春画とは?有名な春画展・コレクター・所蔵美術館【2026年版】

喜多川歌麿『歌まくら』1788年刊の序文ページ

2026年秋、東京・新宿では歌川国貞と歌川国芳の春画を集めた展覧会が、京都・嵐山では14世紀初頭の《稚児草紙》を初公開する展覧会が開かれています。春画は江戸時代の浮世絵師たちが手がけた性愛の絵画として知られ、出版文化や美術史の資料としても研究されています。

春画とは何か――江戸の笑いと出版文化

春画(しゅんが)は性愛や性行為を題材とした絵画です。江戸時代には「笑い絵」「枕絵」とも呼ばれ、錦絵にしきえなどの木版画、絵師が直接描く肉筆画にくひつが、挿絵を収めた版本はんぽんとして制作されました。性描写に加え、人物同士の会話、戯れ、衣装や室内の細部まで描き込む表現が特徴です。

喜多川歌麿きたがわうたまろの『歌まくら』(1788年)、葛飾北斎かつしかほくさいの『喜能会之故真通』、歌川国貞の春画版本などには、浮世絵の彫り・摺りの高い技術が注がれました。春画は庶民から上層階級まで流通し、幕府の出版統制によって取り締まりを受けた時期もありました。

北斎の娘・葛飾応為が描いた吉原の夜景は、関連記事葛飾応為《吉原格子先之図》と浮世絵の夜景表現で紹介しています。

2026年に開催中の春画展

東京|「歌川国貞・歌川国芳」新宿歌舞伎町春画展WA

2026年10月3日から11月29日まで、新宿歌舞伎町能舞台とBONDで開催されています。役者絵で知られる歌川国貞うたがわくにさだと、武者絵で名を上げた歌川国芳うたがわくによしの春画を比較できる企画です。国貞の春画三部作「三源氏」もそろいます。出品作はすべて浦上満の所蔵品です。前期は11月1日まで、11月2日は展示替え休館、後期は11月3日から。入場対象は18歳以上です。展覧会公式案内

京都|「愛のカタチ ―幻の春画《稚児草紙》公開―」福田美術館

2026年9月19日から2027年1月17日まで開催。14世紀初頭に制作された、稚児と僧侶らの関係を詞書とともに描く絵巻《稚児草紙》を初めて一般公開します。江戸時代の浮世絵以前にさかのぼる作品と、月岡雪鼎や北斎の肉筆春画などを紹介します。前期は11月17日まで、後期は11月18日から。入館対象は18歳以上です。展覧会公式案内

2023~2026年の主な春画展一覧

年・会期展覧会会場と内容
2026年4月4日~5月31日葛飾北斎・渓斎英泉 艶くらべ東京・新宿歌舞伎町。北斎と英泉の春画を比較。
2026年2月14日~3月15日小さな愛の物語 ―豆判春画の世界―東京・新宿歌舞伎町。浦上満所蔵の豆判春画約300点。
2025年7月26日~10月5日新宿歌舞伎町春画展WA「文化でつむぐ『わ』のひととき」東京・新宿歌舞伎町能舞台。菱川師宣、歌麿、北斎、国芳らの約100点。
2025年3月28日~6月29日春が(春画)来た!山口県萩市・熊谷美術館。浦上満コレクション約100点。
2024年9月7日~11月24日美しい春画 ―北斎・歌麿、交歓の競艶―京都・細見美術館。肉筆画を重視し、北斎《肉筆浪千鳥》を日本の美術館で初展示。
2024年4月9日~6月9日浮世絵の別嬪さん ―歌麿、北斎が描いた春画とともに―東京・大倉集古館。美人画と春画を紹介。
2023年10月21日~12月17日銀座の小さな春画展東京・ギャラリーアートハウス。北斎、歌麿ら約50点。

春画の評価を変えた二つの展覧会

2013~2014年|ロンドン・大英博物館

大英博物館の「Shunga: Sex and Pleasure in Japanese Art」は、2013年10月3日から2014年1月5日まで開催されました。日本の性愛表現を絵画、版本、風俗史の資料として紹介し、約9万人が来場しました。所蔵作品については大英博物館の作品データベースで確認できます。

2015年|東京・永青文庫「春画展」

2015年9月19日から12月23日まで、東京・文京区の永青文庫で国内初の本格的な美術館春画展が開かれました。前後期を通じて133点を展示し、肉筆画、版画、版本、豆判春画を紹介。来場者は約21万人に達しました。海外の美術館・個人コレクションからの出品もあり、日本で春画を鑑賞する大きな転機となりました。永青文庫の公式記録

春画を収集・研究してきた人々

浦上満――近年の春画展を支えた収集家

浦上満うらがみみつるは浦上蒼穹堂の代表で、『北斎漫画』の収集でも知られる美術商です。2013年の大英博物館展を支援し、2015年の永青文庫展の実現にも関わりました。2023年の銀座展、2025年の萩・歌舞伎町展、2026年の歌舞伎町展にも所蔵作品が登場しています。

オフェル・シャガン――大規模な春画コレクション

オフェル・シャガンは1989年から日本に暮らし、春画や江戸時代の版本などを収集してきました。公式サイトによると、シャガン・コレクションの収蔵物は1万2,000件以上に及びます。『わらう春画』『ニッポン春画百科』などの著書を通じて、図像に込められた笑いや風刺も紹介しています。

林美一――春画・艶本研究の蓄積

林美一はやしよしかずは江戸時代の春画と艶本えんぽんを研究し、資料を集めました。旧蔵の春本、戯作、出版資料は遺族から立命館大学アート・リサーチセンターへ寄贈されています。林美一コレクションの解説

春画で知られる美術館・研究施設

  • 大英博物館(ロンドン):2013年の大規模展で知られ、春画の所蔵品をオンライン公開しています。
  • 永青文庫(東京・文京区):2015年の本格的な春画展を開催しました。企画ごとに展示内容が変わる美術館です。
  • 細見美術館(京都):2016年の巡回展や2024年の「美しい春画」で知られます。肉筆春画にも焦点を当てました。
  • 福田美術館(京都・嵐山):2026年秋から《稚児草紙》などを公開しています。
  • 立命館大学アート・リサーチセンター(京都):林美一旧蔵資料を所蔵し、近世艶本・春画総合データベースを公開しています。

代表作から見る北斎の春画

北斎の『喜能会之故真通』に含まれる「蛸と海女」は、海女と蛸を描いたよく知られる図です。人物や動物の会話が画面の一部となる春画もあり、絵と詞書を合わせて楽しむ文化が発達しました。北斎の作品は2023年の銀座展などでも紹介されています。

葛飾北斎の春画「蛸と海女」。海女と大小の蛸
葛飾北斎「蛸と海女」。Wikimedia Commons/Public Domain。

江戸の性と娯楽が結びついた場所には遊郭もありました。都市の制度や地理的な背景は吉原遊郭跡の歴史と現在の場所で詳しく紹介しています。

春画展の鑑賞と作品を調べる方法

2026年10月現在、春画を実物で見られる企画としては東京の「歌川国貞・歌川国芳」展と京都の「愛のカタチ」展があります。ともに年齢制限が設けられ、前後期の展示替えや休館日も設定されています。展覧会の詳細と出品作は各館の公式案内に掲載されています。

作品の制作年代、絵師、所蔵先を調べる際は、大英博物館の作品データベースや立命館大学の「近世艶本・春画総合データベース」が手がかりになります。

参考資料・展覧会公式記録