國學院大學博物館の考古ゾーン見学ガイド|7つの資料と出土遺跡から読む日本の歴史

國學院大學博物館の考古展示室。土器や考古資料が並ぶ展示ケース

國學院大學博物館の考古ゾーンには、旧石器時代の石器から縄文土器、弥生時代の銅鐸、古墳の副葬品、古代・中世の宗教関係資料までが並びます。展示品を前にしたら、何に使われたか、どこの遺跡から出たか、同時代の品とどこが違うかを確かめると、各時代の暮らしと社会の変化を具体的に理解できます。

来館前の注意:國學院大學博物館は館内修繕工事のため、2026年11月30日から2027年4月中旬頃まで長期休館を予定しています。再開日は改めて発表されます。開館状況や展示替えは國學院大學博物館で確認してください。

國學院大學博物館の考古展示ならではの特徴

考古ゾーンの主題は「祭祀遺跡に見るモノと心」です。考古学の通史をたどるとともに、各時代の儀礼や信仰に関わる資料を重視しています。國學院では大場磐雄が「神道考古学」を提唱し、祭祀に使われた遺物とその出土状況を研究してきました。展示室には、この研究の伝統が反映されています。

大学の考古学陳列室は1928年に樋口清之が寄贈した考古資料を展示するために設けられ、現在の博物館の前身となりました。大学の調査や寄贈によるコレクションに触れられるのも特徴です。東京国立博物館の大規模な考古展示と比べると、國學院では考古資料から祭祀や信仰を読み解く視点を強く感じられます。

考古ゾーンの全体像|6章で何を見るか

展示主な内容現地で比べる点
第1章 國學院の考古学大学の研究史・考古学の調査法土器の形と年代の関係
第2章 人類のはじまりと日本列島旧石器時代から縄文時代への移行石器の刃先・材料・製作方法
第3章 固有の狩猟採集民文化縄文時代の暮らしと儀礼深鉢の文様、土偶、装身具
第4章 東アジア世界の東端弥生時代の稲作・青銅器・墓制壺・甕・高杯、銅鐸の形
第5章 王権と「神道」の形成古墳時代の王権・埋葬・祭祀鏡、埴輪、玉、石枕
第6章 「日本」のあゆみ古代から中近世の制度と信仰瓦、骨蔵器、経塚の遺物

第1章の「年代のものさし」では、土器の形や文様の変化から新旧を判断する方法が紹介されます。第2章で石器の作り方を見た後、第3章で地域ごとに発達した縄文土器を観察すると、道具が変化してきた過程を追えます。第4章の稲作と金属器、第5章の古墳と王権、第6章の国家制度や宗教関係資料へ進むと、社会の規模や儀礼の場が変わっていくことが分かります。

注目したい7つの展示資料と出土遺跡

以下は博物館が代表資料として紹介している7件です。展示替えにより、紹介した資料の一部が展示されていない場合があります。名称と出土地は展示ラベルで照合してください。解説は時代順に並べています。

1.火焔型土器(深鉢)|新潟県長岡市・岩野原遺跡

年代:縄文時代中期 出土地:新潟県長岡市深沢町・岩野原遺跡

新潟県長岡市岩野原遺跡出土の縄文中期の火焔型土器。口縁に大きな突起がある
岩野原遺跡出土の火焔型土器。撮影:Saigen Jiro/Wikimedia Commons(パブリックドメイン)。

岩野原遺跡は信濃川左岸の段丘上にある縄文時代の遺跡です。ここから出土した深鉢は、新潟県を中心に広がった火焔型土器の一例で、口縁に大きな四つの突起があり、胴部に盛り上がった線が複雑に巡ります。突起は鶏頭冠とも呼ばれ、炎が立ち上がるような形をしています。

現地で見る点:口の突起、胴の文様、底の形を順に観察します。同じ縄文時代の深鉢でも装飾には地域差があります。装飾の少ない土器と並べて見ると、器の用途と造形の違いが分かります。

