東京・赤坂と六本木の境に広がるアークヒルズ。その中心に立つサントリーホールの屋上には、普段は自由に入れない庭園「ルーフガーデン」があります。植物や野鳥を守るため通常は非公開で、2026年は春と秋に特別公開が行われました。
この庭は、近隣の高層建築から見下ろしたときの景観まで考えた上段、食べられる植物やコンテナを置く中段、バラのアーチがある下段という3段構成です。1986年のアークヒルズ開業から続く都市緑化の歴史も重なっています。
アークヒルズ・ルーフガーデンとは

ルーフガーデンは、サントリーホールの屋上に位置する3段の庭園です。アークヒルズ公式サイトは、植物・野鳥保護などのため通常非公開とし、年に数回だけ一般公開すると案内しています。
上段――ユニオンジャックをモチーフにした庭
上段は、近隣のビルの屋上から見下ろしたときに美しく見えるよう設計されています。デザインモチーフは英国国旗の「ユニオンジャック」です。地上から花壇を眺める視点に加え、高層建築から見下ろす景観も計画に組み込まれています。
中段――食べられる植物とコンテナ
中段は、食べられる植物やコンテナを中心とした空間です。観賞用の花に加え、暮らしと結びついた植物も取り込んだ構成です。
下段――バラのアーチがつくる景観
下段にはバラがつたうアーチがあります。2026年春の見ごろ植物として、モッコウバラとナニワイバラが公式に紹介されました。特別公開では、上段の幾何学的な花壇、中段の食べられる植物、下段のバラという植栽の違いを歩いて確認できます。

1986年から続くアークヒルズの屋上緑化
アークヒルズは1986年に竣工しました。森ビルは、この開発を民間初の大規模再開発と位置づけています。サントリーホール屋上を含む敷地の20%を超える緑地に、4万本以上の樹木が植えられました。現在では一般的になった大規模な屋上緑化を、1980年代の都心再開発で本格的に取り入れた事例です。

当初の緑地は常緑樹が中心でした。開業10周年の1996年には園芸家の杉井明美氏がアークヒルズ内屋上庭園の改修を手掛け、森ビルは1997年のアークヒルズ・ガーデン改修を、緑の「量」から「量+質」へ転換した時期と位置づけています。草花や落葉樹を取り入れ、季節の移ろいを感じ、人が緑とかかわる庭へ変化していきました。
森ビルによると、アークヒルズの緑被率は1990年の23.2%から2025年には40.0%まで高まりました。建物の完成後も木々の育成と植栽の更新が続けられています。アークヒルズの再開発については、森ビルと東京の再開発史でも扱っています。
2026年春の特別公開――芽吹きと花を楽しむ季節
2026年の「春のガーデン特別公開~スプリング・オープン・ガーデン~」は、3月22日と3月27日~4月5日に実施されました。公式案内では、草花が芽生える時期のルーフガーデンを「都心のオアシス」として紹介しています。
3月29日13時30分に12人で訪れました。花壇ではアネモネ、スイセン、クリスマスローズ、チューリップなどが咲き、アーモンドも開花していました。公式の2026年植物案内では、ルーフガーデンの見頃植物としてアーモンド、シラーシベリカ、アスパラガス、アネモネ、カレンデュラ、モッコウバラ、ナニワイバラが挙げられています。
2026年の公式植物リストではチューリップはメインガーデン側に掲載されていますが、3月29日のルーフガーデンでも開花したチューリップを確認しました。







2026年秋の特別公開――育ち切った草花と「末枯れ」の景色
2026年秋の特別公開は、10月2日~6日と10月8日~11日に行われました。公式案内では、夏の暑さを越えて大きく育ったススキ、風に揺れるコスモス、色鮮やかなケイトウ、虫の音とともに「末枯れゆく秋の風景」が見どころとして紹介されていました。

10月11日10時の現地の様子
最終日の2026年10月11日午前10時に24人で訪れました。ほかの来園者は2~3組ほどで、園内に混雑はありませんでした。公開中は小径を歩きながら草花や実を間近に観察できます。

春より高く育った草花と、花を終えたバラ
春の特別公開と比べると、秋は草花の背丈が高く、庭全体に高さと密度が出ていました。とくにススキは人の目線を大きく超える穂を伸ばし、高層ビルと青空を背景に揺れていました。下段のバラも葉や枝を伸ばしていましたが、訪問時には花は咲いていませんでした。

