楽天市場、楽天カード、楽天銀行、楽天証券、楽天トラベル、楽天ペイ、楽天モバイル――。「楽天」と付くサービスは、買い物、旅行、金融、通信まで生活のかなり広い範囲に広がっています。
では、楽天グループは実際には何で儲けているのでしょうか。
2025年12月期の最終損益を見ると、楽天グループは1,778億円の赤字でした。一方、本業の状態を示す指標の一つであるNon-GAAP営業利益は1,063億円の黒字です。2026年第2四半期には、親会社の所有者に帰属する四半期利益が77億円となり、6年ぶりに四半期黒字へ戻りました。
この数字だけでも、「楽天は赤字企業なのか、黒字企業なのか」という疑問が出てきます。
答えを理解するには、楽天を一つの事業として見るより、楽天市場などのインターネットサービス、カード・銀行・証券などのフィンテック、そしてモバイルという巨大な3本柱に分けて見る必要があります。
さらに重要なのが、それぞれを別々に見るだけでなく、「楽天ID」「楽天ポイント」「楽天カード」「楽天モバイル」などを使って利用者を複数サービスへ回遊させる楽天経済圏の仕組みです。
この記事では、楽天市場がどう稼ぐのか、なぜ金融事業の利益が大きいのか、なぜモバイルで巨額赤字を出しても撤退しなかったのか、物流や楽天シンフォニーで何が起きたのか、そしてAIで楽天経済圏をどう変えようとしているのかまで、2026年の最新決算を基に整理します。
- まず結論|現在の楽天は「金融が稼ぎ、モバイルの赤字が縮小している」
- 楽天はどうやって現在の経済圏を作ったのか
- 楽天市場はどうやって儲けている?
- 実は楽天市場以上に利益を稼ぐフィンテック
- 楽天ポイントは「値引き」だけを見ると本質を見失う
- なぜ楽天はモバイルの巨額赤字を許容してきたのか
- 楽天モバイルは黒字なの?赤字なの?
- 1,075万回線は「1,075万人の個人利用者」という意味ではない
- 2025年の最終赤字1,778億円は何だったのか
- 財務諸表を3枚で見る|PL・BS・CFの要点
- 「赤字は全部先行投資」ではない|物流と減損を見る
- 楽天シンフォニーとは何を売っている会社?
- 2026年、楽天のフィンテックはさらに一体化する
- 資金調達は改善したが、今後も重要な確認ポイント
- AIが次の「楽天経済圏の入口」になる
- YouTubeから楽天市場へ|経済圏の入口を楽天の外にも広げる
- 2026年現在、楽天の戦略は成功しているのか
- 楽天を見るときに覚えておきたい5つの数字
- よくある質問
- まとめ
- 参考文献・公式資料
まず結論|現在の楽天は「金融が稼ぎ、モバイルの赤字が縮小している」
楽天グループの2026年第2四半期の数字を大きく3つに分けると、構造が見えてきます。
| セグメント | 売上収益 | Non-GAAP営業損益 |
|---|---|---|
| インターネットサービス | 3,381億円 | +231億円 |
| フィンテック | 2,954億円 | +692億円 |
| モバイル | 1,214億円 | ▲331億円 |
| 連結全体 | 6,655億円 | +420億円 |
一番利益を稼いでいるのはフィンテックです。
楽天市場や楽天トラベルなどを含むインターネットサービスも大きな利益を出していますが、楽天カード、楽天銀行、楽天証券などを含むフィンテックのNon-GAAP営業利益は692億円で、その約3倍です。
一方、モバイルは331億円の営業赤字でした。
