2026年8月14日(金)、ゆる歴史散歩会で「法務省旧本館赤れんが棟の見学とガイドツアー&農水省の食堂ランチ」を開催しました。参加者は16名。東京高等裁判所のロビーに集合し、霞が関に残る国の重要文化財・法務省旧本館(赤れんが棟)へ向かいました。
この日、初めて裁判所の建物に入ったという参加者が大半でした。普段は外から眺めることの多い霞が関ですが、今回は法務省旧本館の建築、法務史料展示室、メッセージギャラリーを団体ガイドツアーで見学。制度史だけでは難しく感じやすい内容も、展示史料とガイドの解説を組み合わせることで、近代日本の司法がどのように形づくられてきたのかを具体的にたどる機会になりました。
霞が関の官庁街そのものに興味がある方は、過去の「中央省庁密集地『霞が関』と日比谷公園ナイトウォーク」もあわせてご覧ください。
東京高等裁判所から法務省旧本館へ
集合場所は東京高等裁判所のロビー。裁判所という場所に初めて入った方が多く、見学前からいつもの街歩きとは少し違う空気がありました。集合後、ほど近い法務省旧本館へ移動します。

赤れんがと白い石材を組み合わせた外観は、現在の霞が関の庁舎群のなかでもひときわ目を引きます。建物をただ撮影するだけでなく、今回はガイドの説明を聞きながら、意匠や歴史的背景を確かめました。

法務省旧本館(赤れんが棟)
法務省旧本館は、明治政府が進めた官庁集中計画を物語る貴重な建築です。法務省によると、ドイツ人建築家ヘルマン・エンデとヴィルヘルム・ベックマンの設計により、7年余りをかけて1895(明治28)年12月に司法省庁舎として竣工しました。1994(平成6)年には外観が国の重要文化財に指定されています。
見どころは、赤れんがの壁面、白い石材による帯状の装飾、列柱、急勾配の屋根などがつくる重厚な外観です。館内では建築模型や保存されたれんが壁などから、現在の姿がどのように受け継がれてきたかも見ることができました。

テラスでは、建物に使われたれんがについての説明を聞き、正面方向に見える桜田門周辺の景観も確認しました。赤れんが棟を一つの建物として見るだけでなく、皇居・桜田門・霞が関の官庁街という位置関係を意識すると、この場所が近代国家の中枢として整備された意味がつかみやすくなります。

法務史料の展示
館内の法務史料展示室では、近世の刑罰から明治期の司法制度・法典編さんまで、法制度の変化を史料でたどることができます。法務省の案内では、法務史料展示室は1995(平成7)年から一般公開されており、法務省が所蔵する法制史料を通して日本の司法の近代化を紹介しています。

法律や制度の名称だけを追うと難しくなりがちですが、実物史料や図版を前に解説を聞くと、「人を裁く仕組みがどう変化したのか」「近代国家として法典を整える必要がなぜあったのか」という流れが見えてきます。参加者一同、ケースの中の資料をのぞき込みながら説明に耳を傾けました。

印象的だった展示の一つが、江戸時代の入れ墨刑を示す図です。盗みなどの罪を犯した者に対し、地域によって異なる印を顔や腕などに入れる例が示されていました。現代の刑罰制度とは大きく異なるため、刑罰のあり方が変化していく過程を考えるきっかけになります。

また、戦後まで用いられた裁判官・検察官・弁護士の法服も展示されていました。職種ごとに胸元の模様が異なるため、並べて見ると違いがよく分かります。現在は裁判官が黒色の法服を着用しており、展示は司法に関わる服装の変化を視覚的に比較できる資料でもあります。

ガイドツアーの後には自由見学の時間もあり、説明の中で気になった史料やパネルを各自で見直しました。平日に見学できる東京の資料館を探している方は、当会の「東京の無料ミュージアム一覧」も参考になります。

江藤新平
江藤新平(1834~1874)は、明治初期の司法制度整備を語るうえで欠かせない人物です。国立国会図書館によると、佐賀藩出身で、明治政府では文部大輔や左院副議長などを経て、1872(明治5)年に司法卿となり、司法制度の整備や民法制定に尽力しました。
法務省の史料でも、江藤が司法省のトップとして強い指導力を発揮し、司法制度改革を進めたことが紹介されています。近代国家を整える過程では、裁判所の仕組み、法典の整備、人材育成などを同時に進める必要がありました。江藤の章を意識して展示を見ると、明治初期の改革が新しい国家の「法の仕組み」を組み立てる作業だったことが見えてきます。
ボアソナード
ギュスターヴ・ボアソナードは、明治政府がフランスから招いた法学者です。法務省によると、司法省のお雇い外国人として1873(明治6)年から1895(明治28)年まで日本に滞在し、刑法、治罪法(現在の刑事訴訟法にあたるもの)、旧民法などの編さんに関わりました。
とくに1880(明治13)年制定の旧刑法は、ボアソナードを中心に起草され、西欧的な刑罰思想を取り入れた法典として位置づけられています。法務史料展示室の面白さは、こうした「外国人法学者が日本の制度づくりに参加した」という説明を、実際の史料と一緒に確認できる点です。翻訳・教育・法典編さん・議論を重ねながら近代法が形づくられた過程を考えることができます。
ガイドツアーで見るからこそ分かったこと
今回の見学では、法務省旧本館という建築の歴史と、館内で展示される司法制度の歴史を一続きで見ることができました。赤れんが棟が司法省庁舎として完成した時代と、近代的な法制度が整えられていった時代を重ねると、「建物」と「制度」が同じ近代国家形成の流れの中にあったことが分かります。
展示は専門用語も多い分野ですが、団体ガイドの分かりやすい解説があったことで、史料の意味や背景を追いやすくなりました。自由見学の時間には、自分の関心に合わせて展示をもう一度確認できたのもよいところでした。

余談:希望者で農林水産省「あふ食堂」へ
今回は余談として、希望者で農林水産省の庁舎内にある「あふ食堂」にも立ち寄りました。庁舎に入る際には入庁手続きを行い、正面玄関から中へ。霞が関らしく、食事の前にも「中央省庁の建物に入る」という体験が加わりました。

あふ食堂ではランチを楽しみました。見学の本編とは別ですが、官庁街を訪れた一日の余談として、霞が関をより身近に感じられる時間になりました。

TimeWalkで身近な歴史スポットを探す
今回はTimeWalkを使ったイベントではありませんが、街の歴史を自分のペースで歩いてみたいときにはTimeWalkも利用できます。現在地や指定した場所の近くにある歴史スポットを地図で探し、自分で歴史散歩を楽しめるWebアプリです。
