VIVANT IMMERSIVE MISSION|ドラマ予習・本物のセット・MR体験の見どころを解説

2026年9月16日から東京・京橋のCREATIVE MUSEUM TOKYOで始まる「VIVANT IMMERSIVE MISSION ―ここから、あなたの冒険が動き出す―」は、TBS日曜劇場『VIVANT』の撮影セットや衣裳、小道具、撮影用台本を展示しながら、来場者自身がスマートフォンを使って任務に参加する体験型イベントです。会場で軸になるのは、ドラマの舞台裏を「見る」スタジオツアーと、物語の一員として動くMRミッションの二つです。

『VIVANT』を見ていなくても、商社員から始まる国際冒険劇、警察の公安、劇中の秘密組織「別班」、謎の組織「テント」という四つの軸を知っておけば、展示の役割分担はかなり理解しやすくなります。視聴済みの人にとっては、画面では一瞬で通り過ぎるセットの壁、机、道具、衣裳、割本を実物の制作物として見直せることが大きな見どころです。

VIVANT IMMERSIVE MISSIONは何を体験するイベント?

公式案内では、本イベントを「リアルなスタジオツアー」と「ミッションアトラクション」を組み合わせた没入体感型イベントとしています。スタジオツアーでは、ドラマ撮影で実際に使われた「乃木のゲル」「警視庁公安部外事第4課」「テントの地下牢」などのセットを間近で見られます。さらに「乃木家の守り刀」「ベキの日本刀」などの小道具、出演者が着用した衣裳、撮影用の割本も展示されます。

もう一方のミッションアトラクションでは、専用アプリ「Auris(オーリス)」を入れたスマートフォンを使い、「別班」「公安」「テント」「ドラムの仲間探し」の4コースから一つを選びます。重さの比較、接触コードの認識、盗聴器探し、座標計算、言葉の記憶、爆弾解除、観察・記憶クイズなど、組織ごとの性格を遊びに置き換えた課題に挑戦する構成です。最後はAIハヤトが適性数値を算出します。

ドラマ『VIVANT』とは何だったのか

2023年7月期の日曜劇場『VIVANT』は、福澤克雄ふくざわ かつおが原作・演出を担った完全オリジナルのアドベンチャードラマです。物語は、丸菱商事の社員・乃木憂助のぎ ゆうすけが巨額の誤送金を取り戻すため、中央アジアを思わせる架空国家「バルカ共和国」へ向かうところから動き始めます。序盤は企業犯罪と逃亡劇、中盤以降は諜報活動や組織同士の駆け引きへと重心を移し、家族の物語も絡んでいきます。

作品の特徴は、ジャンルが一つに固定されないことです。企業ドラマ、ロードムービー、国際サスペンス、スパイもの、アクション、家族劇が連続し、視聴者が「今見ている人物は何者なのか」「誰がどの組織に属しているのか」を毎週組み替えながら見る構造になっています。福澤は制作後のインタビューで、国内で支持を得たうえで海外にも届く作品を目指したと語り、日本らしさを残しながら毎回わくわくする展開を重視したと説明しています。

架空のバルカ共和国の場面は主にモンゴルで撮影され、主要キャストは約2か月にわたる大規模ロケに参加しました。日本の連続テレビドラマでありながら、砂漠や都市を使った海外ロケ、群衆、車両、アクションを組み込んだ映像は、放送開始時から作品のスケールを印象づけました。

2023年に社会的な話題となった理由

『VIVANT』のヒットは、豪華な出演者だけでは説明しきれません。放送前に役柄や物語の詳細をほとんど明かさず、初回放送で視聴者に世界観そのものを発見させる宣伝手法を取りました。美術協力企業の担当者も、制作協力の段階ではタイトルと主要出演者程度しか知らされていなかったと振り返っています。情報を伏せた状態で始まり、放送後に視聴者の考察が急速に広がる仕掛けになっていました。

