国立・一橋大学の歴史散歩|旧国立駅舎・兼松講堂・谷保の史跡を巡る

一橋大学国立キャンパスに建つ兼松講堂の正面外観

JR中央線の国立駅から旧国立駅舎、大学通り、一橋大学国立キャンパスを歩き、後半はJR南武線の谷保駅から旧本田家住宅、下谷保一号墳、谷保天満宮、城山、くにたち郷土文化館、ママ下湧水を経て矢川駅へ向かいました。前半では1920年代に始まった国立大学町と一橋大学の近代建築、後半では近代以前から続く谷保の古墳・寺社・農村景観・湧水をたどります。

主な見どころは、1926年創建の姿に再築された旧国立駅舎、伊東忠太設計の一橋大学兼松講堂、開発初期の国立大学町を伝える旧野島家住宅、7世紀前半頃の下谷保一号墳、立川段丘の縁に鎮座する谷保天満宮です。国立の街が「計画された大学町」と、古くからの谷保の集落・地形の上に成り立っていることを、実際の街並みから確認できます。

青柳(あおやぎ) 石田(いしだ) 泉(いずみ) 北(きた) 中(なか) 西(にし) 東(ひがし) 富士見台(ふじみだい) 矢川(やがわ) 谷保(やほ)

今回のコース概要|国立駅から一橋大学、谷保・矢川へ

  • 前半:12:30〜14:30。旧国立駅舎、旧野島家住宅、一橋大学国立キャンパス
  • 後半:15:00〜17:30。谷保駅、旧本田家住宅、下谷保一号墳、谷保天満宮、城山、くにたち郷土文化館、南養寺、滝乃川学園、ママ下湧水公園、矢川駅
  • テーマ:国立大学町の都市形成、一橋大学の近代建築、谷保の古墳・寺社・農村景観、立川段丘と湧水

距離は当日の記録から確認できないため記載していません。前半と後半の間は、国立駅周辺から谷保駅へ移動して別ルートとして歩いています。

国立はなぜ「大学町」になったのか

現在の国立駅南口に広がる整然とした街路は、1920年代の国立大学町開発と深く結びついています。関東大震災後、東京商科大学(現在の一橋大学)は神田一ツ橋から郊外への移転を進め、箱根土地株式会社が大学用地を含む国立大学町を開発しました。1925年には大学と箱根土地の土地交換契約が結ばれ、1926年には中央線の国立駅が開業します。駅から南へ伸びる大学通りと、その先の大学キャンパスは、駅・大学・住宅地を一体として計画した街の骨格を現在も伝えています。

国立駅の開業、一橋大学の移転、文教地区運動、ロージナ茶房へ続く街の形成史は、国立はなぜ文化の街になったのか|一橋大学とロージナ茶房が育てた学園都市の100年で詳しく紹介しています。

一橋大学の歴史|商法講習所から国立キャンパスへ

一橋大学は、森有礼が1875年(明治8年)に開いた商法講習所を源流とします。福澤諭吉や渋沢栄一も設立を支援し、商業・経済分野の人材育成を担う学校として発展しました。旧制東京商科大学時代、関東大震災後の移転によって国立に新しいキャンパスが整備されます。

国立キャンパスでは、校舎を単体で見るだけでなく、大学通りからキャンパスへ続く軸線と建物の配置を見ると、大学の移転と大学町開発が同時期に進んだことを実感できます。

堤康次郎と箱根土地|国立大学町に必要な部分だけ押さえる

堤康次郎(1889〜1964)は箱根土地株式会社を率い、郊外住宅地や鉄道沿線の開発を進めた実業家です。国立の歴史で重要なのは、箱根土地が東京商科大学の移転用地と周辺の大学町を一体的に開発したことです。

  • 1923年:関東大震災で東京商科大学の施設が被災し、郊外移転が具体化
  • 1925年:東京商科大学と箱根土地の土地交換契約が成立
  • 1926年:箱根土地が鉄道側へ用地を提供して国立駅が開業
  • 1927年:一橋大学兼松講堂が創建され、大学町の中心となる景観が形づくられていく

箱根や軽井沢などでの事業史まで追うより、国立では「大学移転・駅開業・大学町開発」の三つを結び付けて見る方が、現在の街路や建築を理解しやすくなります。

12:30〜14:30|旧国立駅舎・旧野島家住宅・一橋大学を歩く

旧国立駅舎|1926年の大学町開発を象徴する三角屋根

旧国立駅舎は1926年(大正15年)の国立駅開業時に建てられた木造駅舎です。中央線高架化に伴って2006年に解体されましたが、部材が保存され、2020年にほぼ元の場所へ創建時の姿で再築されました。現在は国立市指定有形文化財で、展示室やまち案内所を備える「まちの魅力発信拠点」として使われています。

現地では赤い三角屋根だけでなく、駅前から南へまっすぐ伸びる大学通りとの位置関係に注目します。駅舎と大通りを一緒に見ると、国立駅が既存集落の中心駅として自然発生したのではなく、大学町の玄関として計画されたことが分かります。旧国立駅舎の地図

復元された旧国立駅舎の外観
復元された旧国立駅舎、2021年。撮影:Nishifutsu/Wikimedia Commons/CC BY-SA 4.0。

旧野島家住宅|開発初期の国立大学町を伝える洋風住宅

旧野島家住宅は、元海軍大佐の野島新之丞・喜美夫妻が1927年頃に建てた住宅です。煙突やバルコニーを備えた洋風住宅で、開発が始まったばかりの国立大学町の住宅景観を伝える市登録有形文化財です。1930年代にはキリスト教関係者の集会所や町会事務所にも使われました。現在は「ル・ヴァン・ド・ヴェール」として活用されています。