公式の見頃植物を現地で確認
公式サイトが10月のルーフガーデンの植物として掲載したのは、ジニア、クルメケイトウ、シュウメイギク、ローゼル、キクイモ、ススキ、カンナ、カラミンサ、ハクチョウソウ(ガウラ)、フヨウ、センニチコウ、ヒオウギ、コリウス、ヤナギバヒマワリ、ヒメリンゴ、アメジストセージ、フウセンカズラ、スーパートレニアです。現地ではヤナギバヒマワリ、ジニア、クルメケイトウ、ローゼル、ススキ、ヒメリンゴなどを確認できました。





上段のアスパラガスと、中段の実もの
上段では、春には若芽として見慣れたアスパラガスが、秋には太い茎を高く伸ばしていました。中段では柑橘類と思われる果実のほか、ピラカンサ類と思われる赤色と黄色の実も見られました。




| 季節 | 2026年のルーフガーデン | 景観の特徴 |
|---|---|---|
| 春 | アーモンド、シラーシベリカ、アネモネ、カレンデュラ、バラなど | 芽吹き、若い葉、春花、開花時期の移り変わり |
| 秋 | ススキ、クルメケイトウ、ヤナギバヒマワリ、ローゼル、ヒメリンゴなど | 背丈の高い草花、穂や実、花を終えたバラ、秋へ移る景色 |
なぜ普段は入れないのか――植物と野鳥を守る庭
ルーフガーデンが通常非公開なのは、植物・野鳥保護などのためです。アークヒルズの庭では、木々が成長し、花や草が四季をつなぎ、鳥や虫の声も聞こえる環境づくりが続けられています。
特別公開は、いつでも人が出入りする公園とは異なる環境へ入れる機会です。春と秋の公開日だけを切り取るのではなく、普段は人の立ち入りを抑えて育てられている時間まで含めると、ルーフガーデンの性格がよく分かります。
ユニオンジャックは「上から見る庭」のためのデザイン
ルーフガーデンを象徴するのが、上段のユニオンジャック型花壇です。公式説明では、近隣ビルの屋上から眺めたときに美しく見えるように設計されたとされています。高層ビルが周囲に立つアークヒルズだから成立する発想です。
庭園内を歩くと、俯瞰した幾何学模様とは違い、一つ一つの植物と同じ高さで景色を見ることになります。都市の大きな構図として設計された庭と、草花の細部を歩いて見る庭が重なっている点に、この場所の独自性があります。
2026年秋の特別公開・開催情報
| 名称 | 2026 秋のガーデン特別公開 |
|---|---|
| 開催日 | 2026年10月2日(金)~10月6日(火)、10月8日(木)~10月11日(日) |
| 場所 | サントリーホール屋上「ルーフガーデン」(通常非公開) |
| 天候 | 小雨決行、荒天中止 |
| 飲食 | 飲食物の持ち込み可(アルコールを除く) |
| 問い合わせ | アークヒルズ インフォメーション 03-6406-6664 |
2026年の秋季公開は10月11日に終了しました。サントリーホール屋上のルーフガーデンは通常非公開で、一般公開は年に数回行われます。次回の日程はアークヒルズ公式サイトで案内されます。
常時開放のメインガーデンも秋の草花を楽しめる
ルーフガーデンとは別に、アーク森ビル周辺のメインガーデンは常時開放されています。訪問時にはシュウメイギクなどの秋の草花が咲いていました。特別公開日以外でも散策できる庭として利用できます。

ルーフガーデンを見ると、アークヒルズの都市計画も見えてくる
サントリーホールの屋上庭園は、アークヒルズの都市計画を象徴する空間です。オフィス、住宅、ホテル、音楽ホールを高密度に集めながら、建物の屋上や空地へ緑を戻す考え方が1986年の開業時から採られました。
周辺の土地が江戸の武家地から近代の邸宅・大使館街、そして再開発地区へ変わった経緯は、六本木1丁目の歴史で詳しくたどれます。ルーフガーデンは、その大規模再開発が「建物を建てる」だけで終わらず、完成後も緑を育て続けてきたことを実際に歩いて見られる場所です。

