「日本の手漉和紙技術」を体験してみよう!江戸時代から続く小津和紙の貸切体験 開催レポート

参加者が講師に見守られながら手漉き和紙を体験する様子

2025年8月30日(土)13時30分から、東京・日本橋の小津和紙で「『日本の手漉和紙技術』を体験してみよう!江戸時代から続く工房の貸切体験」を開催しました。参加者は11名。映像と展示で和紙の歴史や技術を学んだ後、専用工房で一人ずつ紙漉きに挑戦する、学びと実践が一体になったイベントです。

普段何気なく触れている紙も、原料や道具、職人の手の動きを知ると、まったく違った表情を見せます。今回は、江戸時代から紙の町として歩んできた日本橋で、手仕事の奥深さを体感しました。

映像で知る手漉き和紙と小津和紙

最初は映像を見ながら、手漉き和紙ができるまでの工程と、小津和紙の歩みについて学びました。完成品だけを見ると一枚の紙ですが、その背景には原料の処理、繊維をほぐす作業、紙料を水に分散させる工程、漉き、圧搾、乾燥といった多くの仕事があります。

小津和紙で映像を見ながら手漉き和紙について学ぶ参加者
はじめに映像で手漉き和紙の工程や小津和紙について学びました。

紙漉き体験を始める前に工程全体を知ったことで、この後に扱う道具や一つひとつの動作の意味が理解しやすくなりました。

小津和紙の歴史

小津和紙の歴史は、小津清左衛門長弘おづせいざえもんながひろが承応2年(1653)に江戸・大伝馬町で紙問屋を開いたことに始まります。現在の所在地も創業地にあたる日本橋本町です。伊勢松阪出身の商人が江戸へ進出し、成長する都市の紙需要を支えたという点で、小津和紙の歩みは江戸商業史の一部でもあります。

江戸では行政文書や帳簿、出版物、浮世絵、障子、包装など、暮らしのあらゆる場面で紙が必要とされました。小津は長い年月にわたり紙を扱い続け、現在は全国の手漉き和紙の販売に加え、史料館、ギャラリー、文化教室、手漉き体験を通して紙文化を伝える拠点となっています。和紙は書道や絵画だけでなく、文化財修復や表装にも用いられます。

「越後門出和紙 かみわさこきの家 展」を鑑賞

当日は小津ギャラリーで「越後門出和紙 かみわさこきの家 展」が開催されていました。会期は2025年8月26日から30日までで、越後門出和紙えちごかどいでわしの代表・小林康生こばやしやすおさんによる展示です。

小津ギャラリーの「越後門出和紙 かみわさこきの家 展」を鑑賞する参加者
開催中だった「越後門出和紙 かみわさこきの家 展」を、解説を聞きながら鑑賞しました。

紙を単なる平面素材ではなく、自然素材を暮らしの中でどう生かすかという視点から生まれた作品を、たっぷりの解説とともに鑑賞しました。同じ和紙でも、産地や原料、漉き方、加工によって表情が変わることが伝わります。

「日本の手漉和紙技術」とは

「和紙:日本の手漉和紙技術」は、2014年にユネスコ無形文化遺産の代表一覧表へ記載されました。構成要素は、石州半紙せきしゅうばんし本美濃紙ほんみのし細川紙ほそかわしの三つです。いずれも、植物のこうぞを主な原料とし、地域で受け継がれてきた伝統技術と共同体の営みを含めて評価されています。

一般的な手漉き和紙づくりでは、楮の皮から不純物を取り除き、煮て柔らかくし、叩いて繊維をほぐします。それを水に入れ、植物由来の粘剤を加えて繊維を分散させ、簀桁すげたですくいます。簀桁を前後左右に動かして繊維を絡ませ、薄くても強い紙の層を作り、圧搾後に板などへ貼って乾かします。

手漉き和紙の価値は完成品の美しさだけではありません。原料を育てる人、道具を作る人、紙を漉く人、地域で技術を教える人がつながり、知識と技を次世代へ渡していく点にもあります。今回の体験は簡略化された工程ですが、紙の厚みをそろえる難しさや、水と繊維を扱う繊細さを身体で理解できました。

