1977年に地球を離れたVoyager 1(ボイジャー1号)とVoyager 2(ボイジャー2号)は、2026年8月現在もNASAが運用する現役の探査機です。両機は太陽が作る「太陽圏」を越え、星と星の間に広がる星間空間を飛びながら観測データを送っています。Voyager 1は人類が作った物体のうち最も遠くにあります。
太陽圏を越えて星間空間へ入った後も、太陽系の重力的な外縁はさらに遠くまで続きます。太陽の重力に結び付いた天体が広がるオールトの雲まで含めると、太陽系の外縁はVoyagerよりはるか先です。NASAはVoyager 1がオールトの雲へ入るまで約300年、外縁を抜けるまで約3万年かかると説明しています。
NASAの無料3Dツール「Eyes on the Solar System」では、Voyager 1・2の現在位置だけでなく、1977年以来の軌跡と今後の進行方向を自分でたどれます。約50年の旅を、太陽系の地図の上で追ってみましょう。

ボイジャーとは何をする探査機だった?
Voyager 1とVoyager 2は、NASAが外惑星探査のために開発した双子の探査機です。Voyager 2は1977年8月20日、Voyager 1は同年9月5日に打ち上げられました。番号順と打ち上げ順が逆なのは、Voyager 1がより速い軌道を通って先に木星へ到達する計画だったためです。実際、Voyager 1は1977年12月15日にVoyager 2を追い越しました。
当初の主目的は「ひたすら遠くへ飛ぶこと」ではなく、木星と土星を近くから観測することでした。Voyager 1は木星と土星を訪れ、Voyager 2は木星、土星に続いて天王星と海王星まで到達しました。天王星と海王星を間近で観測した探査機は、2026年現在もVoyager 2だけです。
惑星探査を終えた後、両機の任務はVoyager Interstellar Missionへ移りました。現在は惑星の撮影ではなく、太陽圏の外側にある磁場、宇宙線、プラズマ波などを測っています。
なぜ2機をほぼ同時に飛ばした?
1970年代後半から1980年代にかけて、木星、土星、天王星、海王星を効率よく巡れる珍しい幾何学的配置が訪れました。NASAによると、このような機会は約175年に一度です。惑星が一直線に並んだのではなく、探査機が一つの惑星から次の惑星へ重力アシストで進みやすい位置関係になりました。
重力アシストでは、惑星の重力を利用して探査機の進行方向と速度を変えます。大規模な追加推進剤を積まずに次の惑星へ向かえるため、Voyager 2は木星→土星→天王星→海王星という「Grand Tour」を実現しました。NASAは、この方法によって海王星までの所要時間を約30年から12年へ短縮できたと説明しています。
Voyager 1は土星で衛星Titan(タイタン)への接近観測を優先しました。その軌道変更で惑星が並ぶ黄道面から北側へ外れ、以後は外惑星の並びから離れる方向へ進みました。2機を異なる軌道へ送ったことで、Titanの詳細観測と四つの巨大惑星の探査を分担できました。
Voyager 1とVoyager 2はどこを通った?
Voyager 1の経路
- 地球を出発
- 木星を近接観測
- 土星を近接観測
- Titanへ接近
- 惑星が主に回る面から北側へ外れる
- 2012年にヘリオポーズを通過し、星間空間へ
Voyager 2の経路
- 地球を出発
- 木星を近接観測
- 土星を近接観測
- 天王星を近接観測
- 海王星を近接観測
- 2018年にヘリオポーズを通過し、星間空間へ
先に打ち上げられたのはVoyager 2ですが、Voyager 1はより速い軌道で進み、1977年末には先行しました。現在も2機は別々の方向へ飛び続けています。NASA Eyesで表示すると、同じ場所へ向かう双子ではなく、太陽から大きく異なる方向へ離れていく2本の軌跡として見えます。
ボイジャーは何を発見した?
Voyager計画は、外惑星とその衛星について多くの発見をもたらしました。木星では薄い環が見つかり、衛星イオでは地球以外の天体で初めて活発な火山活動が確認されました。土星では環が単純な一枚板ではなく、細い環や隙間が複雑に重なる構造であることが詳しく分かりました。
Voyager 2は天王星で新しい衛星や環を発見し、傾いた磁場を観測しました。さらに1989年、海王星へ到達して「大暗斑」と呼ばれた巨大な大気現象を撮影し、衛星トリトンを詳しく観測しました。Voyager 2は現在まで天王星と海王星を訪れた唯一の探査機です。

ボイジャーはいまどこにいる?
