2026年7月6日(月)19時15分から、ゆる歴史散歩会では「増上寺七夕祭り『和紙キャンドルナイト』を楽しもう」を開催しました。参加者は33人。日が落ちた芝公園・増上寺周辺で、徳川将軍家ゆかりのお寺の歴史をたどりながら、七夕の夜だけの和紙キャンドルの光を楽しむ夜散歩です。
増上寺は、東京タワーを背景にした風景でよく知られていますが、実際に境内を歩くと、江戸幕府、徳川将軍家、戦災からの復興、子育て信仰など、東京の歴史が何層にも重なっていることが分かります。今回は初めて増上寺を訪れる方も多く、歴史に詳しくない方でも、夜の景色を楽しみながら自然に学べる回になりました。

港区芝公園の増上寺とは
増上寺は東京都港区芝公園にある浄土宗の大本山です。公式サイトでも「600年の歴史をもつ、徳川将軍家とゆかりの深い寺」と紹介されており、徳川家康公ゆかりの秘仏「黒本尊」を祀る“勝運”のお寺として親しまれています。
現在の増上寺周辺は、東京タワー、芝公園、オフィス街、ホテル、地下鉄駅が近接する都心の一角です。一方で、境内に入ると大殿、三解脱門、徳川将軍家墓所、千躰子育地蔵菩薩などが点在し、江戸の宗教都市としての面影も感じられます。現代の都市景観と寺院建築が同時に見られるところが、増上寺散策の大きな魅力です。
七夕と織姫・彦星、そして和紙キャンドルナイト
七夕は、織姫と彦星が年に一度、天の川を渡って会うという星伝説と、短冊に願いを書いて笹に飾る行事が重なった日本の年中行事です。織姫はこと座のベガ、彦星はわし座のアルタイルに結びつけて語られることが多く、夏の夜空を見上げるきっかけにもなります。
増上寺では、7月6日・7日の18時から21時まで、境内で「和紙キャンドルナイト2026」が行われました。大殿の階段には和紙キャンドルによる天の川が展示され、小雨決行・荒天中止として案内されていました。七夕の物語を、星空だけでなく、地上に並ぶ光として体験できるのがこの催しの魅力です。

今回楽しんだコース
今回は街を長く歩くというより、増上寺境内を中心に、夜間の七夕祭りと歴史解説を組み合わせて巡りました。集合後はグループに分かれて自己紹介を行い、初参加の方や一人参加の方も話しやすい雰囲気をつくってから出発しました。
大門から三解脱門へ。増上寺の表情をつくる二つの門
まずは大門を通り、保存修理工事中の三解脱門へ向かいました。増上寺の表門は大門で、そこから境内へ進むと、中門にあたる三解脱門が見えてきます。三解脱門は「三門」とも呼ばれ、むさぼり、いかり、おろかさという三つの煩悩から離れ、極楽浄土へ向かう心を整える門とされています。
三解脱門は江戸前期に再建された重要文化財で、増上寺が江戸初期に大きく整備された時代の面影を残す貴重な建造物です。現在は保存修理工事中のため、いつもの朱塗りの姿を直接見ることはできませんが、工事用の覆いに描かれた門の姿を前に、参加者の皆さんと「見えない文化財をどう守るのか」という視点でも眺めました。

大殿前で東京タワーと和紙キャンドルを撮影
大殿前では、東京タワーを背景に和紙キャンドルが階段いっぱいに並び、まるで光の川が本堂へ流れていくような景色が広がっていました。参加者の皆さんも自然とカメラを構え、思い思いの角度で撮影会に。東京タワーの強い光と、和紙越しのやわらかな灯りが重なることで、都心らしさと七夕らしさが同時に味わえる時間になりました。

近づいて見ると、和紙キャンドルの一つひとつは控えめな灯りです。それでも、数が集まることで階段全体が大きな天の川のように見えてきます。歴史散歩というと昼間の寺社巡りを想像しがちですが、夜の行事に合わせて歩くと、同じ場所でも建物の輪郭や光の見え方が大きく変わるのが面白いところです。


