PEファンドとは何か|日本企業の所有者が変わる仕組みと買収の歴史

東京・日本橋兜町にある東京証券取引所ビル 日本史・社会制度
東京証券取引所ビル(2018年)。撮影:Kakidai/Wikimedia Commons/CC BY-SA 4.0。

ニュースで、長く親しまれてきた会社が「PEファンド傘下に入る」「TOBで非公開化される」と報じられることがあります。

会社の名前も商品も従業員も、その日のうちに消えるわけではありません。それでも、会社を最終的に所有し、経営の大きな方向を決める人は変わります。

東京・日本橋兜町かぶとちょうの株式市場では、上場企業の株を多くの投資家が売買しています。一方、PEファンドは会社の株式を大量に取得し、場合によっては株式市場から会社を退出させ、経営そのものへ深く関わります。

では、PEファンドは誰のお金で会社を買うのでしょうか。買収した後に何を変え、なぜ数年後にまた会社を売るのでしょうか。

この記事では、PEの基本的な仕組みだけでなく、外資系・国内系の主要ファンド、カーブアウト、非公開化、事業承継、企業再生、再上場、ファンド間売買まで、日本企業の所有者が変わる歴史として解説します。

このシリーズでわかること

30秒で分かるPEファンド

PEはPrivate Equityの略で、日本語では一般にプライベート・エクイティと呼ばれます。

PEファンドは、年金基金、保険会社、金融機関、大学基金などの投資家から資金を集め、企業の株式を取得します。そして経営陣とともに売上、利益、組織、事業構成などを改善し、数年後に株式を売却して投資資金を回収します。

重要なのは、単に値上がりを待つ投資ではないことです。

一般の株主が上場企業の株を少し買っても、社長を選び、工場を再編し、海外企業を買収する方針まで決めることはできません。PEは、過半数または経営へ強く関与できる株式を取得し、会社を変える側へ回ります。

ただし、「PE=未上場企業だけへの投資」ではありません。上場企業へTOB、つまり株式公開買付けを行い、残る株主の株式も一定の手続きで買い取って、非公開化することがあります。

会社の株式を取得し、一定期間その会社の所有者として経営を支援・改革し、最終的に別の所有者へ引き渡す仕組み

この「一定期間の所有者」という点が、PEを理解する鍵です。

PE会社、PEファンド、出資者は別の存在

PEの記事で最初につまずきやすいのが、「ファンド」という言葉です。

たとえば、ベインキャピタルやKKRは、投資を運営する会社やグループの名称です。実際の買収では、案件ごとに設立された会社や、複数の出資者から資金を集めたファンドが株式を取得します。

立場役割初心者向けのイメージ
出資者PEファンドへ資金を出す年金基金、保険会社、金融機関など
PE運営会社投資先を探し、買収・経営支援・売却を進めるファンドの運営者
PEファンド出資者の資金をまとめた投資の器会社を買うための資金プール
銀行など買収資金を融資するLBOで使う借入の提供者
投資先企業株式を取得され、経営支援を受ける実際に商品やサービスを提供する会社
専門家調査、契約、税務、再編を支える弁護士、会計士、投資銀行、コンサルタント
次の買い手PEが保有株式を売る相手事業会社、別のPE、株式市場の投資家

そのため、「KKRが会社を買った」と報じられても、法律上の直接の買い手は、KKRが運営・助言するファンドの傘下会社である場合があります。

詳しくは「株式会社とは何か|株主・社長・取締役・上場の仕組みを歴史から理解する」で解説しています。

PEファンドはどうやって会社を買うのか

  1. 投資家から資金を集める
  2. 買収候補の企業を探す
  3. 財務、法務、事業、労務などを調査する
  4. 株主や経営陣と価格・条件を交渉する
  5. 自己資金と必要な借入を使って株式を取得する
  6. 経営計画を実行する
  7. 数年後に株式を売却する

買収前の調査をデューデリジェンスといいます。

決算書だけでなく、顧客は離れないか、工場は更新が必要か、訴訟や環境問題はないか、従業員は不足していないか、技術やブランドは本当に競争力を持つかなどを確認します。

LBOとは何か

LBOはLeveraged Buyoutの略で、買収資金の一部に借入を使う方法です。

仮に100億円の会社を買うとして、ファンドの資金40億円と銀行借入60億円を組み合わせる場合を考えます。買収後、会社が生み出す利益や現金で借入を返しながら、事業価値を高めます。

しかし、業績が悪化しても借入は消えません。LBOは、少ない自己資金で大きな買収を可能にする一方、失敗したときの負担も大きくする仕組みです。

PEは会社をどう変えるのか

PEは、買収価格と売却価格の差だけで利益を得るわけではありません。商品の値付け、営業組織、店舗、工場、物流、在庫、デジタル化、採用、海外展開、追加買収、独立会社としての制度づくり、設備・研究開発への投資などを通じて企業価値を高めます。

