大丸有(大手町・丸の内・有楽町)の歴史散歩|将門塚・近代建築・夜景を歩く

大手町・丸の内・有楽町を合わせた「大丸有だいまるゆう」は、皇居と東京駅の間に広がる東京有数のビジネス街です。江戸時代の大名屋敷、明治期の官庁街と煉瓦造りのオフィス街、戦後の占領期、そして現在の大規模再開発まで、数百メートル歩くだけで東京の都市史が重なって見えます。

今回の女子限定の歴史散歩では、大手町から丸の内、有楽町へ歩きながら、将門塚、日本工業倶楽部会館、丸ビル、明治生命館、第一生命館、東京国際フォーラム周辺などを巡ります。夜の街並みやライトアップされた建築も楽しめるため、歴史を知りたい方だけでなく、歩くこと自体を楽しみたい方にも向いたコースです。

2023年8月7日開催レポート|7名で大丸有の夜景と歴史建築を散歩

2023年8月7日(月)19時30分から、女子会企画「大丸有(大手町・丸の内・有楽町)エリアできれいな建物と夜景をみながら歴史散歩」を開催しました。参加者は7名。大手町から丸の内、有楽町方面へ歩きながら、歴史スポットや近代建築を巡る夜の街歩きです。

今回のコース概要

記事内で紹介している将門塚、日本工業倶楽部会館、丸ビル周辺、明治生命館、第一生命館、東京国際フォーラム周辺などをたどりました。大丸有は江戸城周辺の歴史、明治以降の近代建築、戦後史、現在のオフィス街が近い範囲に重なるエリアです。夜は建物の照明や高層ビルの明かりも加わり、歴史をたどりながら景観も楽しめる散歩になりました。

以下では、当日巡った場所を中心に、大手町・丸の内・有楽町の歴史背景と見どころを紹介します。実際の街歩きで目にした建物や史跡を、現在の風景とあわせてたどっていきます。

大手町・丸の内・有楽町の大丸有エリア地図

大丸有とは|江戸の武家地から日本を代表する業務地区へ

「大丸有」は、大手町・丸の内・有楽町の頭文字を合わせた呼び方です。大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会も、この一帯を「大丸有地区」と呼んでいます。江戸時代は江戸城の正面に近い武家地で、大名や旗本の屋敷が並んでいました。

明治維新後、大手町は官庁街へ、丸の内は軍用地を経て民間のオフィス街へと性格を分けていきます。丸の内では1890年に三菱へ土地が払い下げられ、1894年に三菱一号館が完成。赤煉瓦の建物が並ぶ街並みは「一丁倫敦」と呼ばれました。1914年の東京駅開業後には大型オフィスビルが増え、アメリカ式の建物が並ぶ景観は「一丁紐育」と呼ばれるようになります。

丸の内の主なビルと街並み

江戸期の大名屋敷配置を古地図から詳しく見たい方は、正保年中江戸絵図で見る大手町・丸の内もあわせて楽しめます。東京駅と丸の内の発展については、東京駅の歴史と建築を徹底解説で詳しく紹介しています。

大手町|官庁街から金融・情報の中枢へ

大手町の地名は、江戸城の正門にあたる大手門の前に位置することに由来します。明治以降は大蔵省、内務省、文部省、印刷局などが置かれ、近代国家を支える官庁街になりました。戦後は国有地の払い下げが進み、新聞社、銀行、商社、経済団体などが集まる業務地区へ変化していきます。

現在の大手町を理解する鍵が「連鎖型都市再生」です。業務を止めにくい企業が多い大手町では、空いた敷地に新しいビルを建て、そこへ既存ビルの企業が移転し、空いた敷地を次の建て替えに使う方法が採られました。UR都市機構は、老朽化した建物を業務活動を中断せず連鎖的に建て替えるプロジェクトとして紹介しています。

第1次事業では大手町合同庁舎跡地に日本経済新聞社、JA各団体、日本経済団体連合会などが移転。その後、大手町フィナンシャルシティ、大手町フィナンシャルシティグランキューブなどへ連鎖が続き、常盤橋街区のTOKYO TORCHへつながりました。常盤橋タワーは2021年に竣工し、Torch Towerは2028年の完成予定です。

大手町の成り立ちをさらに詳しく知りたい方は、大手町の歴史をわかりやすく解説も参考になります。

箱根駅伝のスタート地点|ビジネス街に残る正月の風景

大手町には箱根駅伝の往路スタート地点と歴代優勝校の銘板があります。高層ビルが並ぶオフィス街の一角に、毎年正月の大きなスポーツイベントの記憶が刻まれている場所です。

大手町にある箱根駅伝の往路スタート地点

将門塚|大手町に残る平将門の旧跡

高層ビルの間にある将門塚は、東京都指定旧跡です。平将門たいらのまさかどは平安時代中期、関東で勢力を広げた武将で、940年に討たれました。将門にまつわる伝承は江戸でも広く知られ、神田明神では祭神の一柱として祀られています。

周囲の街が再開発で大きく変わっても、この場所は大手町の歴史を象徴する旧跡として残っています。近代的なオフィス街の中心で中世の記憶に触れられる、大手町らしい歴史スポットです。