2026年8月23日時点で、Voyager 1とVoyager 2はともに星間空間を飛行しています。Voyager 1は人類が作った物体として最遠です。NASAの「Where Are Voyager 1 and 2 Now?」には両機の現在位置を更新表示する3D可視化があり、実際の位置をNASA Eyesで確認できます。
NASAはVoyager 1が2026年11月18日、地球から25,902,068,356kmに到達する予定だと発表しています。これは光が24時間で進む距離、1光日に相当します。人類が作った物体が地球から1光日の距離へ達するのは初めてです。
1光日は時間ではなく、ここでは距離の尺度です。地球から送った電波がVoyager 1へ届くまで約24時間、探査機からの返答が地球へ戻るまでさらに約24時間という規模になります。通信設備やリアルタイム通信の詳しい仕組みは、シリーズ第5回で扱います。
「星間空間に入った」と「太陽系を出た」は違う
太陽からは、電気を帯びた粒子の流れ「太陽風」が吹き出しています。太陽風と太陽磁場の影響が作る巨大な泡状領域が太陽圏です。その外縁にある境界がヘリオポーズで、そこを越えると星間空間へ入ります。
Voyager 1は2012年8月25日、Voyager 2は2018年11月5日にヘリオポーズを通過しました。両機は太陽圏の外で運用された唯一の探査機です。現在の観測対象は、太陽風の泡の外にある星間空間の環境です。

この模式図は、NASAが2012年に制作した太陽圏の構造図です。2026年現在のVoyager 1・2の正確な位置は、NASA Eyesの更新表示で確認できます。
星間空間へ入った後も、太陽の重力に結び付いた天体群はさらに遠くまで続きます。その最外部と考えられているのがオールトの雲です。Voyagerは太陽圏を越えて星間空間へ入りましたが、太陽系の重力的な外縁までは長い距離が残っています。
太陽系の「果て」はどこ?
「太陽系の果て」は、何を境界とするかで距離が変わります。初心者向けには、惑星の領域、太陽風が支配する太陽圏、太陽重力の影響下にあるオールトの雲という三つのスケールに分けると整理しやすくなります。
- 惑星の領域:最も遠い惑星の海王星は太陽から約30 AUです。
- 太陽圏:太陽風が作る泡状の領域で、外縁のヘリオポーズを越えると星間空間です。
- オールトの雲:太陽重力に結び付いた氷天体が広がると考えられる、太陽系の最外部です。
AU(天文単位)は太陽系の距離を表すときに使われ、1 AUは地球と太陽の平均距離、約1億5,000万kmです。NASAが2025年に更新したOort Cloud Factsでは、オールトの雲の内縁を約2,000〜5,000 AU、外縁を約10,000〜100,000 AUとしています。
オールトの雲は、長周期彗星の軌道などから存在が推定される、氷天体が球殻状に広がる領域です。NASAはVoyager 1が現在の速度で進んでも内縁へ入るまで約300年、外縁を抜けるまで約3万年かかると見積もっています。太陽圏を越えることと、太陽系の重力的な外縁を越えることには大きなスケール差があります。
NASA Eyes on the Solar Systemでボイジャーを追う
NASA Eyes on the Solar Systemは、NASA/JPLが公開する無料の3D太陽系可視化ツールです。惑星、衛星、探査機の位置や軌道を立体表示でき、ブラウザから利用できます。VoyagerのNASA現在位置ページにはVoyager 1・2それぞれのEyes表示への導線があり、現在だけでなく1977年からの過去と今後の進行方向を確認できます。
2026年8月23日に確認した現行版では、NASAのVoyager現在位置ページから各探査機の3D表示へ入り、時間を巻き戻したり早送りしたりして1977年から将来までの位置を追えます。Voyager 1・2は2026年4月に追加された「Trajectory」表示にも対応しており、左側の「View Options」→「Camera View」→「Trajectory」からミッション全体の軌跡を表示できます。英語UIですが、NASA公式FAQでは、現行のWeb版Eyesはモバイルフォン、タブレット、デスクトップ、ノートPCなど、モダンブラウザを備えた端末で利用できると案内しています。
