本郷から西片を抜け、白山へ向かう夜の歴史散歩です。東京大学の赤門と正門、徳田秋聲旧宅、西片の坂道、白山三業地、白山神社までをたどると、江戸の大名屋敷から近代の大学・文学者の町、旧花街へと移り変わった文京区の歴史が一本の道としてつながります。

本郷から白山へ歩くルート
出発は東京大学本郷キャンパス周辺です。赤門、正門を見たあと、本郷6丁目の徳田秋聲旧宅へ向かいます。そこから西片を歩き、清水橋、曙坂を経て白山へ下り、旧白山三業地を抜けて白山神社を目指します。
- 東京大学赤門
- 東京大学正門
- 徳田秋聲旧宅
- 清水橋
- 曙坂
- 白山三業地
- 白山一丁目児童遊園周辺
- 白山神社
本郷一帯をより広く歩くなら、本郷歴史散歩ガイドもあわせて読むと、文学と学問の街としての背景がつかみやすくなります。
東京大学赤門|加賀藩前田家の御守殿門
東京大学の赤門は、旧加賀藩前田家上屋敷の御守殿門です。1827年、11代将軍徳川家斉の娘・溶姫が加賀藩主前田斉泰に輿入れする際に建てられました。将軍家の娘を迎える屋敷に設けられる御守殿門で、赤い塗装から「赤門」と呼ばれるようになりました。
現在の東京大学本郷キャンパスには、江戸時代の加賀藩邸の痕跡が各所に残っています。赤門はその代表で、本郷という土地が大学の街になる以前、大名屋敷の街だったことを伝えています。
東京大学公式案内では、赤門は保存修理と耐震対策のため閉門中です。2025年11月に工事が始まり、2027年秋ごろまでの予定とされています。
東京大学正門|近代大学の顔として造られた門
赤門から北へ進むと東京大学正門があります。正門は1912年に完成し、建築家の伊東忠太が設計しました。江戸時代の大名屋敷の門である赤門に対し、正門は近代の大学として新たに整えられた門です。
赤門と正門を続けて見ると、本郷の土地が大名屋敷から帝国大学へ変わった時間の差がわかります。東京大学周辺を詳しく歩いた記録は、東京大学本郷キャンパスを巡る夜散歩にもまとめています。
徳田秋聲旧宅|本郷に残る文学者の暮らし
東京大学を離れて本郷6丁目へ進むと、徳田秋聲旧宅があります。秋聲は自然主義文学を代表する作家の一人で、1906年から1943年に亡くなるまで、この本郷の家で暮らしました。
本郷は明治以降、多くの作家や学者が暮らした町です。大学に近く、下宿や貸家が多かったこともあり、文学者が集まりました。徳田秋聲旧宅は、その時代の本郷の住宅地の姿を今に残す史跡です。
西片|福山藩阿部家の屋敷から学者の住宅地へ
本郷から白山へ向かう途中に通る西片は、江戸時代には福山藩阿部家の丸山中屋敷があった地域です。明治以降、阿部家は土地を貸地・貸家として整え、多くの学者や文化人が暮らす住宅地へ変わりました。
現在も細い道や坂が多く、本郷の大学街とは少し違う静かな住宅地の雰囲気が残ります。関東大震災や戦災の被害が比較的少なかったため、古い街区の形も感じやすい地域です。
樋口一葉と丸山福山町
樋口一葉は1894年、本郷丸山福山町、現在の西片1丁目付近へ移りました。ここで暮らした時期に『にごりえ』『たけくらべ』『十三夜』などを発表し、1896年に24歳で亡くなっています。
一葉が暮らした時代、この周辺には遊興の町もありました。のちに成立する白山三業地とは時代が異なりますが、本郷から白山へ向かう一帯には、住宅地と盛り場が近接していました。
清水橋と曙坂|台地から白山へ下る
西片から白山へ向かうと、道は大きく下り始めます。曙坂は西片2丁目と白山側をつなぐ急な石段で、台地の上と低地を結ぶ生活路として使われてきました。
本郷・西片の高台から白山へ下りると、道幅や町並みの印象も変わります。この高低差が、本郷の武家地・学問の街と、白山側の商業地・花街を分ける地形的な境界になっていました。
白山三業地|1912年に成立した花街
白山に入ると、かつての白山三業地の範囲へ入ります。三業地とは、芸者の置屋、待合、料理屋の三業が営業した花街です。白山では1912年、小石川指ヶ谷町の一画が三業地に指定されました。
この地域は三業地に指定される以前から遊興の場として知られており、大正・昭和期には料亭や待合が並ぶ花街として発展しました。現在は多くの建物が姿を消しましたが、細い路地や街区の形に往時の名残があります。
白山三業地については、駒込から春日まで、かつて栄えた白山三業地の跡地を歩く散歩で旧料亭や花街の痕跡を詳しく紹介しています。東京各地の花街を比較するなら、東京の花街46地域も参考になります。
白山神社|本郷から白山へ移った神社
散歩の終点は白山神社です。白山神社は、伝承では平安時代に現在の本郷一丁目付近へ勧請され、その後小石川へ移り、1655年に現在地へ移されました。江戸時代の移転には、のちに5代将軍となる徳川綱吉の屋敷造営が関わっています。

本郷から歩き始め、最後に白山神社へ着くこのルートでは、神社そのものにも本郷とのつながりがあります。現在の「白山」という地名も、この神社に由来します。

白山神社と根津神社をあわせて歩く夜散歩は、根津神社と白山神社を巡る文京区の夜散歩でも紹介しています。
2025年1月27日の本郷〜白山ナイトウォーク
このルートは2025年1月27日のナイトウォークで実際に歩いたコースです。東京大学の赤門と正門から文学者の本郷へ進み、西片の坂を下って白山三業地へ入ると、同じ文京区の中でも街の成り立ちが大きく変わります。
夜は坂の高低差や路地の輪郭が昼より強く感じられます。とくに西片から白山へ下る区間は、台地と低地の切り替わりがわかりやすく、歴史と地形を同時に楽しめる道です。