2.土偶|茨城県・立木貝塚、埼玉県・真福寺貝塚など

年代:主に縄文時代後期・晩期 出土地:茨城県利根町・立木貝塚、埼玉県さいたま市岩槻区・真福寺貝塚など

土偶は人の姿をかたどった土製品です。初期には胴体を単純に表したものがあり、後の時代になると顔や手足を強調するなど多様な形が現れます。土偶が破損して見つかる例や貝塚から出る例もあり、儀礼との関係が研究されています。

立木貝塚は利根川下流域、真福寺貝塚は現在のさいたま市岩槻区に位置します。貝塚では貝殻のほか、日常の道具や食べ物の痕跡も発見されます。生活の場に残された土偶を、ほかの出土品と合わせて考えることができます。

現地で見る点:目・口・肩・腹部の表現と、手足の省略の仕方を比べます。欠けた部分や中空の構造にも注目すると、土偶の造形の幅が分かります。

3.袈裟襷文銅鐸|伝・滋賀県野洲市・大岩山遺跡

年代:弥生時代後期・1世紀 伝承上の出土地:滋賀県野洲市小篠原・大岩山遺跡

銅鐸は弥生時代を代表する青銅製の祭器です。この資料の袈裟襷文(けさだすきもん)は、縦横の帯が表面を区切る文様です。上部の吊り手を鈕(ちゅう)、左右の張り出しを鰭(ひれ)と呼び、形の違いが年代を判断する手がかりになります。

大岩山遺跡は近江地方で多数の銅鐸が発見された場所として知られています。ただし、この銅鐸の出土地には「伝」が付きます。発掘記録で確認された出土地とは異なり、伝承に基づく所在情報です。

現地で見る点:身の文様を区切る線、鈕の形、鰭の輪郭を観察します。後に登場する古墳時代の鏡と比べると、青銅製品が使われた場面の違いも理解できます。

4.三角縁三神三獣鏡|出土地不詳

年代:古墳時代前期・4世紀 出土地:不詳(大槻盤渓旧蔵)

三角縁神獣鏡は、鏡の縁の断面が三角形に盛り上がることに由来する名前です。背面には神や動物の姿が表され、この鏡には三神三獣の図像が配置されています。鏡の文様や鋳造の特徴は、製作地やほかの鏡との関係を研究する資料になります。

この鏡の出土地は不詳です。出土地が判明している古墳出土鏡とは区別し、製作技術や文様の比較を中心に観察します。

現地で見る点:鏡の表裏を意識し、背面の神・獣の図像と、厚く盛り上がった縁を探します。文様の細部にも製作技術の情報が残っています。

5.挙手人面土器|長野県長野市・片山遺跡

年代:古墳時代前期・4世紀 出土地:長野県長野市若穂保科・片山遺跡

片山遺跡は千曲川の支流・保科川の南岸にあり、大きな石の下に古墳時代前期の土器が埋められていました。挙手人面土器は胴部に人の顔を表し、口縁部に腕を上げたような一対の突起を付けています。器全体を人の身体に見立てた珍しい造形です。

現地で見る点:顔の位置から口縁部の左右の突起へ目を移します。大石の下に埋められていたという状況も特徴的で、土器がどのような場面で使われたかを考える手がかりになります。

6.石枕(重要文化財)|千葉県市原市・姉崎二子塚古墳

年代:古墳時代中期・5世紀 出土地:千葉県市原市姉崎・姉崎二子塚古墳

千葉県市原市姉崎二子塚古墳出土の石枕(重要文化財)
姉崎二子塚古墳出土の石枕(重要文化財)。撮影:Saigen Jiro/Wikimedia Commons(パブリックドメイン)。

姉崎二子塚古墳は養老川下流域に築かれた全長約100メートルの前方後円墳です。國學院大學考古學會が調査し、その前方部から石枕が出土しました。石枕は死者の頭部を支える石製品で、古墳の埋葬方法を知る資料です。