数字でも反響は確認できます。TVerの2023年7~9月期番組再生数ランキングでは『VIVANT』が5,481万再生で1位となり、初回放送からX(旧Twitter)の世界トレンド1位を記録したとTVerが発表しています。TBSは第1シーズン全10話のタイムシフトを含むテレビ放送の総視聴人数を6,000万人超としています。地上波の同時視聴、見逃し配信、SNS上の考察が同時進行したことが、2023年らしいテレビドラマの盛り上がり方でした。

もう一つ大きかったのが、ドラマの外にある現実の制度や言葉まで検索されるようになったことです。特に「別班」という名称は、過去に実在をめぐる報道と国会質問があったため注目されました。ただし、ドラマに登場する「自衛隊直轄の非公認諜報組織・別班」はフィクションです。政府は2013年の国会答弁で報道された名称の組織について「これまで自衛隊に存在したことはなく、現在も存在していない」と回答し、防衛大臣も2026年7月の記者会見で同じ趣旨を改めて述べています。

「別班」「公安」「テント」をネタバレを抑えて整理

組織ドラマ内での位置づけ現実との関係
別班べっぱん日本を脅かす事態を水面下で追う秘密組織として描かれ、乃木や黒須が関わります。劇中組織と活動内容はフィクションです。政府は「別班」と呼ばれる組織の実在を否定しています。
公安警視庁公安部の野崎らが、テロや国際事件を捜査する側として登場します。公安・外事分野は現実の警察組織にありますが、登場人物や事件、具体的活動はドラマの創作です。
テントバルカを拠点とし、別班や公安が追う対象になる謎の組織です。物語が進むと単純な敵役では整理できない背景が示されます。組織、人物、活動はフィクションです。

初心者が押さえるべき点は、三者の「正義」が最初から同じではないことです。公安は公的な捜査機関として事件を追い、別班は劇中設定上、表に出ない方法で国家の安全を守ろうとし、テントは外から見ると脅威として扱われます。物語は、その分類が本当に十分なのかを少しずつ揺さぶっていきます。

乃木・野崎・ノコル・黒須・ドラムの関係

乃木憂助のぎ ゆうすけは主人公です。表向きは丸菱商事の社員ですが、物語の進行とともに「別班」と深く関わる人物であることが明らかになります。イベントの別班コースでは、乃木、黒須、櫻井、長野らの声がミッションを導きます。

野崎守のざき まもるは警視庁公安部の捜査官です。バルカで乃木と出会い、行動を共にしながら事件を追います。協力者であると同時に、相手を簡単には信用しない捜査官として乃木を見続ける人物です。イベントの公安コースでは、野崎、佐野、東条が監督役を務めます。

ノコルはテント側の中核にいる人物で、乃木との間には単純な敵味方では片づけられない関係があります。その具体像は第1シーズン後半で明かされます。イベントではノコルがテントコースの監督役の一人として声で参加します。

黒須駿くろす しゅんは乃木と同じ別班側で行動する相棒格です。乃木との信頼と緊張の両方が見どころで、今回展示される「テントの地下牢」は二人に関わる重要なセットです。

ドラムは、バルカで野崎の活動を支えるエージェントです。言葉を発する代わりにスマートフォンの音声を使って意思を伝えるキャラクターとして人気を集め、音声は林原めぐみが担当しています。イベントには独立した「ドラムの仲間探し」コースがあり、観察、記憶、宝探しを中心にドラムを支える構成です。

VIVANTの世界観を初心者向けに整理

世界観の入口は「会社員が海外の巨額送金トラブルに巻き込まれる話」です。そこへバルカ警察、公安、医師の柚木薫、ドラムが加わり、逃亡と捜査が同時に進みます。さらに別班べっぱんとテントという二つの組織が前面に出ることで、物語は「誰が味方か」を探る諜報劇へ変わっていきます。

展示を見るうえでは、バルカが実在国ではなく架空国家であることも大切です。モンゴルの風景や生活文化を撮影に生かしながら、劇中では独自の言語、警察、通貨、企業、宗教的・民族的背景を持つ国として組み立てられています。ゲルのセットを見るときも、「モンゴルの生活展示」ではなく、現地ロケとスタジオ美術を組み合わせて架空国家を成立させたテレビ美術として見る方が実態に近いでしょう。