Voyagerの現在位置ページから入ると、探査機を自分で探す手間を減らせます。NASA Eyes本体はこちらです。
Eyesで1977年から現在まで飛んでみる
- NASAの「Where Are Voyager 1 and 2 Now?」を開き、Voyager 1の3D表示へ進みます。
- まず現在位置を表示し、太陽からどれほど離れているかを確認します。
- 画面をズームアウトして太陽系全体を見渡し、地球や外惑星の軌道とVoyager 1の位置を比べます。
- 時間操作で1977年へ戻し、地球を離れた直後の位置を見ます。
- 1979年へ進め、木星へ接近する軌跡を追います。
- 1980年へ進め、土星とTitanへの接近後に惑星の軌道面から外れていく方向を確認します。
- 時間を現在へ進め、太陽から離れ続ける軌跡を追います。
- Voyager 2の3D表示へ切り替えます。
- 1979年の木星、1981年の土星、1986年の天王星、1989年の海王星を順に追います。
- 現在へ進め、Voyager 1とは別方向へ向かっていることを確認します。
- 太陽系全体が見える縮尺で両機の進行方向を比べます。
- 時間を将来へ進められる範囲で動かし、現在の軌道がそのまま恒星間空間へ続いていく様子を見ます。
年代を動かすと、Voyager 1とVoyager 2の違いが距離の数字だけでなく「進んだ経路」として分かります。Voyager 1はTitan観測後に外惑星の並ぶ面から北側へ、Voyager 2は海王星まで巡った後に南側へ向かいます。
約50年前の探査機は、いま何を観測している?
2026年8月23日時点でNASAが公表している最新のInstrument Statusでは、Voyager 1で稼働している科学機器は磁力計(MAG)とプラズマ波サブシステム(PWS)の2系統です。宇宙線サブシステム(CRS)は2025年2月25日、低エネルギー荷電粒子(LECP)は2026年4月17日に節電のため停止しました。
Voyager 2では、宇宙線サブシステム(CRS)、磁力計(MAG)、プラズマ波サブシステム(PWS)の3系統が稼働しています。LECPは2025年3月24日、プラズマ科学装置(PLS)は2024年9月26日に節電のため停止しました。
両機の撮像系カメラは惑星探査を終えた後に停止しており、Voyager 1は1990年、Voyager 2は1989年以降、惑星写真を撮り続けている探査機ではありません。現在の主な科学は、星間空間の磁場、宇宙線、プラズマ波などの環境測定です。太陽圏の外を実際に通過して得られる観測値は、約50年前の機体だからこそ可能になった科学でもあります。
なぜ約50年も動き続けられる?
Voyagerは太陽電池ではなく、RTG(Radioisotope Thermoelectric Generator、放射性同位体熱電気転換器)を3基搭載しています。RTGは放射性物質の崩壊で生じる熱を電気へ変える装置です。太陽から遠ざかって太陽光が弱くなっても発電できるため、外惑星や星間空間の探査に向いています。
発電能力は時間とともに低下します。NASAによると、Voyager 1・2はそれぞれ毎年およそ4Wずつ利用できる電力が減っています。ミッションチームは科学機器、ヒーター、不要になった装置を順次停止し、残った電力を重要な機能へ回してきました。
NASAは2026年8月4日、Voyager 2で「Big Bang」と呼ばれる節電措置に成功したと発表しました。複数の電力機器を同時に停止し、より低消費電力の代替系へ切り替えることで余力を確保したものです。この措置により、Voyager 2の3つの科学機器を従来の見込みより少なくとも約1年長く運用できる見通しです。
NASAは同様の措置をVoyager 1にも今後実施する計画です。2026年8月23日までにNASA Voyager Blogで実施完了の新しい発表は確認されていません。
ボイジャーからの通信が途絶えたら旅は終わる?
