【開催レポート】牧野記念庭園で牧野富太郎の生涯と植物分類学を学びました

牧野記念庭園の「らんまん」関連展示を見学する参加者

2024年3月9日、東京都練馬区の練馬区立牧野記念庭園で「【牧野記念庭園】牧野富太郎の生涯と植物分類学の歴史を学びます」を開催しました。参加者は7名。植物学者・牧野富太郎まきの とみたろうが晩年を過ごした旧居跡で、庭園の植物、記念館の資料、書斎展示を行き来しながら、植物を「見る」ことと「分類・記載する」ことがどう結びついてきたのかを学ぶ回となりました。

庭園では春の花も見られ、参加者は資料を手に枝や芽へ近づき、写真を撮りながら観察しました。室内では標本や著作、研究道具、蔵書などから牧野の研究生活をたどりました。

牧野記念庭園入口付近で咲く桜と参加者
青空の下、庭園入口付近の桜を眺めながら見学を始めました。

今回の見学概要

今回の中心は牧野記念庭園と記念館です。西武池袋線・大泉学園駅から徒歩約5分の場所にあり、牧野が1926年から1957年に亡くなるまで暮らした居宅と庭の跡が保存されています。庭園と展示を一続きに見ることで、人物史だけでなく、植物観察、標本、図鑑、分類学という牧野の仕事を具体的にたどれるのが大きな特徴です。

練馬区立牧野記念庭園の入口と「らんまん」関連のぼり
牧野富太郎が晩年を過ごした旧居跡、練馬区立牧野記念庭園の入口。

牧野富太郎と牧野記念庭園

牧野富太郎は1862年、現在の高知県佐川町に生まれました。幼少期から植物に親しみ、1884年に上京して東京大学理学部植物学教室に出入りし、植物分類学の研究を深めます。1889年にはヤマトグサを新種として命名・発表しました。高知県立牧野植物園によれば、生涯で40万枚を超える押し葉標本を集め、1,500種類以上の植物に学名を付け、1940年には『牧野日本植物図鑑』を刊行しています。

植物分類学では、植物を観察し、形態などの特徴を比較し、既知の植物との関係を検討して学術的に記録していきます。牧野の仕事は、野外で植物を採集するところから、標本を残し、文献を調べ、植物図を描き、特徴を記載して名前を整理するところまでつながっていました。国立科学博物館にも、日本の植物相を解明するために集められた標本群が蓄積されており、1925年には牧野富太郎と根本莞爾による『日本植物総覧』が刊行されています。

牧野記念庭園の牧野富太郎胸像を見学する参加者
園内の牧野富太郎博士の胸像。植物に囲まれた庭園で博士の足跡をたどります。

現在の牧野記念庭園は、牧野が1926年から約30年間暮らした居宅と庭の跡です。1958年に区立庭園となり、現在は「牧野記念庭園(牧野富太郎宅跡)」として東京都指定文化財になっています。園内にはスエコザサ、センダイヤ、ヘラノキ、ダイオウマツなど300種類以上の植物が育ち、記念館では植物標本、著書、顕微鏡などを見ることができます。

牧野記念庭園の見ごろ植物案内と富太郎コーヒー案内
園内の「見ごろの植物」案内。季節ごとの植物を探しながら歩けます。

この場所の面白さは、牧野を過去の人物として展示だけで学ぶのではなく、実際の植物をすぐそばで見られることです。開催日も「見ごろの植物」の案内を参考にしながら園内を巡りました。

牧野記念庭園で植物を観察する参加者
資料を手に、枝や芽の特徴を近くで観察する参加者。

参加者も資料と実物を見比べながら観察しました。図鑑に載っている植物名だけを覚えるのではなく、枝ぶりや芽、葉、花といった特徴に目を向けると、分類学者が何を手掛かりに植物を見てきたのかが少し身近になります。

牧野記念庭園で咲く春の桜
開催日の庭園を彩っていた桜。植物を実際に観察する時間も今回の見どころです。

記念館でたどる研究と植物採集

記念館では、牧野の植物採集や研究活動に関する資料を見学しました。牧野は全国各地を歩いて植物を調べ、標本と記録を積み重ねました。植物を採集して終わるのではなく、標本として保存することで、後から特徴を比較したり、別の研究者が再検討したりできる学術資料になります。

