【開催レポート】ナイトミュージアム「インターメディアテク」と丸の内の夜さんぽ

東京駅丸の内駅舎と高層ビル群を望む夜景 イベント
展示鑑賞後、KITTE屋上から眺めた東京駅丸の内駅舎の夜景

2026年7月3日(金)19時から、12人で「ナイトミュージアム『インターメディアテク』と丸の内の夜さんぽ」を開催しました。今回の舞台は、東京駅前の旧東京中央郵便局の一部を受け継ぐJPタワーと、その周辺に広がる丸の内です。

前半はインターメディアテクで、建築の記憶をたどる特別公開と常設展示を鑑賞。後半はKITTEの屋上から東京駅丸の内駅舎と高層ビル群を眺め、最後に行幸地下ギャラリーを訪ねました。博物館の標本、近代建築、夜景、地下空間のアートを一晩で結びつけて楽しめる、丸の内ならではの歴史散歩です。

千代田区丸の内――近代建築と学術標本が交差する街

丸の内は、江戸時代には大名屋敷が並び、明治以降は鉄道駅や官庁、オフィス建築が集まる日本の都心へと姿を変えてきた地域です。東京駅の赤れんが駅舎と現代の超高層ビルが同じ視界に収まるため、街を歩くだけでも時代の重なりを実感できます。

インターメディアテクが入るJPタワーは、旧東京中央郵便局の建築を保存・再生しながら整備された建物です。館内では東京大学が蓄積してきた学術標本が、歴史を感じさせる什器や空間の中に展示されています。展示物だけでなく、建物そのものも見どころです。

今回楽しんだ展示と夜の丸の内

館内では、展示を一つずつ囲みながら、気づいたことや気になったことを話し合って鑑賞しました。大きな植物標本や動物標本を前にすると、自然と視線が集まり、細部をのぞき込む場面も。ナイトミュージアムらしい落ち着いた時間のなかで、学術標本を身近に楽しみました。

インターメディアテクの展示を参加者が鑑賞している様子
標本や展示を囲み、気づいたことを話しながら鑑賞しました

特別公開「JP IN CONSTRUCTION」からスタート

最初に楽しんだのは、特別公開「JP IN CONSTRUCTION―旧東京中央郵便局からインターメディアテクまで」です。展示では、1929年から1931年にかけて建設された旧東京中央郵便局の記録写真と、2010年から2013年にかけて現在のJPタワーへ再開発されるまでの記録が紹介されていました。

解説によると、旧東京中央郵便局の設計者は逓信省営繕課の技師・吉田鉄郎。白いタイルの外壁と、黒い窓枠を格子状に並べた外観は、昭和初期の近代モダニズムを象徴するデザインとのこと。当時は工業生産がまだ十分に発達しておらず、巨大建築に向き合った職人たちの技も記録写真から読み取れるとのことです。

特別公開「JP IN CONSTRUCTION」の展示入口と解説パネル
旧東京中央郵便局からインターメディアテクまでの建設史をたどる特別公開

古い建物を単に残すのではなく、現代の施設へ受け継ぐまでの過程を知ると、インターメディアテクのレトロモダンな雰囲気が、旧東京中央郵便局の記憶とつながっていることがよく分かります。

建築空間の中に現れる骨格標本

常設展示へ進むと、大型の骨格標本が空間の中に現れます。博物館というと展示ケースが整然と並ぶ空間を想像しがちですが、ここでは標本と建築が一体になり、歩くたびに視界が切り替わります。

大きな鯨類の骨格は、頭骨の長さや顎の形を間近で見られる迫力ある展示です。全体像を眺めるだけでなく、骨の一本一本を見ていくと、水中で暮らす巨大な生き物の身体がどのように支えられているのか想像が広がります。

インターメディアテクに展示された大型鯨類骨格標本
迫力ある大型骨格標本を間近で観察

「伝アインシュタイン・エレベーター」

参加者と話しながら見た展示の一つが、「伝アインシュタイン・エレベーター」です。解説によると、1926年3月以前に日本支社で製作されたエレベーターで、東京大学旧理学部1号館に設置されていたもの。

1922年に来日したアルベルト・アインシュタインが東京大学を訪れた際、このエレベーターに乗ったと伝えられているとのこと。ただし、建物の竣工時期との関係から、実際に本人が使用したかどうかは確定できないそうです。史実と伝承のあいだを考えながら見るのも、歴史展示の面白さです。

伝アインシュタイン・エレベーターと解説パネル
東京大学旧理学部1号館で使われた伝アインシュタイン・エレベーター

鮮烈な青「ギメ・ブルー」

ガラス容器いっぱいに収められた鮮やかな青色顔料も目を引きました。これは「ギメ・ブルー」と呼ばれる合成ウルトラマリン顔料です。

解説によると、19世紀まで西洋美術で重宝された天然ウルトラマリンは、ラピスラズリから作るため非常に高価だったらしいです。1820年代、フランスで安価な合成方法が開発され、ギメ・ブルーは美術の枠を超えて幅広い工業製品にも使われるようになったとのことです。色そのものの美しさに加え、顔料の歴史から技術革新と社会の変化も見えてきます。

