2026年10月4日、ゆる歴史散歩会では8名で東京都江東区の夢の島熱帯植物館を訪れました。秋晴れで過ごしやすく、大温室ではこの時期ならではの花や果実、小笠原の植物、食虫植物をじっくり観察。さらに企画展「コーヒーで旅する熱帯の国」と屋外のハロウィン展示まで楽しみました。

植物館は季節によって咲く花や実る果実が変わります。初めて来た人はもちろん、以前別の季節に訪れたことがある参加者にとっても、新しい植物との出会いがありました。今回は館内で案内されていた「みごろの花たち」6種類をすべて見ることができ、見ごろの植物以外にも思わず足を止めるものが次々に現れました。

夢の島と夢の島熱帯植物館
現在は緑豊かな公園として知られる夢の島ですが、その成り立ちは東京の都市史と深く結びついています。夢の島公園公式サイトによると、この一帯はもともと「東京湾埋立14号地」と呼ばれ、1938年には水陸両用空港「東京市飛行場」の建設予定地として造成が進められました。計画は戦局の悪化で中止され、戦後の1947年には海水浴場が開かれ、「夢の島」という呼び名が広まりました。
その後、1957年からは東京都のごみ埋立地として使われます。高度経済成長にともなって大量のごみが持ち込まれ、1965年にはハエが大発生しました。埋立終了後、公園化が進み、1978年に夢の島公園が開園。かつての埋立地が、芝生や樹木の広がる都市公園へと姿を変えていきました。夢の島のごみ問題と1965年のハエ大発生については、当サイトの「夢の島ハエ大発生事件とは?|1965年東京ごみ処理の破綻と焦土作戦」で詳しく解説しています。
夢の島熱帯植物館が開館したのは1988年11月19日です。特徴の一つが、隣接する清掃工場の余熱を利用して大温室を暖める仕組みです。ごみ処理施設と公園、そして熱帯植物の展示がつながっている点は、夢の島という土地の歴史を知るうえでも興味深いところです。大温室はA・B・Cの3ドームに分かれ、熱帯の景観だけでなく、食用・生活利用される植物や、小笠原諸島の植物などを立体的に見られます。

高いガラスドームの中を歩くと、視線の高さにある花や果実だけでなく、頭上まで伸びるヤシや葉の重なりにも目が向きます。皆で「あれは何だろう」と立ち止まりながら回れるのがグループ見学の楽しさです。途中にはBドームの「熱帯の家」のような休憩スペースもあり、植物を眺めながらゆっくり見学できました。

熱帯の果実を間近で見る|パイナップルからカカオまで
夢の島熱帯植物館のおもしろさは、身近な食べ物が「植物としてどう育つか」を目の前で見られることです。今回はパイナップルがしっかり実っており、スーパーで見る果実とは違う、生きた株の姿を観察できました。

同じ館内にはバナナやカカオなど、人の暮らしと関わりの深い熱帯植物も植えられています。果実だけを見るのではなく、葉の形、茎から実が付く位置、花の付き方まで見ると、普段食べているものの見え方が変わります。植物観察の基本は「場所・全体・葉・花や実」の順に見ること。街歩きでも使える見方は、当サイトの「街歩きがもっと楽しくなる植物の見方」でも紹介しています。
Aドームではゾウタケも見ました。公式案内では高さ約30m、直径約30cmにもなる世界最大級のタケとして紹介されています。根元の太さだけでも迫力があり、一般的な竹林のイメージとはかなり違います。

夜に咲くサガリバナと、滝のある大温室
サガリバナは、東南アジアから太平洋諸島の湿地に分布する植物です。長い花序が垂れ下がり、多数のおしべが目立つ花を咲かせます。夢の島熱帯植物館の解説では、花は夜に開き、翌朝には落ちるとされています。昼間の見学でも特徴的な花序を近くで見られました。

大温室には滝や池が組み込まれ、植物を鉢植えとして並べるだけではなく、熱帯の景観を歩くように見せる構成になっています。水音が聞こえる場所では立ち止まって眺める人も多く、温室全体を一つの風景として楽しめます。

見ごろとして案内された花以外にも、細長い花が印象的なハバナなど、足を止めたくなる植物がありました。「見ごろリストを全部探す」という目的を持ちつつ、途中で気になった植物を自由に見ることで、宝探しのような見学になりました。