牧野記念庭園記念館の展示を見学する参加者
記念館の展示資料から、牧野富太郎の植物採集と研究の歩みを学びました。

展示をじっくり読むと、一人の植物好きの生涯が、そのまま近代日本の植物分類学の発展と重なって見えてきます。牧野は研究だけでなく、図鑑や観察会などを通して植物知識の普及にも力を注ぎました。現在も読み継がれる『牧野日本植物図鑑』は、その仕事を象徴する成果の一つです。

牧野富太郎の書斎展示と蔵書を見学する参加者
多数の蔵書や研究資料が並ぶ書斎展示。研究生活を具体的に想像できます。

蔵書や書斎の展示からは、野外観察だけでは完結しない研究の日常も伝わってきます。採集した植物を既存の文献や標本と比較し、記載をまとめるには大量の資料が必要です。牧野の蔵書は約4万5千冊に及んだとされ、庭園に残る書斎は、その膨大な調査と執筆が行われた生活空間を想像させます。

テレビドラマ「らんまん」

NHK連続テレビ小説『らんまん』は、牧野富太郎をモデルとした主人公・槙野万太郎が植物学の道を歩む物語として、2023年度前期に放送されました。ドラマは史実をそのまま再現した伝記ではなく、牧野をモデルにしたフィクションです。そのため、ドラマの人物や出来事と、実在した牧野富太郎の経歴は分けて捉える必要があります。

牧野記念庭園の「らんまん」関連展示を見学する参加者
牧野富太郎をモデルとした連続テレビ小説『らんまん』に関連する展示も見学しました。

開催時の牧野記念庭園には『らんまん』に関連する展示もあり、参加者はこちらも見学しました。ドラマを入口に牧野へ興味を持った人にとって、旧居跡で実際の研究資料や植物を見ることは、モデルとなった人物の仕事を史実へ戻って学ぶ機会になります。

庭園だから分かる、牧野富太郎の植物へのまなざし

今回の見学では、展示ケースの資料だけでなく、庭園の植物そのものを観察できました。植物分類学は名前の暗記ではありません。どこが似ていて、どこが異なるのかを丁寧に観察し、標本や文献と照合しながら植物を理解していく学問です。牧野が暮らした場所で植物と研究資料を続けて見ることで、その営みを立体的に感じられました。

7名で植物を眺め、気になるところで立ち止まり、展示を読み進める時間は、歴史散歩と自然観察の両方を楽しめるものになりました。春の花が庭園を彩る時期だったこともあり、牧野が生涯向き合った「まず植物そのものを見る」という姿勢を体験しやすい一日でした。

牧野記念庭園を訪れるときのポイント

牧野記念庭園は練馬区東大泉6丁目34番4号、西武池袋線・大泉学園駅から徒歩約5分です。植物は季節によって姿が変わるため、一度訪れて終わりではなく、時期を変えて歩く楽しみがあります。園内の植物と記念館の資料を往復して見ると、牧野の研究がより分かりやすくなります。開園日・展示内容など最新情報は、訪問前に練馬区および牧野記念庭園の公式案内をご覧ください。

TimeWalkで身近な歴史スポットを探す

牧野記念庭園の見学をきっかけに大泉学園周辺や身近な地域の歴史も歩いてみたい方には、ゆる歴史散歩会のWebアプリ「TimeWalk」も便利です。現在地や指定地点の近くにある歴史スポットを地図で探し、自分で歴史散歩を楽しめます。

現在地から歩ける史跡を地図で探す

まとめ

牧野記念庭園は、牧野富太郎という人物の生涯、植物分類学の研究、そして実際の植物を同じ場所で結びつけて学べる場所です。ドラマ『らんまん』をきっかけに牧野を知った人にも、植物や科学史に興味がある人にも、多くの入口があります。今回も庭園と展示を行き来しながら、歴史資料を読むだけでは得にくい「植物を観察する時間」を楽しむ開催となりました。

参考資料