ここで、3セグメントの売上を単純に足すと連結売上6,655億円を上回ります。セグメント間にはグループ内取引が含まれており、連結決算では内部取引を消去するためです。「各事業の売上を足した数字」と「楽天グループ全体の売上」が一致しないのは、この連結会計の仕組みによります。
楽天はどうやって現在の経済圏を作ったのか
現在の巨大な楽天経済圏は、1997年に始まった小さなインターネット・ショッピングモールから育ちました。
楽天市場がサービスを始めた1997年5月、運営は6人、サーバーは1台、出店店舗は13店でした。当時は「インターネットで商品を買う人は増えない」という見方も強かった時代です。
2002年には楽天ポイントを導入します。買い物でポイントを受け取り、次の買い物に使う仕組みが利用者を楽天市場へ戻す力になりました。
2003年には現在の楽天証券につながるDLJdirect SFG証券を買収。2004年には現在の楽天カードにつながる会社を取得し、2005年に楽天カードのサービスを開始します。2009年にはイーバンク銀行を取得し、現在の楽天銀行へつながりました。
こうして楽天は、ECだけでなく、旅行、カード、証券、銀行、電子マネー、決済へ事業を拡大しました。そして2020年には携帯キャリアとして楽天モバイルの本格サービスを開始します。

この流れを簡単にすると、次のようになります。
楽天市場
↓
楽天ID・楽天ポイント
↓
楽天カード
↓
楽天証券・楽天銀行
↓
楽天ペイなどの決済
↓
楽天モバイル
重要なのは、サービスを増やすこと自体が目的ではなく、同じ利用者に複数の楽天サービスを使ってもらうことです。
楽天市場で買い物する人が楽天カードを使い、引き落とし口座に楽天銀行を設定し、楽天証券で積み立て、楽天モバイルを契約する。各サービスが次のサービスへの入口になります。
この仕組みが「楽天エコシステム」「楽天経済圏」です。
楽天市場はどうやって儲けている?
楽天市場は、楽天自身が大量の商品を仕入れて販売する小売業というより、多数の店舗を集めるB2B2C型のオンラインモールとして始まりました。
店舗側は楽天市場という売り場に出店し、楽天は店舗から出店料やシステム利用料などを受け取ります。
2026年現在の出店プランでは、月額出店料はプランによって2万5,000円、6万5,000円、13万円。売上に対するシステム利用料はプランなどにより2.0~7.0%です。さらに楽天ペイ、楽天ポイント、アフィリエイト、R-Messeなどに関連する費用があります。
たとえば楽天市場で1万円の商品が売れた場合、その1万円がそのまま楽天の売上になるわけではありません。商品代金の中心は出店店舗の売上で、楽天はモールの運営や決済、販促、広告などを通じて収益を得ます。
楽天市場には、店舗から見ると「人が集まる巨大な売り場」としての価値があります。楽天側から見ると、買い物のたびに楽天会員との接点が生まれ、カード、ポイント、広告、決済、金融などほかの事業へつなげる入口にもなります。
2026年第2四半期の国内EC流通総額は1兆5,322億円でした。これは楽天の売上高ではなく、楽天の国内ECサービス上で動いた取引額を見る指標です。
実は楽天市場以上に利益を稼ぐフィンテック
楽天の決算で初心者が最も驚きやすいのが、フィンテックの利益の大きさです。
2026年第2四半期のフィンテックセグメントは、売上収益2,954億円、Non-GAAP営業利益692億円でした。
楽天カード
楽天カードは、利用者がカードで支払うたびに加盟店側から得られる手数料などが収益の基盤になります。ショッピング利用だけでなく、分割・リボ、キャッシングなど金融サービスもあります。
