「ディグる? at Ginza Sony Park」は、SHISEIDOが長年生み出してきた広告やデザイン、言葉、メイクの表現を、2026年の感覚で楽しみ直す体験型イベントです。会期は2026年9月11日から20日まで。会場となるGinza Sony Parkの1階から4階を使い、「ルーツをディグる?」「グッズをディグる?」「メイクをディグる?」の3つの体験が展開されます。
近年はY2K、レコード、フィルムカメラ、ヴィンテージファッションなど、過去の文化やデザインを新しい感覚で取り入れる動きが広がっています。SHISEIDOは今回、自社の広告アーカイブを「懐かしい資料」として並べるだけでなく、来場者が好きなデザインや言葉を見つけ、グッズやメイクとして自分の側へ引き寄せる構成にしています。
実際に行ってわかったこと|初日15時台の混雑・ノベルティ
初日の2026年9月11日(金)、15:00から16:00まで約1時間滞在しました。各フロアへ入るための待ち列はなく、館内は比較的スムーズに見て回れました。体験単位では、3階のノベルティ無料配布と4階の化粧品体験・試供品配布で、少し並ぶ場面がありました。
会場外観とフロア構成



1・2階|歴代広告を見比べる
1・2階では、年代やテイストの異なるSHISEIDOの広告が大きく展示され、会場を歩きながら見比べられました。2階では壁面だけでなく、頭上にも広告が吊り下げられています。


3階|ノベルティと歴史的商品展示

3階では、歴代広告やコピーをモチーフにしたノベルティが無料で配布されています。1人1個で、展示されたラインナップから選んだあと、自販機形式の機械で受け取る仕組みです。




初日15時台の時点で、ラインナップ表にはすでに複数の「Out of Stock」表示が出ていました。クリアポーチの一部に加え、コットンポーチは全種類が売り切れ表示になっていました。現地では再入荷はないようだったため、目当てのノベルティがある場合は早めの来場がよさそうです。


3階ではノベルティ展示に加えて、資生堂の歴史的な商品も展示されていました。展示解説では、1897年発売のオイデルミンや1917年発売の資生堂七色粉白粉などが紹介され、実物と当時の広告を一緒に見られます。



4階|メイク体験・9種類のサンプルセット
4階では、SHISEIDOの化粧品を実際に試せるメイク体験が用意されていました。タイミングによって少し待つ場面はありましたが、長い行列になるほどではありませんでした。



さらに、4階ではSHISEIDOのサンプルセットを受け取れます。スタッフから袋を受け取ったあと、用意された全9種類の中から好きな3セットを選ぶ方式でした。スキンケア、ファンデーション、メンズ向けなど、内容の異なるセットが並んでいます。



同じフロアには、2026年10月発売の「GINZA WONDER × TOMO KOIZUMI」につながるドレス展示もありました。大きく広がる白いフリルと、上部の鮮やかな色彩が目を引きます。

