國學院大學博物館で「アイヌモシㇼ―アイヌの世界と多様な文化―」鑑賞会&ランチ会 開催レポート

國學院大學博物館の特別展「アイヌモシㇼ―アイヌの世界と多様な文化―」展示室入口

2025年8月23日(土)10時、20名で國學院大學博物館に集合し、特別展「アイヌモシㇼ―アイヌの世界と多様な文化―」の鑑賞会を開催しました。まずは自己紹介をしてから展示室へ。落ち着いた館内で資料を一つずつ見ていくうちに、アイヌ文化の広がりと、異なる地域・時代の人々が世界をどのように捉えてきたのかが立体的に見えてきました。

國學院大學博物館とは

國學院大學こくがくいんだいがく博物館は、渋谷キャンパスの学術メディアセンター地下1階にある大学博物館です。日本文化に関する学術資料を調査・研究し、収集・保存・展示するとともに、大学の研究成果を広く社会へ発信することを目的としています。常設展示は考古・神道・校史を柱とし、日本列島の歴史や信仰、大学の歩みを実物資料から学べる構成です。

考古展示では、遺跡・遺構・遺物という「モノ」を手がかりに、先史時代から現代までの人々の暮らしと精神文化を読み解きます。神道展示とあわせて見ることで、道具や儀礼、社会の変化が互いに結びついていることがわかります。渋谷駅周辺のにぎわいから少し離れた場所で、まとまった時間をかけて歴史に向き合える施設です。

國學院大學博物館のアイヌモシㇼ展会場内の展示風景
資料が並ぶ展示室内。参加者それぞれのペースで鑑賞しました。

「アイヌモシㇼ―アイヌの世界と多様な文化―」について

今回鑑賞した特別展は、国立アイヌ民族博物館との共催で、2025年6月28日から9月23日まで開催された展覧会です。「アイヌモシㇼ」はアイヌ語で「人間の住む大地」を表す言葉です。展示では、アイヌの人々の暮らし、衣服、工芸、音楽、移動、交易、記録を示す資料に加え、地図や地誌などを通して、地域ごとに異なる声と文化の多様性が紹介されていました。

アイヌ文化は北海道だけに閉じたものではありません。北東北、樺太、千島列島を含む北方世界で、人や物が行き交うなかで育まれてきました。木や樹皮、草、魚皮など身近な素材を生かす技術、衣服に施された文様、口承文芸や音楽は、自然環境との関係だけでなく、家族や地域のつながりも伝えています。

アイヌモシㇼ展の展示資料を鑑賞する参加者
展示ケースをのぞき込みながら、資料をじっくり確認します。

会場では、展示ケースの前で足を止め、説明を読みながらじっくり鑑賞しました。編み袋や木製品などは、素材の性質を知り尽くした手仕事の積み重ねを感じさせます。完成品の美しさだけでなく、採取、加工、使用、継承までを想像すると、生活文化としての奥行きが見えてきます。

國學院大學博物館でアイヌ文化の展示を鑑賞する参加者
地理・地誌に関する展示を鑑賞している様子です。
アイヌ文化の編み袋や木製品などの体験展示
編み袋や木製品など、暮らしと技術を伝える資料が並びます。

衣装の試着体験では、文様や色使いを間近で観察できました。アイヌの衣服には、樹皮繊維を織ったもの、木綿布を用いたものなどがあり、地域や時代、用途によって素材と装飾が異なります。文様は単なる飾りとしてではなく、作り手の技術と美意識、文化の継承を伝える重要な要素です。

アイヌ民族衣装の試着体験コーナーに並ぶ衣装
文様の異なる衣装を実際に試着できる体験コーナーです。

展示されていた五弦琴トンコリは、細長い胴をもつアイヌの弦楽器です。隣には、幕末に蝦夷地えぞちを調査した松浦武四郎まつうらたけしろうの記録資料もありました。文字や絵による記録は貴重ですが、記録者の視点を通した資料でもあります。誰が、いつ、どのような目的で記したのかを意識して読むことが大切です。

トンコリと西蝦夷夷日誌などアイヌ文化関連資料の展示
五弦琴トンコリと、幕末期の記録資料に描かれたアイヌ民具。

サケの皮で作られた靴は、自然から得られる素材を無駄なく生かす知恵を具体的に示していました。厳しい寒さや雪、湿地などの環境に対応するため、素材の選択と加工には長い経験が蓄積されています。珍しい民具として眺めるだけでなく、生活上の必要から生まれた技術として理解すると、展示の見え方が変わります。

サケの皮で作られたアイヌの靴の展示
サケの皮で作られた靴。素材を生かす知恵が伝わる資料です。

また、世界を円形に描いた中世ヨーロッパのTO図など、異なる文化圏の地理認識を示す資料も印象的でした。地図は客観的な地形だけを表すものではなく、その社会が世界の中心や境界をどう考えたかも映し出します。「多様な文化」という展覧会の副題を、アイヌ文化だけでなく、人類が世界を理解する方法の違いへと広げて考えられる展示でした。

中世ヨーロッパのTO図と世界観を示す地図展示
世界をどう捉え、描いてきたかを考える地図資料も展示されていました。

「ゴールデンカムイ」と展示鑑賞

参加者には漫画やアニメ『ゴールデンカムイ』を見ている人も多く、作品で目にした衣服、道具、食文化、地名に関わる資料が実物として現れることで、興味深く鑑賞できました。

『ゴールデンカムイ』は野田サトルによる漫画で、明治後期の北海道を舞台に、日露戦争帰りの杉元佐一とアイヌの少女アシㇼパが、莫大な金塊をめぐる争いに巻き込まれていく物語です。冒険、サバイバル、歴史、食文化など多くの要素を含み、アイヌ語や伝統文化に関心を持つ入口となった人も少なくありません。

一方で、漫画やアニメは史料そのものではなく、物語として構成された創作です。作品をきっかけに博物館へ足を運び、実物資料や研究に基づく解説と照らし合わせることで、フィクションと歴史資料の違いを意識しながら学びを深められます。今回の鑑賞会は、作品で得た関心を、文化の多様性や歴史的背景へつなげる機会になりました。

鑑賞後は渋谷でランチ会

展示を見終えたあとは、渋谷駅近くのインド料理店へ移動しました。大きなナンとカレーを囲みながらランチを楽しみ、鑑賞会は終了しました。博物館でじっくり学んだ後に食事の時間を設けることで、文化体験と交流の両方を楽しめる一日となりました。

渋谷のインド料理店で楽しんだカレーとナンのランチ
鑑賞後は渋谷駅近くへ移動し、インド料理のランチを楽しみました。

まとめ

今回は、國學院大學博物館の特別展を通して、アイヌ文化を衣服、工芸、音楽、記録、地理認識など多角的に学びました。知っている作品や言葉を入口にしながらも、実物資料に向き合うことで、文化を一つの固定的なイメージで捉えず、地域差、時代差、交流の歴史を含めて考えることができます。

ゆる歴史散歩会では、歴史初心者や一人参加の方も楽しめる鑑賞会・街歩きを開催しています。今回のイベントではTimeWalkのコース利用はありませんでしたが、歴史散歩をスマートフォンで楽しめるサービス「TimeWalk」も公開しています。

参考資料