2026年第2四半期の楽天カードのショッピング取扱高は7.1兆円でした。
楽天市場で楽天カードを使うとポイント面でメリットが生まれ、カード利用が増える。カードを持つと楽天市場を使う動機も強くなる。この相互送客が楽天らしい特徴です。
楽天銀行
銀行は、預金などで集めた資金を貸出や運用に回し、その金利差や各種手数料などで収益を得ます。
楽天銀行は2026年6月末で1,846万口座、単体預金残高13.3兆円まで拡大しました。日銀の政策金利引き上げによる金利収益増加も追い風となり、2026年第2四半期には四半期として経常収益・経常利益とも過去最高を更新しています。
楽天証券
楽天証券は、株式、投資信託、FXなど幅広い金融商品を扱います。国内株式の手数料無料化が進んだ現在は、金融収益、投資信託関連、各種商品・サービスなど複数の収益源を持ちます。
2026年6月末の証券総合口座数は1,439万口座、NISA口座は792万口座でした。
このカード・銀行・証券を一体で考えると、楽天フィンテックの強さが見えてきます。
楽天ポイントは「値引き」だけを見ると本質を見失う
楽天ポイントは利用者にとってはお得な還元ですが、楽天側にとっては経済圏を動かす共通通貨に近い役割を持ちます。
楽天市場でもらったポイントを楽天トラベルや楽天ペイで使う。カード利用で得たポイントを次の買い物に使う。ポイントの期限やキャンペーンをきっかけに、再び楽天のサービスを利用する。
この循環によって、楽天は一度獲得した利用者との接点を増やせます。
一つのサービスだけを使う人より、カード、銀行、証券、モバイルなど複数サービスを使う人の方が楽天グループ内に長く滞在しやすく、別のサービスを提案するコストも下がります。
そのため、楽天ポイントの原資だけを見て「ポイントを配るほど損をする」と考えると全体像を見誤ります。ポイント施策は、再利用、クロスユース、顧客維持まで含めて評価されます。
なぜ楽天はモバイルの巨額赤字を許容してきたのか
楽天グループを理解する最大の疑問がここです。
2025年12月期のモバイルセグメントは、売上収益4,828億円に対してNon-GAAP営業損失1,618億円。2026年第2四半期も331億円の営業赤字です。
それでも楽天がモバイルを続ける理由は、通信事業そのものの黒字化だけでなく、スマートフォンを楽天経済圏への強力な入口にできるからです。
楽天が2024年に公表した分析では、楽天モバイルのMNO個人契約者は非契約者と比べ、契約後2年間で新たに利用する楽天グループのサービス数が平均2.45サービス多くなりました。
さらに一人当たり年間購買額・取扱高を比較すると、楽天モバイル契約者は非契約者より、楽天市場は49.7%、楽天トラベルは12.0%、楽天カードは25.9%高いという結果でした。
これは楽天が自社データを基に算出した比較で、すべての利用者に同じ差が出るという意味ではありません。それでも、モバイル契約者がほかの楽天サービスも利用するという楽天側の戦略を数字で示す材料になります。

通信事業には基地局、ネットワーク設備、周波数対応など巨額の設備投資が必要です。楽天モバイルは2026年度のネットワーク関連設備投資として2,000億円を計画し、第2四半期だけでも393億円を投資しました。
つまり楽天モバイルの損益を見るときは、「携帯料金でいくら儲けたか」と「モバイル契約者が経済圏全体でどれだけ価値を生んだか」の両方を見る必要があります。
楽天モバイルは黒字なの?赤字なの?
