宮内庁の秋季雅楽演奏会とは?2026年の演目・用語・歴史と過去3回を解説

宮内庁が毎年秋に一般向けに公開する「秋季雅楽演奏会」は、皇居内の宮内庁式部職楽部で、宮中に伝わる雅楽を間近に鑑賞できる催しです。令和8年(2026年)は10月23日(金)から25日(日)までの3日間、午前・午後の計6回が予定されています。

2026年9月15日に抽選結果が発表され、申込受付はすでに終了しています。

2026年の秋季雅楽演奏会はどんな催し?

項目内容
開催日2026年10月23日(金)・24日(土)・25日(日)
時間午前の部 10時30分開演/午後の部 14時30分開演
所要時間約90分
会場皇居内・宮内庁楽部
定員各回300人、計1,800人
対象小学生以上
参加費無料
2026年の応募10,736件・20,623人
当選933件・1,800人

定員1,800人に対して応募者は20,623人で、人数では定員の約11.5倍に達しました。インターネット申込は当落ともメールで通知され、郵送申込は当選者にのみ「入場案内」が送付されます。当日は入場案内に加えて本人確認書類が必要で、皇居への入門時には手荷物検査も行われます。

そもそも雅楽とは何か

雅楽は、一つの時代に作られた単一の音楽ではありません。日本古来の神楽歌・大和歌・久米歌などと、5世紀頃から中国や朝鮮半島などを経て伝来した音楽・舞が組み合わされ、宮廷文化の中で整理されて、10世紀頃までに現在につながる体系が形づくられました。雅楽を日本音楽全体の流れの中で見る場合は、「日本音楽史まるわかりガイド」で古代から近代までを整理しています。

大きく分けると、日本固有の古い歌舞である「国風歌舞」、中国系の「唐楽」、朝鮮半島系の「高麗楽」、さらに平安時代に発達した催馬楽・朗詠などがあります。演奏形式では、器楽合奏の「管絃」、舞を中心とする「舞楽」、声楽を中心とする歌謡に分かれます。

宮内庁式部職楽部とは

宮内庁の「式部職」は、宮中の儀式や外国交際などを担当する部門です。その中で雅楽・洋楽を担当するのが「楽部」です。楽部の楽師は、宮中の儀式や饗宴、園遊会などで演奏するほか、公開演奏会や地方公演も行っています。

宮内庁楽部の楽師が演奏する雅楽は、1955年(昭和30年)に国の重要無形文化財に指定されました。2009年(平成21年)には、宮内庁楽部の雅楽がユネスコ無形文化遺産の代表一覧表に記載されています。

一般公開の雅楽演奏会は1956年から

宮内庁による一般公開の雅楽演奏会は、1956年(昭和31年)に始まりました。春と秋にそれぞれ3日間開かれ、春季は文化団体や在日外交団などを中心に、秋季は一般からの申込者を対象に公開されています。

一般公募は、2019年(令和元年)は大礼関係の諸行事、2020年以降は新型コロナウイルス感染症への対応によって見送られました。2023年(令和5年)秋に5年ぶりの一般公募が再開され、現在の秋季演奏会につながっています。

2026年の演目を初心者向けに解説

2026年は、前半が器楽合奏の「管弦」、後半が舞を伴う「舞楽」です。曲名だけを見ると難しく感じますが、「どの種類の音楽か」「何を表す曲か」を押さえると聴きやすくなります。

管弦(管絃)

管弦(かんげん)は、舞を付けずに音楽そのものを聴く器楽合奏です。「管絃」とも書きます。笙・篳篥・龍笛などの管楽器、琵琶・箏などの絃楽器、鞨鼓・太鼓・鉦鼓などの打楽器が重なり、独特の響きを作ります。寺社で奉納される管絃を具体的な演目から見るなら、乃木神社「第五十二回管絃祭」2026でも管絃・催馬楽・舞楽を解説しています。

平調音取(ひょうじょうのねとり)は、本格的な曲に入る前の短い前奏です。「平調」は唐楽で使う調子の一つで、「音取」はその調子の音高や響きを奏者同士で確認し、これから演奏する音の世界を整える役割を持ちます。自由な拍で楽器が順に加わっていくため、静かに音が立ち上がるところが聴きどころです。

王昭君(おうしょうくん)は平調の曲です。曲名の王昭君は、中国・前漢の時代に宮廷から匈奴の君主のもとへ嫁いだ女性として知られます。日本でも古くから題材として受容され、雅楽の「王昭君」については、平安時代の貞保親王が中絶していた曲を復興したという伝承があります。

越殿楽残楽三返(えてんらくのこりがくさんべん)は、よく知られた「越殿楽」を「残楽」という方法で3回繰り返す演奏です。最初は多くの楽器で奏し、反復するにつれて演奏する楽器が少しずつ減っていきます。終盤では箏が前面に出て、合奏の厚い響きが次第にほどけていく変化を味わえます。