エプロンを着け、体験工房でレクチャー

展示鑑賞後は専用の体験工房へ移動し、水を使うため全員でエプロンを着用しました。

手漉き和紙体験の前にエプロンを着用する参加者
体験工房に移動し、紙漉きに備えてエプロンを着用します。

講師の方から道具の持ち方、紙料のすくい方、簀桁の動かし方、水の切り方について説明を受けました。

小津和紙の体験工房で手漉き和紙のレクチャーを受ける参加者
専用の体験工房で、道具の持ち方や漉き方の説明を受けました。

動作は簡単そうに見えますが、簀桁を傾ける角度や動かす速さが少し違うだけで、紙の厚みに偏りが出ます。講師の手本を見てから、交代で実践に入りました。

一人ずつ手漉き和紙に挑戦

簀桁を水槽へ入れ、紙料をすくい、表面を見ながら水を切っていきます。

水槽に手を入れて一人ずつ手漉き和紙を体験する参加者
交代しながら一人ずつ手漉き和紙に挑戦しました。

初めてでも比較的きれいに仕上げる方がいる一方、しわが寄ったり、薄い部分が破れたりする場面もありました。均一な一枚を作る難しさは、実際に手を動かして初めて実感できます。

小津和紙の手漉き和紙体験で紙料をすくう参加者
水の中の紙料を均一にすくい上げる感覚を確かめます。

うまくいかなかったときは、その場でやり直しながら再挑戦しました。水の中では輪郭が曖昧な紙料が、簀の上で少しずつ「紙」らしい面になっていきます。

参加者が講師に見守られながら手漉き和紙を体験する様子
講師の手本を思い出しながら、参加者同士でも工程を確認しました。

順番を待つ間も、講師の手元や体験中の人の動きを見ながら工程を確認しました。自分の番だけでなく、ほかの人の試行錯誤も学びになります。

講師の手本と、紙をはがす工程

講師の方は簀桁を動かしながら、紙料を均一に行き渡らせる手本を見せてくださいました。

講師が簀桁を持ち上げて紙漉きの手本を見せる様子
講師の手本を見ながら、簀桁の動かし方と水の切り方を学びました。

漉き終えた紙はまだ水分を多く含み、とても傷つきやすい状態です。木枠からはがす工程では、端を持ち上げ、破れないよう少しずつ移します。

漉き上げた和紙を木枠から丁寧にはがす参加者
漉き上げた湿った和紙を、破らないよう慎重にはがします。

湿った紙は完成品とは異なる重さと柔らかさがあり、少し力を入れすぎると形が崩れます。紙漉きだけでなく、その後の扱いにも慎重さが求められました。

乾燥させて、自分だけの和紙が完成

最後は漉いた紙を平らな面に貼って乾燥させ、一枚の和紙として仕上げます。

乾燥板に貼られた手漉き和紙と刷毛
最後に和紙を乾燥させて完成です。出来上がった一枚は記念に持ち帰りました。

しわや厚みの違いも、手で作った一枚ならではの個性です。完成した和紙はそれぞれ記念に持ち帰りました。映像、展示、解説、体験という順に進んだことで、「和紙を知る」だけでなく「和紙が生まれる感覚」まで味わえる時間となりました。

まとめ

今回は、江戸時代から続く小津和紙の歴史、ユネスコ無形文化遺産「和紙:日本の手漉和紙技術」、越後門出和紙の展示、そして紙漉き体験を一度に学びました。日本橋という歴史ある商業地で、紙を売る文化と紙を作る技術の両方に触れられたことも、この企画の大きな魅力です。

歴史初心者の方や一人参加の方にも、実物と体験を通して理解しやすい内容でした。ゆる歴史散歩会では、街歩きだけでなく、工房や施設で伝統文化を体験するイベントも開催しています。

TimeWalkのご紹介

今回はTimeWalkを利用していません。TimeWalkは、歴史スポットの見どころをスマートフォンで確認しながら散策できるサービスです。対応コースや使い方は、TimeWalk公式サイトをご覧ください。

参考資料