ニュースを読むと、「楽天モバイル黒字化」と「楽天モバイル赤字」という表現が同時に出てきます。
これは利益指標が違うためです。
2026年第2四半期の楽天モバイル単体は、Non-GAAP営業損失323億円で営業赤字でした。一方、EBITDAは59億円の黒字です。
EBITDAは、営業利益に減価償却費などを加えて見る指標です。通信会社は基地局やネットワーク設備への投資額が大きく、それらの設備は数年にわたって減価償却されます。そのため、設備の減価償却を含む営業利益と、減価償却前の稼ぐ力を見るEBITDAには大きな差が出ます。
2025年通期には、楽天モバイルが携帯キャリア事業参入後初めて通期EBITDA黒字を達成しました。
したがって2026年時点の正確な見方は、「楽天モバイルはEBITDAでは黒字化したが、Non-GAAP営業利益ではまだ赤字」です。
1,075万回線は「1,075万人の個人利用者」という意味ではない
2026年6月末の楽天モバイル全契約回線数は1,075万回線です。
ただし、この数字にはMNOだけでなくMVNE、MVNO、BCP等回線も含まれます。楽天の決算資料でもその定義が明記されています。
「1,075万回線突破」という数字を見るときは、個人スマートフォン利用者だけを数えた数字ではなく、楽天が定義する総契約回線数として読む必要があります。
回線数だけでなく、一人当たり収益を示すARPU、解約率、ネットワーク品質、営業損益を合わせて見ると事業の改善度が分かります。
2025年の最終赤字1,778億円は何だったのか
2025年12月期の楽天グループは、売上収益2兆4,965億円、IFRS営業利益143億円を計上しました。それでも親会社の所有者に帰属する最終損益は1,778億円の赤字でした。
ここで「本業が全部赤字だった」と理解すると実態とずれます。
同じ年度のNon-GAAP営業利益は1,063億円の黒字でした。Non-GAAP営業利益は、楽天が一時的と判断する損益などを調整して事業の継続的な収益力を見るために使う指標です。
一方、最終利益までには、減損、金融収支、持分法損益、税金、非支配株主に帰属する利益などが加わります。
2025年度は金融収益・費用の純額が360億円の費用、持分法損失79億円、法人所得税費用937億円となりました。さらに、楽天シンフォニーや物流などで減損も発生しています。
つまり「営業黒字なのに最終赤字」という状態は、営業段階より後に大きな費用や損失が発生した結果です。
財務諸表を3枚で見る|PL・BS・CFの要点
ここまでの数字を財務諸表に沿って並べると、楽天の現在地を整理しやすくなります。以下は楽天グループの2026年1〜6月の連結財務諸表から、この記事を読むうえで重要な項目だけを抜き出した要約です。
PL(損益計算書)|どこまで利益が残ったか
| 項目 | 2026年1〜6月 | 何を見る数字? |
|---|---|---|
| 売上収益 | 1兆3,091億円 | グループ全体の収入規模 |
| IFRS営業利益 | +504億円 | 営業段階で残った利益 |
| 税引前利益 | +179億円 | 金融収支などを反映した後の利益 |
| 四半期利益 | +254億円 | 連結グループ全体の最終利益 |
| 親会社の所有者に帰属する四半期利益 | ▲109億円 | 楽天グループの親会社株主に帰属する最終損益 |
記事冒頭の「77億円の四半期黒字」は2026年4〜6月だけの数字です。この表は1〜6月累計なので、親会社帰属損益は109億円の赤字になります。単独四半期と累計期間を分けて読む必要があります。
BS(貸借対照表)|資産と資本の大きさ
| 項目 | 2026年6月末 | 何を見る数字? |
|---|---|---|
| 総資産 | 31兆1,359億円 | グループが保有・運用する資産の総額 |
| 資本合計 | 1兆3,182億円 | 負債を除いた資本の総額 |
| 親会社の所有者に帰属する持分 | 9,153億円 | 資本のうち親会社株主に帰属する部分 |
| 連結資本比率 | 4.2% | 総資産に対する資本合計の割合 |
楽天はカード、銀行、証券を大規模に抱えるため、金融事業の資産と負債が連結BSを大きく膨らませます。総資産31兆円や資本比率4.2%は、金融事業を持たない一般企業と単純比較せず、事業構成と合わせて見る数字です。
