棟) 本部棟
計画時の用途 理学部の数学・地質・鉱物の研究教育 大学本部の管理機能
完成に関する記録 1977年6月4日、完成披露会 1979年8月15日竣工
階数 地上7階・地下1階 地上12階・地下2階
外観 淡色の八角柱と濃色の水平壁面 濃色の水平帯と明色の塔状部分
設計 丹下健三都市建築設計事務所 丹下健三都市建築設計事務所

現地で見る順路

龍岡門側から本部棟と第2本部棟が並ぶ位置へ進み、まず遠くから両棟の外形と高さを比較します。近づくと、濃色の水平壁面と窓の連続、端部の淡色の柱状部分の形が観察できます。建物を利用する組織の変更にかかわらず、設計当初の外観の特徴を確認できます。

安田講堂や法文校舎など戦前の建物と比較する場合は、龍岡門側の二棟を見た後、キャンパス中央の歴史的建築群へ移動すると、建設年代に伴う高さと材料の表現の違いをたどれます。

参考資料