和ルミネーション2026|大手町の和傘の灯り、誕生の経緯と開催の歩み

2026年11月4日(水)・5日(木)、東京都千代田区の大手町仲通りで「和ルミネーション2026」が開催されます。和傘を行灯に仕立て、オフィス街に柔らかな灯りをともす催しです。9年目となる今回は竹細工との協働装飾が登場し、仲通り散歩橋へと続く空間を演出します。2018年に会社員らのまちづくり活動から始まった経緯や、会場を広げてきた歩みも、この催しを知る手がかりになります。

和ルミネーションの出発点は「丸の内朝大学」

和ルミネーションの構想は2017年夏、社会人向けの「丸の内朝大学」のまちづくりプロデューサークラスから生まれました。大手町・丸の内・有楽町の魅力を再発見する課題に取り組んだ受講生6人が、和傘の灯りで街の表情を変える企画を考えました。大手町のにぎわいづくりと歴史の発信を目指し、職人や地域関係者と準備を進めたと、大丸有まちづくり協議会は紹介しています。

第1回は2018年7月12・13日、大手町フィナンシャルシティ街区の大手町仲通りで実施されました。50基の行灯と和傘タワーを設置。開催資金はクラウドファンディングでも募り、95人から59万5,000円の支援を集めています。当時は冬の丸の内イルミネーションに対する「夏の大手町の風物詩」を目指す構想でした。

なぜ大手町で和傘を灯すのか

大手町は江戸城大手門の前に位置し、江戸時代には大名屋敷が集まった地域です。明治以降は官庁街となり、現在のオフィス街へと姿を変えました。発案者たちは、ビルの並ぶ街に「和」の景色を重ねることで、普段は通り過ぎる場所の歴史に目を向けてもらおうと考えました。

和傘を使ったのは、灯りの美しさに加え、和紙と竹骨を組み合わせる伝統的な手仕事を街の中で紹介するためです。和傘の内側の骨組みや和紙を透かした色彩は、見る角度や周囲の明るさによって表情を変えます。実行委員会が掲げるコンセプトは「まちに灯りを」。大手町の歴史と現在の風景を結びつける催しとして育ってきました。

会場を広げ、企画を変えてきた開催の歩み

2018〜2020年|夏の催しから秋の「五感」の演出へ

初開催の翌2019年は8月1・2日に開催。公式記録によると、前年に比べて会場のエリアと行灯の数を約2倍に増やしました。2020年は10月21日に「五感で感じる和ルミネーション」をテーマに実施し、和傘の壁状の展示に加えて、音楽配信、ヒノキやスギの香り、照明の点灯演出を組み合わせました。近年の秋開催には、10月21日の「あかりの日」にちなむ背景もあります。

2021年|TOKYO TORCH Parkでの開催

2021年10月21・22日には、大手町仲通りを離れ、東京駅日本橋口に近いTOKYO TORCH Parkで展開されました。「TOKYO TORCH縁日」の会場装飾を担い、和傘のグラデーションや壁状の展示、広場の水辺を生かした配置が登場。独立した催しから、別のイベントと協力する形にも活動が広がりました。

2023〜2025年|丸の内や川端緑道へ展開

2023年10月25〜27日は、大手町仲通りに加えて丸の内北口ビルにも展示を拡大。和傘職人の製作実演や寄せ書き、デジタルスタンプラリーを実施しました。2024年10月22・23日には、大手町川端緑道の社会実験イベント「BATON PARK」で和傘のイルミネーションを担当しています。

2025年3月には、別主催の地域企画「はるミネーション」に実行委員会が協力し、大手町各所に桜や花を思わせる和傘の灯りが登場しました。同年10月31日・11月1日の「和ルミネーション2025」では、伝統芸能集団「禮(REI)」によるパフォーマンスや、箏・三味線・日本舞踊の体験企画も行われました。

誰が運営し、誰が作品をつくっているのか

主催は「和ルミネーション実行委員会」です。2017年の社会人によるまちづくりの取り組みを出発点に、現在は地域のまちづくり団体や企業の支援を受けています。2026年の案内には、NPO法人大丸有エリアマネジメント協会、一般社団法人大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会、三菱地所株式会社が協賛として記載されています。ビル管理者や周辺企業も会場運営に協力しています。

和傘の製作を担う職人との関係も大切な要素です。過去の公式記録には「工房和傘屋」の小林旅人さんによる和傘タワー、「湘南和傘英遊」の杉崎英紀さんによる和傘行灯が紹介されています。2026年の和傘貼り体験でも「湘南和傘英遊」が指導を担当。企画・運営を行う実行委員会と、制作を担う伝統工芸の専門家が協力する体制です。

和ルミネーション2026|竹細工が仲通り散歩橋へつなぐ

和ルミネーション2026の会場配置図。和傘リード、和傘ロード、和傘ゲートなど、大手町仲通りの展示場所を示した案内図
和ルミネーション2026の会場配置図。大手町仲通りの各展示と大手町駅の位置関係が分かります(提供画像)。

2026年の会場配置と見どころは、和ルミネーション実行委員会の公式会場図(アクセスMAP・みどころMAP)で確認できます。会場図は同ページの「アクセスMAP」「みどころMAP」に掲載されています。

2026年の主な見どころは、和傘行灯と竹細工の組み合わせです。竹アートのテーマは「風の気配 ― 境界をほどき、人を結ぶ ―」。竹の曲線で風の流れや土地に重なる記憶を表し、会場から仲通り散歩橋へと来場者を誘う構成です。仲通り散歩橋がつながって初めての開催となり、橋から大手町仲通りを振り返る景色も公式に紹介されています。