2026年の『VIVANT』と今回のイベント

2026年の第2シーズンは7月26日に始まり、日曜劇場として異例の2クール連続放送が続いています。物語は2023年の最終場面の直後から始まります。制作規模はさらに拡大し、TBSはアゼルバイジャンやタイを含む各地で約1年に及ぶ撮影を行ったと案内しています。

「VIVANT IMMERSIVE MISSION」が興味深いのは、2023年の記憶を保存する回顧展としてだけでなく、2026年の放送と同時進行する体験空間になっている点です。展示には第1シーズンから印象の強いゲルや地下牢、公安のセットが入り、ミッション側には2026年の物語にも登場するAIハヤトが適性判定役として加わります。過去の撮影資産と現在進行中の放送世界が一つの会場で接続されます。

本物の劇中セットを見るとはどういうことか

ドラマのセットは、画面に映るために作られた建築です。俳優が動ける寸法、カメラや照明が入る余地、音の収録、場面転換の速さを考えながら、現実の部屋らしく見えるように設計されます。『VIVANT』では50種類以上のセットが作られたと飯田和孝プロデューサーが明かしており、データセンターの壁を公安の会議室へ転用するなど、撮影順と美術の再利用を組み合わせていました。

美術デザイナーの串岡良太郎も、通常のドラマよりはるかに多い50種類以上のセットを担当し、「物語に溶け込むリアル」を追求したと振り返っています。別の美術協力企業では、黒いアルミ複合板500枚を約2週間で用意するという異例の短納期・大量発注があったことも紹介されています。画面では背景に見える壁一枚にも、設計、材料調達、加工、搬入、撮影後の転用という制作工程があります。

今回のスタジオツアーで見る価値は、その「画面の外側」を実寸で確認できることにあります。乃木が滞在したゲル、警視庁公安部外事第4課、テントの地下牢は、物語上の場所であると同時に、撮影のために設計・施工された制作物です。小道具、衣裳、割本まで並ぶことで、俳優の演技だけでは成立しないテレビドラマの共同制作を物質として見ることができます。

MRとは何か――Aurisで現実の会場に物語を重ねる

MRはMixed Reality、複合現実ふくごうげんじつの略です。Microsoftは、物理世界とデジタル世界を融合し、人、コンピューター、周囲の環境を相互に関係させる技術として説明しています。VRが視界を仮想空間へ置き換える体験に近いのに対し、MRでは目の前の現実空間を残しながら、位置や物体に応じたデジタル情報や音声を重ねられます。

今回使われる「Auris」は、GATARIが提供するスマートフォン向けMR体験アプリです。施設ごとに配信されたMRコンテンツへスマートフォンからアクセスし、現実の場所を歩きながら音声やデジタル演出を体験する仕組みを持ちます。「VIVANT IMMERSIVE MISSION」では、会場そのものを特殊訓練施設に見立て、登場人物の声による指示と、現地に置かれた課題を結びつけます。

体験には1人1台の対応スマートフォンまたはタブレットとインターネット接続が必要です。公式案内では、iPhoneはiOS 15.6以降でiPhone X以降(SEは第2世代以降)、Androidは12以上のARCore対応機種を指定しています。イヤホンまたはヘッドホンは必携で、来場時の充電残量は60%以上が推奨されています。会場にモバイルバッテリーの貸し出しや充電スペースはありません。

「見るドラマ展」から「参加する展示」へ

衣裳、小道具、台本、場面写真をケースや壁面で見る展示は、テレビ番組の保存と紹介に向いた形式です。今回のイベントもその機能を持ちながら、セットの内部を歩き、スマートフォンを手に任務をこなし、キャラクターの声に反応する行為まで展示体験に組み込んでいます。観客の役割が「作品の外から見る人」から「物語のルールに従って行動する人」へ一段変わります。