CF(キャッシュフロー計算書)|現金はどう動いたか
| 項目 | 2026年1〜6月 | 何を見る数字? |
|---|---|---|
| 営業活動によるCF | ▲3,017億円 | 本業と金融事業の資金移動 |
| 投資活動によるCF | ▲828億円 | 設備・無形資産・有価証券などへの投資と回収 |
| 財務活動によるCF | ▲9,674億円 | 借入、社債、金融事業の資金調達・返済など |
| 期末の現金及び現金同等物 | 4兆4,905億円 | 2026年6月末に保有する現金等 |
楽天のCFには、証券事業の金融資産・金融負債、銀行の預金や貸出など大きな資金移動が含まれます。そのため、営業CFがマイナスという数字だけで「本業で現金を稼げていない」と判断すると実態を誤りやすく、インターネット、フィンテック、モバイルの各事業損益と合わせて見る必要があります。
出典:楽天グループ「FY2026 Second Quarter Consolidated Financial Results」。数値は原資料の百万円単位を億円単位に丸めています。
「赤字は全部先行投資」ではない|物流と減損を見る
楽天の赤字について「将来のための先行投資だから問題ない」と一括りにする説明にも注意が必要です。
先行投資と、過去の投資が想定どおりの収益を生まないため資産価値を引き下げる減損は意味が違います。
2025年12月期には、楽天シンフォニーのOpen RAN事業で約205億円、ロジスティクス事業で約100億円の減損を計上しました。
楽天シンフォニーではOpen RAN事業の成長が当初想定より長期化したこと、物流では将来の荷量増加ペースが遅れたことなどが理由として説明されています。
さらに2026年第2四半期には、物流事業で固定資産の減損等170億円を追加計上しました。貸し出していた倉庫スペースの将来キャッシュフローを見直した結果、対象資産の回収可能価額をゼロとして評価したものです。
この部分は楽天のビジネスを見るうえで重要です。
将来成長のために資金を投じている事業もある一方、過去の投資判断を修正して損失処理している事業もあります。
楽天シンフォニーとは何を売っている会社?
楽天シンフォニーは、楽天モバイルで構築してきた通信ネットワーク技術やソフトウェアを、世界の通信事業者へ提供する事業です。
中心概念の一つがOpen RANです。従来の携帯電話ネットワークでは特定メーカーの機器や仕組みに依存しやすかった領域を、よりオープンな仕様で組み合わせやすくする考え方です。
楽天は自社の携帯ネットワークを構築する過程で得た技術を、自社通信事業のためだけに使うのではなく、外部へ販売するビジネスに広げました。
2025年度にはOpen RAN関連で約205億円の減損を計上した一方、楽天シンフォニーは設立後初めて通期Non-GAAP営業黒字を達成しました。
「モバイルで使った技術を世界へ売る」という構想自体は続いており、今後は売上規模だけでなく継続的に利益を出せるかが焦点になります。
2026年、楽天のフィンテックはさらに一体化する
楽天グループは2026年、フィンテック事業の大規模な再編を進めています。
計画では楽天銀行を中心に、楽天カードと楽天証券ホールディングスを傘下へ集約します。
楽天が狙うのは、カード、銀行、証券を組織面でも近づけ、顧客獲得、資金調達、データ活用、AI、システム、マーケティングなどの重複を減らすことです。
会社側は、この再編による経常利益ベースのシナジー効果を、2028年3月期に年間約330億円、中期的には年間850億円以上と見込んでいます。
これは会社側の将来予測なので、実現した利益ではありません。ただ、現在の楽天で最も利益を稼ぐフィンテックをさらに成長させる戦略として重要です。
楽天銀行の預金、楽天カードの決済、楽天証券の投資資産が同じ経済圏の中でつながるほど、楽天は利用者との接点を増やせます。
資金調達は改善したが、今後も重要な確認ポイント
楽天モバイルへの巨額投資が続いた時期、楽天グループでは社債償還や資金調達が大きな注目点になりました。
2026年5月には保有有価証券の一部売却で約2,000億円を調達。楽天は2026年に予定する社債償還について全額資金手当て済みと説明しています。