ただし、店舗閉鎖や組織変更は、従業員や地域へ影響します。PEの実力は、「費用を削ったか」だけではなく、会社がファンドの手を離れた後も競争力を保てる仕組みを作れたかで見る必要があります。

なぜ数年後に会社を売るのか

PEファンドは、通常、企業を永久に保有するための組織ではありません。ファンドには投資期間と存続期間があり、出資者へ資金を返す必要があります。

出口内容その後の所有者
事業会社への売却同業企業や関連企業へ売る長期保有を前提とする企業が多い
別のPEへの売却次の成長段階を担当するファンドへ売る新しいPEファンド
IPO・再上場株式市場へ上場する多数の市場投資家

再上場できれば必ず成功というわけではありません。上場後も利益、投資、雇用が持続するかを見る必要があります。

PE、VC、アクティビスト、事業会社は何が違うのか

比較項目PEファンドVCアクティビスト事業会社による買収
主な対象成熟企業、中堅企業、事業部門スタートアップ、成長初期企業主に上場企業自社事業と関係する企業
株式の持ち方過半数・全株取得が多い少数株式が多い少数株式でも影響力を狙う経営権取得が多い
経営への関与取締役派遣、経営支援、組織改革創業者支援、採用、成長支援株主提案、対話、公開要求自社グループとして統合
保有期間原則として期限がある上場・売却まで方針と成果次第長期保有が多い
主な出口売却、別PE、IPOIPO、事業会社への売却市場売却など原則として売却前提ではない

日本のPE業界には誰がいるのか

世界規模で活動する主なPE

代表例には、KKR、ベインキャピタル、カーライル、CVCキャピタル・パートナーズ、ブラックストーン、アポロ、EQT、MBKパートナーズなどがあります。

日本で生まれた主なPE

国内系には、アドバンテッジパートナーズ、インテグラル、日本産業パートナーズ、ポラリス・キャピタル・グループ、J-STAR、ユニゾン・キャピタル、日本みらいキャピタル、丸の内キャピタルなどがあります。

アドバンテッジパートナーズは1997年、日本初の本格的なバイアウトファンドを立ち上げたと説明しています。

なぜ今、日本でPEが増えているのか

後継者がいない企業が増えている

中小企業庁も、後継者不在の場合にファンドを活用した第三者への承継しょうけいが可能であると案内しています。

大企業が事業を抱えすぎている

事業部門や子会社を切り離し、独立した会社としてPEへ売る方法をカーブアウトといいます。詳しくは「総合商社とは何か|三井物産・三菱商事から見る日本独自のビジネスの歴史」も参考になります。

上場したままでは改革しにくい場合がある

TOBで株式を買い集め、上場を廃止すれば、少数株主との調整を減らして改革を進めやすくなる場合があります。一方、市場の監視や情報開示が弱くなるため、非公開化そのものを良いことと決めつけることもできません。

資本効率への圧力が強まった

東京証券取引所は2023年、上場会社に対して、資本コストや株価を意識した経営を求めました。

事例で見るPEの役割

大企業から事業を切り離す――日立工機からKoki Holdingsへ

2017年、KKR系の会社による株式取得を経て上場を廃止し、2018年には社名をKoki Holdingsへ変更し、主要ブランドもHITACHIからHiKOKIへ変わりました。

上場企業を非公開化する――東芝

東芝は、日本産業パートナーズが関与するTBJHによるTOBを受け入れ、2023年12月20日に上場廃止となりました。公開買付けへ応募しなかった株主にも、公開買付価格と同額の1株4620円が交付されました。

川崎市幸区にあるラゾーナ川崎 東芝ビルの外観
ラゾーナ川崎 東芝ビル(2024年)。撮影:Akonnchiroll/Wikimedia Commons/CC BY-SA 4.0。

複数のPEファンドが競う――富士ソフト

富士ソフトをめぐっては、KKRとベインキャピタルが異なる買収提案を行いました。最終的にKKR側が株式取得を進め、富士ソフトは2025年5月16日に上場廃止となりました。

横浜市西区にある富士ソフト本社ビル
富士ソフト本社ビル(2009年)。Wikimedia Commons/Public Domain。

経営を立て直して再上場する――すかいらーく

すかいらーくは2006年にMBOを実施して上場を廃止し、2011年にベインキャピタル傘下へ入り、2014年に再上場しました。戦後の外食・小売・消費産業の変化については「戦後消費社会を変えた3人」で解説しています。