この形式は、近年のロケーションベース・エンタテインメント(LBE)と相性が良いものです。映像作品やゲームなどのIPを、特定の場所、立体空間、音響、端末、演者や参加者の動きと組み合わせ、家庭の画面では得にくい体験へ変える考え方です。CREATIVE MUSEUM TOKYOの運営に関わるソニーも、同館をポップカルチャーを扱うミュージアムであると同時に、ロケーションベース・エンタテインメントの実験場として位置づけています。

テレビドラマは本来、放送が終わればセットが解体され、撮影現場の空間は画面の中にしか残らないことが多い媒体です。撮影用セットを保存・再展示し、さらにスマートフォン上の音声とデジタル演出で再び「使う」今回の構成は、放送文化を物理空間へ戻す試みとして見ることができます。宣伝イベントという側面と同時に、テレビ美術、撮影技術、俳優の音声演技、アプリ開発を一つの場所に集めるメディア横断型の展示でもあります。

CREATIVE MUSEUM TOKYOという会場

会場のCREATIVE MUSEUM TOKYOは、東京・京橋のTODA BUILDING 6階にあるミュージアムです。約1,200平方メートル、天井高約5メートルの大空間を持ち、アニメ、マンガ、音楽などのポップカルチャーから現代アート、デザインまでを扱います。完成作品だけでなく「表現者」や「創作プロセス」を体感することを施設の目的に掲げています。

この広さと天井高は、大型の撮影セットを置き、来場者がその周囲を歩きながらMRミッションへ移る今回の構成と相性が良い条件です。TODA BUILDING自体も低層部を芸術文化エリアとして整備した複合施設で、京橋の美術館・ギャラリー群とつながっています。周辺の街と建築については、当サイトの日本橋・兜町・八重洲を歩く記事でもTODA BUILDINGを紹介しています。

VIVANT未視聴でも楽しめる?ファンならどこを見る?

公式に公開されているミッション内容を見る限り、未視聴でも課題そのものは参加しやすい構成です。重さの比較、盗聴器探し、座標、言葉の記憶、観察クイズなどは、ドラマの筋を知らなくても成立します。一方で、ゲルや地下牢がなぜ重要なのか、キャラクター同士の声の組み合わせにどんな意味があるのかは、作品を知っているほど情報量が増えます。

ファンが注目したいのは、画面の中心にいた俳優だけでなく、背景として処理されていた制作物です。公安の会議室なら壁材や机の配置、地下牢なら表面の質感や照明を受ける造形、ゲルなら生活空間としての道具の置き方に目を向けると、カメラがどのように「バルカ」や組織の緊張感を作っていたかを考えられます。割本、衣裳、小道具をセットと一緒に見ることで、脚本から撮影、美術、演技へ情報が移っていく流れも追えます。

開催概要と事前準備

会期2026年9月16日(水)~11月27日(金)
会場CREATIVE MUSEUM TOKYO(東京都中央区京橋1丁目7-1 TODA BUILDING 6階)
開場時間月~木・日 10:00~18:00(最終入場17:00)/金・土・祝日 10:00~20:00(最終入場19:00)。11月27日のみ18:00閉館
休館日会期中無休
料金平日:一般・大学生2,500円、高校生1,700円、中学・小学生900円/土日祝:一般・大学生2,800円、高校生2,000円、中学・小学生1,200円
入場方法全日程先着順の日時指定券。30分単位の入場枠
必要なもの対応スマートフォン等を1人1台、Aurisアプリ、イヤホンまたはヘッドホン。充電60%以上推奨
撮影許可されたエリア以外の撮影は禁止。動画撮影、録音、フラッシュ、三脚、自撮り棒は不可
所要時間公式サイトでは目安時間の明記なし

東京駅八重洲中央口から徒歩7分、日本橋駅B1出口から徒歩5分、京橋駅6番出口から徒歩3分です。体験中はスマートフォンを手に持って回遊するため、大きな荷物の持ち込みは控えるよう公式から案内されています。アプリのデータ通信料は利用者負担です。

参考文献・公式資料