大手町の将門塚

日本工業倶楽部会館|大正期の財界を伝える建築

東京駅の北側に建つ日本工業倶楽部会館は、1920年に完成しました。設計は横河民輔よこがわたみすけ、松井貴太郎ら。日本では数少ない本格的なセセッション様式の建物で、正面屋上には坑夫と織女を表す人像が置かれています。石炭と紡績という当時の主要産業を象徴する意匠です。

建て替えにあたっては旧会館の西側部分や主要な内部空間が保存・再現され、2003年に新会館が竣工しました。超高層ビルと大正期の外観が一体になった姿から、丸の内で歴史的建築を残しながら更新する手法を見ることができます。

丸の内の日本工業倶楽部会館

丸ビルの松杭|旧丸ビルを支えた基礎の記憶

1923年に完成した旧丸ノ内ビルヂングは、当時の東京を代表する大型オフィスビルでした。現在の丸ビルへ建て替えられたあとも、旧建物の基礎に使われた松杭が展示され、丸の内の地盤と建築技術を伝えています。街を上から眺めるだけでは見えない、近代都市を足元から支えた痕跡です。

旧丸ノ内ビルヂングの基礎に使われた松杭の展示

丸の内の近代建築をまとめて歩きたい方には、丸の内の歴史と建築散歩も参考になります。

明治生命館|昭和初期の古典主義建築

皇居外苑に面する明治生命館は、1934年に竣工しました。設計は建築家の岡田信一郎おかだしんいちろう。列柱が並ぶ重厚な外観と端正な内部空間を持ち、1997年には昭和期の建築として初めて国の重要文化財に指定されました。

戦後の1945年から1956年までアメリカ極東空軍司令部として接収され、2階の会議室は1952年まで対日理事会の会場として使われました。現在は1・2階の一部が一般公開され、建物の歴史と建築を見学できます。

国の重要文化財に指定されている明治生命館

第一生命館|GHQ本部と占領期の東京

日比谷側に建つ第一生命館は1938年に完成し、戦後は連合国軍総司令部(GHQ)の庁舎として接収されました。マッカーサーが使用した6階の旧社長室は「マッカーサー記念室」として保存されています。第一生命の資料によると、室内は英国チューダー王朝風で、内装や調度品は当時の姿を伝えています。

同館にはGHQ民政局も置かれ、日本国憲法の原型となるGHQ草案が作成された場所の一つとして知られています。丸の内・日比谷の重厚な近代建築は、企業の本社建築であると同時に、戦後日本の政治史とも深く結びついています。

旧第一生命館を含む第一生命日比谷ファースト

東京国際フォーラム|東京府庁・都庁の記憶と太田道灌像

東京国際フォーラムの敷地には、1894年から東京府庁がありました。1943年に東京都が発足すると都庁となり、戦後には丹下健三設計の都庁舎が建設されます。都庁が新宿へ移転した後、跡地に東京国際フォーラムが整備されました。

ガラス棟には、彫刻家・朝倉文夫あさくらふみおによる太田道灌おおたどうかん像があります。道灌は15世紀に江戸城を築いた武将として知られ、近代の都庁跡地にその像が残ることで、江戸以前から現代までの東京の時間が一地点に重なります。

東京国際フォーラム周辺の太田道灌像と旧東京府庁・都庁の記憶

有楽町|昭和のオフィス街から次の再開発へ

有楽町では、1966年竣工の有楽町ビルと1967年竣工の新有楽町ビルが2023年に閉館しました。長く駅前の景観をつくってきた二つのビルの跡地では、新しい街づくりが進んでいます。

三菱地所は2026年9月、跡地で「YURAKUCHO PARK」の新築工事を開始しました。地下の既存躯体を生かしながら人工地盤をつくり、その上に木造建築群を整備する計画で、2027年の竣工・開業が予定されています。昭和のビルが消えたあと、次の恒久開発までの時間も街の一部として活用する点が、有楽町再構築の現在地です。

帝国劇場の建て替え|有楽町の文化拠点も更新期へ

有楽町の帝国劇場は2025年2月に建て替えのため一時休館しました。丸の内・有楽町では、オフィスだけでなく劇場や美術館などの文化施設も再整備の時期を迎えています。明治生命館や日本工業倶楽部会館のような保存・継承の手法と、新しい都市開発が同じエリアで並行している点も大丸有の特徴です。

夜に歩くと見えやすい大丸有の魅力

大丸有は、赤煉瓦の東京駅、石造風の近代建築、ガラス張りの高層ビルが近い距離に並びます。日が落ちると建物の輪郭や照明が強調され、昼とは違う街の層が見えます。大手町から有楽町まで歩けば、江戸の旧跡、明治・大正・昭和の建築、戦後史、現代の再開発を一続きの散歩でたどれます。

TimeWalkで大丸有の史跡を地図から探す

散歩の前後に周辺の史跡を探したいときは、Webアプリ「TimeWalk」が使えます。現在地や指定した地点の近くにある歴史スポットを地図で探し、自分のペースで歴史散歩を楽しめます。現在地から歩ける史跡を地図で探す。

参考資料