一橋大学兼松講堂|伊東忠太が設計した1927年の近代建築

一橋大学国立キャンパスを代表する建築が兼松講堂です。兼松商店(現・兼松株式会社)の寄贈を受け、建築家・伊東忠太の設計で1927年(昭和2年)に創建されました。ロマネスク様式を基調とし、2000年に国の登録有形文化財となっています。

伊東忠太は築地本願寺や平安神宮などでも知られ、建物に動物や怪物を思わせる装飾を取り入れました。兼松講堂でも外壁や細部の造形を見ながら一周すると、正面外観だけでは分からない意匠を楽しめます。キャンパスでは一橋大学学園史資料室も訪問候補です。開室日は大学の最新案内を確認してください。

一橋大学国立キャンパスに建つ兼松講堂の正面外観
一橋大学兼松講堂、2019年。撮影:Kakidai/Wikimedia Commons/CC BY-SA 4.0。

多摩地域の戦争遺跡も続けて歩くなら、中島飛行機武蔵製作所の戦争遺跡と引込線跡|下野谷遺跡・田無を歩くも関連します。

15:00〜17:30|谷保駅から古墳・天満宮・城山・湧水を歩く

後半は谷保駅から矢川駅へ向かいます。国立駅周辺の計画都市とは対照的に、谷保には江戸時代以前の住宅、古墳、寺社、中世の館跡、段丘崖と湧水が残ります。国立の歴史を「大学町」だけで終わらせず、その前から続く土地の歴史までたどれる区間です。

旧本田家住宅|江戸時代の谷保を伝える都指定文化財

旧本田家住宅は谷保に残る旧家で、東京都指定有形文化財です。主屋からは享保16年(1731年)の祈祷札が見つかっており、それ以前の建築と考えられています。食い違い六間型の間取りを持つ都内最古級の遺構で、近代の大学町ができるはるか以前の谷保の暮らしを伝えます。

下谷保一号墳|7世紀前半の円墳

下谷保一号墳は直径約14メートル、高さ約2メートルの円墳で、7世紀前半頃に築かれたと推定されています。横穴式石室から直刀や鉄鏃が出土しました。石室は保存のため埋め戻されていますが、墳丘は見学できます。周辺にはほかにも古墳があり、谷保が古墳時代から人の活動が続いた地域だったことを示します。

谷保天満宮|立川段丘と旧甲州街道から見る鎮座地

谷保天満宮は菅原道真を祀る古社で、立川段丘の縁に鎮座します。境内の社叢は東京都指定天然記念物です。かつて甲州街道が段丘下を通っていた時期には、本殿・拝殿は街道に面する形でした。その後、街道が段丘上へ移ると人の流れも変わりました。現在の参道と社殿の向きを見ると、道路と集落の変化を地形から読み取れます。

境内では寛延2年(1749年)建築の本殿や鎮守の森、湧水にも注目です。谷保天満宮には13世紀後半と考えられる木造獅子狛犬や建治元年(1275年)銘の「天満宮」扁額など、国指定重要文化財も伝わります。

城山・くにたち郷土文化館・ママ下湧水|地形と水をたどる

谷保の城山歴史環境保全地域は、段丘崖を利用した中世の居館跡を含む一帯です。近くの国立市古民家・城山さとのいえ、ハケ下散策路、くにたち郷土文化館へ進むと、段丘と低地の高低差を体感できます。

さらに谷保山南養寺、滝乃川学園を経て、ママ下湧水公園へ向かいました。国立市南部では段丘崖から地下水が湧き出し、谷保天満宮の常盤の清水や郷土文化館下の湧水とともに地域の水環境を形づくっています。建築や史跡だけでなく、崖線と湧水を見ると、集落がこの場所に成立した背景までつながります。

この日の終点は矢川駅です。時間と体力に余裕があれば、さらに立川方面へ水路跡や暗渠をたどる歩き方もできます。

国立を歩くと「新しい大学町」と「古い谷保」がつながる

国立駅周辺では、1920年代の駅開業と大学移転を起点にした計画都市の姿が残ります。一方、谷保駅から矢川駅にかけては、古墳、旧家、天満宮、中世の館跡、段丘崖、湧水が近い範囲に重なっています。国立を南北に歩くと、近代に造られた大学町と、それ以前から続く谷保の歴史を一つの地域史として見ることができます。

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ゆる歴史散歩会では、東京周辺の史跡、近代建築、神社仏閣、地形などを現地で見ながら歩くイベントを開催しています。募集中の企画はイベント一覧で確認できます。歴史初心者や一人参加の方も参加できる形式です。

TimeWalkで国立周辺の歴史スポットを探す

TimeWalkは、現在地や指定地点の近くにある歴史スポットを地図で探し、自分で歴史散歩を楽しめるWebアプリです。国立・谷保周辺を自分のペースで歩くときや、イベント前後の寄り道先を探すときに利用できます。

この記事を書いた人
ゆる歴史散歩会 運営者
なかまつ

北海道大学工学部卒。現在はIT系会社員の傍ら、年間400回以上の街歩きイベントを企画し、これまで延べ25,000名以上の方にご参加いただいている、ゆる歴史散歩サークルを運営しています。東京の歴史・文化・建築・地形などを、初心者でも気軽に楽しめるイベントとして企画しています。

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