PEから別のPEへ売る――HITOWA

HITOWAは2019年にポラリス系へ、2024年にはMBKパートナーズへ株主が変わりました。PEから別のPEへ会社が売られる取引をセカンダリー・バイアウトと呼びます。

後継者不在の会社を引き継ぐ

日本で数が多いのは、中堅・中小企業の事業承継しょうけいです。PEが株式を取得し、社内人材や外部経営者を後継者として育てれば、会社を残せる可能性があります。

買われた会社の人には何が起きるのか

関係者起こり得る変化
創業者・旧株主株式を売却して経営から退く、一部株式を残して共同経営する
経営者続投、交代、新しい経営陣との共同運営
従業員評価制度、組織、勤務地、事業部門、雇用条件の変更
取引先仕入条件、発注量、契約先、支払条件の見直し
顧客店舗、価格、商品、ブランド、サービスの変更
地域社会工場・店舗の維持、閉鎖、雇用、税収への影響

日本企業の雇用制度については「なぜ日本は新卒一括採用なのか」で解説しています。

PEはハゲタカなのか

PEには、過大な借入、短期志向、人員削減や資産売却への偏り、少数株主との利害対立、非公開化後の情報不足などのリスクがあります。

一方、後継者不在企業の存続、カーブアウト、経営人材の投入、海外展開、企業再生、再上場などの役割もあります。仕組み自体を善悪で決めることはできません。

財閥から株式市場、PEへ――会社は誰のものか

戦前の財閥、戦後の企業集団と株式持ち合い、バブル崩壊後の機関投資家の台頭を経て、2020年代にはPEが大型上場企業の非公開化を担うようになりました。

詳しくは「財閥とは何か」と「大正の船成金とは?」もご覧ください。

PEのニュースを見るときの7つの確認点

  1. 誰が売ったのか
  2. なぜ売ったのか
  3. PEは何%の株式を取るのか
  4. どの程度の借入を使うのか
  5. 誰が経営するのか
  6. 何を成長させる計画なのか
  7. 最後に誰へ売る想定なのか

よくある質問

PEファンドは投資信託のように個人でも買えますか

一般的なPEファンドは、機関投資家などを主な出資者とし、個人が気軽に購入する公募投資信託とは異なります。

PEファンドとハゲタカファンドは同じですか

同じ意味ではありません。「ハゲタカ」は批判的な呼び方であり、PEは企業の株式を取得し、経営へ関与する投資手法・業界を指します。

PEに買われると必ず上場廃止になりますか

必ずではありません。未上場企業への投資や上場維持の支援もあります。

PEに買われると社名は変わりますか

変わる場合も、変わらない場合もあります。

PEはなぜ会社を何度も売るのですか

ファンドには出資者へ資金を返す期限があり、成長段階に応じて別の所有者へ引き継ぐためです。

外資系PEと国内PEはどちらが良いのですか

出身国だけでは判断できません。案件規模、業界経験、経営支援、借入方針、売却方針を比較する必要があります。

まとめ|PEは日本企業の「途中の所有者」である

PEファンドとは、企業の株式を買い、一定期間その会社の所有者として経営へ関与し、最終的に次の所有者へ引き渡す仕組みです。

PEは、会社を救う正義の存在でも、必ず会社を壊す存在でもありません。借入、経営者、人と設備への投資、売却先によって結果は変わります。

関連記事

参考文献・参考サイト

  1. 一般社団法人日本プライベート・エクイティ協会「沿革」
  2. 一般社団法人日本プライベート・エクイティ協会「会員一覧」
  3. 一般社団法人日本プライベート・エクイティ協会「PEファンドとは」
  4. 一般社団法人日本プライベート・エクイティ協会「日本におけるPE市場の概況」
  5. 経済産業省「産業金融政策」
  6. 経済産業省「中堅企業政策」
  7. 中小企業庁「事業承継を実施する」
  8. 日本取引所グループ「資本コストや株価を意識した経営」
  9. Advantage Partners「History」
  10. 東芝「当社の株式公開買付けについて」
  11. 日本取引所グループ「上場廃止等の決定:富士ソフト」
  12. KKR「KKR Completes Tender Offer for FUJI SOFT」
  13. Koki Holdings「沿革」
  14. Bain Capital Japan「すかいらーく」
  15. すかいらーくホールディングス「歴史・沿革」
  16. HITOWA「株主変更のお知らせ」2019年
  17. HITOWA「株主変更のお知らせ」2023年
  18. Polaris Capital Group「News & Media」
  19. Wikimedia Commons「Tokyo Stock Exchange Main Building」
  20. Wikimedia Commons「Toshiba Kawasaki HQ」
  21. Wikimedia Commons「Fujisoft」

事実確認:2026年7月20日