鮮やかな青色顔料ギメ・ブルーと解説パネル
19世紀以降に広く使われた合成ウルトラマリン顔料「ギメ・ブルー」

約40キログラムの自然金模型

今回、特に盛り上がったのが巨大な自然金の模型です。解説では、1842年にロシアのミアスクで採掘され、当時世界最大だった約40キログラムの自然金をかたどったレプリカとのこと。

実物の金塊ではありませんが、掘り出されたときの形を立体的に記録する資料として作られたそうです。その大きさとごつごつした姿を前に、「こんなのが出てきたらビビるって!」という声も。数字だけで聞く40キログラムと、目の前の形として見る40キログラムでは、受ける印象がまるで違います。

約40キログラムの自然金を再現した模型と解説
1842年にロシアで採掘された巨大自然金をかたどった模型

神々の食物と人面象形ボトル

人の顔をかたどったような器は、エクアドルのサンタ・アナ・ラ・フロリダ遺跡に由来する「人面象形あぶみ型ボトル」のレプリカです。

解説によると、この遺跡ではカカオのでんぷんなどが検出され、約5300年前からカカオが利用されていた可能性があるみたいです。この資料は日本とエクアドルの友好の証として寄贈されたとのことです。身近なチョコレートの原料から、古代の食文化や国際交流へ話が広がりました。

人面象形あぶみ型ボトルのレプリカと解説パネル
エクアドルの遺跡に由来する人面象形あぶみ型ボトルのレプリカ

動物の剥製を見比べる

ガラスケースに並ぶ多種多様な動物の剥製も、みんなでゆっくり見比べました。ネコ科の動物、ウサギ、アルマジロなど、姿勢や毛並み、身体の大きさが一度に見られます。

参加者からは「色々な動物の剥製や骨格がかわいい」という声もありました。学術標本は研究資料である一方、動物ごとの特徴を観察する入口にもなります。常設展示でも、気になったものについて話しながら歩くことで、一人で見るときとは違う発見が生まれました。

ガラスケースに並ぶ多様な動物剥製標本
多様な動物の剥製が並ぶ常設展示

KITTE屋上から東京駅と丸の内を眺める

展示鑑賞の後は、6階の屋上へ。目の前にはライトアップされた東京駅丸の内駅舎が広がり、その背後には高層ビル群の明かりが連なっていました。

ここでは、東京駅の建築や周辺の再開発について建物解説会を行いました。身近に見えている建物でも、建てられた時代や保存・復原の背景を知ると、夜景が単なる美しい景色ではなく、都市の歴史を映す風景に変わります。参加者にも、身近な場所の歴史や最新情報を知れてよかったと喜んでいただけました。

東京駅丸の内駅舎と高層ビル群を望む夜景
展示鑑賞後、KITTE屋上から眺めた東京駅丸の内駅舎の夜景

行幸地下ギャラリー「和あかりの路」へ

最後は東京駅前、全長約220メートルの行幸地下ギャラリーへ向かいました。ここでは「和あかりの路」として、和傘照明や竹細工を使った景観装飾が展開されています。

丸の内・大手町・有楽町一帯は、江戸時代には有力大名の屋敷が並ぶ街でした。現代的な地下通路に和傘や竹の光を取り入れることで、見えにくくなった江戸の記憶へ再び光を当てる取り組みとのことです。

「こんなところにギャラリーがあるのを知らなかった」という声もあり、普段は移動のために通り過ぎる地下空間そのものを見直す機会になりました。丸の内は地上だけでなく、地下にも歴史とアートを楽しめる場所が広がっています。

行幸地下ギャラリーの和あかりの路を参加者が鑑賞している様子
和傘照明が並ぶ行幸地下ギャラリーを歩きました

まとめ――展示から建築、夜景、地下空間へ

今回のナイトミュージアムでは、旧東京中央郵便局の建設記録、東京大学の学術標本、東京駅を望む夜景、行幸地下ギャラリーの和あかりを一続きに楽しみました。博物館の展示を見て終わるのではなく、展示の背景にある建物や、窓の外に広がる街まで歩いて確かめることで、丸の内の歴史が立体的に見えてきます。

インターメディアテクは、歴史初心者でも「これは何だろう」と気になった展示から自由に楽しめる施設です。今回も一つ一つの標本を囲み、解説を読み、感想を交わしながら、ゆったりと夜の文化散歩を楽しみました。

ゆる歴史散歩会では、東京周辺の歴史スポットや文化施設を、初心者にも分かりやすく巡る街歩きイベントを開催しています。一人参加の方も多く、歴史に詳しくない方でも気軽に参加しやすい雰囲気です。

関連情報
特別公開「JP IN CONSTRUCTION―旧東京中央郵便局からインターメディアテクまで」
行幸地下ギャラリー「和あかりの路」