現地で見る点:頭部を受けるくぼみと周囲の形を観察します。縄文時代の生活用具とは異なり、古墳の埋葬に伴う道具です。出土した位置を知ることで、古墳の内部でどのように使われたかを考えられます。

7.骨蔵器|茨城県つくば市・金田官衙遺跡

年代:平安時代・9世紀 出土地:茨城県つくば市東岡・金田官衙遺跡(九重東岡廃寺)

金田官衙遺跡は桜川西岸の台地に広がる古代の郡衙・郡寺に関係する遺跡です。九重東岡廃寺と呼ばれる寺院跡の区域から一対の広口壺が出土し、骨蔵器として紹介されています。骨蔵器は火葬後の遺骨を納める容器です。

現地で見る点:二つの壺の口や胴の形、大きさを比べます。前の石枕と合わせて見ると、古墳時代の埋葬と古代の火葬という葬送方法の違いが分かります。

祭祀の場はどこにあったか|國學院らしい比較

縄文時代の土偶、弥生時代の銅鐸、古墳時代の鏡は、儀礼や信仰との関係が研究される資料です。それぞれの時代や地域には異なる習慣があり、出土した場所と周囲の遺物が使い方を考える根拠となります。

銅鐸がまとまって地中に埋められた例、鏡が古墳に副葬された例、土器が大石の下に納められた例では、遺物が置かれた場所が異なります。器物の形に加え、地中で見つかった配置や組み合わせにも目を向けてみてください。

山ノ神遺跡の磐座復元|奈良県桜井市・三輪山麓

國學院大學博物館に展示されている奈良県桜井市の山ノ神遺跡の磐座復元模型
奈良県桜井市・山ノ神遺跡の磐座を再現した展示。撮影:Saigen Jiro/Wikimedia Commons(パブリックドメイン)。

神道ゾーンでは、奈良県桜井市の三輪山麓にある山ノ神遺跡の磐座(いわくら)を再現した展示も見られます。磐座は祭祀に関わる岩の場です。山ノ神遺跡では岩の組み合わせの周辺から、祭祀に関係する石製品、土製模造品、玉類、須恵器などが出土しました。

現地で見る点:器物単体だけでなく、岩の位置と周りに置かれた品々の関係を観察します。死者の埋葬に伴う姉崎二子塚古墳の石枕と比較すると、葬送の場と神を祀る場の違いが具体的になります。展示は復元模型で、遺跡の岩そのものを移したものとは異なります。

出土遺跡を読む三つの手がかり

  • 遺跡の種類:貝塚は生活や廃棄の痕跡、古墳は埋葬施設、寺院跡は仏教や地方社会の営みを調べる場所です。
  • 地形:岩野原遺跡は信濃川沿いの段丘、片山遺跡は千曲川水系、姉崎二子塚古墳は養老川下流域に位置します。河川や台地の位置も遺跡の性格に関わります。
  • 出土地の記録:発掘で出土地が確定した品、「伝」と付く品、出土地不詳の品を区別します。資料から分かる範囲が異なるためです。

開館情報と展示替え

所在地:東京都渋谷区東4-10-28、國學院大學渋谷キャンパス。入館料:無料。通常開館時間:10:00~18:00(最終入館17:30)。不定期休館や臨時変更があるため、ご利用案内・開館カレンダーで確認してください。特に2026年11月30日からの長期休館期間にはご注意ください。

紹介した代表資料は展示替えによって非公開となる場合があります。現地で実物の名称、出土地、年代を確認するときは展示ラベルを基準にしてください。

参考資料

アイキャッチ写真のクレジット:國學院大學博物館考古展示室/撮影:しんぎんぐきゃっと/Wikimedia Commons。ライセンス:CC BY-SA 4.0。写真は記事掲載用にサイズを調整しています。