西新宿・中野坂上の夜散歩|都庁の夜景、十二社熊野神社、中野長者と象小屋跡を歩く

夜間にライトアップされた東京都庁第一本庁舎

東京都庁の高層ビル群から西へ歩くと、新宿中央公園、十二社熊野神社、神田川沿いの低地、中野坂上へと景観が変わります。現在の西新宿は高層ビル街として知られますが、熊野神社周辺には池や滝があり、江戸近郊の景勝地「十二社」として人を集めました。さらに中野坂上側には、中野長者・鈴木九郎の伝承や、江戸時代に象が飼育された場所の記憶も残っています。

このコースでは、都庁の夜景を入口に、十二社の景勝地、暗渠と橋跡、中野長者、象小屋跡を順にたどります。高層ビルの夜景だけで終わらず、現在の街路と歴史の痕跡を同じ道の上で見比べられるのが特徴です。

西新宿・中野坂上の夜散歩コース

スタートは東京都庁周辺、ゴールは中野坂上駅です。夜景を見る場合、東京都庁展望室は南展望室が22時まで、北展望室は通常17時30分までです。いずれも入室無料で、地上202メートルから東京を見渡せます。休室日や臨時閉室があるため、訪問前に東京都財務局の展望室案内を確認してください。

  1. 東京都庁都民広場
  2. 東京都庁第一本庁舎 展望室
  3. 夜間にライトアップされた東京都庁第一本庁舎
    夜の東京都庁第一本庁舎、2015年。撮影:新幹線/Wikimedia Commons/CC BY-SA 4.0。
    東京都庁展望室から東京オペラシティ方向を望む夜景
    東京都庁展望室から東京オペラシティ方向の夜景、2010年。撮影:掬茶/Wikimedia Commons/CC BY-SA 4.0。
  4. ファンモアタイムひろば(水の広場)
  5. 十二社(じゅうにそう)熊野神社
  6. 西新宿の十二社熊野神社の社殿
    十二社熊野神社、2018年。撮影:Kakidai/Wikimedia Commons/CC BY-SA 4.0。
  7. 榎橋跡
  8. 長者橋
  9. 中野区立なかのはしポケットパーク
  10. 通過点
  11. 象小屋跡
  12. 中野坂上駅

都庁の夜景から新宿中央公園へ

東京都庁第一本庁舎の展望室は45階にあり、地上202メートルから都心を一望できます。夜散歩では、まず高い場所から西新宿の街路と建物の位置関係を確認してから地上へ降りると、その後の道の高低差や距離感をつかみやすくなります。

都民広場から新宿中央公園へ進むと、水の広場は2024年にネーミングライツによって「ファンモアタイムひろば」という愛称になりました。現在の公園は高層ビル街に隣接していますが、この先の熊野神社周辺には、近世以来の十二社の歴史が残ります。

十二社熊野神社と、池・滝があった景勝地

十二社熊野神社は、応永年間(1394〜1428)に中野長者と呼ばれた鈴木九郎が、故郷の紀州熊野三山の十二所権現を勧請したと伝わります。江戸時代には熊野十二所権現社と呼ばれ、旧角筈村の鎮守でした。「十二社」という呼び名は神社から周辺の地名にも広がりました。

新宿区の文化観光資料によると、周辺には池や滝があり、江戸西郊の景勝地として茶屋や料亭が集まりました。昭和30年代まで賑わいが続き、戦後まで花街もありました。現在は池も滝も見えませんが、熊野神社や「十二社池の下」などの地名に、かつての景観の記憶が残っています。

十二社の花街が東京のほかの花街とどう違ったのかは、東京の花街46地域を地図で比較した解説で詳しく紹介しています。

榎橋跡から長者橋へ、暗渠と低地を歩く

熊野神社から西へ進むと、榎橋跡を経て神田川沿いの低地へ下ります。榎橋跡は、かつて流れていた和泉川の流路をたどる散歩でも通る地点です。道路になった旧河道や橋名の痕跡を追うと、現在の街路だけでは分かりにくい水の流れを読み取れます。

和泉川の旧流路を続けて歩く場合は、西新宿から和泉川暗渠と水道道路をたどる散歩へつなげられます。暗渠そのものの見つけ方は、東京の暗渠まるわかりガイドで、橋跡・緑道・道路の曲がり方などの見方をまとめています。

神田川流域の低地が現代の治水とどう関係するかは、神田川・環七地下調節池の解説も参考になります。

長者橋と中野長者・鈴木九郎

「中野長者」と呼ばれた鈴木九郎は、十二社熊野神社の創建伝承にも、現在の中野区本町にある成願寺の由緒にも登場します。中野区には、紀州熊野から来た九郎が財をなし、のちに出家して屋敷を寺にしたという伝承が残っています。

成願寺には鈴木九郎長者墓があり、東京都指定旧跡になっています。長者橋という地名と熊野神社、成願寺を一続きに歩くと、西新宿と中野坂上が同じ「中野長者」の物語で結ばれていることが分かります。

中野坂上に残る象小屋跡

中野区本町二丁目の朝日が丘公園には、「象小屋(象厩)の跡」の文化財表示板があります。中野区の資料では、徳川八代将軍吉宗の希望でベトナムから連れてこられた象が、上覧後に中野村の源助へ渡され、この付近で飼育されたとされています。

現在は住宅地の小さな公園ですが、江戸の人々にとって珍しかった象が実際に暮らした場所として記憶されています。都庁の超高層建築から始めた散歩が、最後に江戸時代の動物史へつながる地点です。

象小屋跡に加え、宝仙寺、旧三重塔跡、山政醤油醸造所のレンガ塀など中野坂上周辺の歴史は、中野坂上の歴史散歩|宝仙寺・吉宗の象・三重塔跡・醤油レンガ塀を歩くで詳しく紹介しています。

中野区の別の歴史スポットも歩くなら、犬屋敷や新井薬師など中野の史跡を巡る散歩もあります。

夜に歩くときの注意点

  • 都庁展望室は北・南で開室時間と休室日が異なります。夜景目的なら当日の公式案内を確認してください。
  • 十二社熊野神社の新宿ミニ博物館展示は屋外ですが、新宿区は見学を日中のみと案内しています。文化財を詳しく見る場合は昼間の訪問が適しています。
  • 暗渠や橋跡は住宅地を通ります。夜間は狭い道や段差に注意し、私有地には入らないでください。

参考資料

TimeWalkで昔の東京を重ねて見る

現地を歩きながら、昔の地図や写真と現在の街を見比べたい場合は、TimeWalkも利用できます。西新宿の高層ビル街、十二社周辺の旧景観、暗渠や橋跡など、現在の風景だけでは分かりにくい変化を時代を重ねて確認できます。

この記事を書いた人
ゆる歴史散歩会 運営者
なかまつ

北海道大学工学部卒。現在はIT系会社員の傍ら、年間400回以上の街歩きイベントを企画し、これまで延べ25,000名以上の方にご参加いただいている、ゆる歴史散歩サークルを運営しています。東京の歴史・文化・建築・地形などを、初心者でも気軽に楽しめるイベントとして企画しています。

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