科学ミッションの終了と、探査機そのものの飛行は別です。発電量がさらに低下し、観測機器や通信系を維持できなくなれば、地球へ科学データを送る活動は終わります。それでも宇宙空間では大気抵抗のような力がほとんどないため、Voyager 1・2は慣性で飛び続けます。
NASAのFAQによると、Voyager 1は西暦40272年ごろ、こぐま座の恒星AC+79 3888へ約1.7光年まで接近します。Voyager 2は約4万年後、アンドロメダ座の恒星Ross 248へ約1.7光年まで近づきます。通信が終わっても、探査機は太陽から離れる軌道を進み続けます。
地球との通信は2026年現在も続いています。距離が大きいため信号伝達には長い時間がかかります。Deep Space Networkの施設や通信の仕組み、DSN Nowの見方は、シリーズ第5回「NASAは今、宇宙の誰と通信している?DSN Nowで深宇宙通信を追う」で詳しく解説しています。
ゴールデンレコードには何が入っている?

Voyager 1とVoyager 2には、それぞれ1枚のゴールデンレコードが搭載されています。直径12インチの金メッキ銅製レコードで、カール・セーガンらの委員会が内容を選びました。NASAは地球の生命と文化を伝える「一種のタイムカプセル」と説明しています。
収録内容は地球の画像115点、波や風、雷、鳥、クジラなどの自然音、55言語のあいさつ、約90分の世界各地・各時代の音楽です。当時の米大統領ジミー・カーターと国連事務総長クルト・ヴァルトハイムのメッセージも含まれます。保護カバーにはレコードの再生方法や、地球の位置を示すための図が刻まれました。
ゴールデンレコードは、誰かが必ず発見することを前提にした通信装置ではなく、地球と人類を表すメッセージを長い時間へ託したものです。NASAのGolden Record Imagesページでは収録画像の一部に第三者著作権が残ることが明記されているため、ここではNASA/JPL制作の制作過程写真を掲載しています。
よくある質問
Voyager 1とVoyager 2はどちらが遠い?
Voyager 1です。人類が作った物体として最も遠い場所を飛んでいます。
Voyager 2の方が先に打ち上げられたのに、なぜVoyager 1が遠い?
Voyager 1がより速く短い軌道を通ったためです。1977年12月15日にVoyager 2を追い越しました。
ボイジャーはもう太陽系の外?
両機は太陽圏を越えて星間空間にいます。太陽の重力的な外縁をオールトの雲の外側まで含めると、太陽系を完全に出るまでにはさらに非常に長い時間がかかります。
星間空間とはどこ?
太陽圏の外側に広がる、星と星の間の空間です。Voyager 1は2012年、Voyager 2は2018年にヘリオポーズを通過しました。
Voyager 1はいつ1光日に到達する?
NASAは2026年11月18日に到達予定としています。距離は地球から25,902,068,356kmです。
ボイジャーはいまも写真を撮っている?
撮像系はVoyager 1で1990年、Voyager 2で1989年に停止しました。現在は磁場、宇宙線、プラズマ波などを観測しています。
現在もNASAと通信している?
はい。2026年8月現在も両機との通信は続いています。
ボイジャーの電源は何?
3基のRTGです。放射性物質の崩壊熱を電気へ変えるため、太陽光が非常に弱い場所でも発電できます。
いつまで科学観測できる?
利用可能な電力は毎年減っており、NASAは機器を順次停止して延命しています。Voyager 2は2026年8月の節電措置で、3つの科学機器を従来見込みより少なくとも約1年長く保てる見通しです。
通信が終わったら探査機は止まる?
通信や科学観測が終わった後も、探査機そのものは慣性で飛行を続けます。
オールトの雲まで何年かかる?
NASAはVoyager 1が内縁へ入るまで約300年、外縁を抜けるまで約3万年と見積もっています。
ゴールデンレコードは宇宙人に届く?
特定の相手へ届ける計画ではありません。将来どこかで発見される可能性に託した、地球を紹介するメッセージ兼タイムカプセルです。
NASA Eyesは無料?
無料で利用できるNASA/JPLのブラウザ型3D可視化ツールです。
スマートフォンでVoyagerの現在位置を見られる?
Webページはスマートフォンのブラウザから開けます。細かな時間操作や太陽系全体の比較は画面の広いPCやタブレットの方が行いやすいです。
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