5階の屋上には、このイベントに関連する展示や企画は見当たりませんでした。
「ディグる?」では何を見る?
1・2階の「ルーツをディグる?」では、SHISEIDOが時代ごとに発信してきた広告のデザインや言葉が一面に広がります。公式特設サイトでは、1925年の「オイデルミン」、1964年の「make-up Tokyo」、1966年の「ビューティケイク」、1978年の「練香水 舞」が代表例として紹介されています。
3階の「グッズをディグる?」では、過去の広告から着想した全40種類の限定グッズから、先着順で1点を持ち帰れます。さらに、好きな言葉のデザインを選び、Tシャツやトートバッグを制作する有料体験も用意されています。公式価格はTシャツ2,200円、トートバッグ1,650円です。限定グッズはなくなり次第終了です。
4階の「メイクをディグる?」では、これまでの広告デザインから着想したオリジナルメイクを体験できます。SHISEIDOメーキャップアーティストによるアドバイスも案内されています。会場では、2026年10月に発売される「GINZA WONDER × TOMO KOIZUMI」に先駆け、TOMO KOIZUMIのドレスコレクションも展示されます。
歴代広告から見るSHISEIDOの「美」の変化
今回のイベントを理解する鍵は、広告を年代順に眺めることです。資生堂の広告には、化粧品そのものだけでなく、その時代に新しいとされた色、身体、都市、女性像が映り込んでいます。
1925年「オイデルミン」|資生堂初の化粧品から続くデザイン
オイデルミンは、資生堂が1897年に初めて発売した化粧品です。西洋薬学の技術を応用した化粧水で、「資生堂の赤い水」として知られました。今回紹介される1925年の「オイデルミン」は、商品の発売年ではなく広告の年代です。
この時代の資生堂を考えるうえでは、1916年に初代社長・福原信三が設けた「意匠部」が欠かせません。意匠部はポスターや新聞・雑誌広告だけでなく、商品パッケージや店舗設計まで担当しました。資生堂は早い段階から、商品と広告、容器、売り場を別々に考えるのではなく、ブランド全体を一つのデザインとして組み立てていました。
1964年「make-up Tokyo」|東京を色にしたオリンピックの年
1964年の「make-up Tokyo」は、東京オリンピックが開かれた年の広告です。国立国会図書館に残る当時の広告資料には、オリンピックの年にふさわしい「東京カラー」として、東京の一日の移り変わりをイメージした5色の口紅が紹介されています。
ここで商品に与えられたテーマは、単なる「赤」「ピンク」といった色名ではなく「東京」でした。海外から多くの人が訪れ、都市の景観や生活文化が大きく変わった1964年に、資生堂は東京そのものを色彩として表現しました。今回のイベントで「make-up Tokyo」が取り上げられていることで、広告と都市の関係も見えてきます。
1966年「ビューティケイク」|「太陽に愛されよう」の健康美
1966年の「ビューティケイク」は、青空と海を背景に白い水着姿の前田美波里を写した「太陽に愛されよう」の広告で知られます。撮影は横須賀功光。日焼けした肌と強い日差しを前面に出したビジュアルは、戦後のレジャー文化や新しい健康美のイメージと結びつきました。
なお、会場の前身であるソニービルが銀座・数寄屋橋に開館したのも1966年です。資生堂の夏の広告と、ソニーの新しい情報発信拠点が同じ年に生まれていたことも、戦後の銀座を考えるうえで興味深い重なりです。
1978年「練香水 舞」|山口小夜子が示した日本的な美
1978年の「資生堂練香水 舞」では、モデルに山口小夜子、撮影に横須賀功光、アートディレクションとデザインに中村誠が参加しました。資生堂の公式アーカイブは、山口小夜子の黒髪のおかっぱ、切れ長の目を強調するアイラインが、「日本人女性の美」の一つのアイコンとして世界に知られるようになったと紹介しています。
1960年代の広告に見られた開放的な健康美と、1970年代後半の「舞」に見られる鋭く凝縮された日本的な美。今回の展示では、資生堂が一つの美の型を繰り返したのではなく、時代ごとに異なる表現を提案してきたことを見比べられます。
なぜ資生堂は広告とデザインに強いのか
資生堂は1872年に銀座で創業しました。1916年には意匠部を設け、広告、パッケージ、店舗などを社内のクリエイターが手がける体制を整えました。現在の資生堂クリエイティブにつながるこの流れは100年以上続いています。
そのため「ディグる?」で広告を大量に見せることは、過去のキャンペーンを懐かしむだけの企画ではありません。資生堂が商品開発と同時に、文字、写真、色、パッケージ、空間を通じて「美」を伝えてきた歴史そのものを素材として使う企画です。
銀座とGinza Sony Parkで開催される意味
資生堂は銀座で創業し、1921年には「東京銀座資生堂」の商標を採用しました。銀座は商品を売る場所であると同時に、資生堂が企業文化や新しい生活様式を発信してきた場所でもありました。
Ginza Sony Parkの前身であるソニービルは1966年、「街に開かれた施設」をコンセプトに開館しました。数寄屋橋交差点に設けられた約10坪の公共的な空間を、ソニー創業者の盛田昭夫は「銀座の庭」と呼びました。現在のGinza Sony Parkは、その考えを「銀座の公園」へ広げる形でつくられています。
銀座の成り立ちや近代以降の変化については、当サイトの「銀座の歴史散歩|京橋から新橋へ、一丁目~八丁目の12スポットを歩く」でも詳しく紹介しています。
TOMO KOIZUMIと2026年の「GINZA WONDER」
会場では、10月1日に数量限定発売されるSHISEIDOのホリデーコレクション「GINZA WONDER × TOMO KOIZUMI」に先駆け、TOMO KOIZUMIのドレスが展示されます。
TOMO KOIZUMIは、鮮やかな色彩と大きなフリルを特徴とするドレスで知られるデザイナーです。今回のホリデーコレクションは、そのラッフルチュールと色彩から着想を得ています。歴代広告を振り返る1・2階と、現在のファッションやメイクにつながる展示を同じ建物で体験できることが、「過去を現代にリミックスする」というイベントの構成を分かりやすくしています。
開催概要
| 名称 | ディグる? at Ginza Sony Park |
|---|---|
| 会期 | 2026年9月11日(金)~9月20日(日) |
| 時間 | 11:00~19:00(最終入場18:30) |
| 会場 | Ginza Sony Park(東京都中央区銀座5-3-1) |
| 料金 | 入場無料 |
| 予約 | 事前予約不要 |
| 主な内容 | 1・2階「ルーツをディグる?」、3階「グッズをディグる?」、4階「メイクをディグる?」 |
| 会場販売 | オリジナルグッズのみ。SHISEIDO商品の販売はありません |
開催情報は2026年9月11日時点の公式発表に基づきます。