パイナップルも、大きく育った実だけでなく、まだ小さな“赤ちゃん”のような段階を見ることができました。同じ種類でも成長段階を見比べられるのは植物園ならではです。

小笠原の植物|タコノキの支柱根に注目
Cドームには、世界自然遺産に登録されている小笠原諸島に関係する植物が多く植えられています。小笠原諸島は大陸から長く隔離されてきたため、独自に進化した固有の生き物が多い地域です。東京都内にいながら、その植物の特徴を実物で見られるのがこのドームの大きな魅力です。
特に分かりやすいのがタコノキです。幹の周囲に何本もの支柱根を出し、タコの足のような姿になります。支柱根は地上の幹などから伸びて地中に入り、植物体を支える根です。夢の島熱帯植物館では、葉を利用した「タコの葉細工」についても紹介されています。

同じCドームで目を引くのが、マダガスカル原産のオウギバショウです。巨大な葉が扇のように並ぶ姿からその名があり、タビビトノキとも呼ばれます。今回は葉の先端付近に花が見え、参加者で位置を見つけながら観察しました。


食虫植物コーナー|ウツボカズラの“袋”は何をしている?
食虫植物温室ではウツボカズラを中心に観察しました。食虫植物は、虫などから栄養分を補うことで、湿地や岩場など養分の乏しい環境でも生育できる植物です。ウツボカズラの袋状の部分は捕虫器で、形や大きさの違うものが多数並ぶ姿は見応えがあります。

コーナーでは参加者それぞれが袋の形や色を見比べ、近くの展示を行き来しながら見学しました。一人で黙々と見るのとは違い、気づいたものをその場で共有できるため、見逃していた植物にも目が向きます。

企画展「コーヒーで旅する熱帯の国」
この日は企画展示室で「コーヒーで旅する熱帯の国」が開催されていました。公式案内では2026年9月8日から11月1日までの企画展で、熱帯植物であるコーヒーノキが育つまでの過程や、生産国の文化を紹介する内容です。協力はキーコーヒー株式会社です。

普段は飲み物として接しているコーヒーも、植物館で見ると「熱帯の農作物」という側面が前に出てきます。展示では生産国の違いやコーヒー豆そのものにも触れられ、植物から加工・流通を経て一杯の飲み物になるまでを考えるきっかけになりました。

秋の屋外展示|板根とかぼちゃ、北側のパンパスグラス
温室を出た後も見どころが続きました。屋外では大きな板根が見られ、根が板のように広がって幹を支える仕組みを実物で観察できます。その周囲の芝生にはハロウィンの時期らしく本物の大きなかぼちゃがいくつも置かれ、子どもたちが楽しそうに遊んでいました。

建物北側ではパンパスグラスの穂が秋の青空に映え、遠くには東京スカイツリーも見えました。温室の中の熱帯植物と、外の秋らしい風景を一度に味わえるのもこの季節ならではです。

みんなで回るから見つかるものがある
今回の参加者は8名。天気にも恵まれ、急がず植物を見ながら館内と企画展を巡りました。見ごろの花6種類を全部見つけられた達成感があり、リストに載っていない植物にも何度も足を止めました。
参加者からは「一人ではなかなか来ないので、みんなで回れてよかった」という声もありました。植物園は一人でも楽しめる場所ですが、誰かが見つけた花や果実をきっかけに別の人が興味を持つなど、複数人で歩くからこその発見もあります。以前来たことがある人でも、季節が変われば展示の主役が変わるため、再訪する楽しさがある場所でした。
夢の島周辺を自分でも歩いてみたい方へ
夢の島公園や周辺の歴史スポットを自分のペースで巡りたい方には、ゆる歴史散歩会のWebアプリ「TimeWalk」もおすすめです。現在地や指定地点の近くにある歴史スポットを地図で探し、自分で歴史散歩を楽しめます。現在地から歩ける史跡を地図で探す。
まとめ
秋の夢の島熱帯植物館は、熱帯の果実、小笠原の植物、食虫植物、季節の花、そして企画展まで、短時間では見切れないほど観察材料が豊富でした。さらに屋外ではかぼちゃやパンパスグラスが季節感を添え、温室の内外で違う秋を楽しめます。夢の島の歴史を知ってから訪れると、清掃工場の余熱を使う植物館がこの場所にある意味もより深く感じられます。