同時に会社は、有利子負債の削減や財務指標の改善を重要課題として掲げています。2027年以降の社債償還についても、複数の資金調達手段を組み合わせて対応する方針です。
したがって、2026年の資金繰りだけを見て財務問題が完全に終わったと判断するより、モバイルのキャッシュ創出力、有利子負債、社債償還、資産売却などを継続して見る方が楽天の状態を理解できます。
AIが次の「楽天経済圏の入口」になる
楽天が2026年に強く押し出しているのがAIです。
これまで楽天経済圏への入口は、楽天市場、楽天ポイント、楽天カード、楽天モバイルなどでした。現在はそこに「楽天AI」を加え、AIが利用者の目的を聞き取り、商品、旅行、金融など各サービスへ案内する構想を進めています。
2026年第2四半期時点で楽天は17サービスにAIエージェントを導入し、さらに7サービスへの近い時期の展開、50以上のサービスへの拡大を計画しています。
楽天市場の検索では、LLMを使って検索意図を理解する仕組みをA/Bテストした結果、注文数が0.52%、流通総額が0.87%増加しました。楽天は年間換算で約128億円の流通総額押し上げに相当すると試算しています。
楽天市場のAIコンシェルジュについても、楽天側の比較では購入までの時間が約41%短縮し、平均注文額が約17%増えたとしています。
数字は楽天による自社測定・試算ですが、AIの狙いが「会話できる便利機能」にとどまらず、購買率、客単価、サービス間の回遊を高めることにあると分かります。
YouTubeから楽天市場へ|経済圏の入口を楽天の外にも広げる
2026年2月、楽天市場はGoogleとの提携により「YouTubeショッピング アフィリエイト プログラム」の国内初パートナーになりました。
YouTubeクリエイターが動画で紹介した商品から楽天市場の商品ページへつなぎ、視聴者が購入を検討しやすくする仕組みです。
これまでの楽天経済圏は「楽天のサービスの中で利用者を回遊させる」色が強いものでした。YouTubeとの連携は、楽天の外にある巨大な動画プラットフォームから楽天市場へ顧客を呼び込む試みです。
AIも同じ方向を持ちます。検索、SNS、動画、AIなど、買い物の入口そのものが変化する中で、楽天がどこに入口を作れるかが今後の競争力に直結します。
2026年現在、楽天の戦略は成功しているのか
2026年第2四半期だけを見ると、楽天の業績は大きく改善しています。
連結売上収益は6,655億円、Non-GAAP営業利益420億円。親会社の所有者に帰属する四半期利益は77億円となり、6年ぶりの四半期黒字でした。
インターネットサービスは利益を伸ばし、フィンテックは692億円の利益を稼ぎ、モバイルの赤字も縮小しています。
一方、モバイルはNon-GAAP営業利益ではまだ赤字です。ネットワーク品質改善のため2026年度に2,000億円の設備投資を予定し、物流では2026年第2四半期にも170億円の減損等を計上しました。資金調達や有利子負債も引き続き重要なテーマです。
したがって2026年時点で最も実態に近い評価は、「楽天経済圏の収益力、とくにフィンテックは強く、モバイルの損失も大幅に改善している。一方で、モバイルの営業黒字化、投資回収、財務改善はまだ進行中」というものです。
数年前の「楽天モバイルの赤字でグループ全体が危ない」という見方から状況は変化しましたが、モバイルへの投資が完全に回収された段階にも達していません。
楽天を見るときに覚えておきたい5つの数字
最後に、2026年現在の楽天を理解するための数字をまとめます。
| 数字 | 意味 |
|---|---|
| 6,655億円 | 2026年第2四半期の連結売上収益 |
| 692億円 | 同期フィンテックのNon-GAAP営業利益 |
| ▲331億円 | 同期モバイルセグメントのNon-GAAP営業損失 |
| 1,075万回線 | 2026年6月末の楽天モバイル全契約回線数。BCP等を含む楽天定義 |
| 2,000億円 | 2026年度の楽天モバイル・ネットワーク関連設備投資計画 |
この5つを見るだけでも、楽天の現在地がかなり分かります。
フィンテックが大きな利益を生み、その利益を背景にインターネット、モバイル、AIなどを組み合わせて経済圏を広げる。モバイルの赤字は縮小しているものの、まだ営業黒字には届いていない。これが2026年の楽天グループの基本構造です。
