2024年12月21日(土)10時から、ゆる歴史散歩会の12人で、東京都渋谷区の國學院大學博物館を訪ねました。今回のテーマは、鎌倉時代の日本を揺るがした元寇(モンゴル襲来)。特別展「文永の役750年 Part2 絵詞に探るモンゴル襲来―『蒙古襲来絵詞』の世界―」を鑑賞し、後半は國學院大學の食堂「和(nagomi)」でランチ会を楽しみました。
今回の見学概要――博物館から学生食堂へ
会場は國學院大學渋谷キャンパスの学術メディアセンター地下1階にある博物館です。対象の特別展は2024年11月30日から2025年2月16日まで開催され、当日は展示替え前の「巻1」の公開期間(11月30日~12月22日)に当たりました。

『蒙古襲来絵詞』は何を伝える史料なのか
元寇は、モンゴル帝国を率いたフビライのもとで行われた日本への二度の軍事侵攻です。1274年の文永の役と1281年の弘安の役を合わせて、一般に「蒙古襲来」と呼びます。日本側の御家人による戦闘、海を越える軍船、異なる戦法や武器など、複数の観点から読み解く必要があります。
重要な史料の一つが、肥後国の御家人・竹崎季長の活動を描く『蒙古襲来絵詞』です。季長の戦功を描いた絵巻には、制作の目的や成立・伝来、後世の補筆といった史料上の論点もあります。そのため、戦闘場面の描写は模写本との違いも含めて検討されています。
今回の特別展では、菊池神社と根岸家所蔵の模写本を中心に、原本や模写本どうしの違いが扱われました。博物館の公式解説によれば、同絵巻の模写本は約40例が知られています。同じ出来事を示す図像にも異同があり、「何が描かれているか」に加えて「いつ、誰が、どの系統の絵を写したのか」が研究上の論点になるのです。
海底から現れた「てつはう」――絵巻と考古学を結ぶ
写真に写る球状の陶製品は「てつはう」。長崎県松浦市の鷹島の海底遺跡から出土した、元軍に関連する爆発性の兵器です。表面には海底で長く過ごしたことを物語る付着物が残っています。展示では絵巻に描かれた爆発物との対応関係が詳しく解説されていました。

器が二つ並ぶ展示ケースでは、破損の程度や形状を見比べることができました。球の表面に貝殻が固着した姿は、陸上に伝わった絵巻とは異なる、海底考古学ならではの情報を伝えます。

展示パネルによれば、1992年に鷹島の神崎海岸で採集された球状土製品をX線CTで調べると、内部に小さな鉄片・陶器片・木片が詰まっていたことが分かったといいます。「てつはう」は、容器の中に火薬と破片を入れて爆発させ、被害を与える兵器と考えられます。絵巻の一場面と実物資料を照合するときは、絵の表現と発掘された物そのものを区別して考えることが重要です。

元軍船の模型で考える、海を渡った遠征
会場には船の復元模型も展示されていました。帆装や船体の形を立体的に見ると、兵士や武具・食料を海上輸送する遠征が、いかに大きな準備を必要としたかを想像する手掛かりになります。

とくに1281年の弘安の役では、多数の船と兵員を動員した遠征の末、鷹島沖を含む海域に戦いの痕跡が残りました。船体や積荷、武器に関連する水中遺物の調査は、文字や絵巻だけでは分からない軍事・航海・輸送の具体像を考えるための重要な手掛かりです。
鉄製兜と矢束――兵士たちの装備を見つめる
海底から出土した鉄製品も印象的でした。海中の鉄製品は腐食や海底堆積物との固着が進むため、発見されたままの外観だけでは元の形を読み取りにくくなります。展示は、実物に付着した堆積物も含め、発掘資料がどのように扱われるかを考える機会になりました。

「矢束」は戦闘に用いる矢を複数まとめて収納したものです。展示解説では、鷹島海底遺跡の類例は矢柄や矢羽が失われても、錆や堆積物で覆われた鉄部分と矢筒に使われた革の一部が残ることが示されていました。武器は単独の「矢」だけではなく、保管・運搬の仕組みとセットで理解できます。

この日は参加者が展示ケースの前に集まり、関連史料を見ながら鑑賞する場面もありました。絵巻の一場面に描かれた人々が、実際にはどのような道具を使っていたのか。展示を通じて問いを広げられるのが、博物館見学の楽しさです。

もう一つの注目資料は「鉄製兜」。鷹島神崎港に由来する13世紀の資料として紹介され、複数の鉄製兜が海底から見つかったことが説明されています。展示解説では、鉄錆と海底堆積物が固着する現象を「コンクリーション」と呼び、X線撮影などを用いて内部を調べることも示されていました。


鷹島の海底で発見された兜や矢束などの資料は、元軍の武装や物資の保管方法を調べる手掛かりになります。絵巻に描かれた武具と比較することで、戦闘の実態を多角的に検討できます。なお、絵詞の写本研究を中心に据えた今回の特別展と、同館が先に開催した水中考古学をテーマとするPart1は、異なる角度から同じ歴史に向き合う企画でした。
後半は國學院大學の食堂「和(nagomi)」でランチ会
展示鑑賞の後は、國學院大學の食堂「和(nagomi)」へ移動しました。メニューボードには定食、カレー、うどん、丼などが並んでいました(料理・価格は撮影当時のものです)。

大きな窓から光が入る広々とした食堂で、参加者とともに食事の時間を過ごしました。博物館で歴史を学ぶ前半と、テーブルを囲んで交流する後半。二つの時間を組み合わせた、ゆる歴史散歩会らしい一日です。


関連記事と、歴史を楽しむ次の一歩
大学博物館での展示鑑賞と学食ランチに関心のある方は、同じ國學院大學博物館を訪ねた別の回のレポートも参考になります。國學院大學博物館の関連記事では、展示テーマの違いも楽しめます。博物館での観察を中心とした別の企画としてインターメディアテクと丸の内の夜さんぽ、歴史を人物と資料から読み解く回として牧野記念庭園の開催レポートもご覧ください。今後の企画は開催レポート一覧からたどれます。
展示で知った歴史を身近な土地でも調べたいときは、TimeWalkも便利です。現在地や指定地点の近くにある歴史スポットを地図で探し、自分で歴史散歩を楽しめるWebアプリです。
まとめ――絵巻と出土資料を一緒に読む面白さ
『蒙古襲来絵詞』の模写本が伝える戦いの姿と、鷹島沖の海底から出土した兵器や装備。その両方を見比べられた今回の展示は、元寇の歴史が絵巻の研究と考古学的調査によって明らかにされていくことを示していました。見学後は大学食堂でランチ会を楽しみ、歴史に触れる時間と参加者同士の交流を一日で味わいました。
参考資料
- 國學院大學博物館:文永の役750年 Part2「絵詞に探るモンゴル襲来」公式展覧会案内(会期・展示替え・展覧会趣旨)
- 國學院大學博物館:特別展出品目録(PDF)(史料・出品資料)
- 國學院大學博物館:特別展チラシ(PDF)(会場・展示概要)
- 文化遺産オンライン:てつはう(出土地・材質・兵器の解説)
※展示の史料解説は上記の公式資料と当日撮影した解説パネルを参照しました。開催人数、当日の鑑賞・ランチ会は主催者提供情報に基づいています。