陪臚(ばいろ)も平調の古い曲です。独特の拍子を持つ唐楽で、同名の舞楽も伝わっています。2026年の番組では「管弦」の部に置かれているため、今回は舞を伴わない器楽曲として演奏されます。

舞楽

舞楽(ぶがく)は、雅楽の音楽に舞を組み合わせた形式です。大陸系の舞楽は、中国系の唐楽を基礎とする「左方」と、朝鮮半島系の高麗楽を基礎とする「右方」に大別されます。音楽だけでなく、装束、面、舞人の人数、歩み方や手の動きまで含めて鑑賞する芸能です。

桃李花(とうりか)は黄鐘調の唐楽で、管絃として演奏されることも、舞楽として演じられることもあります。2026年の秋季雅楽演奏会では左方の舞楽として演じられます。「桃李」は桃とスモモを意味し、ゆったりとした長い旋律を持つことでも知られます。

胡飲酒(こんじゅ)は、壱越調の唐楽で、一人で舞う「走舞」の代表的な演目です。長い毛の付いた面を着け、桴を手にして舞います。古くは「胡国の人が酒に酔って舞う姿」を表したものと説明されてきました。「胡」は古代中国で周辺の異民族を指した歴史的な呼称で、現代の民族名ではありません。

登殿楽(とうてんらく)は、高麗楽系の右方の四人舞です。「登天楽」とも書かれます。日本で作られた曲とされますが作者は明らかではなく、古くは子どもが舞う童舞として演じられた時期もありました。両手を上に向けて手首をひねる「天地の岐呂利」と呼ばれる特徴的な所作があります。

雅楽の楽器は何を聴けばいい?

初心者は、まず三つの管楽器を聴き分けると全体が分かりやすくなります。笙(しょう)は複数の音を重ねる和音で空間を包み、篳篥(ひちりき)は力強く人の声に近い主旋律を担い、龍笛(りゅうてき)は高い音域を動きながら旋律を彩ります。管絃では、ここに琵琶・箏の絃楽器と、鞨鼓・太鼓・鉦鼓などの打楽器が加わります。各楽器の役割や左方・右方の違いは、「國學院大學の観月祭を100倍楽しむ完全ガイド」でも詳しく整理しています。

過去3回の秋季雅楽演奏会

主な演目特徴
2025年(令和7年)国風歌舞:久米舞/舞楽:甘州、貴徳急、陪臚日本固有の古い歌舞「久米舞」を含む構成。10月24~26日に開催。応募14,936人、当選1,800人。
2024年(令和6年)神楽歌:小前張(阿知女作法、薦枕、其駒)/舞楽:打球楽、狛桙神楽歌と舞楽を組み合わせた構成。10月18~20日に開催。
2023年(令和5年)管絃:黄鐘調音取、千秋楽、越殿楽残楽三返、拾翠楽/舞楽:春庭花、仁和楽一般公募が5年ぶりに再開。10月20~22日に開催。

2025年は「国風歌舞」を前面に出した年

2025年の「久米舞」は、唐楽・高麗楽より前から日本に伝わる系統の歌舞です。『古事記』『日本書紀』の大和平定の物語と結び付けられ、宮中儀礼とも深い関係を持ってきました。毎年同じ「雅楽」でも、年によって管絃、舞楽、国風歌舞、神楽歌の比重が変わるのが秋季演奏会の特徴です。

2024年は神楽歌、2023年は管絃と舞楽

2024年は神楽歌と舞楽、2023年は管絃と舞楽という構成でした。2023年は一般公募再開の年でもあり、宮内庁は2019年の大礼関係行事と、その後の新型コロナウイルス感染症への対応を経て「5年ぶりの公募」と説明しています。

3年分を並べると、秋季雅楽演奏会が単なる「毎年同じ古典曲のコンサート」ではなく、宮中に伝承される複数の系統の音楽・歌・舞を、その年ごとの組み合わせで紹介する場であることが分かります。

来年以降に申し込むなら

宮内庁は例年、10月下旬から11月初旬ごろに秋季雅楽演奏会を行い、開催日時・曲目・申込要領を夏ごろに案内しています。2026年は7月に募集され、インターネットと通常はがきで受け付けられました。申込方法や締切は年ごとに変わる可能性があるため、次回は宮内庁の公式案内を確認してください。

当選した場合は、入場案内と本人確認書類を忘れず、手荷物検査の時間も見込んで早めに皇居へ向かう必要があります。参加費は無料ですが、自由入場の催しではなく、事前申込・抽選制です。

参考資料

※2024年の演奏曲目は、当時の宮内庁告知内容を掲載した同時期の案内資料で確認し、開催日は宮内庁の公開日程と照合しています。