会場には、来場者が言葉を書き込める白い和傘行灯も用意されます。寄せ書きは11月4・5日の両日開催、無料。和傘職人による和紙貼り体験は11月4日の企画で、同日が雨天の場合は11月5日に順延する案内です。アンケート回答者向けのオリジナルノベルティ企画もありますが、数量に限りがあります。

公式の点灯時間は11月4日17:00〜21:00、11月5日17:00〜20:45。場所は大手町仲通りで、雨天時には大手町フィナンシャルシティのアトリウムが案内されています。ゆる歴史散歩会では11月5日19:00〜20:30に、和傘行灯と竹細工を鑑賞するナイトウォークを予定しています。

大手町ビルの街化石|赤い石材に残る太古の海

今回のナイトウォークでは、和ルミネーションの会場の一つである大手町ビルにも立ち寄る予定です。1958年に竣工した大手町ビル(千代田区大手町1-6-1)は、建物の石材に古生物の化石が残る「街化石」の観察スポットとして知られています。オフィスビルの柱を詳しく見ると、都市の建築と数億年前の海の歴史が重なります。

ベルギー産の赤い石材「ルージュ・ドゥ・ヌービル」

1階の中央ホールなどにある赤紫色の石柱は、ベルギー・ヌービル産の「ルージュ・ドゥ・ヌービル・ドゥミフォンス」と呼ばれる石灰岩を磨いたものです。建築石材の流通では「大理石」に分類されますが、地質学上は海で形成された石灰岩です。赤地に白い筋や斑点が散る独特の模様があり、古いオフィス建築の内装材としても見応えがあります。

地質学者の西本昌司さんによると、この石材はフランスのベルサイユ宮殿にも使われたベルギー産の「ルージュ・ロイヤル」と同じ地層で採れる石材です。ビルの改修後も石柱が残され、1950年代の建築の素材を今日見ることができます。

赤い柱で探せる4種類の化石

直角貝(ちょっかくがい)は、古生代の海に暮らした、まっすぐな殻をもつ頭足類の仲間です。磨いた柱の表面では、白っぽく細長い円錐形や、殻の内部の仕切りに相当する横線を探します。街化石の専門資料には大手町ビルの「直角貝(Orthoceras)」の写真が掲載されています。ただし、石材の断面だけから個体を属・種まで特定する際には注意が必要です。西本昌司さんの石材資料室に現地例があります。

四射サンゴ(ししゃサンゴ)は古生代に生息していたサンゴの仲間です。輪切りになった断面には中心から外側へ伸びる隔壁が見られ、縦断面では細長い筒状の模様になります。大手町ビル1階の東エレベーターホールにある柱の観察記録で紹介されています。

ウミユリは植物を思わせる名前ですが、ヒトデやウニと同じ棘皮動物の仲間です。茎の断面が小さな円形や輪の連なりとして残ることがあります。大丸有エリアの化石観察会でも、大手町ビルの柱からウミユリの仲間とみられる断面が紹介されました。

層孔虫(そうこうちゅう)は、古生代の浅い海でサンゴ礁の形成にも関わった、海綿動物に近い生物群です。切断面には、細かい層が繰り返し重なるような模様が現れます。1階東エレベーターホールの柱について複数の観察例が記録されています。

現地での探し方

最初に1階中央ホールの赤い石柱を観察し、次に東エレベーターホールの柱を見比べると、模様の違いを楽しめます。東エレベーターホールには4本の柱があり、現地観察記録では東側の柱などにサンゴや層孔虫、オウムガイ類とされる模様が紹介されています。石の白い模様には化石のほか、方解石の脈などもあります。見つけた模様は大きさや向きを写真で残し、後から資料と照合すると種類を考えやすくなります。

柱はオフィスビルの共用部にあります。通行の妨げになる場所での長時間の立ち止まりを避け、立入制限や撮影の案内に従って観察します。見学範囲や当日の開放状況は現地の案内を優先してください。

化石の形を見比べる参考標本

次の4枚は化石の形を比べるための参考写真です。いずれも大手町ビルで撮影されたものではありません。

参考標本:直線的な殻をもつ直角貝の化石群。大手町ビルで撮影した写真ではありません
直角貝の化石群(参考標本)。Dcrjsr/Wikimedia Commons、CC BY 4.0。
参考標本:古生代の四射サンゴの化石
四射サンゴの化石(参考標本)。James St. John/Wikimedia Commons、CC BY 2.0。
参考標本:ウミユリの茎の化石。節が連なった構造が分かる
ウミユリの茎の化石(参考標本)。Shaethompson/Wikimedia Commons、CC BY-SA 4.0。
参考標本:層孔虫を含む石灰岩の磨かれた断面
層孔虫を含む石灰岩の断面(参考標本)。Michael C. Rygel/Wikimedia Commons、CC BY-SA 4.0。

参考資料:朝日新聞出版「東京・丸の内で『すごい石』を探した(後編)」、ECOZZERIA「大都市は化石の宝庫だった!」、理科にがて「大手町ビル1階 東エレベーターホール」現地写真。

大手町の街の歴史をさらにたどる

江戸時代の大名屋敷から現代の街並みへの変化は、正保年中江戸絵図で見る大手町・丸の内で詳しく紹介しています。将門塚や大手門、官庁街への移り変わりは、大手町の歴史をわかりやすく解説も参考になります。夜の街歩きの記録は、大手町ナイトウォークの開催レポートをご覧ください。

周辺の史跡を自分で探して歩くなら、TimeWalkも利用できます。現在地や指定地点の近くにある歴史スポットを地図で探し、自分で歴史散歩を楽しめるWebアプリです。

参考資料