よくある質問
Q. 楽天は赤字企業なのですか?
2025年12月期の最終損益は1,778億円の赤字でした。一方、Non-GAAP営業利益は1,063億円の黒字です。2026年第2四半期には親会社帰属利益77億円を計上しました。「赤字か黒字か」は、年度・四半期と利益指標を分けて見る必要があります。
Q. 楽天で一番儲かっているのは楽天市場ですか?
2026年第2四半期のセグメント利益ではフィンテックが最大です。フィンテックのNon-GAAP営業利益692億円に対し、インターネットサービスは231億円でした。なお、インターネットサービスの231億円は楽天市場単体の利益ではなく、楽天トラベルや海外サービスなどを含むセグメント全体の数字です。
Q. 楽天モバイルは黒字化したのですか?
EBITDAでは黒字化していますが、Non-GAAP営業利益では赤字です。2026年第2四半期の楽天モバイル単体はEBITDA59億円、Non-GAAP営業損失323億円でした。
Q. 楽天はなぜモバイルをやめないのですか?
通信収入だけでなく、モバイル契約者を楽天市場、カード、銀行、証券などへつなぐ経済圏戦略があるためです。楽天の分析ではモバイル契約者は非契約者より複数サービスの利用や年間取扱高が高い傾向を示しています。
Q. 楽天ポイントを大量に配って赤字にならないのですか?
ポイントは費用ですが、楽天は再購入、カード利用、決済、旅行、モバイルなどへの回遊まで含めて経済圏全体で収益化を図っています。ポイント単体の費用だけで採算を判断するより、利用者一人が複数サービスを使う効果まで見る必要があります。
まとめ
楽天グループを理解する鍵は、「たくさんの事業を持つ会社」と見ることより、「複数の事業を同じ利用者の中でつなぐ会社」と見ることです。
楽天市場で顧客を集め、楽天ポイントで再利用を促し、楽天カード、楽天銀行、楽天証券で金融収益を得る。楽天モバイルは通信収入を増やしながら、スマートフォンを経済圏への入口として使う。さらにAIを各サービスへ組み込み、利用者の目的から商品購入や旅行予約などへ直接つなげようとしています。
2026年現在、利益の中心はフィンテックです。モバイルの赤字は縮小し、EBITDAでは黒字化しましたが、営業黒字化と設備投資の回収はこれからです。物流などでは減損も発生しており、すべての投資が計画どおり進んだわけでもありません。
「楽天は赤字だから危ない」「楽天モバイルさえやめればいい」と一つの数字だけで見るより、どの事業が稼ぎ、どこに投資し、その事業同士がどう顧客を送り合っているかを見ると、楽天のビジネスモデルがはっきり見えてきます。
参考文献・公式資料
- 楽天グループ「Our History」
- 楽天グループ「25 years of Rakuten History」
- 楽天グループ「2025年度通期・第4四半期 決算ハイライト」
- 楽天グループ「2024年度と2025年度の連結業績差異に関するお知らせ」
- 楽天グループ「2026年度第2四半期 決算ハイライト」
- 楽天グループ「2024年度第2四半期 決算ハイライト」
- 楽天市場「よくあるご質問(FAQ)/出店プラン・費用」
- 楽天市場「出店プランと費用」
- 楽天グループ「フィンテック事業再編に関する最終合意」2026年5月20日
- 楽天グループ「減損損失及びデリバティブ評価益の計上に関するお知らせ」2026年2月10日
- 楽天グループ「減損損失等の計上についてのお知らせ」2026年8月10日
- 楽天グループ「楽天市場、Google社との提携によりYouTube動画から商品をシームレスに購入できる新しい購買体験を提供」2026年2月19日
- 楽天グループ IR「2026 Earnings Release」
- Rakuten Today「Rakuten records first quarterly net profit since entering the MNO business」