千躰子育地蔵菩薩へ。夜に出会うやさしい祈りの風景
続いて、境内北側の千躰子育地蔵菩薩へ移動しました。増上寺では、子育安産の西向聖観世音菩薩にちなみ、昭和50年頃から子育地蔵が少しずつ建立され、現在は約1,300体が安置されているとされています。赤い帽子や風車、花に彩られたお地蔵さまが並ぶ光景は、昼間でも印象的ですが、夜にライトアップされた姿にはまた違った静けさがありました。
ここでは、子どもの無事成長や身体健全、水子供養の願いを込めて建立された場所であることを解説しました。七夕の短冊に願いを書くことと、子育地蔵に祈りを込めることは形こそ違いますが、どちらも「誰かの幸せを願う」文化です。祭りの賑わいの中で、少し立ち止まって祈りの場所を見る時間になりました。

徳川将軍家墓所の門前で、六人の将軍が眠る歴史を解説
この時間帯は徳川将軍家墓所の内部には入れませんでしたが、門の前まで行き、そこで解説を行いました。増上寺には、徳川15代将軍のうち、2代秀忠、6代家宣、7代家継、9代家重、12代家慶、14代家茂の六人の将軍が眠っています。参加者からは「15代のうち6代もここにいるんですね」と驚きの反応がありました。
徳川将軍家の墓所というと、日光東照宮や上野の寛永寺を思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし、江戸城に近い芝の増上寺も、徳川家にとって非常に重要な菩提寺でした。戦災で旧霊廟の多くは失われましたが、現在の墓所には各将軍や正室、側室などの墓がまとめられ、かつての壮麗な霊廟文化を今に伝えています。
安国殿の夜間特別公開と七夕限定御朱印
安国殿では夜間特別公開が行われ、七夕限定御朱印も用意されていました。御朱印を集めている参加者は、限定の御朱印をいただくことができ、とても喜んでいました。
安国殿は、戦災後に仮本堂として使われていた建物を前身とし、現在は念仏信仰の拠点として親しまれているお堂です。本尊として祀られる秘仏「黒本尊」は、徳川家康公が深く信仰した阿弥陀如来像と伝えられ、勝運・厄除けの仏さまとして知られています。増上寺が単なる観光地ではなく、今も信仰の場として生きていることを感じられる場所でした。
光摂殿の和紙キャンドルは穴場でした
この日は、光摂殿にも和紙キャンドルの展示がありました。大殿前に比べると人が少なく、ゆっくり眺められる雰囲気で、織姫と彦星を思わせる配置が印象的でした。にぎやかな大殿前で七夕らしい写真を撮ったあと、静かな場所で光を味わえる、まさに穴場のようなスポットでした。



最後はキッチンカーで食べたり飲んだり、交流の時間に
歴史解説と境内散策の後は、キッチンカーが並ぶエリアへ。食べたり飲んだりしながら、グループごとに感想を話したり、撮った写真を見せ合ったりして締めくくりました。お寺散策が初めての方、増上寺に初めて来た方も多く、七夕祭りをきっかけに東京の歴史スポットを楽しんでいただけたのが印象的でした。


増上寺の夜散歩で見えた、東京の歴史と季節行事
今回の増上寺七夕祭り「和紙キャンドルナイト」は、歴史散歩と季節行事の相性の良さを実感できる回でした。三解脱門や徳川将軍家墓所では江戸の歴史を、千躰子育地蔵菩薩や安国殿では今に続く祈りを、和紙キャンドルと短冊飾りでは七夕の物語を楽しむことができました。
東京タワーの夜景を背景にした増上寺は、写真映えする場所としても人気ですが、少し解説を添えて歩くと、なぜこのお寺が江戸と深く結びついたのか、なぜ徳川将軍家の墓所がここにあるのか、現在の都市の中にどのように歴史が残っているのかが見えてきます。
ゆる歴史散歩会では、東京周辺の歴史スポットや文化施設を、初心者にも分かりやすく巡る街歩きイベントを開催しています。一人参加の方も多く、歴史に詳しくない方でも気軽に参加しやすい雰囲気です。季節の祭りや夜の特別公開なども取り入れながら、これからも「歩いてみると面白い東京」を一緒に楽しんでいきます。
